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6.素直になりなよ(5)
* * *
「ふーん」
亮平と要のやりとりを見てたのは、ヤスだけではなかった。少し離れたところから、悠と同じ高校の仲間2人が、見ていた。悠の瞳は、興味深そうに、立ち去っていく亮平に向かっていた。
「なぁ、悠ちゃん、あの漫画顔のチビのほうか?」
「いや」
「え、じゃあ、あのデカイやつかよ?」
「違うよ」
「ああ、やっぱ、あの綺麗な子」
「ああ、やっぱ、あの綺麗な子」
「……お前ら、ああいうのを綺麗って言わない」
「……」
「……」
「"綺麗"ってのは、俺のみたいなのを言うんだよ」
じろっと悠に睨みつけられているのに、それに照れる二人は、確実にMの気があるに違いない。
「今日は確実に仕留めたいんだけど」
冷たい瞳は、二人の背中を追っているけ。
「なんか、他にもついてるみたいだなぁ……」
ヤスと要の後をついていく、もう一人の男。どこかの大学のジャージを着ている長身の男。
「あいつ……誰だ?」
眉間にシワを寄せて見つめる悠を、拝むように見つめてる仲間の二人。いや、仲間というよりも、崇拝者に近いかもしれない。
「悠ちゃん、俺たち、なんでもやるからさぁ……」
「約束……忘れないでよね」
顔を真っ赤にしている二人に、妖艶な微笑みを返す悠。
「……ああ」
「そ、それじゃ、先に捕まえたほうが、悠ちゃんとヤルってので」
「いいね」
二人はやる気十分。しかし。
「気をつけろよ。ボディーガードみたいなの、ついてるから」
「えっ」
「マジ?」
「まぁ、お前ら捕まっても、俺、関係ないってしらきりとおすんで。後はヨロシク」
"捕まえたら連絡ちょうだい"と言い残して、立ち去っていく悠。
今日は無理かなぁ……と思いながら、会場を出て行った。
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