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6.素直になりなよ(14)
「遅いよ~」
っ!?この声は聞き覚えがある……。
「久しぶり~」
部屋の奥にある古びたソファに、足を組みながらスマホをいじっていたのは、加洲高の美人だった。
こいつら、美人の仲間かよ……。
まったく、毎回、柊翔の大事な試合ばかりが、見られない。そのたびに、こいつの顔を見るはめになるなんて。
「何~?そんなに俺と会えて嬉しいの~?」
そう言いながら、口を歪めながら、俺の顔を舐めるように眺める。
「……気にするほど、似てないのに」
ボソっと言ったかと思ったら。
「じゃあ、お前ら、どっちとヤる?」
俺を連れて来た二人に向かって言うと、自分の着ている服を脱ぎ始めた。な、何を言ってるんだ、こいつは?
「え~、俺、ハルカとヤッたことない~」
「なんだよ、それ。俺だって、ハルカのほうがいいに決まってるじゃん」
「どうせ、こいつ、初物だろ?」
こいつらの目つきが、嫌だったのは、やっぱり、そういう目で見てると感じでわかったからか。怖くてしゃがみこみそうになった俺を、男の一人が引きずりあげた。
「離せよっ!」
二人ともが、ハルカと呼ばれた男に意識が集中している今がチャンス、と思って逃れようと、腕を振りほどこうとした。
「んあ?ったく、うるせぇな。少し黙ってろよっ」
言い終わらないうちに、平手が飛んできた。
「っ!!!?」
手加減なしの平手は、ケンカ慣れしていない俺には、かなり痛烈で、一瞬、火花が散った気がした。唇が切れたのか、血の味が口の中に広がってくる。
「んだよ、こいつ気失ったら、面白くねぇだろうがよぉ」
「知るかよ。俺はハルカのほうがいいんだよ」
殴ったやつが、俺の腕を縛り上げて、ソファに座るハルカの隣に放り投げた。
「あ~あ。せっかくの綺麗な顔が……手の跡で真っ赤だねぇ。クスクス……」
ハルカの気色悪い指が、殴られた頬をなでる。
「さ、触るなっ」
身を反らせて、ハルカのそばから逃れようとした。
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