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6.素直になりなよ(15)

「逃げられるわけないだろ」  冷たい瞳が、俺の心臓を掴んだ。ハルカは、俺の顎をとらえると、冷たい声でつぶやいた。 「お前は、ここでメチャクチャにされちゃえばいいんだ」  ハルカは、顎を捉えていた手を振り払うと、俺の身体をソファに思い切り倒した。 「ほら。早く~。どっちでもいいから……シてよ」  どこから出てくるのかわからないような甘ったるい声と、上着を脱ぎ棄て白い肌を露わにしたハルカが、妖しく男たちを誘う。その声が、まるで蜜でもあるかのように、二人の男が同時にハルカにのしかかろうとするから、 「どっちか一人は、アイツ。二人はダメ。」  そう言うと、俺を殴ったほうの男の首に腕を回し、唇を重ねた。静かな部屋に、卑猥な水音が響く。男同士のそれから、目が離せなくなってしまったのは、ハルカの恍惚とした表情を、美しいと思ってしまったからかもしれない。 「クソッ」 残った方が、イライラした表情で、俺を睨みつけた。 「い、嫌だっ。やめろっ!」 ズリズリとソファの背を上り、男から逃れようとした。 「ほんと、お前、うるせぇな。」  そう言うと、俺の両手首を掴んで頭の上に抑え込むと、いつ使ったかわからないようなハンカチを取り出して、俺の口に突っ込んだ。 「は~い。大人しくしててね。」  思い切り俺の上に跨ると、俺のTシャツをまくり上げてジッと眺めると、肌をなで始めた。 「へぇ。綺麗な肌してんじゃん。」  熱を帯びた太い指先が、俺の肌を確かめるように触れていく。腰から、脇腹、胸元へ。指先が胸の飾りに触れ、撫でまわして、潰して、こねくり回す。  "ヴーーーーーーッ"  足をばたつかせても、相手のほうがデカくて、身動きが取れない。そして、こいつに触れられているところ全てに悪寒が走る。  気持ち悪い。  気持ち悪い。  気持ち悪い。  "ヴ、ヴッ!ヴーーーーーーッ"  涙がボロボロと流れていく。 「何、そんなに嬉しい?俺に触られて。」  ククククと笑いながら、俺の脇腹に顔を近づけ、ベロリと舐めあげた。  "ヒッ!!!" 「何っ……やってんの……そんなヤツに前戯とか必要ないっしょっ……ンッ……」  男の影でハルカともう一人の男の姿が見え隠れする。 「ハルカっ、あっち気にしてんじゃねぇよっ」 「そう言うお前のほうこそ、ちゃんと俺のこと気持ちよくさせてよ」 「お前らうるせぇ」  俺にのしかかっている男が、俺のベルトをはずしてファスナーを下してきた。  嫌だ……嫌だ……嫌だっ!  "バンっ!"  部屋のドアが勢いよく開いた。

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