76 / 122

6.素直になりなよ(18)

 二人の試合が終わっても、団体戦の準決勝の次は個人の決勝戦。  "はぁっ"  大きくため息をつきながら、座ったまま頭を抱え込む。  終わった。柊翔が勝ってくれた。  これで、俺は、気持ちが切り替えられるのか?本当に? 「獅子倉くん、外に出ようか」  真剣な顔で、俺の肩に手を置いた太山さん。頷いて、太山さんの後をついていく。途中でコーラを買うと、俺にも渡しながら、休憩用の椅子に座った。 「何があった」  心配そうな顔の太山さん。 「……鴻上さんから、何か……聞いてますか」 「……少しだけ」 「そうですか……」  コーラを口に含むと、やっぱり、口の中を切ってたのか、少ししみる。 「……また、襲われたんです」 「っ!?」 「知らない人たちに、助けてもらったんですけどね」  太山さんの顔が歪む。 「悪い、俺が一緒にいれば……」 「いや、太山さんのせいじゃないです」  簡単に捕まえられた俺が悪い。 「……できれば、鴻上さんには知られたくないんです。特に試合が終わるまでは」 「……わかった」 「決勝は見たいけど……俺、太山さんの車で待っててもいいですか」  ちょっと疲れてしまった。気持ちも身体も。  太山さんの車の助手席。リクライニングを倒して、横になった。  窓から見える空は、すっかり青い部分は見えなくなって、グレーの曇り空が広がっている。太山さんは、俺だけ残して、会場に戻っていった。  なんで、俺って、こうなんだろう。  何が、ああいう男たちに狙われる原因なんだろう。  考えても、考えても、全然思い浮かばない。  そもそも、なんで、加洲高のやつが俺なんか狙うんだよ。  ぐるぐると頭の中で考えているうちに、睡魔に襲われて、いつの間にかに、眠ってしまった。 誰かが、俺の頬を撫でている。 優しい大きな手が。 『要……怖かっただろ……ごめんな……』 柊翔? 俺は……大丈夫だよ……。 無意識に俺の手が、頬を撫でていた大きな手を掴むと、ゆっくりと目を開けた。

ともだちにシェアしよう!