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6.素直になりなよ(21)
「亮平さん……」
「……仕方ないさ」
そう言いながらも、要が去っていくのを見つめながら、亮平はポロポロと涙が出ているのを止められないでいる。二人が立ち去った途端、張り詰めていたものが途切れたのか、感情を抑えきれなくなってしまったようだ。
亮平の父親の部下でもある宇野は、亮平が小さい頃から面倒を見てきた。あの事件の時、もっと自分が亮平のことを気にかけてやっていれば、あそこまで追い詰められて、あの獅子倉という少年に手を出さずにいられたのではないか、と、ずっと心に引っかかっている。
「あいつら、どうしますか」
「……宇野さんに任せるよ」
あの男たちのことを思いだしただけで、一気に亮平の目つきは鋭いものに変わった。こんなに泣いていながら、やはり一番大事なのは、獅子倉のことなのだろう。報われないとわかっていても。
「それと。要の警護は続けて」
「……はい」
「柊翔や要には内緒で」
「はい」
車の後部座席に沈み込む亮平を見ながら、宇野は運転席に乗り込んだ。
どうしたら、再び子供のころのような、亮平の無邪気で幸せな笑顔が見られるのだろう、と、思いながら。
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