80 / 122

7.邪魔者はとことん邪魔をする(1)

 週明けから、学校は中間テスト一色になった。  昼休みだというのに、教室のあちこちで、教科書片手に話し込んでるやつらがちらほら。 「要~、今日は図書室で勉強していこうぜ~」 「な、何?ヤス、お前、熱でもあるんじゃねぇの?」  思わず、ヤスの額に手をやる。 「ばかやろー!俺だって、ちゃんと勉強するときは、するんだいっ!」  ペシッと教科書で俺の頭をはたく。そう言っても、日ごろの行いが行いだけに、図書室にどれだけ我慢していられるのやら。 「あ、佐合さんは、勉強してく?」  帰りのことを考えると、彼女もいっしょのほうが無難なんじゃないかと、声をかけてみた。 「あ、一緒に勉強してもいいの?」  少し頬を染めながら、俺たちのほうを見る。 「いや、むしろ、ヤスは佐合さんから教えてもらったほうがいいんじゃねぇの?」  正直、授業中は睡眠時間と化しているヤスを見ているだけに。俺なんかよりは佐合さんのほうが頭が良さそうだし。 「あ、茜ちゃんっ!お願いしまっす!」  まるで"つきあってくださいっ!"と告白でもしているかのように、頭を下げて、手を伸ばしている。ヤスと佐合さんのやりとりを目の端におさめつつ、スマホを見ると、LINEのメッセージ……柊翔からだ。 『部活が休みだから、一緒に帰ろう』 あ。そうか。でもな。 『ヤスたちと図書室で勉強していきます』 と、返事をしたら、すぐに既読がついて、返事まできた。 『それなら、俺も勉強していく』  ……だったら。 「ねぇ、鴻上さんも図書室きて勉強するって。ついでに、勉強みてもらおうよ」  勝手に話を進めてしまう。 「えぇぇっ!それは、是非に!」  目を輝かしている佐合さん。同時に、周囲の女子たちもざわめきだした気がするのだけれど……気のせいだろうか?  そして、放課後。 「要……図書室、入れるかな」  どんよりした顔になっているヤス。  ……俺も心配になるほど、図書室へ向かう廊下に、人が溢れている気がするんだけれど。 「き、今日って図書室でなんかイベントでもあんのかよ」  顔をひきつらせながら、俺に聞いてくるヤスに、 「知るかよ」  ボソボソと答える俺。このままじゃ席があるかわからない、と、急いで図書室のドアを開ける。案の定、図書室の中は……女子がうじゃうじゃ……。 「どうなってんだよ……」  呆然としていると、 「お。要、ヤスくん、来たね」  柊翔が自習用の机から、手をあげて俺たちに声をかけた。  "きゃぁぁぁぁ"  声にならない叫び声が、空気を伝うように広がっていった。  "?????????"  俺たちが、顔を左右に見渡すと、女子たちの視線は柊翔のほうに向けられていた。 「あ」 「あ」 「そういうこと」 「そういうこと」  げっそりした顔の俺たちの脇に、佐合さんが並んで立つ。 「そういうことみたい」  と、言いながら、少し優越感のある笑顔で柊翔に挨拶している姿が目に入った。そしていくつもの氷点下な視線も。  ……女子、怖い。

ともだちにシェアしよう!