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7.邪魔者はとことん邪魔をする(2)

 柊翔の隣には、あの一重の大柄な人が、ひょいと片手を上げたかと思ったら、すぐに机の上の問題集のほうに目を向けていた。 「こ、こんにちは」 「おう」 「あれ。要に紹介してたっけ?」 「あ。いやぁ、ちゃんとは……」 「こいつ、剣道部の主将の朝倉。ほら、女子剣道部の朝倉の兄貴」  お、おおお。  この威圧感……相通ずるものがある……。 「それより、ヤスくんたちも、さっさと席ついて勉強しな」 「あ、はい」  コソコソと席について教科書を取り出す俺たち。 「こ、鴻上さんって、頭もいいの?」  今更なことを、こっそり本人に聞く俺。 「どうかなぁ……」  苦笑いしてる柊翔。 「……毎回、学年十位以内入るやつは、バカではないぞ」  朝倉先輩は顔をあげずに、ぼそりとつぶやく。  ……知らなかった。  比較的、進学校といわれるうちの学校で、部活でも活躍してるのに、頭もいいなんて。そして、このイケメン。モテないはずがない。  そのわりに、現状、誰も近寄ってこないのは、おそらく。いや、確実に、朝倉先輩の、"近寄ってくんな、ごるぁっ!"オーラのせいに違いない。俺だって、柊翔がいなければ、ここまで接近できる自信はない。 カリカリカリ……  図書室で小さく聞こえてくるいくつもの鉛筆を走らせる音。そして、ヒソヒソと交わされる話し声。相変わらず女子たちの視線の強さが、ひしひしと感じるけれど、まったく気にせず勉強に集中している三人(俺とヤスを除く)には、脱帽。  全然集中できないでいたから、気分転換も兼ねて、本棚のほうに参考になりそうな本がないか探しに向かう。少し離れただけで、こんなに違うのか、と思うくらい、視線の圧力ってあるんだ……と、思いながら、本棚の本を眺めていると。 『ねぇ、河合くんとはどうなったの?』 『え。知らない』 『だって、最近、一緒にいるとこ、あんまり見ないじゃない』 『あの似た子のほうが本命?』 『やだぁ、絶対、河合くんのほうがお似合いなのにぃ!』 『私もそう思うけどっ』 『ていうか、あの女子、誰よ』 『あの子の友達っぽいけど。なんか、ずうずうしいわよね』  ヒソヒソ声のつもりでも、すっかり俺には聞こえているわけで。"河合くん"って、あの副将の人のこと……だよな。

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