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7.邪魔者はとことん邪魔をする(5)

 中間試験の前三日間、部活が休みだからと、今日の帰りから試験の最終日の朝まで、一緒に登下校する、と断言され、今は帰りの電車の中。柊翔と二人、それぞれに教科書を開いてる。正直、もう大丈夫、と言える自信がないから、柊翔が一緒にいてくれる、のはありがたい。素直には言えないけど。  教科書から顔をあげると、真剣な顔で勉強している柊翔の顔があった。 "やっぱ、かっこいいなぁ"  黒いサラサラの髪をかきあげながら、ちょっと眉間にシワを寄せても、それだって、男っぽくて、かっこよく見える。見惚れてたせいで、柊翔の見上げた目と視線がぶつかる。ドキッとしてしまう自分に、"え?あれ?"と思ったけれど、冷静なふりして、自分の教科書に目を落とす。だけど、全然、文章が頭に入ってこない。  俺、なんか、おかしい?  柊翔の家に着くと、おばさんが大喜びで出迎えてくれたのに、"これから勉強するから、邪魔するな!"と言うものだから、、シュンとしながら、キッチンに引っ込んでしまった。 「そんなに、きつく言わなくてもいいのに」 「これぐらい言っても効かないと思う」  柊翔の部屋のローテーブルに、教科書を取り出しながら、チラリと顔を見る。最近の柊翔は、なんだか少し子供っぽい。ずっと大人だなって思ってたのに、時々見せる表情が、少しだけ幼く見えて……可愛いなんて思ってる俺。  そんなこと思ってるなんて気づかれたら……気持ち悪がられるかな……。 「二人とも~!お菓子食べる~?」  ノックもせずに入ってきた、すでに復活しているおばさんが手にしていたのは、アイスカフェオレとともに山盛りのポテチ。"はぁ~"と、ため息をつきながら 「そこに置いといて」  顔もあげずに教科書を見ていた柊翔。 「は~い♪」 と返事をされたので、置いたら出て行くと思ったら。 「何してんの。」 不機嫌そうな顔の柊翔。 なぜなら、俺たちと同じように、床に座って、俺の教科書を覗き込んでるんですもの。 「ん~?どんなこと勉強してるのかな?って。」  ニコニコしながら俺の顔を見てる。お、俺じゃなくて柊翔の顔を見たほうが……。  "アハハ"と、なんとか笑ってみせたけど、視界の先には、どう見ても怒りのオーラをまとった柊翔がいるんだけど……。 「……集中できないんだけど」  絶対、効果音、"ゴゴゴゴゴーッ"とかいってそう・・・。 「もう、意地悪ねっ!」  おぼんを抱え、口を尖らせて部屋を出て行くおばさんを見てたら。 "ぷっ"  笑いをこらえられず、吹いてしまった。ジロリと俺の顔を見る不機嫌そうな柊翔。 「いや、だって……」  柊翔の顔を見ると、やっぱり、と思う。 「親子だなぁって。」 「はぁ?」 「……同じ顔してる」  クスクス笑いが止まらない俺を、顔を赤くしながら睨むけど、全然怖くない。 「俺は、あんなに太ってない」 「そうじゃないでしょ」 「ほら、ちゃんと勉強しろよ」 「は~いっ。」  "やっぱりカワイイなぁ"なんて思ってるのに、真面目な顔をして教科書を開く。そんな俺を、いつの間にかに、さっきまでの不機嫌さは消えた柊翔が、嬉しそうに見ていた。

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