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7.邪魔者はとことん邪魔をする(7)

 放課後、帰る準備をしているところに、柊翔がやってきた。 「要」  教室の入口で寄りかかりながら、にこやかなに待たれてしまうと、こっちのほうが慌ててしまう。その間にも、女子たちが果敢に柊翔に話しかけているけど、ニコニコと柊翔は軽く受け流すだけ。 「す、すみません、お待たせしました」 「ん。じゃあ、行こうか。」  今日もヤスたちは図書室で勉強をしていくというので、俺と柊翔の二人で校舎から出る。  校門のあたりまでいくと、そこには、副将さんと、すごくカワイイ女の子が楽しそうに話しながら、並んで立っていた。まるで、日本人形みたいに艶やかな肩までの黒髪に、キリリとした黒い眉。大きな瞳と、ぷっくりした唇は誘うように少しだけ開いて、思わず、目を奪われる。 「あ、鴻上先輩」  副将さんが挨拶をするために、柊翔に駆け寄ってきた。少し頬を染めながら、柊翔を見つめている彼を、カワイイと思って見つめていると、先ほどの彼女が彼の後ろに近寄った。  この制服は……この辺ではお嬢様学校で有名な花咲女学園。 「祥吾さん、こちらは?」  彼女の声は、優しい鈴の音のようで、思わずジッと彼女のほうを見つめてしまう。それに気づいた彼女は、俺のほうを見て、ニッコリと笑った。 「こちらは、剣道部の先輩で鴻上先輩、そっちは……」 「あ、し、獅子倉です」  顔を赤らめながら名乗ると、 「ウフフ、河合 百合(カワイ ユリ)です。祥吾さんの従姉になります」 「なんだ、祥吾の彼女じゃないのか。」 ニコニコ笑いながら柊翔が言うと、 「ち、違いますよっ!!」 と、副将さんは慌てて否定した。 「祥吾さんてば、ひど~い♪」  俺と同じくらいの身長の副将さんと、その彼の肩くらいしか身長のない彼女が、上目遣いで、副将さんを見上げてる。 「もうっ!少しぐらい嬉しそうにしてくれてもいいんじゃない?」  ぷ~っと膨れて見せる姿は可愛らしい。 「嬉しくないし」  否定しながらも、笑いながら優しく見つめあう二人は、すごくお似合いに見えた。 「でも、これからデート?祥吾、余裕だな」 「だから、違いますって。百合は、頭いいから勉強を教えてもらおうと思って」 「へぇ……百合さんは何年生?」 「こう見えて、3年なんです」 「あ、俺と一緒か」 「獅子倉くんは?」 「ぼ、僕は1年ですっ」 「ウフフ……可愛いわね」  手で隠されても、指の隙間から見える赤い唇を、俺が見つめていたせいなのか。柊翔が軽く腕を引いた。 「じゃあ、俺たち帰るわ。またな」 「し、失礼します」  ペコリと頭を下げると、先を歩く柊翔を追いかけた。

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