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7.邪魔者はとことん邪魔をする(10)
* * *
最近、要の様子がおかしい。いや、俺の方がおかしいのか。
前から、カワイイと思ってたけど、以前よりも増して、ドキっとする瞬間が増えた。図書室で話しかけただけなのに、急に赤くなったりとか。目があっただけで、赤くなったり。混んでる電車で、抱きしめたら赤くなったり。
……俺が勘違いしそうなことがありすぎて。一人で勝手に盛り上がってるだけかもしれない、と、冷静に考えればそうなのだけれど。もし、少しでも、俺に気持ちがあるのなら。その尻尾だけでも、掴みたい。
掴んで。掴んで。引き寄せて。俺だけの要にしてしまいたい。そんな俺の気持ちを知ったら、要は引くだろうか。
亮平に告白されて、完全に否定してる姿を見てるから。俺も、同じように否定されたらどうしよう。そういうことが頭の中に浮かんでしまう。
それに。さっきの祥吾の従姉……百合さんって言ってたか。なんだか舐めるように要を見ていたような気がして。見かけ通りの人じゃない気がして、少し心配になる。要もじっと見つめてたし。 やっぱり、当たり前だけど、女子のほうが興味があるんだろう。
もし、要に好きな子ができたら……彼女ができたら……そう思うと、胸が苦しくなる。そんな俺のことなんて、気が付いていないんだろうな。
一生懸命に教科書を睨みつけている要がかわいくて、自分の勉強に身が入らない。
「柊翔さん……ちゃんと勉強してます?」
俺がずっと要を見てたのに気づいたのか、俺の顔を覗き込んでくる。ああ、このままキスしてしまいたい……。
「ああ、ちょっと考え事。」
ニコリと笑って、本心を誤魔化す。ここは要の部屋だから、うちのオバサンみたいに邪魔する奴はいないけど。
俺の煩悩が、勉強の邪魔をする。
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