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7.邪魔者はとことん邪魔をする(15)

 こんな時に、ふと、柊翔の顔が頭に浮かぶ。そして、試験を終えてから顔を見ていないことを思い出す。佐合さんはまだしばらくは部活が終わらないだろう。  今だったら。 「ヤス、ちょっとトイレ」 「ん、ああ」  スマホのゲームに夢中になりだしたヤスを教室に残して、俺は武道館に向かっていた。今までだって、顔をみない日はいくらでもあったし、もっと長い時間、会わない時だってあった。だけど、意識しはじめたら、少しでも顔をみたいっていう思いが、大きくなってきて、見に行かないではいられなくなった。  自分の気持ちが変なのはわかってるけど、抑えられない。  武道館に向かう歩みが、どんどん早足になっていく。  武道館に近づくにつれて、気合いの声がどんどん大きくなっていく。その中に、柊翔の声がまじっているのも、聞き取ってしまって、余計に足を早めてしまう。 こっそりと、入口から覗き込む。  たくさんの部員たちの中にいても、すぐに柊翔を見つけてしまう。誰かに向けた笑顔に、胸がトクンとする。 「獅子倉くん?」  後ろから急に声をかけてきたのは、一宮先輩だった。 「あ、こ、こんにちは」 「どうしたの?」 「い、いや、ちょっと……」 「鴻上先輩に用?」 「ち、違いますっ!た、たまたま、通りかかったのでっ!」  ……滅多にここを通りかかるなんていうシチュエーションはないんだけど。自分でも、無理な言い訳してるのはわかってるんだけど……。 「ふーん」  ニヤニヤしながら俺を値踏みするような目で見る一宮先輩。 「ま、いいけど」 「は、はい、そ、それじゃっ……」 「獅子倉くん」 「はい?」 「気をつけなね?」 「え?」 「油断してると、盗られちゃうよ?」  急に真面目な顔をして、俺に顔を寄せてくる。 「な、何をですか?」  一宮先輩の意図がわからず、苦笑いしながら聞くと。 「ん~、たぶん、きみの大事なものだと思うんだけど」  そう言いながら、武道館の中を覗く。その視線の先。柊翔と並んで立っているのは、副将さん。楽しそうに話していて……柊翔の手が、副将さんの頭を荒っぽく撫でている。  そのシーンが、俺の心臓を"ズキン"と突き刺した。たぶん、いつものこと、なんだろう。実際、俺にだって普通にしてること。それなのに、こんなことで自分がショックを受けてることに、驚いている。 「私は獅子倉くんのほうを応援してるけどね」  ボソリとつぶやく一宮先輩の言葉は、俺の耳に届かなかった。 「失礼します……」  ……来なければよかった。  そう思いながら、ヨロヨロと教室に向かった。

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