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7.邪魔者はとことん邪魔をする(18)
「じゃあ、俺も一緒に送っていくよ」
……え?
若干、顔色はすぐれないものの、しっかりと百合さんを見つめてる。もしかして、柊翔って。百合さんのこと、気になってたの?
「……は?」
冷たいこの声は……百合さん?思わず、百合さんの顔を確認してしまったら。
……すごく怖い顔してる。
俺は、本当に泣きそうになってるんだけど、柊翔は俺のことなんか見ずに、百合さんをガン見。
――そんなに百合さんのこと。
「ゆ、百合さん、鴻上さんも一緒でもいいですよね?」
俺にできることなんて……こんなことくらいしかないし。
「ヤダ」
即答された。案の定、柊翔が真っ青な顔になっているのを見ると・・・ここで折れるわけにはいかない気がした。
「……鴻上さんが一緒じゃないなら、俺も送れません」
これぐらい言ってもいいでしょ?
結局、百合さんを間に挟んで、俺と柊翔は、百合さんの家に向かった。
「百合さんの家って、花咲の近くなんですね」
わざわざうちの学校まで来てたのか。
「……うん」
少し不機嫌そうに前を向いている百合さん。それをチラチラ見てる柊翔が、俺の視野に入ってくる。柊翔がそんなに彼女を気にしてたなんて。だんだんと、気持ちが落ちていく。
……ああ、でも、これでいいのかもしれない。
ジッと前を向きながら、柊翔のことを考える。俺なんかの気持ちなんて、知らないほうがいいに決まってる。柊翔が笑ってる顔が見られたほうがいい。拒絶される怖さを思うと……俺が拒絶した時の亮平の顔を思い出す。
ぼうっとしながら歩いていると、いつの間にか百合さんの家に着いていた。周囲はけっこう大きな家が多く建っていて、少し駅から離れていた。すでに、空には星が見えている。
「うち、ここだから。獅子倉くん、寄ってく?」
完全に柊翔を無視して、俺に話しかけてくる。
「い、いや、俺、今日は帰ります……」
「じゃあ、次は寄ってってね?」
「え、次?」
「じゃ、また明日!」
「え、えーーーっ?」
百合さんは、ニッコリと俺に向かって笑うと、最後まで柊翔を無視して、家に中に入って行った。
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