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7.邪魔者はとことん邪魔をする(21)
鴻上さんから裏門命令を受けてから、俺たちは裏門から帰るようになった。気が付けば1週間。なんとか無事に過ごしてきたから、さすがに、もう諦めてくれたかな?と思いながらも、万が一ということもあるから、と、ヤスが先に行って様子を見てもらうことになった。
しばらくすると、ヤスからLIMEのメッセージがきた。
『OK!今はいないみたい!』
「よし、じゃあ、行こうか。佐合さん」
二人で早足で表の校門に向かったのだけれど、途中で担任に捕まってしまう。
「あ、お前ら、京橋と一緒じゃないのか?」
「ヤスなら、もう学校は出てますけど、これから会いますよ。なんですか?」
「京橋のヤツ、課題出さずに帰ったんだよ。とりあえず、明日必ず持ってこいって伝えといてくれないか」
「あ、はーい」
"気を付けて帰れよ~"という言葉を背中に、俺と佐合さんは、慌てて校門に向かった。
「ヤス、待たせちゃったな。」
「ハッハッハッ……きっと、大丈夫だよっ」
俺のペースに合わせて早足したから、少し息があがってる佐合さんと、一緒に校門を出ようとした時。
『獅子倉くんは一緒じゃないの?』
……ヤバイ。あの声は百合さん?
そっと、門のところから顔を出してみると、ヤスが百合さんに捕まってる。それも、百合さんがグイグイ押し気味に迫ってるから、ヤスのほうはニヤケまくりの上に押し負けてて。
その姿を見ていた佐合さんは……ま、まずいよ、ヤス……。
「獅子倉くんっ。行こう!!」
プリプリした佐合さんが、俺の腕を取ると、裏門のほうに向かって走り出した。
「い、いや、でもヤスがっ」
「いいのっ。あんなに嬉しそうなんだもんっ。生贄にされちゃえばいいのよっ!」
……いや。俺には、佐合さんの生贄にされちゃうような気がするよ……。
裏門から出て二人で駅に向かっていると、ヤスから再びLIMEのメッセージ。
『助けて~(涙)』
「あ。ヤス……」
申し訳ないと思いつつ、佐合さんをチラリと見ると、少し寂しそうな顔。
「佐合さん……迎えにいってやったら?」
「えっ」
「もう駅だし、俺だったら気にしないで。あ、それとも、一人で戻るの、やっぱ無理か……」
ん~、どうしようかなぁ、と悩んでいると、佐合さんの表情が険しくなってる。
「……ゴメン!ヤスくんとこ行ってくる!」
そう言って猛ダッシュで学校に戻って行く佐合さんの背中を、"無事に奪還してきてね~"と見送った。
それにしても、百合さんがいつまでも諦めてくれないのって。なんなんだろう。俺は、一度は断ってるっていうのに。それでも、百合さんのことで悩まされてるおかげで、柊翔のことを悩む余裕がなかったことに気が付いた。
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