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7.邪魔者はとことん邪魔をする(22)
今度の週末に、柊翔の高校最後の個人戦がある。これで1位か2位になれば、全国大会が待っている。前回の県大会では優勝できたから、次も……と思っても、実際に試合になってみれば、そう簡単にはいかない。
だから、大会に向けての練習がある柊翔とは、たまに学校の中で挨拶したり、LINEで連絡もらったりするくらいで、一緒にいる時間はほとんどないのが現実。
少しずつ離れていけば、自分の気持ちも少しは落ち着いてくるんじゃないかって、思ってたのに。
離れれば離れるほど、考えてしまうし、無意識に柊翔の姿を探してしまうし、チラッと姿が見えただけでドキドキする。
もう、どうしようもない。
自分から柊翔にカミングアウトしてしまったほうが、気が楽なんじゃないかって、すら思う。帰りの電車の中、ため息しかでない俺。
「柊翔……」
俺はどうしたらいいんだろう……。
地元の駅に着く直前、スマホが鳴った。佐合さんからのメッセージ。
『無事にヤスくん奪還!』
その割に、だいぶ時間がかかったみたいだけど。
『よかったね。お疲れ様』
帰って来た返事には、ブイサインの豚のアイコン。フフフ。佐合さん、頑張ってる。はぁ、俺も頑張るべき?でも、柊翔は百合さんのこと……。
モヤモヤしてると、また着信。今度はヤスかな?と思って見ると、柊翔からだった。"柊翔"の文字を見ただけで、ドキッとなる。重症だろ、本当に。ちょうど駅に着いたので、ホームに降りながらメッセージを見ると。
『今どこ?』
この時間って、まだ部活中なんじゃ?
『もう、A駅です』
送信してから、改札に向かった。
『話があるから、夜によってもいい?』
話……百合さんのこと……かな。
今の俺にはそれしか考えられない。百合さんのことで相談されるのか。
正直……嫌だ。そんな心構えだって、できてない。
会いたく……ない。会いたくないけど……会いたい。
『いいですよ』
この5文字を入力するだけに、駅前のカフェで30分も悶々としていた。
送ってから、後悔する。本当にいいのか、俺。引導渡されるんだぞ……でも、もう送ってしまった。その上、あっという間に既読がつくし。
柊翔、ちゃんと練習やってるのかよ。思わず微笑んでしまった。
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