101 / 122

7.邪魔者はとことん邪魔をする(22)

 今度の週末に、柊翔の高校最後の個人戦がある。これで1位か2位になれば、全国大会が待っている。前回の県大会では優勝できたから、次も……と思っても、実際に試合になってみれば、そう簡単にはいかない。  だから、大会に向けての練習がある柊翔とは、たまに学校の中で挨拶したり、LINEで連絡もらったりするくらいで、一緒にいる時間はほとんどないのが現実。  少しずつ離れていけば、自分の気持ちも少しは落ち着いてくるんじゃないかって、思ってたのに。  離れれば離れるほど、考えてしまうし、無意識に柊翔の姿を探してしまうし、チラッと姿が見えただけでドキドキする。  もう、どうしようもない。  自分から柊翔にカミングアウトしてしまったほうが、気が楽なんじゃないかって、すら思う。帰りの電車の中、ため息しかでない俺。 「柊翔……」  俺はどうしたらいいんだろう……。  地元の駅に着く直前、スマホが鳴った。佐合さんからのメッセージ。 『無事にヤスくん奪還!』  その割に、だいぶ時間がかかったみたいだけど。 『よかったね。お疲れ様』  帰って来た返事には、ブイサインの豚のアイコン。フフフ。佐合さん、頑張ってる。はぁ、俺も頑張るべき?でも、柊翔は百合さんのこと……。  モヤモヤしてると、また着信。今度はヤスかな?と思って見ると、柊翔からだった。"柊翔"の文字を見ただけで、ドキッとなる。重症だろ、本当に。ちょうど駅に着いたので、ホームに降りながらメッセージを見ると。 『今どこ?』  この時間って、まだ部活中なんじゃ? 『もう、A駅です』  送信してから、改札に向かった。 『話があるから、夜によってもいい?』  話……百合さんのこと……かな。  今の俺にはそれしか考えられない。百合さんのことで相談されるのか。  正直……嫌だ。そんな心構えだって、できてない。  会いたく……ない。会いたくないけど……会いたい。 『いいですよ』  この5文字を入力するだけに、駅前のカフェで30分も悶々としていた。  送ってから、後悔する。本当にいいのか、俺。引導渡されるんだぞ……でも、もう送ってしまった。その上、あっという間に既読がつくし。  柊翔、ちゃんと練習やってるのかよ。思わず微笑んでしまった。

ともだちにシェアしよう!