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8.俺の隣(2)
すごく怖くて……悲しい顔で、俺を睨んでる。
今まで、そんな顔を見たのは、亮平との最初の事件の時くらいかもしれない。
俺、怒らせるようなこと、言ったかな。
その表情だけで、俺の顔が歪む。柊翔が、すごく怖いと感じた。
「ご、ごめんなさいっ」
何が悪いのかわからなくても、言葉が勝手に口からこぼれていく。
そして、無意識に柊翔から離れようとしたのを、柊翔が俺のほうに手を伸ばしてきた。
怖いっ。
「バカヤロウッ」
殴られるのかと思って、腕で頭を庇おうとした。柊翔は、その俺の腕を取ったかと思ったら、強引に引っ張って、俺を抱きしめていた。
……く、苦しい。
けど、柊翔の匂いが、体温が、俺を包んで、泣きたくなる。こんな状態なのに、嬉しいと思ってる俺
「俺が、あの女のこと、気にしてるだって?」
俺の耳元に、柊翔の声が忍び寄る。さっきの怒りの声とは違う、悲しそうな声。
「……確かに、気にしてはいたさっ」
その言葉と同時に、柊翔はもう一度、俺を強く抱きしめた。
「それは。お前が……お前が、あの女のこと、好きになっちゃうんじゃないかって、思ったから。」
……え?
「それって……やっぱり、柊翔さんがっ」
「チ・ガ・ウッ!!」
うわっ!
耳が聞こえなくなるくらい、大きな声で柊翔は否定した。柊翔の声で、耳がキーンとなるから、思わず手で抑えてしまう。俺の両肩を掴んでグイッと柊翔の身体から離されると、俺の顔を覗き込んだ。
「あんな女、好きじゃない」
言い聞かせるように、俺の目を見て言葉を続ける。
「俺が好きなのは……好きなのは……」
苦しそうな顔の柊翔。俺は無理やり、柊翔に言わせようとしている。
「あ、む、無理に言わなくても」
オロオロしながら、柊翔の顔を見る。
「いや、今、言わなきゃいけないんだっ」
顔を真っ赤にしながら、深呼吸して、再び俺の顔を見た。
「俺が好きなのは、要、お前だよ」
柊翔の言葉が、かすめていった。でも、言葉の意味がわからない。
何、言ってるんですか?
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