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8.俺の隣(3)
「……お前は嫌かもしれない。いや、普通、気持ち悪いよな」
少し、悲しそうな顔をした柊翔が、なんとか言葉を絞り出そうとしてるのがわかる。
『俺が好きなのは、要、お前だよ』
柊翔が……俺のこと?
俺?俺のこと……好き?
「ずっと、好きだったんだ……」
柊翔は優しく、優しく、俺を抱きしめた。
「し、柊翔さん……」
「ん……」
「お、俺、男だよ……?」
「ああ」
「……それなのに?」
「要だから……要だから好きなんだ。」
柊翔の言葉が、俺の中にじんわりと浸みこんでくる。
「……要?」
気が付くと、俺は、涙を流していた。
「……やっぱり、泣くほど、嫌か……?」
俺の顔を見つめる柊翔が、悲し気に微笑む。
「ち、違うっ!」
柊翔が、必死に言葉にしてくれたのに。俺が、ちゃんと答えなくちゃ。
「し、柊翔さん、お、俺、俺……」
どんどん顔が赤くなっていく。でも、俺が何か言おうとしてるのを、柊翔は真剣な顔で待ってくれてる。そう、いつだって、ちゃんと待ってくれるんだ。
それに、答えなくちゃ。
「お、俺も、柊翔さんが好きだっ!」
言い切った!途端に、恥ずかしさがMAXになって頭が真っ白になる。
「ムキャァァァァッ!」
……奇声をあげて、柊翔にしがみついてしまった……。
「か、要?」
柊翔の手が、俺の背中を撫でているけど、少し震えている気がする。
「本当に?」
俺は顔を上げられず、ただ頷くばかり。
「俺だって、男だよ?俺の好きと、お前の好きは同じ……」
「同じっ!!」
心配そうな声に思い切り被せたけど、続けて出る声は小さくて。
「同じ……たぶん……」
ああ、耳が熱い。俺、だいぶ頑張った気がする。
「……要っ!」
柊翔に強く抱きしめられて、幸せすぎて意識が飛びそうになった。
「……要、もう一度、言ってくれる?」
「な、なんでっ。は、恥ずかしすぎて、無理っ」
「ごめん。でも、俺、もっと、お前の気持ち……聞きたいんだ。そうでなきゃ、不安で……」
あんまりにも不安そうな声で言うから、断れなくなる。
「す、好き……です」
今までの人生で、こんな風に人に向かって恋愛感情の『好き』なんていうのは、初めてだった。
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