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8.俺の隣(8)

 俺もヤスも、息をあげながら、目的地に向かった。さすがに、合気道やってるだけあって、ヤスのほうがスタミナもある。俺は追いかけるので精一杯。 ……運動不足だな。  それでもなんとか、追いかけていく。 「要、おせーよっ!」 「くそーっ!」  青空が段々と赤く夕焼けに染まっていく。その中を俺とヤスは駆け抜けていく。 「あ、あの建物だと思うんだけどっ」  ヤスのほうが先に着いて、息を整えてる。  ここ……だったのか……。  途中、あいつに襲われたトイレを見かけた気がしたけど、そんなに離れた場所ではなかった。そこは、古ぼけた体育倉庫で。ヤスが引き戸をひくと。 「あ、鍵かかってない……」  ゆっくりと、戸を開けた。中は埃っぽいうえに、薄暗くて、何があるのかよく見えない。 「こういうとこって、電気とかねぇのかな」  壁を触っているけど、それらしいものを見つけることができずに、イライラする。 「誰かいますか~?」  のんきに声をかけるヤス。 「誰かいれば返事してくださ~い」 「見つかりたくなかったら、返事なんかしないんじゃねーの?」 「あー、まぁ、そうだけど」  パチンという音と共に、倉庫の電気が点いた。 「あ、電気きてたんだ」  そう言いながら、ヤスは倉庫の中を見回した。使わなくなった道具類が積み重ねられているだけで、人影は見当たらない。  ただ、床に降り積もっていた埃が、最近誰かが使ったかのように、踏み荒らされていた。 「……誰か、いたのかな」 「かもしれない」 「まさか、柊翔が……?」  柊翔のことを考えただけで、身体が震えだした。

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