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8.俺の隣(9)

「おい、要、大丈夫か?」  ヤスが心配そうに、俺の肩に手を置いた。 「あ、ああ」  埃っぽい場所なのに、思わず、深呼吸してしまう。 「まぁ、ここにはいないってのが、わかっただけ、よかったけど」  どこにいるんだろう?と思いながら、引き戸を閉めていると、俺の斜め掛けバックの中のスマホが鳴った。 鳴り続けているスマホを取り出すと、表示されてる名前が。 「え、柊翔!?」  慌てて通話を押す。 「もしもし?」 『獅子倉くんですか?』  え?誰だ。聞き覚えがあるような、ないような。 「え、えと、どなたですか?」  俺が戸惑っているのに気づいたヤスが、不審そうに俺の隣に立った。  "だれ?"と、声に出さずに聞いてきたけど、俺もわからないから、首を振る。 『あ、すみません。宇野です』 「宇野さん?」  名前を聞いても、ピンとこない。同じようにヤスの頭にもはてなマークが浮かんでいそう。 『あ、名前じゃわからないかな。亮平さんと一緒にいた者ですが』  えっ!?  ああ、あの時の黒服の人。その人がなんで、柊翔のスマホから電話してきてるんだ? 「あ、あのっ、宇野さんは、なんで、柊翔の番号からかけてるんですか?」 『いやぁ、獅子倉くんと連絡とりたくても、私は知らなかったので』  そ、それはそうだけど。 『とりあえず、裏の駐車場まで来れますか?』 「は?」 『そうすれば、鴻上くんとも会えますよ?』  !?どういうことだ? 「う、裏って……」 『会場の裏てにある駐車場のことですよ』  それだけ言うと、電話は切れた。  ま、まさか。 「なんだって?」 「なんか、会場の裏手の駐車場に来いって……」 「へ?なんで?」 「鴻上さんも一緒にいるっぽい……?」  マジで訳がわからない。 「は?なんで、鴻上先輩本人が電話してこないんだよ?」 「それは、俺の方が聞きたいよ……」  手にしていたスマホをじっと見るけど、そこに答えが書いてあるわけでもない。 「とりあえず、その駐車場に向かうしかないかな」  言いしれぬ不安感が、俺を焦らせる。 「よし……って、要、まず、その駐車場ってどこだよ?」 「わからねぇっ!!」  そう叫びながら、まずは会場に戻ろう、と俺たちは走り出した。

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