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8.俺の隣(11)

「あー、俺……なんで、ここに?」  虚ろな感じで手で目のあたりをこすってる。 「なんか、眠気が全然抜けないんだけど……」 「大丈夫ですか?」 「……大丈夫じゃないかも……要……肩、貸して……」  言い終わるか終わらないかというところで、再び眠りに落ちていく。それでも、柊翔が、俺の隣で眠っていてくれるということに安心した。 「要、鴻上先輩は?」  開けたままのドアから、ヤスが顔をのぞかせた。さっきまで泣いていた顔を見られたくなくて、振り向きもせずに答える。 「寝てる」 「大丈夫そうか?」 「……たぶん。あ、佐合さん待たせちゃってるから、先に帰ってくれていいよ?」 「悪いな。太山さんには、場所を説明しといたから、もう少ししたら、こっちに来ると思う」  俺にスマホを返すと、「じゃぁなっ!」と言うと猛ダッシュで佐合さんのいる場所に戻って行った。    本当は、何があったのか、すごく知りたい。眠っている柊翔の顔が、いつもより幼く見えて、そんな柊翔に何かしようとしていたヤツがいたのかと思うと、怒りで頭の中が真っ白になりそうだった。 「はぁはぁ、し、獅子倉くん?」  荷物を背中に背負いながら、ドアのところに息を切らせた太山さんが現れた。 「太山さん、すみません」 「いや、君が謝ることじゃないし。で、柊翔は?」  そう言って車の中を覗き込んできた。 「なんだ、寝てるのかぁ」  太山さんも、無事な姿を見たせいか、俺同様に、ホッとしていた。  大きなため息とともに荷物を地面に下ろす太山さん。 「しかし、こいつ、なんで剣道着のままなんだ?」 「……それは、俺も知りたいです」 「それに関して、ちょっと説明すると」  いきなり、太山さんの背後から宇野さんが現れた。

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