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8.俺の隣(12)

「うわぁっ」  突然の宇野さんの登場に、思い切り跳ね上がる太山さん。 「驚かせてすみません」  苦笑いしながら、頭をかいている宇野さんに、"いやいや、こちらこそ"と、太山さんも照れ笑い。 「恐らく、試合終わった直後に、連れ去られたと思われます」  真面目な顔で、太山さんに説明し始めたけれど、太山さんはポカーンとした表情。 「え?連れ去られた?どういうことですか?」 「あっ」 「獅子倉くん、説明してなかったんですか?」 「いや、ヤスに太山さん呼ぶように言っただけなんで……」 「え、え、どういうことですか?」  今更、慌てだす太山さん。 「今回は、鴻上くんがターゲットだったということですよ」  その言葉に愕然とした太山さんは、心配そうに、眠り込んでいる柊翔の顔を覗き込む。 「ご心配になるようなことにはなってませんから」  どんな心配をしてると思っているのか。  フッと自分自身のことを想像してしまう。この人……さらっとスゴイことを言ってる気がする。 「よろしければ、車でお送りしますが?」  宇野さんは、そう言いながら車の運転席に乗り込んだ。 「え、あの、鴻上さんの荷物は?」 「後ろのトランクに入ってます。さすがに剣道着を着替えさせるにも、ちょっと場所がなかったんで。あ、鴻上くんのスマホ、返しておきますね」  俺の目の前に柊翔のスマホが現れた。 「……よく、俺のところにかけられましたね?」 「ああ、その時は、無理やりに鴻上くんを叩き起こしましたよ」  ククククッと楽しそうに笑っている宇野さん。  ……どんな風だったのか、気になる。  結局、助手席に太山さんが乗り込んで、俺はそのまま肩に柊翔の頭を乗せ、スースーと、柊翔の小さな寝息を聞きながら、いつの間にか、俺も眠りについてしまった。

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