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8.俺の隣(13)
* * *
後部座席から二人の小さな寝息だけが聞こえてくる。
「……宇野さん」
太山の少し硬い声が、隣で運転している宇野に届く。
「はい」
ただ前を見続けている宇野が、よそ見もせずに返事をした。ただ無言のままでいられなくなったのは、太山のほう。
「どういうことですか」
冷静な声を出そうとしてるつもりでも、やはり心配しているのは声の雰囲気で伝わってくる。それはそうだろうな、と思いながら、どこまで話していいものか、と宇野は悩んだ。
「鴻上くんから、何か聞いているんですか」
「いえ、詳しくは……」
「そうですか。とりあえず、今回のことだけでも説明しましょうか」
「……はい」
納得はしてないながらも、少しでも状況を知りたいのだろう。ムッとしながらも、宇野の話を聞く体勢になった。
「少し長くなりますけど……とりあえず、今までの主犯格は取り押さえましたよ。ですから、今後、こういったことは起きないでしょう。」
赤信号で止まったので、ドリンクホルダーから、緑茶のペットボトルを取り、口に含む。
「馳川 亮平さんは、ご存じですよね?今まで、彼の依頼で獅子倉くんのほうを護衛してたんですが、この前捕まえた奴が、ようやく主犯格について吐いたんですよ。」
信号が変わり、後ろの二人が起きないように、静かに車は動き出す。
「そいつの最終的な目標が、鴻上くんだってこともね。」
驚いた太山は、後ろで眠っている柊翔を見た。幸せそうな顔で眠っている彼を、誰が。
「なので、護衛の対象を鴻上くんと獅子倉くん、二人にしたんです。しばらくは動きがなかったので、安心してたんですが……今回の大会では何かしらしかけてくるんじゃないかと、予想はしてました。それが、どっちになのかは、わかりませんでしたけどね。」
車の流れは思いのほかスムーズで、あっという間に、道のりの半分くらいまで来ていた。外は、すっかり暗くなって、街灯の灯りが目立ち始める。
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