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第11話 親近感?

「いつから独り暮らしを?.....ここには他に誰か居る気配がしない。お手伝いさんとか居そうなお屋敷なのにな。」  テレビや映画で観る広いお屋敷にはお手伝いさんがいるが、この家の何処にもそんな匂いはしなかった。それどころか殺風景すぎる室内には愛情の欠片もみられない。 古びた俺の家でさえ、父と暮らした男所帯の温かみがあったというのに......。 「大学生になってすぐ。母は、僕の高校卒業を待って再婚しましたからね。あっけないものですよ。けど、ひとりの方が気も楽ってもんです。今じゃ仕事で朝早かったり、逆に深夜の帰宅なんかもあって、それはそれで気を使うでしょ?お手伝いさんとか....、どこの話です?そんなに裕福な家じゃないですよ。昔の事は知りませんけど。」  意外と素直な答えが返ってきて、俺はまじまじと雅也の顔を見てしまった。 俺を襲う様な素振りを見せたかと思えば、案外普通に話せるじゃないか。 「俺も今は独り暮らしさ。父は、.....尾道の父は一昨年亡くなって、それからは気楽なもんだ。」 「そうですか。......最近の事までは知りませんでした。大学時代の事は色々と耳に入ってましたけど。そっちは知らないでしょうけど、同じ大学ですよ。僕は建築学部。」 「え、......そうだったのか.....。なんか、.......変な感じだな。同じ空間に居たのに、別世界で生きてたみたいな感覚。なんて云ったらいいか.....。」 「別に、僕はアンタを気にしてた訳じゃないし。たまたま、......。」 「そうか.....」  同じ大学に席を置いていたと聞いて、とても親近感がわいた。 まあ、異母兄弟だし近しいと云えばその通りだが。 「雅也くんは料理とか出来る?」 「え?........どうしてですか?」 「いや、時間が不規則なら食事はどうしてるのかなって、ふと思って。」 「変な人ですね、アナタは。さっきまで僕の事睨みつけてましたよね?今はやけに親身になってくれてる。急に兄キの心境ですか?」 「.......まあ、そうかもしれない。俺の立場は更に複雑で、世間に公表したら一体なんて云われるのか知らないけど。でも、少なくともお前とは兄弟な訳で。ひとりじゃないって事がちょっと嬉しいんだ。」 「............へぇ、..........ホントに変な人だ。」  雅也がそう云いながら少し笑った気がした。 さっきまでのトゲトゲしさは少しだけ薄らいで、気が付けば俺は身構えることなくカレを見つめている。

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