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第23話 気がかり
風呂に入って出てくると、客間にいるはずの橋本が洗面所にいた。
「.....覗き?.....って訳ないか。」
そう云って裸のままバスタオルを腰に巻き付けると、橋本の前を通り過ぎようとする。
「和人、久しぶりにオレとどう?.....恋愛抜きで。」
その言葉に、一応立ち止まって橋本の顔を見る。
顎鬚を指で擦りながら、視線は相変わらずヤラシイ。俺の身体を値踏みするように眺めている。
「........お前が此処に住まないっていうんならいいけど?」
「なんでだよ、住むのとヤんのとどんな関係が?」
「此処に住むってやつとセックスしたら、毎日でもヤりそうじゃん。しかも、恋愛は無しってさ。もう、そういう行き当たりばったりなのは卒業したいんだ。」
橋本の残念そうな顔を見ながら云う。
「じゃあ、恋愛すりゃあいいって事?.....まあ、無くもないが、」
「いや、俺たちはとっくに終わってる。今更モトサヤに収まる程、お前も困ってないだろ?」
「......まあ、確かに、......和人よりは困ってないかな。」
困っている訳じゃないが、それは云わずに橋本の肩をポンと叩くと、自分の部屋へと戻った。
ひとり暮らしで、風呂に着替えを持ち込むのを忘れていたが、これからは気をつけなければ。
無理強いする男でなくて良かったが、確かにアイツの云う通り、俺は最近そういう欲を解消する相手がいない。母親の事で気持ち的にもちょっとナーバスになっていたし。
その内バーにでも行ってみようかな。
取り敢えず静かな夜を過ごすと、朝になって橋本は出て行った。
二日後に荷物を運び込むと云って、それまでに今ある荷物は別の部屋に持って行かなきゃならない。ちょっと面倒だが、まあ、仕方がない。
仕事の時間になる迄部屋の片づけをしながら不用品を集めていた。
父さんが亡くなって、暫く手付かずだった部屋も開けて掃除をする。
キレイにしているつもりでも、何処からかホコリは入り込んでいる様で、雑巾は結構汚れがついていた。
......この部屋でこんなに汚れるって事は、雅也の家の開かずの部屋はどんなものだろうか......
ちょっと想像したら怖いな。アイツ、絶対掃除とかしてないだろうし、......
やっぱり雅也の事が気になってしまう。
アニキずらすんなって云われそうだけど、兄弟としてはアイツの健康も気になるところ。
橋本に貸す部屋が綺麗になればなるほど、俺は雅也の事が気になっていく。
また此処へ来るだろうか?
仕事がら平日は時間が無さそうだし、休日はゆっくりしたいだろうしな、......
アイツもあの家を売って此処に住めばいいのに.........
そんな事まで考えてしまう。あのかび臭い淀んだ空気の漂う家で、雅也はどんな生活をしてきたんだろうか。思えば、母親が再婚して以来アイツはあそこで一人っきりだった訳だ。
今更になって、そんな雅也を不憫に思う俺だった。
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