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第26話 親戚と云ってしまった
夕方になって雅也の寝顔を覗きに行くと、気持ちよさそうに眠っているのでそっとドアを閉めた。今は寝かせてやる方がいいだろう。夕飯は起きたらでいいかと、取り敢えず冷蔵庫に仕舞う。
もう少し明日の準備をしておこうと、部屋に入った途端玄関の扉が開く音がして、慌てて俺は廊下を走る。
橋本が帰って来たんだ。アイツ、何も知らないから雅也を見てビックリするかもしれない。
「お、かえり。今日は早かったんだな」
「.....ああ、ただいま。....どうした?なんか慌ててる?」
俺の呼吸が乱れていたから不思議に思ったのか、そう訊かれた。
「あぁ、いや、.....実はおとうと、....えっと、親戚が来ててさ、ちょっと具合を悪くして寝てるんだ。俺の部屋に居るんだけど、静かにしてやってくれ。」
「親戚?.....珍しいな、まあいいけど。」
「ご飯、食べた?」
「ああ、今日は定時あがりだったから、同僚と食って来た。」
「そうか、......」
少しホッとすると、俺は雅也が寝ている部屋の隣に入って行く。
橋本は首を傾げながら、自分の部屋に入ると静かになった。
一応気を使ってくれたのか、まあ、子供じゃないから騒ぐ事もないが.....
生徒に配る問題を用意すると、もう一度雅也が眠る部屋に行った。
静かにドアを開けると、目を覚ました雅也がこちらを見る。
「あ、....どう?具合は」
「......だいぶ良くなりました。頭の痛いのは無くなったみたい。」
「そう、良かった。もし食べれるようなら少し腹に入れておくか?雑炊だけど....」
「......ありがとうございます。.....頂きます」
そう云うとベッドから上半身を起こす。でも、まだふらつく様なので、俺は傍に寄って肩を支えるとそのままでいる様に云った。
「此処に運ぶから、待ってろ。」
「え、でも、...」
「いいから、.....今日だけは甘えていいんだ。」
俺は部屋を出ると台所に向かう。雅也の顔色が少し良くなっている気がして、本当に良かったと思った。熱中症で命を落とす人もいるくらいだから、軽く済んだ方だろう。
トレイに雑炊の入った鍋とお茶を乗せると、また部屋に向かうが、丁度橋本が部屋から出てきた所に出くわす。
「あ、...なに、寝込んでるの?親戚の人。」
俺の手元を見てそう訊かれ、なんと答えようかと思案する。
「.......えーっと、.....熱中症みたいで。今夜だけ大事をとってるんだ。倒れたらひとり暮らしだから、危険だしな。」
「ああ、そうか。......熱中症、怖いもんな。お大事に。」
「うん、ありがと。じゃあ、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
橋本と始めた同居生活は、こんな具合でわりと互いに干渉しなくて、俺としては良かったと思う。期限もあるし、特に不都合は無いから家賃を払ってくれるのも有難い。
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