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第27話 少し近付けた?
俺が作った雑炊を 茶碗半分ほど食べた雅也。
お茶をがぶ飲みしてひと息つくと、こちらを見ながら頭を下げる。
「.....なに?」
「や、....なんか有難くて.....。今まで具合が悪くても、寝ているだけでやり過ごしてたから」
「....はは、まぁ、俺だってそうだったよ。独り者は仕方ないよな。あ、でもお前、彼女とか居たんじゃないの?」
見た目、雅也は童顔ではあってもかなり美形の男だと思う。女子が放っておかないだろう。
「.....高校の時には。....大学では建築の勉強が忙しくて、それにアルバイトで現場に行ったりしてたから.....、ひと月も付き合わないまま別れました。」
「.....あー、そうなのか.....」
ちょっと可哀想な気もするが、でもまあ、元々恋愛には興味がなさそうだし、と思った。
「和人さんこそ、.....恋人がいるんじゃないんですか?」
両手で空のコップを持ちながら訊かれ、俺はそっとコップを受け取ると「残念ながら。」とだけ云う。
大学を卒業して、社会人になった頃はまだ付き合っている男もいたが、学生気分が抜けた頃には仕事をこなすだけでいっぱいだった。
「もう食わないんだったら下げるけど、いい?」
「ぁ、はい。ごちそうさまでした。」
云いながら、また頭を下げる。
「いいって。こういう時は遠慮とか.....。それに、.....俺、兄貴だし、な。」
自分で云ってちょっと照れるが、中々いい気分だ。今までも兄弟のいる友人を羨ましいと思った事がある。懐いてくれる弟や妹がいるって、どんな気分だろうかと、想像するしかなかったが、今この状況になってみると、自分が頼もしい男になった気分だった。
「.....アニキ、って......。半年ですけど、ね。」
雅也が笑いを堪え乍らいう。まあ、確かに半年だけど.....。
「とにかく、ゆっくりしていればいいよ。あ、風呂はどうする?シャワーくらいなら出来るかな?」
「ええ、出来ればサッパリしたいです」
「じゃあ、着替え出して置く。あとで持ってくるから。」
「はい、ありがとう...」
「だから、遠慮すんなってーの。あと、敬語はやめようよ。それこそ半年違いだし、俺の事も和人って呼び捨てでいいからさ。な?」
「.....は、...うん。わかった。」
「よしよし、.....じゃあ、待ってて」
部屋を後にすると、トレイを持って台所に戻る足取りが軽くなる。雅也と近付けた気がして、俺はちょっと嬉しくなっていた。
着替えを出してやると、風呂場に案内してから俺は台所で片づけを始める。
......、そうだ、雅也に橋本の事を話してなかったな。急に他人が家にいたらビックリするだろうな。と思って、シャワーを終える頃風呂場に行った。
「雅也、もう出る?」
中の様子を伺いつつ、声を掛けた。
「あ、はい、もう出ます。」
そう云ってドアが開く。と、下着とハーフパンツ姿で上半身は裸のままの雅也が現れる。
「あ、」
ドキリとした。
前にも感じたが、雅也の身体は外見から想像できない程筋肉が綺麗についていて、その顔とのギャップにドキリとする。
胸筋は薄く盛り上がり、腹筋はキレイなシックスパック。
「...........あー、えーっと、云い忘れてたけどさ、いま、この家には居候が居て、友人なんだけど引っ越し先が見つかる迄って約束で住んでいるから。もし、夜中にトイレであっても驚かないでくれよな。」
「あ、そうなんですか。.....分かりました」
「敬語。」
「....わかった。驚かない様にするから。」
「うん、それだけ伝えたかった。俺はもう寝るから、お前もゆっくり寝て。」
「うん、......おやすみ」
「おやすみ」
廊下に戻ると、自分の胸を撫で下ろす。
雅也の半裸にドキドキするなんて、俺もそうとう溜まってんな.....。
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