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第4話

「ところで、鬼ヶ島ってどう行けばいいんだ?」  俺の言葉に二人もキョトンとする。  波の音を聞きながら途方に暮れる。水平線のずっと向こうに小指の爪くらいの大きさで見える島がきっと鬼ヶ島。けれど船は無い。波も荒いし、とても泳いでいけるような距離では無い。 「あぁー今日の船はもう全て出ちゃったのかぁ。戻ってくるのは夕方になるなぁ」 「友流、ダメだよ。鬼ヶ島へ行くのは禁止されてるんだ。お願いしたとしても断られるに決まってる」 「んじゃどうすればいいんだよー」  さて、どうしようか。  もぐもぐときび団子を頬張りながらキョロキョロと辺りを見渡していると、波打ち際でうずくまっている小鳥が目に入ったので、そちらに歩み寄った。死んではいない。細い脚に釣り針が絡まって血が滲んでいる。どうやら動けないようだ。  ハルヤと友流が二人で作戦を練っている間に、俺は一人、鳥の手当てをした。  針金を丁寧に取り除き、服の袖を破って怪我をしている箇所に巻きつける。そうすると、鳥は澄んだ目でじっと俺を見つめてから、腰に付けていた巾着袋を嘴で突いた。 「あぁ、お前も腹が減ってるのか。ちょっと待ってな」  食べやすいように団子を小さく割って、そっと口の中に入れてやる。鳥は一気にごくんと丸呑みし、急に羽を広げて空へ飛び立って行った。   「気をつけてなー」  二人のところに戻って、何かいい案は浮かんだかと問うが、まったく浮かんでいないと言う。  船が一つでも止まっていたらちょこっと拝借するのだが。あとはそうだな……さっきの鳥のように空を飛べたら……  ふと空を見上げると、一羽こちらに向かって飛んでくるのが見えた。「ケーンケーン」という鳴き声と共に、風を受けて大きく旋回しながらその高度を下げてくる。  近づくにつれ、その大きさに度肝を抜いた。巨大な鳥だ。俺が両手いっぱいに広げても足りないくらいの大きさ。  ずだんっ!と目の前に着地した全身緑色の鳥は、黄色い目をギョロリと動かして、俺に向かって頭を少し下げた。 『わたくしの息子を助けて頂いて、ありがとうございます。お礼に何か差し上げたいのですが』  えっ、喋ったわこの鳥。なんだか無駄にソプラノのうっとりするいい声。  友流とハルヤは抱きつきあって、完全に怯えて俺たちを見ている。なんとなく話の流れが分かった俺は、鳥の胴体を見てニヤリとし、鬼ヶ島の方を指差した。 「俺たちを、あの島に連れて行って欲しいんだが」 『承知致しました』    鳥は雉だという。  三人でその背中にしがみつき、一気に鬼ヶ島まで飛んでいった。

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