4 / 100
第4話 想いの果て ①
康太が時空を切り裂くと見慣れた閻魔の邸宅の庭が見えた
康太は時空の先に踏み出した
すると閻魔が康太を待っていた
「我が弟、炎帝よ!
今日は何の用事で来たのですか?」
用がなければ来ないのが前提の台詞に康太は苦笑した
「魔界には用はねぇんだけどな
これが一番早いからな!」
康太はそう言い笑った
「水神に逢われるのですか?」
「おう!女神はいねぇかんな!
水神に逢わねぇと話は出来ねぇもんよー」
「………水神は……誰も寄せ付けぬ……」
だから入れるか解らない……と言う
康太は首を傾げた
「………逢わねぇなら正常な役割してねぇじゃんか!」
「そう……出来てないのです……」
「兄者、水神に逢って来るわ
またな!水神に逢ったらそのまま還る」
「還りに寄りなさい
お前達2人に渡すモノがあります」
「解った!なら帰りに寄るな
青龍、龍になって俺を湖まで連れて行け」
「解りました。
君の愛して止まない龍になります」
榊原は龍に姿を変えた
康太はその鱗を愛しそうに見つめた
「赤龍、おめぇ慎一を乗せて来い
蒼い龍はオレのだかんな!乗せたくねぇ」
「……そう言う奴だわな!おめぇはよぉ」
一生は赤い龍に姿を変えた
そして龍が「慎一乗れよ」と喋った
慎一は苦笑した……
此処は……ファンタジーの世界ですか?
と問い掛けたくなった
青龍は水神の湖に向かって飛んだ
赤龍はその後を追い掛けた
背中の慎一に「摑まってねぇと落ちるぜ」と注意をするのを忘れなかった
「龍って乗り心地良い訳じゃないんですね…」
慎一の台詞に赤龍は笑った
「龍に乗りたがるのは炎帝位なもんだろ?
見たか?あのうっとりした瞳
あいつは青龍の鱗一枚愛してるんだ
だから語り出すと止まらねぇのな」
喋り口調は一生だが…何だか調子が狂う
「一生、君は龍なんですね?
なら伊織と何かの関係を持ってるのですか?」
「青龍は我が弟
我等は四龍の四兄弟になる!
この前白馬で現れた男、覚えるか?」
嵐と共に姿を現した男……は覚えていた
「……あぁ、覚えている」
「アイツが四龍の長男だ
二男が俺で、三男が青龍、四男が地龍
俺らは兄弟なんだ……」
「そうなんですか……」
あの絶対の信頼感は兄弟なればこそ……なのだろう
「でもな今世は炎帝は伊織の記憶は封印した
俺等と出逢った時…伊織は覚えてはいなかった
記憶を無くしてもアイツは青龍で笑えたな
変わらねぇんだよアイツは……」
赤龍の弟を想う愛が伝わる
慎一は黙ってその言葉を聞いていた
青龍は水神の湖に炎帝を下ろし、元のカタチに姿を変えた
水神は炎帝の姿を見ると……
「何をしに参ったのだ」
と突き放した言葉を投げ掛けた
「誰も寄せ付けてねぇって?
なら此処にいる必要はねぇぞ!」
炎帝はキッパリ言い捨てた
水神は調子が悪い風だった
顔色……元々蒼白いが……深みを増していた
炎帝は水神の前まで行くと抱き締めた
「体調が悪いのかよ?」
水神の体に炎帝の温もりが……伝わる
頑なな水神の心が……その温もりに浸食される
「………湖を汚す奴が増えて……
浄化も出来なくなった……
我は汚れた水には住めぬ……」
炎帝は湖に目を向けた
プカプカとゴミが浮いていた
「………誰が?こんな事は一度もなかったぞ?」
「………解らぬ……我の力も弱って来た」
今まで湖は気楽に行ける場所ではなかった
それが代替えして行き来出来る状態になった
遊びで来る輩も増えて観光スポットと化しているのは否めなかった
「少し待ってろ!」
炎帝はそう言うと青龍に
「青龍、湖に入って掻き回してくれ!
オレは昇華の焔でこの地を浄化する」
青龍は龍に姿を変えて
「では掻き回して来ます
本当なら、僕は君の中しか掻き回したいくはないんですがね!」
炎帝は頬を染めて……「……青龍…」と呼んだ
龍の口先が炎帝に口吻を落とす
それはそれでホラーかも……
普通なら逃げ出すのに……炎帝は幸せそうに笑っていた
あれが本来の2人なのか……と慎一は納得した
青龍は空高く舞い上がると、湖に向けて突き進んだ
湖の中を掻き回し、グルグル回る
沈殿した汚れが上へと浮上する
かなりの汚れだった……青龍は辟易した
炎帝は湖を昇華の焔で染めた
青龍は昇華の焔の中で顔を出していた
昇華の焔は湖を浄化した
メラメラ燃え上がり強い焔に包まれ浄化されてゆく
青龍は口から焔を吐き出して啼いた
赤龍はそれを黙って見ていた
神々の契りは力の継承
青龍が火焔の焔を吐いたとしても、不思議ではなかった
心底愛し合う心が力を継承させるのだ
一生の……赤龍の中にも女神の力は継承されていた
だから誰よりも濃く流生はその血を受け継いで生まれた
焔が沈下すると青龍は湖に潜り確認をした
そして湖から出ると天高く舞い上がり、地に下りた
「………体躯が汚れました……」
青龍は人のカタチに戻るとボヤいた
「家に帰ったら洗ってやるかんな」
青龍は嬉しそうに炎帝を抱き締めると
「ちゃんと全部洗って下さいね」と念を押した
炎帝は水神の体躯を球体で包むとポンッと湖の方に押し出した
球体は軽々と湖の方まで飛んで行き中央で止まった
「そこなら少しは楽だろ?」
「炎帝……悪かった……」
「湖はやっぱさ、結界を張っておく
気軽に汚されたら本来の役目が滞るかんな」
水神は少し楽になったのか……
「では本来の用件を聞こうか?」
と切り出した
「来年……受け入れて貰いたい人の子がいる
その人の子に龍の寿命分の寿命を分け与え受け入れて欲しい」
「了承した!お前の願い必ずや叶える」
「頼むな!
本来の夏海はまだこの地に降りたってはおらぬ
夏海はまだ黄泉を渡ってはおらぬ」
「金龍を産む為に存在させてるのであろう?
なれば、本体が来ねば話しにはならぬな」
「四龍が……嫌……龍の眷族の危機だったからな…
地龍が虹龍をこの世に出したかんな……
狂ってしまった……
早めに手を打たねぇと存続に関わった
強い龍が出ると……他の龍は出ねぇかんな
四龍の存続、金龍の存続……それは欠かせねぇかんな……
夏海の本体が来たなら融合させてくれ!
それでより強い次代の金龍を産む」
「承知した」
「これから我が夫青龍が結界を張る
そしたら気軽に来ようと言う輩はいなくなる
と、言う事で青龍、堅苦しい……息苦しい結界を張ってきてくれねぇか?」
法皇青龍になるべく器の張る結界なれば、恐れ多くて気安く近付く輩は減るだろう
「本当に人使いの荒い妻ですね……
解りました!僕の堅苦しい、息苦しい結界でこの地を包み込んでみせましょう!」
青龍は両手を広げると呪文を唱えた
蒼い銀糸が湖を包みこみ刻まれてゆく
青龍は結界も美しかった
炎帝は惚れ惚れとその様子を見ていた
堅苦しい、息苦しい空間に普通の魔族ならば……敬遠する
それをうっとりした瞳で見つめれるのは……
魔界広しと謂えども炎帝しかいなかった
赤龍でさえ……近寄りたくない……と思ってしまう
弟なのに……堅苦しい息苦しい……青龍相手では引いてしまう
結界を張り終わって青龍は炎帝を抱き締めた
炎帝は「これで気安く来ようぜ!と言う奴はいなくなるだろ?」と笑った
水神は「助かった……調子が悪くて……本来の業務が出来なかった……」と弱音を吐いた
「水神頼むな」
「あぁ。任しておいてくれ!」
「ならな、水神。またな」
「次は……ちゃんとした姿を見せれる」
炎帝は笑った
青龍は龍に姿を変えて炎帝に頭を差し出した
炎帝はその頭に乗り込み角に摑まった
炎帝は青龍の角に口吻を落とした
「………炎帝……角はダメです……」
龍の性感帯が詰まった角に口吻なんてとんでもなかった
「そっか角は性感帯か?」
「……そうです」
「青龍は鱗一枚取っても綺麗だかんな
ついつい触っちまう……
角も綺麗だ……全部オレのだかんな!」
「ええ。全部君のです
でも龍のまま犯されたくないなら……
角に悪戯するのは辞めて下さいね」
龍のまま……炎帝は言葉を失った
「………流石と壊れる……」
「………恐くないのですか?」
「あんでオレが青龍を恐がるんだよ?」
「普通……龍の姿のまま……は遠慮されますよ?」
同じ龍族ならいざ知らず……
「オレは青龍の全部に惚れてるかんな
龍の姿のままでも構わねぇぜ
でもな……挿れる時は……何時ものカタチが良いな
龍の……それはデカ過ぎる……オレは壊れちまう…」
「もぉ!押し倒したい!」
龍が吼えた!
赤龍が「おいおい!今夜のうちに帰りてぇんだ」と止めた
物凄いスピードで龍が駈けると、あっという間に閻魔の邸宅に着いた
青龍は閻魔の邸宅の庭に炎帝を下ろした
そっと首を地に着け炎帝を下ろすと、青龍は元のカタチに戻った
眼は金色のままだった
爬虫類特有の瞳をしたままだった
閻魔は炎帝を待っていた
そして小箱を炎帝に差し出した
閻魔はニコッと笑って
「開けてみろ」と言った
炎帝はそっと小箱を開けた
そこには……閻魔が継ぐ筈の妻夫(めおと)のリングが入っていた
「これは兄者夫婦のだろうが!」
炎帝は兄に小箱を突き返した
「お前達夫婦が持つのが相応しい!
お前達は誰もが認めた夫婦だ
そのリングは人の世を終えても消えたりはせぬ
そのリングは主を選ぶ
一度嵌まったのなら、その魂が消滅するまで主と共に過ごす
お前達夫婦こそ相応しいリングだ」
そう言い閻魔は小箱からリングを取ると青龍の左手の薬指にはめた
そして炎帝の薬指にも嵌めると閻魔は笑った
「未来永劫、お前達夫婦は共に在れ!」
青龍は閻魔に深々と頭を下げた
炎帝は兄に抱き着いた
「………兄者は本当に甘過ぎる……」
「我はそのリングに選ばれなかった……
父者も母上も……嵌めてはおらぬ
皇帝閻魔の忘れ形見は……やはりお前を選ぶ」
その指に光り輝く黄金の指輪があった
「その指輪は一度嵌めたら抜けぬ……」
閻魔はそう言い笑った
「………オレ等は目立つだろ?」
人の世に生きるモノが……男同士で揃いの指輪は……目立ち過ぎる
「僕は構いません」
「ならオレも構わねぇよ!」
閻魔は共に逝け……と笑顔を向けると時空を切り裂いた
「兄は何時もお前達夫婦を見守っておる!」
弟の幸せだけを願っている……
「……兄者、またな」
炎帝は兄に背を向け時空を超えた
青龍も赤龍も慎一も時空を超えた
「兄者、この者は来世の炎帝に仕える執事だ」
炎帝は慎一の肩に手を掛け兄にそう言った
「それは心強い!待っておるぞ」
閻魔が手を上げ、炎帝に微笑むと時空は閉じた
そこは飛鳥井の康太達のリビングだった
康太はソファーにドカッと座ると
「伊織、飯食ってからで良いか?」
と尋ねた
「構いませんよ
君が綺麗に洗ってくれるのなら待ちます」
「愛を込めて洗うかんな!
青龍を汚い湖に潜らせた……
オレの青龍なのに…汚したかんな……」
「君が洗ってくれるなら構いません
ちゃんと洗って下さいね」
榊原は康太の耳元で「……君に使うアソコもですよ」と囁いた
康太は顔を真っ赤にして頷いた
「……全部洗う……」
榊原は健気な康太を抱き締めた
慎一と一生がキッチンに出向き食料を調達してくる
そしてテーブルに並べると慎一はお茶を淹れた
腹を満たし、一息着くと、康太は立ち上がった
「伊織を洗って来る」
一生は康太に手をふった
慎一は「片付けておきます」と言い片付けを始めた
榊原は康太を促し寝室に入ると鍵を掛けた
バスルームまで向かい、脱衣所で服を脱いだ
康太も服を脱ぐと、榊原を促して浴室に入った
シャワーの下に立って体躯を濡らす
康太はシャワーを止めると浴室の床に榊原を座らせた
スポンジにボディーソープを付けて榊原を擦る
綺麗に康太に洗って貰う
時折、悪戯な手が伸びて来て康太を触る
康太の股間は立ち上がっていた
それを隠す様に榊原の背中を洗っていた
ちゃんと勃起した性器も綺麗に洗った
体躯をシャワーで流すと次は頭
康太は「目を瞑ってろよ」と言うとシャワーで濡らし
シャンプーで洗った
榊原の前に立ち、必死で洗う康太の姿が愛しかった
榊原は目の前の康太を舐めた
大人しく項垂れてる性器に口吻ると……康太の性器は勃ち上がった
「伊織……あと少し……」
「僕も君を洗ってあげます」
大人しく康太に洗われてた榊原がお湯で流すと康太を引き寄せた
体躯に榊原の熱く滾る肉棒が当たっていた
ボディーソープを手に取ると榊原は、康太の体躯を洗い始めた
ヌルヌルと……榊原の悪戯な手が康太を撫で回す
ツンと尖った乳首をヌルヌルの手で触ると、康太の体躯は跳ね上がった
「……ゃ……伊織……逆上せる……」
「穴だけ洗わせて……そしたらベッドで抱いてあげます」
そう言い榊原は康太のお尻の穴に触れた
ヌルヌルの指を挿し込むと康太は体躯を震わせた
指を増やしてゆく
榊原は康太の脚を抱えると浴室の鏡に康太の穴を映し出した
「康太、見て?」
康太は目の前を見た
すると榊原に抱えられ……脚を広げる姿が映し出されていた
康太は抗った
「ちゃんと見て……」
「……ゃ……伊織……」
「君の下のお口がいかに僕を欲しがってるか見なさい」
康太は鏡を見た
康太のお尻の穴は榊原の指を2本咥えていた
榊原の指を……美味しそうに食べて……
蠢いていた
榊原は指を増やした
両手で康太の蕾を開き……蠢く紅く煽動する腸壁を見せるかの様に開いた
「ココ……足らないみたいですよ?」
「………伊織……ゃ……」
グニャッと指を折り曲げ奥を引っ掻くと康太は仰け反った
「ベッドで僕を食べなさい」
榊原は康太をシャワーで流すと、自分の体躯も流して康太を抱き上げた
濡れたままベッドに縺れ込んだ
ベッドの上で縺れ合い……互いを激しく抱き締めた
榊原は康太の尖った乳首を吸った
執拗に吸い、お尻の穴を解した
康太の脚を開くと紅く口を開いた肛門に吸い付いた
チュパッ……と言う音が部屋に響き渡る
ピチャッ……
グチュ………
湿った音に康太は鳴いて喘いだ
「はぁん……伊織……もぉ……」
脚がシーツを蹴る……
苦しくて……
足らなくて……
訴える
だが榊原は聞いてくれない
好きなだけ康太のお尻の穴を舐めて吸い付いていた
「伊織……欲しい……あぁん……足らない……」
榊原の勃起した肉棒は上を向き……蜜を溢れさせて訴えていた
血管を浮きだし……限界を訴えているのに……
耐えて康太を舐めていた
「康太……康太……食べたいですか?」
「食べたい……」
榊原は康太の唇を撫でながら
「どちらのお口に所望ですか?」
と問い掛けた
「下のお口……伊織が欲しくて……止まれねぇ…」
「では挿れてあげます」
榊原は康太の脚を押し曲げるとお尻を高く突き出させた
榊原の肉棒が康太の穴に潜り込む
何時も挿れているが、やはり挿入はキツいものがある
圧迫感が康太を襲う
たが、体躯は知っている
この圧迫感を過ぎた後にもたらす快感を覚えて震えた
ゆっくりと榊原は康太の中へ挿入した
根元まで挿入すると、康太の体躯が異物を受け入れるまで動かないでいた
暫くすると康太の腸壁が蠢く
榊原を締め付けキュッキュッと締め上げる
それが合図だった
「動きますよ?」
康太は頷き榊原の背中を抱き締めた
榊原の首をチュッと吸い上げ康太も所有権の主張をする
愛する男を誰にも渡しはしない
「……あぁん……うんっ……気持ちイイっ……」
榊原の腰に脚を巻き付け康太は喘いだ
「僕も気持ちイイです……康太が僕を離さない……」
「離したくねぇかんな!
お前はオレのもんだ……ぁぁ……イッちまう……」
「イキなさい……僕もイキます……っ……ぅ……」
榊原は康太の中に総て吐き出した
康太は腸壁にかかる熱い飛沫に身を震わせた
髪の毛一本だって……
精液の一滴だって……
総てオレのだ……
康太は榊原を抱き締めた
終わらない情交に……互いを求め
互いを与え続けた
夜が明けて……日が高くなっても……榊原は康太を抱き続けた
そして気絶した康太を浴室に連れて行くと
綺麗に体躯を洗った
浴室から出ると髪を乾かし、支度をする
榊原は眠った康太の支度をし、リビングのソファーに寝かせた
そしてベッドのシーツを剥がすと洗濯機に突っ込んだ
洗濯をし、掃除をする
康太の歩くであろう場所は特に念入りに掃除をして
磨きあげる
一生はリビングに顔を出すと、康太は寝ていた
一生は苦笑した
髪を撫でていると康太は目を醒ました
「一生……」
「気絶してたのかよ?」
「………みてぇだな……」
康太はコキコキと首を回した
「オレは伊織なら龍のままでもエッチ出来る
その姿が青龍ならば、オレはそれだけで受け入れられる」
「………何となく惚気てる?」
「おう!解ったか?」
「もうじき12月だな……」
「おう………運命の歯車は回り出した
もう後戻りは出来ねぇ……」
一生は康太の頭を抱えて引き寄せた
「………苦しむな……おめぇが決めた定めじゃねぇ」
「………一生……」
「おめぇはしてやれる総てで見送ってやる覚悟なんだろ?
それがおめぇだからな、だから哀しまなくて良い
おめぇの苦しみや哀しみは俺等も抱える
だから一人で抱えようとしなくて良い……」
「一生……」
「お前は旦那の腕の中で笑ってろ!
そしたら俺等も安心してられる」
康太は頷いた
榊原がリビングに顔を出すと一生がいた
「康太、腹減りでしょ?
一生にキッチンに連れて行って貰いなさい
後で病院に行きますよ!
慎一と一生と源右衛門も連れて行かねばなりませんからね
一生、薬はちゃんと飲んでますか?」
「……飯食ったら慎一に飲まされてる」
「なら良いです
君は無理しすぎなんです!
少しは自分の体躯も労ってあげなさい」
榊原はそう言い掃除に戻った
一生は康太を抱き上げるとキッチンに向かった
「……痛い所を突くのは昔からか…」
一生はボソッと呟いた
「おめぇが無理するからだろ?」
「………気を付ける……今回置いて行かれて本当に自分を殴り倒したくなった
今後は健康に気を付けて日々過ごす!」
一生は言い切った
康太は笑った
キッチンの椅子に康太を座らせると一生は支度をしようとした……が、
慎一に「君も座りなさい」と言われて席に着いた
「康太、今日は消毒に行って体躯の方の検査もしないとダメですよ」
「………検査……は良い……」
血を採られたり……あんなことやこんなことをされたくない
「駄目です!予約を入れてあります
勿論、一生も源右衛門もです!」
…………鬼……
いつの間にか慎一は鬼と化していた
容赦のない事をやる
康太は………鬼………と呟いた
慎一は「鬼は伊織でしょ?」と躱した
一生は榊原が聞いてなくて良かった……と胸をなで下ろした
皆が食事を終える頃榊原がやって来て、食事を始めた
康太はお茶を啜っていた
そして、そーっと立ち上がり逃げだそうとした
榊原の腕が伸びて来て、あっさりと捕獲された
膝の上に乗せられ逃げ出せもせず……康太は諦めた
榊原が食事を終えると有無を言わせず無言の圧力で……
源右衛門を促し、一生と慎一を連れて地下の駐車場へと向かった
飛鳥井の主治医の病院へゆく
診察を入れると康太は検査で呼ばれた
源右衛門も一生も検査で呼ばれ
慎一は傷の消毒をされた
それをやってのけるのは……久遠医師だった
チクッと注射器を刺され……康太は涙目で榊原を見た
胸をはだけて聴診器を当てると爆笑された
「また、すげぇキスマークだな!」
と言われて康太は顔を赤らめた
「額の傷はもう大丈夫だが、内蔵の粘膜が毒を食らってた後遺症で極端に薄い……
最近内蔵が軋んだりしねぇか?」
「………時々……」
「胃の粘膜が直ぐに弱るからな……定期的な検査と診察は欠かすな」
康太に変わって榊原が「解りました!」と返事した
「何かあれば血を吐く事になる……
今はそれ程に内蔵が弱ってるな……
あまり良い数値ではないな」
「………康太はそれでも逝きます…」
「だろうな。薬を出しとく
何かあれば電話をして来い
駆けつけてやるからな!」
榊原は「お願いします」と礼を言った
「総合病院に行っても、もう俺はいねぇからな
何かあったら、こっちに来い!」
「…………義恭先生は?」
康太は榊原の手を引っ張った
そして首をふった……
聞くなと言う事だった
「解りました!何かありましたらお電話します
本当に久遠先生にはお世話になります」
「伴侶殿、お前も検査を受けて行け!
お前に何かあれば……康太は正気ではいられねぇだろ?
一番体躯に気をつけねぇといけねぇとのはおめぇだな」
久遠は笑った
榊原は観念して「ではお願いします」と検査を入れた
午前中一杯かけて検査して、榊原もヘロヘロになった
夜通し康太と愛し合った体躯が重い……
榊原は康太達を飛鳥井の家に送り届けると、慎一にお昼を頼み、着替えに行った
会社に行くべきスーツに着替える
「午後から君は何をしてますか?」
「今日は大和に出向く
緑川の厩舎が建つ地に降りたって
果てを詠むつもりだ
それを悠太に引かせる」
「誰を連れて行きますか?」
「慎一と一生。聡一郎は他の仕事を頼んでる
隼人は仕事だ!当分帰れねぇと想う
隼人もニューヨークだかんな!」
「ならそのままで行きますか?」
「おう!構わねぇだろ?
お前が着せてくれる前は桜林のジャージで出掛けてたかんな!
制服は便利だったな
着替える手間がなかったかんな!」
康太は笑った
榊原は目眩を覚えた
昼を取り榊原は下へと下りて行った
康太に何度も「何かあったら電話をして来なさい」と告げて……執拗な接吻を送り……出勤して行った
一生は出向くか?と問い掛けた
慎一が車の鍵を持つ
源右衛門は部屋へと帰ると、康太達は家を後にした
大和に向かい、トナミ海運の倉庫跡地に立つ
そこは新地になっていた
紫雲龍騎が、この地に立ち地鎮祭をしたばかりだった
この地の果てを詠む
栄華の痕跡の遺るこの地に緑川ファームを造る
一生も慎一も緑川は要らない……と申し出た
『この地はもう親父の地じゃねぇ…
だから緑川は使わなくて良い……』
と、あの兄弟は言った
この地でサラブレッドを創るファームを創る
だが、その名は緑川ファームでなくて良い……と。
「12月になったら工事に入る」
「あぁ。お前が用意してくれるステージを無駄にする事なく俺等は精進する」
一生が言うと慎一も
「トップを駆けて行ける馬を作ります!」
と康太に言った
「やっとこさ、此処まで漕ぎ着けたな…」
康太は呟いた
「まだ先は長ぇよ……立ち止まれねぇ…」
「ええ…まだ初歩を踏み出す一歩しかないです」
一生と慎一の言葉に康太は笑った
康太は指差した
「この地を継ぐのは北斗!
お前等は北斗に繋げて遺さねばならねぇ」
「北斗は血の繋がりはねぇけどな
俺の子だ!誰よりも愛して可愛がる」
慎一は一生の肩を抱いた
「お前の子も康太の子も誰もが愛して育ててゆく
この地を継ぐのは北斗ならば、俺も遺して逝かねばならない
絶対のモノを北斗に教え繋げて行こう」
慎一の存在が……やはり心強かった
一生は果てを見て……
人の世を後悔なく終えると心に誓う
慎一も主と共に……その想いが果てへと続いた
共に在りたいと願っていた
でも無理だから人の世で精一杯康太に尽くす覚悟だった
………康太はそんな慎一の想いを知っていたのだ
そして果ての約束もしてくれた
ずっと仕えていて良いと約束もしてくれた
ならば人の世を後悔なく送らねば……
康太に還す為に……尽くさねば……
心に決めた
大和の地を後すると、康太は飛鳥井の家に戻って来た
すると地下駐車場には神野の車が停まっていた
康太は車から下りると神野の車に近寄った
「晟雅、退院して良いって言われたのかよ?」
「ええ。久遠先生は総合病院はお辞めになられました
飛鳥井の病院へ移られたので、そちらで診てやると仰って下さったので退院しました」
「まぁ、家に来いよ!」
康太は神野と小鳥遊を連れてエレベーターに乗り込んだ
康太は途中の6階でエレベーターを下りた
一生と慎一は何も言わず7階へと向かった
康太は副社長室のドアをノックしてドアを開けた
ドアから顔を出す康太を見て榊原は安心した
ドアに向かい康太を引き寄せドアを閉めた
ソファーに座ると康太を膝の上に乗せた
「伊織、神野と小鳥遊が退院して下にいた」
「………神野は歩けてました?」
「松葉杖着いてたな……」
「そうですか……」
「オレはもう出る事はねぇかんな」
「怠くない?」
榊原は康太の耳に囁いた
「怠いに決まってるやん
今もお前が挟まってる感じが抜けねぇのに……」
「切れてない?」
「切れてはいねぇよ…
痛いんじゃねぇ……挟まってる感じ」
「流石と夜通し康太を抱いていたので今夜は大人しく寝ます…」
「ん。オレも眠い…」
「僕の腕の中で寝かせてやりたいのですが……」
仕事があった
康太は笑って立ち上がると
「夜まで我慢してるから良い」
と笑った
「何処か行くなら電話をして……ね?」
「解ってる!」
康太はそう言い副社長室を出て行った
榊原は康太を見送り……
離れたくない気分になる
本当なら離したくない
真贋の仕事も入れねばならない
本当は………危ない場所に送り出したくなんかない……
でも飛鳥井家真贋として……生きてく上で……
それは出来ない…
ともだちにシェアしよう!