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第5話 想いの果て ②

副社長室を後にすると康太は自宅へと向かった 応接室には神野達が座っていた 神野は康太の顔を見ると深々と頭を下げた 「本当に悪かった康太!」 「何がだよ?」 康太は笑った 「お前に怪我をさせた 俺達のいない間、真野がお前の命令で仕事をしていた だから俺達が不在でも…会社は回っていた 本当にありがとう康太!」 「晟雅、オレは笙の結婚報告には出ねぇ 披露宴にも出ねぇと決めている だが記者会見を開かねぇと笙のスキャンダルが出されるぞ そしたら面白おかしく書かれる それでなくてもタレントは結婚するとファンが逃げてく場合もある 早く手を打たねぇと取り返しが着かなくなるぜ」 「力哉を貸し出してくれてますよね? 力哉が記者会見を取り仕切って今夜開いてくれます 会見には俺も出席します!」 「そうか。なら大丈夫だな」 「康太には何から何まで世話になった……」 「気にするな! そのうち徴収に行くかんな!」 康太はそう言い笑った 神野は康太の、好きなモノを慎一に頼みデリバリを取らさせた せめてもの気持ちだった そしてデリバリが届くとお金を支払い帰って行った 康太がため息を着くと胸ポケットが震えた 康太は電話に出た 「あんだよ?オレは疲れてるんだ」 『あの日、お宅に伺ったら君はいませんでした! 元気な顔を見せて……ねっ?康太……』 栗田からだった 今夜来いよ……と言っておいて…大阪に旅立った 「一生に向かいに行かせる上がって来いよ」 栗田は解りました!と言い電話を切った 一生は栗田を迎えに行くべき5階に向かった 非常階段の鍵を開けて5階に向かう 一生が5階の非常階段のドアを空けると栗田は待ち構えていた 「一生、悪かった…」 栗田は一生と共に非常階段のドアを潜った 一生はドアに鍵を掛けて上へと向かう 7階の非常階段のドアを開けると、同じ様にドアの鍵を掛けた そして飛鳥井の家の玄関のドアを開ける オートロックだからドアが閉まると鍵が自動的に掛けられてしまう 栗田を応接室に迎え入れ、一生はお茶を淹れに行った 慎一が一生を手伝いに立つ 栗田は康太に「………慎一 刺されませんでした?」と尋ねた 「おう、オレを庇って刺された」 「………寝てなくて良いのですか?」 栗田が尋ねると、お茶を持って来た慎一が 「主から目を離す方が傷が悪化するのです」と説明した 栗田は言葉を失った 気を取り直して康太に 「傷は?」と尋ねた 「女じゃねぇかんな傷は気にしてねぇよ」 額だから……頭なら気にする 禿げてしまったら榊原に嫌われないか……気にする やはり……可愛い姿を愛して貰いたい 康太の拘りだった 「元気そうで安心しました……」 「飛鳥井家真贋の死亡説も流れたかんな! 現場は大変だよな……下請けに総スッカン食らわされたしな……」 「………気付いておいでだったのですね……」 「執拗に命を狙われた…… 大阪に着いた日は部屋に火炎瓶だぜ…… 落ち落ち寝てられねぇじゃんか 片付けねぇと……こっちの息の根を止められちまうからな…反撃に出た」 「………下請けは戻って参りました…… それどころか……新しい新規の参入したいと申し出る下請け業者もいて……かなり入れ替えました 一度見切った業者を使う気はなかったので変えました 良い機会でした! 心機一転飛鳥井は走り出しています」 「そうか。それは良かった」 「君に結婚祝いを渡したかったのです」 「……オレに?」 「そうです。」 栗田はそう言い胸ポケットから小箱を取り出した 「あんだよ?これは?」 「揃いのカフスです! 創らせるのに半年掛けました」 栗田は康太を膝の上に抱き上げると取り出した 「伊織とお揃いです」 カフスを触る康太の薬指には指輪が施されていた 「これは結婚指輪ですか?」 「そうだ。ぜってぃに取れねぇ指輪を嵌められた」 「誰にですか?」 「………兄者……」 康太は呟いた よく見れば……何の素材で出来ているのか?と想う輝きだった 康太は栗田のくれたカフスを手にとって見ていた 深い蒼の石を使ったカフスは光り輝いていた 「……青龍の蒼だ……」 康太は嬉しそうに呟いた 「一夫、ありがとう」 「気に入って貰えて嬉しいです」 栗田はそう言い康太を抱き締めた 栗田は康太の無事を確認すると帰って行った 「疲れたぁ……魔界の強行軍は疲れるな……」 「あれから旦那にも食われたんだろ?」 「おう!風呂場で洗ってる最中に手を出されてな ベッドに移って朝まで……だぜ もぉな……眠っちまうかもな……」 康太はソファーに寝そべった 「康太、寝るなら寝室に行きなさい」 慎一の声が聞こえる だが意識が遠くなり……眠りに落ちた 眠った康太の胸ポケットが震える 慎一は変わりに携帯に出た 「はい。」 康太じゃない声に…… 『誰?』と尋ねられた 「緑川慎一です」 『これから伺いたいんだけど?構わないかな?』 「ええ。康太は今、応接室で寝ています 貴方が来たなら起こせば良いのです」 と、答えた 『………慎一。起こしておいて下さい 私が康太は起こせません……』 「では三木さんがおみえになる前には起こしておきます」 『……頼みますね。 今国会を出る所なので少し時間が掛かります』 「お待ちしております」 慎一は、そう言い携帯を切った 慎一は夕飯の準備に向かった 玲香に変わり最近は慎一が下拵えをしていた 帰って来た玲香が直ぐに調理出来やすい様に買い物をして下拵えをする 飛鳥井の生活費はキッチンの戸棚に入っていた 玲香は慎一に置き場所を教えた そして慎一にお買い物を頼むまでになっていた 今日はスーパーの特売だけど、三木が来るしな と、ある材料で下拵えをする 明日は買い物しないとな…… 主婦顔負けの遣り繰り上手だった お茶の用意もして、やはり買い物に行こうと決めた 慎一は一生を起こした 「一生、俺は買い物に行くから 三木が来たら迎えに行ってくれ!」 「……え?三木?いつ来るのよ?」 「もうじき来ると想う 俺はやはり買い物に行く! 今日なら玉子が30円安い! 頼めるか?」 一生は苦笑して「解った!」と引き受けた 慎一が飛鳥井を出て行くと、一生は三木にメールを打った 『飛鳥井の家に近付いたら電話くれ 俺が迎えに行くからな!一生』 と打ってメールを送信 暫くすると三木から電話が入った 『マンションの下に着いた』 「なら今迎えに行くわ」 と言い一生は電話を切った 「康太、康太!」 一生が康太を起こす 「………ん?一生犯るのか?」 一生は言葉をなくした 「犯るのか?……旦那が聞いてたら殺されますがな……」 一生は身震いした 「康太!起きやがれ!」 「起きた!」 「三木を迎えに行くからな!寝るなよ!」 「おう!寝ねぇ!」 一生は飛鳥井の家を出て地下駐車場まで迎えに行った 地下駐車場には三木が車から出て待っていた 「悪い待たせた……中々起きねぇからな……」 「まだ、寝てた?」 「起こした」 一生は三木と共にエレベーターに乗り込んだそして鍵穴にキーを差し込むと最上階を押した 「康太は?元気だった?」 「旦那に愛され過ぎで疲れてた 一晩中だからな……身が持たねぇわな」 「……新婚だからね」 「暮らし始めて2年立つ新婚な」 「あの二人は何年経っても新婚だろ? またそうあって欲しい……」 三木の願いだったから…… 飛鳥井の家へ招かれて応接室に入ると康太は起きていた 「繁雄、どうしたよ?」 「記者会見……見ました……」 「……おめぇが出たかったのにな…焦れったかったか?」 「……ええ!君の記者会見なら一番に駆け付けます なのに……何故?堂嶋ですか? 君が堂嶋を知ってるだけでも……驚きでした 記者会見の場を設定する程…親しかったのですか?」 「繁雄、オレの議員はおめぇだけだ! 正義には貴史を預かって貰っているかんな」 「……康太……焦れったかったです」 三木は康太を抱き締めた 「慎一は?刺されたんですよね?」 「おう!オレを庇って刺された」 「入院してなくて大丈夫なのですか?」 「本人が離れる気は皆無だ……仕方がねぇだろ?」 康太は苦笑した 「今度美味しい料理をご馳走します それと結婚祝い、当日に渡せなかったので持って来ました」 三木は康太に小箱を渡した 「あんだよ?」 「箱を開けてみて…」 箱の中には……綺麗な石が輝いていた 「マリッジピアスです 0.2Carat、ブリリアントcutです! 本当は2Carat6.5㎜位贈りたかったのですが 目立ちすぎるので控え目のサイズにしました 康太と伊織にと想い造らせました」 「派手じゃねぇ?」 「事故の時にピアスが壊れたと言ってたじゃないですか!」 弥勒が贈ってくれた身代わりピアスは見事に弾け散った 三木はその穴に康太の分のピアスを嵌めた 「末永くお幸せに! 私はそれしか願っていません」 「ありがとう繁雄……」 「これは康太が伊織に渡して下さいね」 「飯食ってけよ」 「そうも言ってられません 解散総選挙を見越して動かねばなりません」 「なら戦略を立てねぇとな!」 「ええ。お願いしませ。 では私は今日は帰ります」 「気を付けて帰れよ!」 三木は康太を抱き締めて飛鳥井の家から帰って行った 買い物から慎一が帰って来ると慌ただしくキッチンに向かった 康太は部屋に戻り、リビングのソファーに寝そべりPCを開いた 莫大な量の情報量を眺めながら目で追う 康太は携帯を取り出した 「東青?融和コーポレーションもっと買い叩いて、暴落させて買い取ってくれ!」 『中々強かで、苦戦しております』 「副社長?」 『ええ。京極瑠璃子の弟だけあります』 「その会社は常に買い叩いて合併を繰り返した 買い叩き死に追い込む……を、何度も繰り返した 今度は買い叩かれる苦しみを知ると良い オレの方でも追い込む」 『康太、貴方は何故融和コーポレーションを買おうとするのですか? この会社は貴方に取って必要なのですか?』 「東青、おめぇが後見人の手続きをして貰った樋口陵介を知ってるだろ?」 『ええ。存じております』 「アイツはな、融和コーポレーションの社長の息子だったんだ オレは陵介に親父の会社を取り戻してやりてぇんだ 会社を潰したくなくて、良いなりになって飛鳥井康太に牙を剥くしか出来なかった 辛かったろうな…… 結局アイツの親は妻と子を道連れに……心中した 陵介は殺しきれなかったんだろうな……親が庇って‥‥守り抜いた 陵介は意識を失っていただけで意識を取り戻したが、ショックで陵介は言葉を失った アイツは一年位己を閉ざしていた程だった あの会社は陵介のモノだ! 返して貰って当然の会社だ!」 『………そうだったんですね 頑張って買い叩きたいと想います』 天宮は電話を切った 榊原は部屋に戻っていた 康太が電話中だったから、着替えに向かった 康太は立ち上がると寝室に向かい榊原に飛び付いた 「お帰り伊織」 「ただいま康太。 奥さん淋しかったですか?」 「淋しかった……」 康太は榊原の胸に顔を埋めた 榊原は康太を抱き締めた 「お腹減ってませんか?」 「伊織、これ、栗田と繁雄から……」 康太は寝室の机に置いておいた小箱を2つ榊原に渡した 榊原は康太の耳のピアスを触った 「さっきまで、着いてませんでしたよね?」 「おう!箱の中を見ろ繁雄からだ」 榊原は小箱を開けた 「この箱ですか?」 「おう!その箱だ」 箱を開けるとビロードのケースが現れた 蓋を開けると康太とお揃いのピアスが姿を表した 「マリッジリングと同じ0.2ブリリアントcutだそうだ 本当なら2Carat6.5㎜を買おうと想ってたらしいぞ…」 榊原は絶句した 「………僕には派手じゃありませんか?」 「高ぇぞ……これ……」 「………ええ……僕も君に指輪をと想い探してたので…見れば解ります」 「嵌めてやれ」 「ええ。君が穴を開けて下さいね」 榊原の耳には康太の血のピアスが嵌まっていた 「おう!優しく開けてやる んで、この箱は栗田からだ」 榊原は小箱を開けた 「カフスですか? お揃い……嬉しいですね」 「ん。……皆の想いだ……」 榊原は康太を抱き締めた 榊原は康太の指に、あの日結婚式の時に嵌めてくれた指輪を嵌めた 閻魔のくれた指輪の上に……マリッジリングが重なった 「君の兄の想いです」 飛鳥井瑛太と雷帝の想いだった 康太の指に指輪が2つ並んでいた 康太に指輪を渡した 康太は榊原の指に指輪を嵌めた 康太が怪我した日……外した指輪だった もう誰に言われても構わない…… 榊原は康太の指輪に口吻を落とした 「食事をしましょうか?」 「おう!腹減ってるんだ」 康太は榊原の指を強く握り締めた 榊原も康太の指を強く握り締めた 「奥さん、腹減りでしょ? 行きますか?」 「おう!めちゃくそ腹減ってたんだよ!」 キッチンに向かい玲香と仲良くキッチンに立つ慎一の姿に康太は微笑んだ 「お母さん、康太が来ました」 慎一は嬉しそうに言うと、康太の食事の準備をした ご飯を食べてる途中で…… 康太の瞼は……閉じかかり…… 榊原は起こして何とか食べさせた 玉露を少し飲んで……本格的に眠りに入って 榊原は康太を抱き上げて寝室に帰って行った 榊原は康太の服を脱がすと自分も服を脱ぎ ベッドに入り込んだ 康太を抱き締める 強く 強く 抱き締めて…眠りに落ちた

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