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第7話 在るべきカタチ ②

翌朝、康太は早く目醒めた 体躯を起こし康太は榊原を見た 最近の榊原は疲れて泥のように眠る…… そんな日々だった 榊原がいない時に事故で怪我したから…… 離れまいと側にいてくれた だが許容範囲をとうに超えているのは…… 疲れて眠る榊原を見れば一目瞭然だった そろそろ……在るべきカタチを変えないといけない時期を迎えている………のは確かだった 康太はベッドから下りようとした……が、榊原がその腕を掴んだ 「もう起きていたんですか?」 「伊織…おはよう」 「今朝はちゃんと話をしましょう!」 「そうだな。避けては通れねぇかんな 何処で話をすんだよ?」 康太がそう聞くと榊原は康太を引き寄せた 「僕の目を見て話をして……」 「あぁ、互いに本音で話をしよう!」 「解りました、体調はどうです?」 「昨日処置してもらったかんな悪くはねぇ」 「康太はどうしたいのですか?」 「伊織、オレ等はそろそろ在るべきカタチにならねぇといけねぇと想う…… オレに着いてて本来のやる事が出来ねぇ…… それが異常だと気付かねぇといけねぇと想う 伊織にしても疲れて気絶したみたいに眠るなら… そろそろその現状を変だと、直視して考え直さねぇと続かねぇと……オレはそう思う 昨日も言ったけど、お前に抱かれた後に一人にされるなら……オレは抱いて欲しくねぇ…… そんなに無理をするなら余分な分は排除すしかねぇとオレは想う!」 康太は榊原の瞳を射抜き話した 榊原は康太の想いを感じた 「康太、僕も許容範囲を超えていました 限界値を越えて抱えていたのは認めます これからどうしたら互いが、無理なく事を進められるか、話し合わねばならないと想っていました」 「伊織も今の現状に危機感を持っていたのか?」 「ええ。少しだけ‥‥このまま進めば限界は必ずに来るなと危惧してました」 「一生や慎一、聡一郎だって気付いている筈なんだ‥」 「気付いてても‥‥人はその先に逝くのは‥‥決意と想いが在りすぎて身動きが取れないものです」 「それでもな逝かねぇとならねぇんだよ」 「ええ。解ってます 僕も色々と考えました そして力哉と今後の事を話し合いました」 「今後の事?」 「ええ。君が切り出すまで僕は‥‥動き出せずにいました でも動かねばならないのなら‥‥時間を工夫して管理して行けば良いと結論を出しました なので僕の結論を聞いて下さい」 「おう!伊織が決めた事ならば、オレはなんとしてでも聞く!」 「僕は力哉と話をして、今後、スケジュールを決めるとしたら、どうしたら良いか議論を重ねました そして僕は気付いたのです そもその原因は僕のスケジュールと君のスケジュールが合わない事なのだと!」 「スケジュールが合わない?」 康太は不思議そうに呟いた 榊原は優しい笑みを浮かべて康太に諭す様に続けた 「君と僕のスケジュールが同じ方を向いていたなら、僕も君も同じ方に進めるのです バラバラだと向く方向が違うので皺寄せが来ます 力哉が僕のスケジュールと君のスケジュール管理をする 康太も馬関係の書類を上げねばならない時は、僕の傍で書類をあげる 僕はその分何の心配もなく仕事が進められます 真贋の仕事の時に僕は視察とか入れます 急な視察でない限り、共に外で仕事が出来る様に管理すれば良い その方が効率良く動けます 君が僕に背負わせるのは厭なのは知ってます ですが、僕は君といたいのです 僕の知らない場所で……怪我などされたくない 僕の我が儘ですが僕の真意です!」 「伊織……」 「もう抱いた後に一人にはしません 君は僕の胸に顔を埋めて寝るのが好きですからね… ずっと一緒は流石と無理です 一生達もそれぞれの道を行かねばなりません 此処で止めては……いけない 解ってます、だから一生達の歩みを止めたりしはしません! 今後、君も一人で行動する事が増える だから約束して下さい 何処かへ行く時は必ず連絡して下さい リアルタイムで出来ないのなら……顔を見せて下さい 僕のいない場所で……血なんて吐かないで… 辛い時は言ってと盲腸の時に言いましたよね? 何故言ってくれないのですか?」 「伊織……心配をかけたくねぇんだ……」 「知らないでいる方が厭だよ? なら君の知らない所で僕が倒れたらどう思いますか? 君は知らなくて良いと僕が言ったら……君はどう思いますか?」 康太は榊原の言葉を受けて泣きそうな顔をした 榊原が康太の知らない場所で倒れる? 倒れた事すら……知らずに‥‥‥後で聞かされる‥‥ そんな事は嫌だ‥‥ 「それは嫌だ伊織‥‥自分が許せなくなる… …ごめん伊織……お前の気持ちを無視した‥‥」 「愛してるから心配するんですよ 僕にとったら自分より大切だから心配するんですよ 解って下さい!」 「………ごめん……」 「僕達は隠し事のない夫婦なんじゃないんてすか?」 「………伊織……体調が悪かった…… 時々……吐血してた……そしたら貧血になった」 榊原は康太を抱き締めた 「そんな時は僕の腕の中にいなさい」 「………伊織……愛してる…」 「僕も愛してますよ奥さん 昨夜は久遠先生と帰って来るから心配しました」 「小鳥遊が泣いて電話をして来たんだ 神野が無理して病院に逆戻りしたと聞いたからな… 見舞いに行ったんだよ そしたら久遠先生が待ち構えてて捕獲された 検査に行くぜと言われた時に倒れた この前の検査の数値が悪すぎて待ち構えてたんだって……言われた 後は伊織が知っての通り……入院しろと言われて…… 伊織がいるから帰ると泣いたから…送ってくれた」 「……泣いたの?」 康太は恥ずかしそうに俯いて頷いた 「………伊織の傍しか生きていけねぇ…… 入院なんなしたら伊織の匂いがしねぇ…… それは厭なんだ……そしたら久遠先生がオレのミニを運転してくれて送ってくれた」 「丁度年末です 後は掃除だけです 君は僕の腕の中にいれば良いです 一生達とは今夜話し合えば良い 本人の意志もあります 勝手に決めてはいけませんよ?」 「………ん。そうする 伊織は今後どうするんだ?」 「来年は大学の時間を増やします なのでフレックスタイムを導入して変則的に仕事をしようと想っています 君との時間をなくして……疲れ果てて眠るのは……厭です そして僕も君を抱いた後に仕事をするのは厭なんです 愛し合った後は抱き合って眠っていたい…… でも大阪に行ったりと……仕事を溜めました 副社長決済で止まったままの仕事の量に……辟易しました 君が暇なら手伝って下さい 判をポンポン押して行って下さい 僕も君の仕事を手伝います 僕達夫婦は助け合って生きて行きましょう」 「ん。手伝う……ポンポン押して行く」 「君は飽き性なんで、飽きない程度にお願いします」 榊原は笑った その笑顔に康太の胸はキュンとなる 何処まで惚れさせれば良いんだろう…… 何処まで惚れ抜けば良いんだろう…… 康太は何も言わないから榊原は康太を見た 「どうしました?」 「…………伊織の笑顔にキュンとなった…… 伊織を見れば次の瞬間……見とれて惚れまくる… 何処まで惚れさせれば良いんだ…… 何処まで惚れ抜けば良いんだ……」 ついつい弱音な台詞に榊原は康太を抱き締めた 「魂が滅ぶ瞬間まで惚れて惚れて、惚れ抜いて下さい!」 と言い執拗な接吻をした 体躯が熱を帯びる…… 「………康太……」 昨日の今日で家族は心配してるだろうし…… 康太の体躯も無理は出来なかった 「早く元気になりなさい……」 榊原は、ギリギリの処で踏ん張った なのに康太は潤んだ瞳で榊原を見て…… 「……抱いてくれねぇのか?」と言った どれだけの精神力で押さえてるか…… この子は知っているのか? 「……点滴打つ程弱ってるんでしょ?」 「なら舐める……伊織を舐めてイカせてやる」 そう言い康太は榊原の昂ぶりに触れた 全裸で寝てれば……押さえていても昂ぶりは知られてしまう 康太はペロペロと榊原の性器を舐めた 陰嚢を揉んで陰嚢の奥の袋の縫い目を指でなぞる 「………康太……僕だけなんて嫌です……」 康太は榊原を舐めたまま上目遣いで榊原を見た 「………君の中は……僕は欲しくはならないのですか?」 「オレは何時もおめぇが欲しい……」 隠し事も見通すその瞳の前に榊原は観念するしかない 「康太……お尻をこっちに向けて…… 僕も舐めたい……君の下のお口を舐めて蕩けさせたい」 康太は榊原に跨がるとお尻を榊原に向けた 榊原は康太のお尻の穴に口吻た 「きゃっ……」 あまりにも刺激に声が漏れた 「君の下のお口は僕を欲しがってますよ?」 ペロペロ皺を伸ばし捲り上げ中も舐めると蠢き催促を始める 康太は榊原の性器を舐めながら訴えた 「オレも欲しいに決まってる! だから伊織を舐めてる……舐めたら挿れるに決まってるだろ!」 貪られて榊原はイキそうになった それを堪えて康太のアナルを解す 舌と指で解しつつ…… 康太の可愛い肉棒を舐めた 康太の性器は可愛い色で、可愛いサイズだった レロレロと舌で味わい舐める 指はお尻の穴に挿し込んで掻き回す 「……ゃ……あぁん……同時は……ゃ……イッちゃう……」 と鳴いた 「まだイッたらダメです……縛りますよ?」 「縛らないでぇ……ねがっ……あぁん…あっあっ……」 康太は必死で堪えてやり過ごす でないとイッちゃうから…… 「……伊織……欲しい……ねっ……挿れてぇ……」 「こんなに解れましたからね挿れてあげます」 榊原は両手の人差し指を挿し込み伸ばした 「……ゃ……やらないでぇ……伸びちゃう…」 「大丈夫です、少し位伸ばしても君はキツい位ですから……」 榊原も余裕なんかない…… 康太のフェラに追い詰められ……狂わされる 最近康太のフェラは巧すぎて……余裕をなくす 互いの体躯を熟知したモノだからこそ味わえるエクスタシーだった 榊原は康太の脚を抱えて折り曲げると、康太のお尻の穴に熱く滾る肉棒を押し当てた 「少し慣らしますよ?」 そう言うと榊原は康太のお尻の穴に亀頭を少し挿し込み入り口を性器で解した 挿れられ……歓喜する腸壁が搦め取ろうと蠢くと…… 抜けて行く…… 決定的な刺激が欲しくて体躯はそれを求める 「……伊織……奥まで来てぇ……奥に……」 康太は仰け反り訴えた 「切れちゃいますよ?」 「………ゃ……伊織…焦らすな……」 「では僕も限界なので奥に行きます……」 榊原は根本まで一気に挿入した 腸壁が榊原のエラの刺激に歓喜する 「伊織のエラが引っ掛かる……」 「ええ。開ききってますからね 君のイイ所に届いてますか?」 「届いてる……それで掻き回して……」 「良いですよ。 好きなだけあげます」 榊原は抽挿を早めた ギリギリ締め付ける康太の腸壁が榊原を搦め取る 一気に押し込み…… 抜ける手前まで抜く 物足りない腸壁が榊原を求めて締め付けようとする そこに榊原のエラが開ききった肉棒が掻き回して突き進む 「……ぁん…あぁん……イッちゃう……伊織……イクぅ…」 「良いですよ……僕もイキます次に突いた時にイキましょう」 そう言い榊原は深く康太を突き刺した 「……あぁっ……あぁぁぁ……伊織愛してる……」 康太は榊原の背中を抱き締めた 榊原の背中を掻き抱き……射精した 榊原も康太の奥深くに精液を飛ばした 一滴残らず康太の中に注ぎ込む…… 「僕も愛してます炎帝……」 遥か昔から君しか愛せません…… 青龍の想いだった 康太は嬉しそうに笑った 「青龍の角は綺麗だからな……魔界に帰ったら龍のまま犯るか?」 「………本気で言ってます?」 「オレは何時でも本気だぜ? 綺麗だったな青龍の角……あの角に接吻したい でも……性感帯なんだろ? なら龍のままでもオレは構わねぇ……」 「本当に君は青龍がお好きですね」 「お前だろ?」 「ええ。僕です。僕以外など愛させません」 「お前だから総てが欲しいんだよ」 「鱗一枚……君以外には触らせません…… でも、龍族でも龍の姿のままは敬遠するそうですよ? 龍の姿のまま喜ぶのは……君位ですよ」 「……青龍なら全部愛しい……あん……伊織……んっ……」 「君は男を煽るのが巧いんですよ……止まれません…」 「あっあっ…あぁっあぁぁぁ……」 終われない…… 榊原は康太の体躯を起こしては膝の上に乗せた 深く繋がる…… 榊原の体躯の一部と…… 康太の体躯の一部が…… 繋がり一つになる 何処まで溶け合いたい…… 求める想いは無限に湧いて…… 二人を駆り立てる 性欲の尽きるまで榊原は康太を抱いた 康太も榊原の総てを受け止めた 汗が引き…… 穏やかな時間が来ると榊原は 康太を抱き締めたままゴロンと転がり胸の上に乗せた 「切れてませんか?」 「………切れてねぇけど摩耗した……」 と笑える答えを返した 榊原は笑った 榊原の笑いが……康太に伝わる 康太は榊原の胸に顔を擦り寄せた 「奥さん、今日は病院に行きましょうね 帰ったら判をポンポンお願いしますね」 「おう!ポンポンやる」 「康太、僕達は曲がっても正して生きて逝くのです 亡くしたら生きて逝けないのですから…… 正して互いを見失わない様に生きて逝きましょうね」 「おう!オレは絶対に伊織を見失わなねぇ」 「掴んでて下さいね!」 「おう!掴んで絶対に離さねぇ!」 「起きますか?」 「ん。怠い……」 「ポンポンに飽きたら寝てなさい 今日は僕の視界にはいる所にいなさい」 「そうする。オレも離れたくねぇ……」 榊原は康太を抱き上げると浴室に向かった 何時も通り康太の中も外も洗った 康太は榊原の為すがままだった 浴室を出ると何時も通りに康太の髪を乾かして支度をする 「…伊織……オレ出来る……」 「知ってませよ……でも僕の我が儘です 君が僕がいなきゃ何も出来なくなれば良いな…… と想って君に何もさせません……僕のエゴです…」 「……伊織がいねぇと生きて逝けねぇよ… 伊織がいねぇと…食べる気もしねぇ……」 最近……康太を誰かに預けて食事の場にいなかった だから康太が食べていなかったのに気付けなかった…… 榊原は後悔した…… 「僕がいるので食べなさい ………でも沢庵は禁止されましたね…」 「………沢庵……また食べれねぇ……」 「直ぐに食べれる様になります」 榊原は手早く康太の支度をすると、自分の支度もした ベッドのシーツを変えてメイキングすると榊原は康太をその上に乗せた 掃除と洗濯をする 榊原が移動する場所に康太を連れて歩いた 今日は……玄関とかは諦めた 後でワイパーかければ……と想う ある程度やると康太をキッチンへと連れて行った キッチンには、一生達が揃っていた 慎一は康太を見ると食事の準備を始めた 康太の前に……消化の良いおかずが並べられる そしてトドメはお粥…… 康太は涙目で慎一を見た 「昨夜久遠先生をお送りした時に参考までにお聞きした食事です 貴方は当分それしか食べれません」 「………オレの沢庵……」 「………その体躯に沢庵は自殺行為です」 慎一は言い捨てた 「康太、俺は貴方の執事です! 貴方の身の回りの世話もするのは俺の務め 牧場も当然手を抜きません! が、俺はこの家を出る気はないです ベッタリはいられないにしても本来の役目も出来ずに他へなど行ける筈などないでしょ! それが俺が出した答えです!」 慎一は毅然と言い放った 「………慎一」 「貴方が何を言おうが優先順位は既に着いているのです! 俺はその優先順位を移動する気はない! 優先順位第一位を移動して…… 夢を叶えても……意味などないんです!」 康太はもう……何も言えなかった 「さぁ、食べなさい 病院に行かねばなりませんよ! どうせ伊織と犯ってたんでしょ? 疲れてるなら言う事を聞きなさい」 康太はお粥をスプーンで掬い食べた ポリポリ沢庵…… 食べれないと、涙目で……食事をしていた 榊原は「体調が整えば食べます…」と声をかけた 「オレの回りは殴りてぇ程の頑固者しかいねぇしよぉ! オレの言う事なんて聞きゃぁしねぇもんよー」 「………君が無茶ぶりし過ぎるからでしょ?」 榊原は苦笑して真実を教えてあげた 「………無茶なんてしてねぇもんよー」 「………天然でした……この子……」 榊原はボヤいた 一生は康太の前に座ると 「康太、俺らは何と4人もいんだよ?」 と訳の解らぬ事を言い出した 「だからなお前と共に逝くのは不可能じゃねぇんだわ! 誰か彼が見張ってれば良いんだからな! 俺と慎一、聡一郎に隼人にも頑張って貰わねぇとな 伊織も都合はつけるだろ? そしたら不可能じゃねぇ! 俺等は本来の夢や遣る事をしたって、此処へ還ってくる! 俺のいる場所は此処だ!此処だけだ! おめぇの傍が俺等のいる場所なんだ 他に行ってもおめぇがいなきゃ……意味がねぇだよ? 俺等はおめぇのいる場所にいてぇんだよ! おめぇと続く場所へと行きてぇんだよ! だから決めてんだ」 もう何も言うな!とその瞳が語っていた 「おめぇは当分体躯を治せ!」 一生が言うと聡一郎も話し出した 「康太、君は僕に切れ者の文弥をくれた 文弥が永遠が成長するまで副社長、社長代理を遣ってくれます! ですから僕は君の傍を離れる気はありません そして、死してからも……僕は君の傍にいます 君が人に堕ちてから……司禄が見かねる程に……僕は君の不在が堪えていました 僕は君をずっと取るに足らない存在としてしか扱っては来なかった…… なのに……君は僕を救ってくれた…… 僕がどれだけ君に救われたか解っていますか? 君の暖かな腕で抱き締められ……僕は初めて泣きました 僕をこんなにも弱くして堪え性のない奴にしたのは君です…… 僕は今世も来世も……君から離れる気はないのです そもそも、僕は一度も四宮が忙しいなんて言いませんでしたよ? 四宮は文弥だけでも回って行きます」 「………聡一郎……」 「さぁ、病院に行きますよ! 血を吐いて貧血とか……今夜は焼肉にしますか? 当然康太はレバーだけですけどね!」 聡一郎はそう言い笑った…… う~ う~ う~ 康太は唸った 焼き肉なのに……レバーだけは嫌だった 焼き肉なら……カルビ…… 「オレのカルビ……」 「君のカルビは出張に行ってます ですからレバーだけです!」 聡一郎はトドメを刺した ……う~ 康太は泣きながらお粥を食べた 一生は聡一郎!と怒った 「大丈夫だ!康太! 細かく切れば消化にも悪くねぇ! 俺が細かく切ってやるからな!」 涙で濡れた目で……一生を見る…… 「………一生……」 「今まででもおめぇの為にやって来ただろ? これからもしてやる!だから泣くな」 「……一生……」 康太の瞳からボロボロ涙が零れた 一生は立ち上がり康太を抱き締めた 離れたくない想いは康太の方が強い…… 幾ら冷たくあしらっても…… 康太は変わらず一生と聡一郎に暖かな瞳を向けてくれた ずっと変わらず傍にいてくれたのは…… 康太だけだった 何があっても… 学園の全員がそっぽを向いても…… 康太だけは…… 変わらず傍にいてくれた こんなロクデナシだった悪童と言われた一生と聡一郎の傍にいてくれた だから……今があるのだ…… でなければ……世を儚んで……悪事に生きていた その頭脳を最大限使った犯罪に手を染めていただろう そうならなかったのは…… 飛鳥井康太がいたから…… 一生と聡一郎を照らす……最後の光だった だから…その光を失っては生きてはいけない… 「おめぇは俺と聡一郎の最期の光だ……」 一生は康太にそう言った 聡一郎は泣いていた 泣いて康太を抱き締めた 「そうです!僕達を堕ちない様に照らしてくれる最期の光……それが君でしょ? 無くせば…僕達は堕ちてしまいます!」 榊原は聡一郎達と康太の救出に保健室まで向かった日 聡一郎が吐いた言葉を思い出した 「『康太は僕等にとって太陽なんですよ。 康太の前では、気負わず凄く当たり前に過ごせる。 康太とは死ぬまで友達でいたい…それだけ大切な存在なんです。 もし君が康太を裏切り泣かせたら一生僕達の敵になります』そう君は言ったね……」 榊原は呟いた 聡一郎は榊原を見た 「覚えていたの?」 「今 想い出しました あの台詞は君が僕に贈った本心の叫びでした 自分より康太を大切にして来た…… 君の想いでした 忘れたりはしませんよ」 「伊織……」 「康太、飛鳥井が変革期に来ていても 君の回りは頑固過ぎて……変革期すら手こずってます 在るがままに受け入れなさい 皆で知恵を出し合い生きて逝けば良いのです 自分で勝手に決めてはいけません!」 「………伊織……」 「さぁ、病院に行きますよ! 週末から飛鳥井の家は大掃除に突入です 君は触らなくても良いです! 僕が全部してあげますから! その前に会社です! 君はポンポン頼みますね!」 榊原が言うと一生も 「旦那、ヘルプに入る! 仕事を片付けようぜ! その前にポンポンって何だよ?」 力強い言葉を贈った 「康太に判を押すだけの書類を渡すからポンポン判を押して行きなさいと言ったんです」 「お!それ良いな! 俺等が入るからな、かなりのスピード要るかもな」 一生は、そう言い笑った 全員で主治医の病院へ行き、康太を診察させた 久遠は康太に点滴を打つ 点滴が落ちる間に榊原に検査の結果を話した 「胃酸も出ねぇ程に胃が軋んでいたと想われる数値だ これで吐血しねぇ方が難しいな」 「……康太はかなり前から吐血していたんですか?」 「……少なくても額を切った後には食欲は落ち始めていたと想う 食えば痛みで吐くからな…… それが続いたから吐血したんだろ? もっと早く来てれば吐血前に手が打てた」 「…………すみません 僕も仕事を抱えて一杯一杯でした…… 康太は相当悪くならいと弱音を吐きません… 「弱音は吐かねぇけどな血は吐いたな!」 久遠はそう言い爆笑した 榊原は……そこは笑えません……と心の中でダメ出しした 「慎一に食い物の説明はしといた 年が明けたらまた検査する それまでは薬で抑えておけると想う」 「………本当にありがとうございました! あの……神野は?どんな状態なんですか?」 「あぁ、骨折してるのに松葉杖で階段上ろうとして…… 更に骨折した奴か……本当に無茶ぶりな奴ばかりで困る」 「神野は…年内の退院は不可能ですか?」 「命には別状はねぇけどな 退院させると無理するからな年越して安定するまでは入れとく でねぇと骨が引っ付かねぇ……腐れば切断 と言う状況だ、良くはねぇな」 榊原は言葉を無くした…… 「まぁな社長と言う立場があるからな…… でも、アイツがいなくても真野とか言う奴がいれば… 回る気がするんだがな?」 「真野が来てたんですね 真野は宮瀬建設の社長の懐刀してた男でした 康太が拾って駒にしてた存在ですから神野よりは使えます!」 「………やはりそうか…… なら無茶しなくても良いのによぉ……」 「してなきゃ、存在理由もないと…焦ったんでしょう 誰よりも康太に返したがってる一人です」 「………返す前に……自爆するタイプだな!」 久遠は爆笑した 榊原は合ってるだけに「何も言えないです……」と零した 「飛鳥井康太は源右衛門程は生きられねぇな…」 不意に久遠は呟いた 「康太は飛鳥井に根を下ろし 千年転生を繰り返しました…… その人生総て20代で終えてます… 30までは…生きられますか?」 久遠は榊原の言葉に………言葉を失った 飛鳥井義恭が久遠(くおん)の恋人と呼んだ 遥か昔から転生を繰り返す恋人同士だと教えてくれた 当然転生を繰り返している訳だが…… その時の記憶まであるとは……久遠は意外だった 「お前……転生前の記憶を持ってるのか?」 「ええ。人になる前の記憶も僕達にはあります 康太は……その先の記憶もあります……」 「その頃から恋人同士なのか?」 「………恋人同士ではかなったです…… 僕には妻がいました……冷遇してしまった期間があるのです…… その頃も愛する人は唯1人……でしたがね」 「………今世は長生きさせてやれ せめて、俺くらいは生きさせてやる」 「久遠先生は……失礼ですがお幾つなんですか?」 年齢不詳の男だった 笑うと人懐っこい顔になるが黙ってたら逃げ出したい強面だ 「俺か?俺は今年33だ! 三木繁雄と同い年だ!」 「久遠先生は三木繁雄をご存知なのですか?」 「あれは幼稚舎からの腐れ縁」 「そうなんですか……久遠先生位は生きさせてやりたいです…… 本当なら源右衛門位の康太を見たかったのですが…」 「内臓がな……そのうち機能しなくなるのは避けたい 食うのが好きな奴に食うなど言うのは……辛すぎるからな……」 「久遠先生、康太をお願いします」 榊原は深々と久遠に頭を下げた 「焔を少しの間出させるな…… アイツは焔を出すだろ? だから新陳代謝を早めてしまっている 多分前世もそれで寿命を縮めたのだな……」 「ずっとは不可能……です 彼は……焔の持ち主ですから……」 「ずっとは無理だろ? せめて体調が安定するまでは……無理させるな」 「解りました! どの道飛鳥井は年末に突入します! 力を使わせようとする人間は皆無です」 「薬を出しておく 飲ませてくれ」 「必ず飲ませます」 久遠は榊原の肩を叩くと……出て行った 榊原はスヤスヤ眠る康太の頭を撫でていた 一生は……耐えきれず……外に出た こんなに必死に生きてるのに…… 必死に誰かの為に動けば寿命を縮めて逝くのだ だが、康太は歩みを止めはしない その命が尽きようとも…… 飛鳥井康太は我が道を逝く…… 一生は天を仰いだ…… 聡一郎も外に出て一生を抱き締めた 「………直ぐじゃないです……」 「あぁ……直ぐじゃないが…… 倍速で走ればな……その命は…確実に縮んで逝く… 皮肉だな…… 誰よりも逃げずに生きてるのに……」 「伊織は……ずっと傍で見守って来たのですね… そして共に……逝ったのですね……」 一生は聡一郎を抱き締めた 「………青龍は傍でずっと見守って来たんだ…… そして共に在ろうと魂を結び付けた… 辛かったろうに……アイツは受け止めるんだな…」 青龍は誰よりも潔く……愛に生きていた 2人を想えば涙が溢れて来た… 離れたくなんかない… 定めと言え… 運命は皮肉過ぎる… 一生は壁を思い切り殴った… 慎一が廊下に出て一生を止めた だがその手は……血が滲んでいた 慎一は一生の手を掴むと傷を見た 「何莫迦な事をしてるんですか!」 指が折れてないか確認する 久遠はそれを見ていて一生を引き摺って行った 慎一は聡一郎の肩を抱いた 「康太の点滴が終わると還りますよ」 「康太は?」 「寝てます……伊織がいるから安心した顔してます」 「………そう……」 「そんな顔しないで……康太が気にします」 「………うん……ちゃんと笑うから……」 慎一は聡一郎の肩を抱いたまま康太の処置室へと向かった 処置室のカーテンを開けると康太が座っていた 腕の点滴は抜かれていた 康太は聡一郎を見るとニカッと笑った 「還ろうぜ!聡一郎!」 康太はそう言うと、聡一郎は困った 壁を一生が殴って久遠に捕獲されて行きました…… なんて言えない…… 返答に困っていると手に包帯を巻かれて一生が久遠に連れられて来た 「……あんだよ?一生?」 病院に来るまで怪我なんてなかった筈だ 「壁にな、虫が止まってたんだよ それをな 、この坊主が壁を殴って殺したんだよ 莫迦だよな?虫だぜ?普通殺すか?」 久遠はガハハッと笑った 康太は言葉もなかった…… 「………一生…」 「………言うな!言いたい事は解ってる」 「んとに!おめぇはバカだな!」 康太は一生の頭を殴った 「この駄犬が!」 「怒ってやるな!連れ帰れ! 指はなヒビが入った位だ! また鎮痛剤飲むと胃潰瘍になるかも知れねぇからな! 鎮痛剤は使わねぇ!湿布で乗り切れ!」 久遠はそう言い榊原を奥へと連れて行った 「一生は熱が出る だがな、鎮痛剤は使えねぇ しかもかなり痛みが出る バカだからな壁を殴りやがった 相当痛い時以外は鎮痛剤は飲ませるな!良いな」 榊原は頷いた 「何かあったら電話しろ どの道康太は点滴だ、年末年始も通え」 「……本当にご迷惑掛けます」 「気にするな!患者を治すは俺の使命だ」 榊原は久遠に頭を下げると、支払に走った 一生の保険証は明日持って来る事にして榊原は帰って行った 車の中で榊原に説教されたのは……言うまでもない 幾ら虫がいても壁は殴るな!と説教を食らった 榊原も虫は口実だと知っていた 一生にとっても……辛い出来事なのだ… 飛鳥井康太を亡くす… それは道標を無くす

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