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第8話 在るべきカタチ ③
そんな悲しい現実は……
迎えたくなんかないに決まっている
榊原の車に乗り込むと、康太は怠いのか榊原の肩に頭を置いた
「怠いんですか?」
「ん。なんか怠い……」
「なら寝てなさい
ファミレスに行きましょう!
ファミレスなら康太の食べれるリゾットとかあります
プリンもパフェもありますよ?」
「……ん……沢山は食えねぇ……」
「少しで良いんですよ!
無理しなくても良いです」
榊原は最近は行かなくなったが、高校の頃は良く通ったファミレスまで向かい
ファミレスの駐車場に車を停めた
康太は懐かしいな……と笑っていた
それぞれ好きなモノを頼んだ
ドリンクバーで飲み物を淹れて来て席に着く
康太は榊原と半分ずつにして、ドリアとサラダを食べていた
慎一が康太の為にプリンを頼んだ
一生は「飯食ったら会社だろ?」と榊原に話し掛けた
「………君…その手で仕事しますか?」
「大丈夫だ!片付けねぇと年末が迎えられねぇ!
今年は康太も一緒だし、大晦日には隼人も帰って来るからな!騒がしいぞ!」
「会社の大掃除を告知せねばなりません!
会社に行ったら、放送して告知を仕上げねばなりません!」
「告知は俺等が作るわ!
旦那は康太のポンポンの仕事を作ってやれよ」
「そうですね!頑張ります」
康太はニコニコ笑っていた
会社に向かうと榊原は康太をソファーに座らせた
「義兄さんの所へ行って来ます……」
と榊原は言い席を外した
一生はPCを立ち上げた
聡一郎は力哉に聞いて片付けられそうな書類を出させた
榊原が瑛太に……何の話に言ったかは……解っていた
榊原は瑛太の社長室をノックした
佐伯がドアを開け、榊原を迎え入れた
「伊織、どうしました?」
「……義兄さん、康太の容態が芳しくないんです」
瑛太は苦しげに榊原を見た
「……どんな調子なんです?」
「胃の粘膜が極端に少ない……
働いていないそうです……
久遠先生は……康太は源右衛門程は生きられない……
と、仰いました……
そのうち胃の機能が低下して……食べる事すら出来なくなる……可能性もある……と……」
榊原は苦しげに言葉にした
瑛太は何も言えなかった……
佐伯は……言葉もなく蹲り……泣いた
「……一生がそれを聞いて……壁を殴り骨にヒビが入りました……」
「……康太は?」
「副社長室にいます
仕事を手伝って貰います」
「………伊織……辛い思いをさせてすまない……」
「義兄さん、医学は進歩を遂げている
僕は諦めてなんかいません!
今世は……康太のじじぃ姿を見たいのです
飛鳥井ね根を下ろして1000年……
康太は20代で息絶えています
……若くして……康太は亡くなってます
今世位は……僕は諦めてはいません……」
瑛太は榊原を抱き締めた
「………伊織、私も望みは捨ててません!」
「義兄さん……例えこの先康太が血を吐いても…
騒がないで下さい……お願いします」
「解りました……父と母には私が言っておこう」
「では、仕事をして来ます!」
榊原は涙を拭くと、瑛太に深々と頭を下げ
社長室を出て行った
瑛太は机に肘を着き顔を覆うと……嗚咽を漏らした
幸せそうに……笑っていた花嫁姿の康太は誰よりも幸せそうだった
頼むから………
康太の幸せを奪わないでやってくれ……
頼むから……
この命を……差し出しても良い……
どうか……康太を………
瑛太は祈った
榊原は副社長室に戻ると一生は既に大掃除の告知を作り始めていた
康太は副社長の印鑑を持って待っていた
「良いよな……榊原って文字
オレも榊原になりてぇな……」
と康太はうっとりと榊原の印鑑を見ていた
一生は「どこに康太のスイッチがあるか解らねぇ~」とボヤいた
榊原は苦笑するしかなかった
「奥さんお嫁に来ますか?」
榊原が言うと康太は榊原に飛び付き
「なる!伊織のお嫁さんになる!」と喜んだ
一生は「もぉ結婚式挙げたがな!」と噛み付いた
「名前も結ばれたい!」
康太が笑って言うと一生は
「伊織の戸籍に入れて貰いなはれ」と笑った
「戸籍に入りてぇけどな……オレが飛鳥井を捨てると…
余分なもんが…榊原になりたがる……
それは避けてぇな」
有り得るから笑えない
榊原は副社長の机に座って書類を見てチェック入れ始めた
副社長決済をしていく
通った書類だけ康太に渡すと、康太は副社長と言う枠に榊原の印鑑を押した
「楽しいなコレ」
康太は喜んでポンポンと印鑑を押した
榊原は一生と聡一郎に手伝って貰い、かなりのハイペースで仕事を片付けた
力哉は上がった書類を社長室へと持って行った
束になった書類に瑛太は苦笑する
「なら私も本気を出しますか!」
と瑛太もサクサク仕事を片付けた
何かを忘れていたくて……仕事に夢中になる
かなりのペースで社長決済を済ませて会長に上げる
清隆は……書類の束に……
「………何故……一気に……」
とウンザリした
この日はサクサク仕事を片付け、年末を迎えられた
明日は大掃除をして御用納め!
年の瀬を迎えようとしていた
瑛太は父の会長室に母玲香を呼び出し
榊原に聞いた事を伝えた
清隆も玲香も言葉がなかった……
玲香は涙を堪え様としたが…止めどなく溢れ……
顔を覆った
嗚咽が……部屋に響き渡った
清隆は天を仰いだ
瑛太は榊原の言葉を……2人に伝えた
「伊織は私に
『義兄さん、医学は進歩を遂げている
僕は諦めてなんかいません!
今世は……康太のじじぃ姿を見たいのです
1000年……康太は20代で息絶えています
……若くして……康太は亡くなってます
今世位は……僕は諦めてはいません……』と言ったんです!
私も諦めません……諦めたらそこで終わる……
私は無くしたくないから……諦めません!」
瑛太はそう言った
清隆も玲香も……頷いた
会長室のドアがノックされ、瑛太はドアを開けると一生が右手に包帯をして立っていた
「大掃除の告知です!
罰金は、今年は無しの方向で迎えるみたいです
今年は社員の自主性を重視するつもりなんでしょうね
伊織は今年も仕出し弁当を頼むつもりです」
一生はそう言い告知の紙を渡した
「もうこんな季節なんですね……
大掃除の告知で知ると言うのも変ですが……」
瑛太は呟いた
「飛鳥井の家は暇見て大掃除に突入だそうです!
くれぐれも大魔神伊織に気を付けて下さい」
一生が言うと玲香は
「………気を付けようがないわい……」と零した
清隆も「………あの綺麗好き……飛鳥井でも誰も叶いません」と早々に降参した
「来年新居に引っ越すのに…掃除は要らねぇだろ?……なんて言ったら……埃で死にたいのですか?
なんて言われたよ……俺は……」
一生が愚痴る
玲香が一生の手を見て
「今朝は……なかったではないか?」と問い掛けた
一生はバツの悪い顔をした
「これには触れないで下さい」
一生はそう言い部屋を出て行った
瑛太は清隆と玲香に榊原に聞いた事を話した
「一生は辛くて壁を殴ってヒビが入ったみたいです……」
それ程に………辛くてやるせなかった……
しんみりしてると、突然ノックもなしにドアが開けられた
こんな開け方をする強者は康太しか考えられなかった
社員なら会長室にノックもなしにドアを開けるなんて無作法働いたら……
多分……冷たい視線に……寿命を縮めるだろう…
「父ちゃん!大掃除の告知みたか?」
ヒョイと康太が顔を出した
清隆は康太を抱き上げて部屋へと入れた
「今一生が持って来ました」
「大掃除の時に仕出し弁当頼むらしいんだ
伊織が全部出すと言ってるんだ……
オレは今年伊織に真贋の袴を贈るかんな…
小遣いは使えねぇ……オレの分父ちゃんが払ってくれねぇか?」
清隆はニコッと笑って「良いですよ」と答えた
瑛太が「なら私も出さねばなりません!」と負けん気を発揮した
だが康太は「瑛兄は良い……」と冷たく言った
瑛太は父から康太を奪って抱き上げた
「何故兄は良いんですか?
兄も払います!何で父さんだけなんですか?」
「会長だかんな瑛兄より給料良いじゃんか!
だから父ちゃんにたかりに来たんだよ!」
「兄も給料良いですから
払います!聞いたからには引きません!」
康太は困った顔をした
セコい事考えなきゃ良かった……と後悔した
何で清隆の会長室に揃ってるんだ?
「あんで会長室に瑛兄も母ちゃんもいんだよ?」
清隆は笑って康太に
「瑛太が今夜は田代に教えて貰ったお粥のお店に行きたいと言って来たんですよ」
と優しく康太に話し掛けた
「………皆で行くのか?
今夜は焼肉って聡一郎が言ってた
でもオレのカルビは出張に出掛けたからねぇって……
だからレバーを食えって……」
康太は哀しそうに……そう言った
聡一郎の愛なのに……
聡一郎は不器用だから……好きな子は虐める……タイプだった
「大丈夫!聡一郎にはお粥にしましょうと言っておきます!
今日はレバーも出張に出掛けたみたいです!」
瑛太は康太の背中を優しく撫でた
「瑛兄下ろして、伊織を待たせてある」
「ならこのまま伊織の所に連れてってあげます」
瑛太は笑って歩き出した
その後に清隆と玲香も付いて行った
副社長室のドアをノックすると聡一郎がドアを開けた
「伊織は?」
「奥にいます」
聡一郎に招き入れられ瑛太は部屋に入り、榊原に康太を渡した
榊原は康太をその手に貰い笑った
「何処に行っていたんですか?」
康太が急に駆けていったから後を追おうと思った
でも社内で何も言わずに飛び出すのなら瑛太か清隆の所だと思った
「父ちゃんの部屋に行ったんだよ
そしたら瑛兄も母ちゃんもいた!」
瑛太を見ると清隆も玲香もいた
榊原は2人に話したのだと……それで解った
「康太は強請りに行きましたか?」
榊原は清隆にそう問い掛けた
「……ええ。大掃除の時の仕出し弁当のお金を出せ……と強請られました」
清隆はそう言い笑った
「出しますよ!康太に言われたら出さない訳にはいきません!」
清隆が言うと瑛太も
「私も出します!父さんだけなんて狡いです!」
と一歩も引く気はなかった
榊原は康太を見た
康太はバツの悪い顔をした……
「………伊織が大変かと想って……父ちゃんに強請りに行ったら……瑛兄も母ちゃんもいるんだもんよー
予想外だかんな……オマケが付いた…」
「………そうですか。強請りに行ったんですね…」
康太は頷いた
「伊織、今夜話をしましょう!
その時、仕出し弁当のお金を父と母と私と伊織の四等分に割りましょう!」
と瑛太が申し出た
「………解りました」
榊原は飲み込むしかなかった……
瑛太はニコッと笑って
「では、皆でお粥の店に食べに行きましょう!」
と言った
康太は聡一郎を見上げて……
「………今夜はレバーも出張だ……」
とボソッと呟いた
聡一郎は笑った
「ではお粥にしましょう!
康太だけお粥では可哀想ですからね
皆お粥を食べとけば良いんです!」
「………聡一郎……」
「何ですか?一生」
「………お前……本当に悪魔……」
ボソッと呟いた
「優しい天使の様な僕を悪魔ですって?
そんな事を言うのは……この口ですか!」
聡一郎は一生の唇を摘まんだ
康太は聡一郎を止めた
「康太は何時も一生ばかりですね!」
デカい図体で聡一郎は拗ねた
康太は笑って
「オレはおめぇも大切にしてるぜ!」
と抱き締めた
聡一郎は一生の手を見て
「カルシウム足らないんですかね?」
と呟いた
「骨でも食わせとくか?」
康太が言うとさすがと一生は抗った
「………骨は勘弁……番犬になるからさ……」
「ならお粥な」
それも……嫌だけど……骨とお粥……
何て選択肢の少ない話なんだよ……一生は、拗ねた
「父ちゃん!行くぜ!」
康太は楽しそうに笑ってそう言った
皆でお粥の店に行く
慎一は源右衛門を連れに一足先に家へと戻った
源右衛門を「お連れしました」と連絡が入ると
皆は地下駐車場へと向かった
今夜は清隆が運転する
清隆の車に玲香と源右衛門と一緒に乗った
瑛太は車に一生を引っ張って乗せた
一生は聡一郎の腕を掴んで一緒に乗り込んだ
お粥の店で全員が美味しくお粥を食べていたら
榊原の携帯が胸ポケットで震えた
榊原は「失礼」と言い席を外して外に出た
発信者を見ると父 清四朗だった
「父さん どうされました?」
『………明日菜が帰って来ても……ずっと泣いているのです
丁度仕事から笙が帰って来たので落ち着くかと想いましたが……泣き止まず
真矢を呼びました……それでも泣き止まなかったのですが…明日菜は真矢に話しました
康太は……源右衛門程は生きられないのですか?
………幾つまでだと言われたのですか?』
「………父さん……電話で話せる話ではありません」
『……なら飛鳥井に行きます……と言いたいですが…
康太の前では……したくはないです
康太は知ってるのですか?』
「自分の体躯ですからね……知ってると想います」
『……伊織……話しを聞かせて下さい……』
「………なら康太は義兄さんに預けて、自宅に伺います……
今お粥を食べに行ってるので帰りに寄ります」
『………待ってます』
清四朗は電話の向こうの泣いていた
そんな両親に話しをせねばならぬ
榊原は携帯を胸ポケットにしまうと、店に戻った
「義兄さん、帰りは康太を乗せて帰ってくれませんか?」
瑛太に言うと瑛太は
「良いですよ。何かありましたか?」と尋ねた
「父が……話がしたいと言っているのです……」
「………話し?」
検討が付かずに瑛太は榊原に聞いた
「明日菜が……泣いていたそうです……」
瑛太にはそれだけで総てが解る
瑛太は息を飲み「口止めは必要でしてね」とため息を着いた
「少しだけお願いします」
康太の前で話せる話しじゃないから……
「解りました!膝の上に乗せて、久しぶりに家に帰ります」
瑛太は案ずるな……と笑って言った
お粥の店を清隆に奢らせて店を出ると、榊原は瑛太に康太を預けて榊原の家へと向かった
瑛太は康太を膝に乗せて飛鳥井の家へと向かった
榊原が清四郎の自宅の前に車を停めると、清四郎は飛び出して来た
榊原は車から下りて清四郎に深々と頭を下げた
「明日菜を口止めしておくべきでした…」
と榊原は言った
清四郎は息子を家の中へ招き入れた
応接室に招き入れられると、榊原は明日菜を睨み付けた
身も凍る程の冷たい瞳だった
明日菜は身を竦め……すみませんでした!と謝った
家族に向けた事のない瞳だった
笙ですら、その瞳を見れば……身が竦む……そんな瞳だった
真矢は榊原に
「そんな瞳を明日菜に向けるのはお止めなさい!」
と、怒った
「………貴方達は知らなくても良い話だ!」
榊原は言い捨てた
清四郎は
「それはどう言う意味なのですか?」と榊原に問い質した
「康太の病状など知らなくて良い!」
「そう言う訳には行きません!」
真矢は言い放った
「私達に康太の事を知らせる必要はないと……
伊織は言ってるのですか?」
真矢は榊原を睨み付けた
「康太を見れば貴方達は泣く……
それを康太はどんな想いで受け止めるか知ってますか?
誰も……死にたくて死ぬ訳ではない!
だが……康太が飛鳥井家真贋である以上…避けられない現実です
だから……知らなくて良いと言ったのです……」
真矢は息子を抱き締めた
「知らずには……過ごしたくはない
知らずにいたら自分を責めてしまう
康太の前では普通にしています!
私達は役者ですよ?伊織
貫き通す覚悟があるから聞くのです」
女優なれば……哀しみを隠して……舞台に立つ
役者なれば……親が死の淵にいよいよとも……舞台は完遂する
榊原はソファーに座ると………静に話し始めた
「康太が血を吐いたのですよ……
僕は知りませんでした……
最近忙しくて康太に構えませんでした
康太は僕達に隠して血を吐き続けていたのです
康太は倒れて久遠先生に連れられて帰って来た
それで家族は知りました
今日……胃の働きが悪いと言われました
そのうち働かなくなる可能性も捨てきれない……と
久遠先生は言いました
康太は源右衛門程は生きられない……と。
そのうち食べ物を受け付けなくなる……と。」
清四郎は……顔を覆った
真矢は……背を向け……肩を震わせた
「………康太は1000年……飛鳥井の家に根を下ろし転生を続けました
だが、今までの転生総て……二十歳前には息絶えていました
僕は今世は……源右衛門程長生きをさせてやりたかった……
じじぃになる康太が見たかった……
頑固親父になる康太が見たかった……」
榊原は涙を流して……静かに語った
「僕は諦めてはいません!
僕達の子供が……せめて、成人するまでは…
康太を生かせたい!」
清四郎は榊原を抱き締めた
「私の命を分けてあげれれば良いのに……」
悔しかった
何も悪い事をしていない康太が、何故?
そんな想いで一杯だった
笙は榊原に
「………避けては通れないの?」
と問い掛けた
「皆さんは康太の体躯が……他の人と違うのを御存知ですよね?」
榊原が問い掛けると、家族は頷いた
「康太は前世……炎帝と言う神だった……と言う話は聞いてますよね?
神の力そのままに康太は体躯に秘めているのです
人間の体躯に神の力……炎帝の放つ焔が……康太の体躯の新陳代謝を早めて……体の機能を鈍らせる
康太は飛鳥井家 真贋…動けぬ真贋など要らない……とその力を使う
すると……康太は命を削って明日を繋げて生きてゆく
康太の動きは止まりません……」
清四郎も真矢も笙も……言葉をなくした
過酷な日々を康太は背負って生きてゆく
手を抜かず……
逃げ道など用意せず……
信じた道を突き進む
それが康太の寿命を縮めていると解っていても……
止める事など不可能だった
清四郎は涙を拭い榊原を見た
「想い出を沢山作りましょう!」
と笑った
とても優しい笑みだった
真矢も優しく微笑み
「神野の事があってCMは遅れてます
康太も入れて楽しいCMを作りましょうね」
と榊原を抱き締めた
涙を微笑みの下に隠し、清四郎も真矢も微笑んだ
「我 人生に一片の悔いは遺さず……康太の口癖です
康太は最期の瞬間まで精一杯生きます!
目を離したら…追い付けませんよ?
精一杯、最期の瞬間まで見守って下さい!」
榊原はそう言い立ち上がり両親に深々と頭を下げた
「僕は康太と魂を結びました
康太が息絶えた瞬間、僕はこの世を終えます
死しても共に……僕はそれしか望んでいません
先立つ親不孝を……どうかお許しください」
頭を下げる榊原に清四郎は頭を上げさせた
「解っています!
解っていますから………」
もう……何も言わなくても良い……と清四郎は息子を抱き締めた
「伊織、康太は誰よりも母として生きています
我が子を遺して……そんなに簡単には逝きません
子の身が立つまでは……康太は踏ん張ります
母も康太を支えられる様に踏ん張ります!
伊織、母と言う生き物は誰よりも強いのです」
榊原は涙を一滴流すと笑った
「ええ。康太は誰よりも厳しい母になります
僕は誰よりも甘い父になります」
笙は何も言えなかった
言える言葉なんてなかった
「父さん、母さん、久遠先生が約束してくれました
久遠先生程には長生きさせてやると……
言ってくれました
久遠先生は33歳……その年まで生きられれば…
我が子を繋げて在るべきカタチに出来ます」
「………なら……まだ13年もある……
康太なら丸儲けだぜ!と嗤いますよ!」
真矢はそう言った
榊原も「ええ。」と笑った
その時、榊原の胸ポケットが震えた
榊原は携帯を取り出すと、電話に出た
『伊織、オレを抜かしてオレの話をすんじゃねぇよ!』
何時もの康太の声だった
「康太……何処にいます?」
『清四郎さんちの前』
「………義兄さんは?」
『オレを下ろして帰らせた』
「………今迎えに行きます!」
榊原は立ち上がると玄関へと向かった
ドアを開けて門を開けて……ニカッと笑って立っている康太を抱き締めた
「妻を置いて行くな!」
康太は怒った
「ごめんね、帰りますか?」
榊原は帰る算段をする
それを清四郎が止めに入った
「伊織!私達はまだ康太に逢ってません!」
清四郎は怒るのに榊原はしれっと
「勿体ない……」
と言った
清四郎は「伊織!!」と怒った
榊原は清四郎に、抱き上げた康太を渡した
康太はまた軽くなっていた
「ご飯は……食べましたか?」
清四郎は胸が一杯になって……やっと声にした
「おう!家族で食って来た所だ」
「なら飲み物でも飲んで行って下さい」
「おう!汁もんなら入るな」
そう言う康太を抱き上げて清四郎は家へ連れて行った
応接室のソファーに康太を座らせた
明日菜は康太を見ていた
笙も康太を見ていた
だが何も言えなかった
清四郎はミルクティーを煎れると康太の前に差し出した
榊原がミルクティーに口を付ける
「………奥さん、少し熱いので待ってなさい」
「伊織、熱い……」
外は寒いが清四郎の家の応接室はヒーターでぬくぬくだった
榊原は康太のコートを脱がしてセーターを脱がした
「汗かきましたか?」
榊原は康太を膝の上に乗せると服の中に手を入れた
捲れ上がった服の隙間から……紅い跡が見えた
「伊織、汗かいた…」
「風邪引いちゃいますね」
康太の汗を拭いて風通しを良くして乾かす
「あんでオレを置いてったんだよ」
「…………君の前では話したくはなかったんですよ」
「俺の前だろうが……何処で話してもオレの寿命は変わらねぇよ」
「………それでもね……君には聞かせたくないんです
そもそも僕は諦めてません!
昔は泣きながら君と黄泉を渡るしか術がありませんでした!
でも今世は指を咥えて見えるだけは嫌です!
今世はこんなに君の側で暮らせるんです
医学も進化の一途を遂げてます
君を生きながらせる事は不可能ではないと想ってます
康太……僕の達の子供を見届ける責任があります
ですから僕は最後まで無駄に足掻いて頑張りたいと想います」
榊原は康太にそう言った
「あたりめぇじゃねぇかよ!
オレはまだ死なねぇぜ!
毒素は抜けた……悲観なんてしてねぇよ!
毒素が抜けただけでも大きい
皆が力を合わせて生き長らえさせてくれたんじゃねぇかよ?
それを無駄にするかよ!
今は少し胃が弱ってる……伊織がいけねぇんだ」
康太はそう言い榊原の胸に顔を埋めた
「ええ。僕が忙し過ぎたのがいけないんですね」
榊原は康太の服に手を忍ばせ背中を撫でた
捲れ上がった服の隙間から……背中から脇腹から愛撫の跡が散らばっていた
真矢は笑って榊原に
「伊織!康太を寂しがらせていたら、何の為に飛鳥井の家に住んでいるか解りませんよ!」
とキツい一撃を放った
「…………母さん……康太を抱いた後仕事をしていたのです
それで康太に触るな……と言われました」
「当たり前ね!
抱かれた後に仕事をする男なんて御免よ」
そんな寒い想いなどしなくて良い……
清四郎は「仲直りしたのでしょ?」と康太の愛撫の数に……苦笑して言った
「ええ。今朝方仲直りしました」
「なら良いです」
清四郎は笑って言った
榊原は康太をソファーに座らせると
紅茶を持たせた
「冷めたので良いですよ」
康太は紅茶に口を付けた
康太は明日菜を見ていた
「泣く必要など一切ねぇよ!」
キツい瞳を向けられ明日菜は、息を飲んだ
「オレの為に泣くな!」
「…………それは無理だ……」
「年が明けたら産休に入れ」
「厭だ……」
「お前がすべき事は元気な子を産む事!
それだけだ!他はねぇんだよ!
だから泣くな!何時も笑ってろ!
お前が泣けば腹の子は不安になる!
年が明けたら産休に入れ!命令だ!」
「………気を付けるから……」
「ダメだ!」
明日菜は俯いた……
真矢は「産休ギリギリまで働いてるお母さんもいますよ?明日菜もまだ働けますよ」
とフォローした
「……真矢さん……手強い反論しますか?」
「ええ。明日菜は私の娘ですからね!
本人が産休に入りたいと言えば休めば良いのです
働きたいと言うのなら働かせて構わない
世間のお母さん達はそうして子供を産むのです
明日菜も出来ない事じゃない
大事に寝てても安産にはなりません!
妊婦は動かねば安産は期待出来ません」
「……真矢さん強すぎ……」
「康太は気にしすぎ…」
真矢と康太は顔を見合わせ笑った
「康太、何故私をお母さんと呼んでくれないのですか?」
「伊織の母なればオレにとってもお母さんです真矢さんは!
何故お母さんと言わないかと言うと……オレと一緒の処を目撃されて、その時お母さんと呼んでたら悪用しようとする輩がいるからです
真矢さんを拉致って言う事を聞かせようと言う輩も皆無ではない」
その言葉に………真矢は唖然となった
榊原が続きを話し出した
「飛鳥井康太は要らなくても
飛鳥井家真贋は欲される
手に入れれば望みは総て叶えられる
まるでドラゴンボールの七つの玉みたいな力をもってると誤解してる輩が多すぎるんてす
母さん達は役者です
もし……康太の身内だと認識させたら……それは怖い結果が起こる可能性も視野に入れておかねばならないのです!
紹介して……で済んでるうちは良い……
度が過ぎると拉致られる可能性も出て来ます
飛鳥井の会社にはそんな奴の依頼が後を絶たない
ですから康太は外で僕の両親と逢うのは敬遠します……迷惑が掛かりますから……」
飛鳥井家真贋
その重責の重さを今更ながらに知る
「………康太の眼は……他の真贋とは違う……
持って生まれた……眼を持ってます
だから稀代の真贋と言われるのです……」
康太は清四郎と真矢に謝った
「………本来でしたらオレとは関わるべきではないのです!」
「康太……私達は君と出逢えて本当に良かった
君は死ぬまで私の心の師匠です」
「………清四郎さん……」
「康太は伊織が何時も言う様に気にしすぎなんですよ
私達は伊織が飛鳥井家真贋の伴侶になった時から覚悟ならしてるのです!
気にしなくて良いんです
君が清四郎さんと呼んでくれるのも気に入ってます
真矢もそうだと想いますよ」
清四郎に言われて真矢も
「ええ。気に入ってますよ
康太、今日は泊まって行きますか?」
「………清四郎さん達今凄く忙しいんですよね?
年末年始は一緒に迎えましょう!
年が明けたらCMの撮影を検討します
少しだけ待ってて下さい」
清四郎は「忙しいけどね、それでもね君と過ごす時間はあるんだよ」と笑った
真矢も「そうよ!康太と一緒の時間がなくば、仕事をしている意味がありません!」と言い放った
榊原は「今夜は飛鳥井でも話があるのです」と泊まるのは辞退した
「康太は一生達とも離れようとした
夢の為に……康太の側にいるのは許さない……と。
今後の在るべきカタチを話し合わねばならないのです」
「なら私達が飛鳥井に泊まりに行きますか!
最近忙しくて本当に疎遠になってました」
と真矢が清四郎に言った
「良いですね!今夜は飛鳥井で泊まりますか」
と清四郎は喜んだ
康太は「源右衛門に逢ってやって下さい!」と頼んだ
「口には出さないけど寂しがってます」
「では飛鳥井に泊まります
仕事も一段落着いたので休みたいです」
と清四郎は心底呟いた
真矢も「そうね。本当に疲れましたね」と賛同した
清四郎は妻を抱き締めると
「飛鳥井に泊まります
君達二人は新婚気分で楽しみなさい」
と、言った
真矢と清四郎はコートを取りに部屋へと行った
榊原は康太にコートを着せた
榊原のマフラーを康太に巻く
「寒くないですか?」
「伊織は?
伊織が寒いのは厭だ…」
と言いマフラーを取ろうとした
「巻いてなさい奥さん
僕は大丈夫です。」
榊原はそう言い康太の手を繋いだ
清四郎と真矢の支度が調うと、一緒に家を後にした
笙と明日菜はそれを見送った
飛鳥井の家へ帰ると慎一が出迎えた
「家族は全員揃って待っております」
そう言われ康太と榊原は応接室へ出向いた
康太と榊原が応接室へと入って来る
その後に清四郎と真矢も入って来た
清四郎と真矢は静かにソファーに座った
康太は何時もの席にドカッと座ると足を組んだ
「瑛兄、良いぞ!話をしようぜ!」
康太に言われ瑛太は本来の話を切り出した
「明日の大掃除の後の仕出し弁当は父も母も私も払います!
料金を四等分して下さい」
瑛太は一歩も引く気はなかった
榊原は慎一に仕出し屋の請求書を持って来るように頼んだ
今年は慎一が頼みに行ってくれたのだ
暫くして慎一が仕出し屋の請求書を持ってきた
そしてちゃんと四等分に計算されて、それを瑛太に渡した
榊原は「僕は忙しかったので慎一に注文を頼んだんです」と経緯を話した
瑛太は請求書の金額を清隆と玲香に渡した
二人は財布を取りに行き、キッチリ四等分の自分の分のお金を慎一に支払った
瑛太も財布を取り出すと慎一に自分の分を支払った
榊原も財布を取り出すと……
「………僕が支払うつもりでした……」とボヤいた
康太に支払わせようと考えなきゃ良かった
と後悔しても既に遅かった
康太はせっせとコートを脱いでセーターを脱いだ
そしてズボンも脱ごうとするのを榊原が止めた
「………君……此処で全部脱ぐ気ですか?」
「だって暑いかんな!
んなの着てたらむさっちまう」
そう言い康太はズボンも脱ぎ捨てた
榊原は慎一に鍵を渡した
「短パンお願いします」
慎一は鍵を受け取ると、康太の脱ぎ捨てた服を持って榊原の寝室に向かった
康太の内股にも……かなりの跡があり……
家族は目のやり場に困っていた
「康太……君……」
「あんだよ?」
ニコニコ笑って聞かれれば……文句など言えなくなる
「本当に熱がりですね……」
「仕方ねぇもんよー」
「力は使ってませんよね?」
榊原は心配して康太に尋ねた
「使うなって言われたから使ってねぇかんな!」
「当分メラメラしたらダメです」
「ならムラムラしとく」
「…………!!……」
榊原は返答に困って固まった
瑛太は爆笑した
清隆も玲香も、清四郎も真矢も爆笑だった
そこへ慎一が康太の短パンを持って来た
短パンと鍵を榊原に差し出し
「康太の服はベッドの横のソファーに掛けておきました」
と榊原に告げた
榊原は康太の短パンと鍵を受け取り、康太に履かせて
「慎一、悪かったですね」
と詫びた
やっとこさ目のやり場に困らなくなると瑛太は
「一生達とは、どんな話し合いになりました?」
と尋ねた
慎一は「俺は康太の為にいる執事ですから、側を離れる気は皆無です」と告げた
一生は「俺は康太の為にいる仲間ですから、康太のいる場所にいるのは当然!離れる気は皆無です!」と告げた
聡一郎も「僕は康太がいない世界に生きる気は皆無なんです。僕を生かすは飛鳥井康太!ですから!」と言い放った
康太は唇を尖らせて
「オレの周りは頑固者ばっかしだかんな」とボヤいた
瑛太は「君が一番の頑固者でしょ?」と言うと
「まさか……オレ程素直な子猫はいねぇぞ!」
と言い………顰蹙を買ったのは言うまでもない
一生は「おめぇが子猫なら俺は子羊やんか!」とボヤき
聡一郎も「君が子猫なら僕は天使で通りますね」と呆れた
真矢も「あら良いわね、なら私は聖母で良いわ」と言い笑った
康太は「……真矢さんまで……」と拗ねた
尖った唇に榊原がチュッと口吻た
「伊織……」
「奥さん、諦めなさい
君の側でなきゃ生きられないんですから……」
「オレは伊織の側でなきゃ生きられねぇ」
「康太!僕も君の側でなきゃ生きられません」
熱い抱擁をする二人を尻目に、慎一は玲香に飲みますか?と尋ねた
「慎一頼めるか?」
「ええ。お酒なら酒屋で頼んで仕入れてます
つまみは作り置きをして冷凍庫に保存して
暇な時に作っておくと後で便利なのです」
玲香は苦笑した
多分……京香が帰って来たとしても……慎一程の細やかな、遣り繰りは出来はしない
慎一は日々の生活費を遣り繰りして、余ったお金でお酒をドサッと仕入れて保管していた
そしてつまみは作り置きをして、冷凍庫に保存していた
何もかもそつなく熟す……主婦顔負け……って言うか飛鳥井は既に負けてる……強者の執事だった
慎一がお酒の準備をする
一生と聡一郎も手伝って準備をする
もぉ家の事は……彼等がやった方が早いし完璧だった
新婚な二人をよそに宴会は始まる
榊原は源右衛門のお酒を「薄くして下さい」と注文を付けた
最近、康太と一緒に源右衛門の健康管理も榊原がしていた
源右衛門は「薄いと美味しくない……」とボヤくと慎一が
「………伊織に言いますか?」と尋ねた
「彼奴は聞きはせぬだろ?
点滴も痛いから嫌だと言うのに……毎回引き摺って連れて行く……食事も康太と一緒に制限しましょうか!と言いやがる…」
と、ブチブチ愚痴った
清隆と玲香は源右衛門の事は……管理していなかった
源右衛門の管理は榊原がしているのか……と、今更ながらに気付いた
榊原はニコッと笑って
「源右衛門、寄る年波には勝てないのです!
メンテナンスを欠かして手遅れにならない様に気を付けねばなりません!」
と、ピシャッと言い放った
源右衛門は薄い……お酒をチビチビ飲んでいた
清四郎は可哀相になって榊原に
「………お酒位……大目に見れませんか?」
とお願いしてやった
「見れません!源右衛門は康太同様、毒を飲んで来ましたからね
体内から概ね毒は抜いても内臓は弱るのは早い
お酒は少しなら良いが、大量に飲めば血行が良くなり動悸が激しくなります
薄いお酒で少しずつしか認めません!
源右衛門は僕達の子供の守をせねばならいのです!
後7年は生きねば、清香に恨まれます!」
そう言われれば……清四郎は何も言えなかった
清隆は榊原に頭を下げた
「伊織が源右衛門の管理をしてくれているのですね
本当に君には頭が下がります」
榊原は清隆を止めた
「飛鳥井清香は僕にも頭を下げて源右衛門を頼むと言いました
僕は清香に頼まれたので責任があります
日頃の健康管理、そして呆けない為に子守をさせねばと想ってます
源右衛門は最近、家で塞ぎがちです
体がしんどいから外に出ない……悪循環です
子供も歩く子も出て来ました
源右衛門と京香で子守をしながら余生を送る
それを誰よりも望んでるのは清香です」
玲香は「源右衛門の面倒を見ねば……と思っておったが、会社が遠くなったのと、今の職場は遣り甲斐がある
教え甲斐があるから夢中になってしまっていた
伊織がいればこそ、飛鳥井は回ってゆく
本当に無くせない存在……それが伊織だ
本当にありがとう伊織」
「辞めて下さい!
僕は康太の傍にいたいのです
そして康太の護る家族や会社を護りたい
それだけしかありません!
源右衛門が泣いても……鬼になって管理せねばならないのです!」
榊原が言うと源右衛門は
「…………飛鳥井で一番怖いのは伊織じゃ……」
とボヤいた
清四郎は源右衛門に、薄いお酒を作って注いだ
「父さん……息子の性格は……私も泣かされてます」
「………誰に似たのだ?」
「……………妻?」
清四郎はボソッと言った
だが真矢は聞き逃してはいなかった
「……私ですか?あなた?
こんなにも、優しい私に言いますか?」
と冷たい視線を送った
後はもう大爆笑で飲み食いして、話に花が咲いた
康太は榊原に跨がり抱き着いて眠っていた
スヤスヤ榊原の胸の中で安心して眠っていた
「なぁ、伊織、来年の3月には新居に引っ越せるんだよな?」
一生が榊原に問い掛けた
「ええ。一生今年は桜の季節になっても消えないで下さいね!
横浜で花見をしたいのです!
一昨年は君を探して潰れました
去年も君を待ち続けて……潰れました
来年こそ!横浜で花見をしたいのです」
やぶ蛇だった
「………旦那……俺を虐めて楽しいか?」
「虐めてません。本当に康太の前から消えるのは辞めて下さいね
去年の康太は見るに耐えれませんでした
ですから北海道まで花見に行く強行に出るしかなかったのです……」
榊原はしみじみと言葉にした
すると聡一郎も………
「……あの時の康太は見ていて辛すぎました
一日応接室で過ごして音がすると玄関に飛び出した
君が帰って来るが解る所で一日中君を待っていました…あんな康太は今年は見たくない……」
と言葉にした
慎一が
「………康太は桜を見る頃になると消える奴がいる……とボヤいてました
桜の咲く頃は……鎖で繋いどくしかないですかね?」
と思案した
飛鳥井の家族も榊原の家族も大爆笑した
夜が更けても飛鳥井の家は暖かく
笑い声が響き、笑顔が満ちていた
清四郎と真矢は、やはり、この場所に還って来たいと何時も想う
家族の温もりに満ちたこの空間にいたいと願う
そして応接室で、皆疲れて眠りについた
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