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第9話 年の瀬 ①
12月28日、御用納めの日
「飛鳥井建設 大掃除の火蓋が気って落とされました!
飛鳥井建設に伝説の大魔神が降臨して会社の汚れを、総て消し去る日がとうとう来ました!
解説は緑川一生がお届け致します!」
一生は箒を手にして実況中継をしていた
康太は笑って一生の横にいた
慎一は清隆の会長室の掃除を手伝いに走った
聡一郎は瑛太の社長室へと駆けて行った
榊原は一生をギロッと見た
一生は慌てて箒を手にすると康太の真贋の部屋の掃除へと向かった
榊原は副社長室をピカピカに磨き上げていた
康太はソファーに座ってニコニコ笑っていた
「辛くないですか?」
「大丈夫だ伊織!
そんなに気にするな!」
「気にします!
君をしにしなくてどうしますか!」
「伊織、愛してるかんな!」
「僕も君だけを愛してます!」
榊原は康太の唇に口吻けた
「僕は各部署周りします
君は?どうしますか?」
「着いてく!」
康太がそう言うと榊原は手を差し出した
康太はその手を掴み歩き出した
社内を榊原が歩くと緊張が走る
各部署に顔を出すと社員は一列に整列した
今年の社員は大分変わっていた
部屋の中を皆で協力してピカピカに磨き上げていた
隅から隅まで榊原がチェックする
「総務部パーフェクト!」
榊原はそう言うと陣内が榊原に封筒を差し出した
榊原は陣内を見て何ですか?尋ねた
「ペナルティーじゃなく自分達の意思で払いたいと言い出したのです!
お受け取り下さい」
陣内はそう言い榊原に頭を下げた
総務の社員も一斉に頭を下げた
榊原は封筒を受け取って
「皆さんのご好意受け取らせて戴きます」
と言い封筒を胸ポケットにしまった
経理に出向くと経理部一同整列した
やはり此処もピカピカに磨き上げられていた
「今年はつまらないですね‥
怒る要素が一つもないじゃないですか!」
と残念がった
蒼太は榊原に頭を下げ、封筒を差し出した
「我が部署も全員支払うと言っくれましたので集めました!お納め下さい」
榊原は礼を言い封筒を受け取ると胸ポケットにしまった
建築、施工、設計部署へと回った
相手は猛者ばかり、さぞかし汚かろ…
想って出向くと肩透かしだった
ピカピカに磨き上げられていた
下手したら一番綺麗かも
榊原は「綺麗ですね…」と言い苦笑した
栗田は榊原の前に出て深々と頭を下げた
「社員はこの日の為に頑張りました!
他の部署には負けまいと、日頃から整理整頓に気を付けていました」
「とても綺麗です!」
栗田はありがとございますと、榊原に頭を下げ封筒を差し出した
「我が部署も他の部署同様、自らがお金を集めました!どうぞ、お受け取り下さい」
榊原は「皆さんの想い、確かに受け取りました」と言い、胸ポケットに封筒をしま
「今回は5階まで業者の方に持って来て貰います
地下駐車場は他の住民もいますので迷惑になりますので、放送がかかったら5階のエレベーターの前に集まって下さい」
榊原はそう言い康太の肩を抱き締めた
栗田は痩せて顔色の悪い康太に声をかけた
「康太…体調が悪いのですか?」
「あんでだよ?」
「かなり痩せましたよね?」
「気にするな!オレの健康の管理は伊織がする!
お前は口に出すな!
飛鳥井家真贋の死亡説も流れたんだぜ
不用意な事は口にするな」
「解りました!」
「一夫、本当に気にしなくて良い」
「貴方を気にしない日なんて来ませんよ」
榊原は
「此処で話せば不用意な噂で不安がってる社員の心に影を落とす事になりますよ?」
と栗田を牽制した
「後で副社長室に伺っても宜しいですか?」
「…………他言しない覚悟があれば……」と言い残し……
栗田に背を向けた
榊原は階段6階まで出向くと会長室のドアをノックした
慎一がドアを開けて榊原を迎え入れた
榊原は隅から隅までチェックをした
「流石慎一、卒なく熟してますね!」
清隆は役に立たないのは知っていた
「慎一、此処はパーフェクトです
下へ向かって仕出し弁当の配布の準備をお願いします
僕は義兄さんと康太の部屋をチェックしてから向かいます」
榊原が言うと慎一は
「解りました!
準備に入ります!」
と言い会長室を出て行った
「義父さん、義兄さん達はこの部屋に来ます
暫く待ってて下さい
もうじき義母さんが来ます」
清隆は「解った」と言いにこやかに返した
榊原は康太の手を繋ぐと会長室を後にした
社長室のドアをノックすると聡一郎がドアを開けた
かなりご立腹の様子だ
「……瑛兄さんは乱雑にやり過ぎ!
重要書類も無造作にそこら辺においてあって……掃除以前の話です!」
榊原は苦笑した
「手伝いましょうか?」
「良いです!此処は1番最期で良いです
康太の部屋の一生はサボってませんかね?
一生ですからね」
聡一郎は楽しげにそう言った
榊原は苦笑して社長室を後にした
康太の真贋の部屋をノックすると一生がドア開けた
真贋の部屋はピカピカになっていた
一生………が????
嘘……とよく見ると力哉がせっせと掃除をしていた
なる程……と榊原は納得した
「力哉、慎一を手伝って仕出し弁当の準備をお願いします
そしたら会長室で仕出し弁当を食べましょう!
力哉も来るんですよ!
最近、家族の集まりの中に力哉の姿がない時の方が多い
何かありましたか?」
「何もないです
仕事が終わらなくて家に帰っても……
部屋で仕事をしてる方が多かったんです」
「仕事も大切ですが、家族で過ごす時間も大切ですよ」
「………伊織……」
「皆で笑える時間は大切なんですよ
その中に力哉がいないのはおかしいでしょ?
君は飛鳥井康太と共にいたかったんでしょ?
ならば一緒にいねば飛鳥井の家に住む意味がありません!」
全くその通りだった
距離を取っていた訳じゃない
だが……仕事を口実に……皆と距離を取っていたのは事実だった
バラバラな飛鳥井を見たくなかった
皆……それぞれの道を逝く……
分岐点を力哉は感じていた
だから見たくなかったし……目を反らした
「伊織、皆で食べる食事は美味しいのを‥‥忘れていました……」
「年末年始は家族で過ごします
君も離れずに側にいなさい
どの道隼人も帰って来ます
隼人は力哉がお気に入りですからね
添い寝して欲しいのだ……と言って来ますよ」
榊原は楽しそうにそう言った
力哉は頷いて、慎一の所へと向かった
「伊織、じぃちゃん呼んで来るかんな!」
「一人で行きますか?」
「上だから一人で大丈夫だろ?」
榊原は無言で一生を見た
一生は「俺も行けば良い訳ね?」と榊原に言った
榊原は聞く前に動けと無言の圧力で、一生を見た
「康太……サクサク上に行こうぜ」
一生が言うと康太は笑った
康太と一生は源右衛門を呼びに行った
部屋に入り、源右衛門の部屋に行こうとすると、源右衛門は清四郎達と応接室にいた
「源右衛門を尋ねて下さって本当にありがとうございます!」
康太は清四郎と真矢に礼を言った
清四郎は「父さんの顔を見に来たのです」と、礼に及ばないと康太を止めた
「じぃちゃん、清四郎さん真矢さん
仕出し弁当があるので、父ちゃんの部屋に行くとしませんか?」
清四郎は「それは良いですね!」と笑顔で立ち上がった
真矢は源右衛門の上着を取りに行き、源右衛門に着せた
「お父さん、寒くないですか?」
真矢が源右衛門を気にかけた
一生が飛鳥井の家のドアを持っていた
源右衛門は清四郎や真矢と共に家の外に出た
康太も外に出ると鍵は自動でガチャッと掛かった
一生は非常ドアの鍵を開けた
「エレベーター待つよりは早いぜ」
一生が言う康太は源右衛門に
「じぃちゃん階段で大丈夫かよ?」
と聞いた
源右衛門は「大丈夫だ!わしは階段の方が良い……エレベーターは好きになれん」と答えた
階段を下り役員の階に辿り着くと、一生は鍵を開けドアを開けた
源右衛門達を社内に入れると一生は鍵を掛けた
会長室のドアをノックすると清隆がドアを開けた
玲香は既に到着していて、康太達の顔を見ると笑顔で迎えた
「じぃちゃん呼びに行ったら清四郎さん達がいたんだよ」
清四郎は源右衛門と仲良くソファーに座っていた
一生は康太を会長室に届けると下りて行き、準備を手伝った
榊原は一生を見付けると「康太は?」と尋ねた
「会長室!清四郎さん達もいたからよぉ
源右衛門達と仲良く会長室にいる
それより弁当の余分はあるのかよ?」
一生は尋ねた
すると慎一が「大丈夫です」と答えた
「何かあったら困りますから10個は余分に頼んであります!」
慎一の言葉を聞いて一生は、なら大丈夫だな……と胸を撫で下ろした
社員全員に配り終えると、榊原は
「食べ終えたらこの代車の上にゴミを置いて下さい!」
と言った
事業系のゴミとして一気に出してしまうつもりでいた
慎一が弁当の袋を一生に半分持たせると、上へと向かった
会長室に行くと康太が榊原に飛び付いて来た
榊原によじ登る康太を榊原は抱き上げた
「伊織、瑛兄が来ねぇんだよ」
康太が言うと、榊原は康太を抱き上げたまま社長室を覗いた
ノックしてドアを開けると綺麗に片付いた部屋があった
「聡一郎、お疲れ様
義兄さんもお昼にしますよ!」
榊原が声を掛けると瑛太はヘロヘロで……
「伊織、兄は何時も想うのですが‥‥掃除には向いてません……
聡一郎にかなり迷惑を掛けてしまいました」
と情けなく疲れ果てた声を出して訴えた
「義兄さん、僕が手伝えれば良かったですね
来年からは僕が入りましょうか?」
それは………それでかなり嫌かも……
「伊織が大掃除の監視をせねば……皆は手を抜きますよ……
伊織なれば……社員は言う事を聞くのです」
「今年は文句の付けようもないパーフェクトばかりでした
そして社員が進んでお金をカンパしてくれました
このお金を貯蓄して社員旅行にでも使いましょうかね」
「それは良いです!
君だから社員は進んでやったのですよ
やっぱり君が監視せねば皆はサボりますよ」
「義兄さん、日頃から綺麗になさい!
重要な書類は大切に扱って下さいね!」
やはりキツい一撃を食らわされた
「日頃から片付けに精を出す事にします」
瑛太が言うと榊原は笑って康太を差し出した
瑛太は康太を渡して貰い会長室へと向かった
榊原は真贋の部屋を覗いた
そこに力哉の姿はなくて、安心して会長室へと向かった
会長室へと行くと慎一達が動いていた
各々に仕出し弁当とお茶を出して準備をする
瑛太はソファーに康太を座らせた
その横に榊原が座ると、慎一は榊原に弁当を渡した
榊原はそれを康太の前に置いた
慎一は源右衛門の前に康太と同じ弁当を置いて食べれる準備をした
お弁当の蓋を開けると……柔らかい煮物が詰まっていた
康太は周り見てみた
皆のお弁当は魚や肉で彩られていた
康太と源右衛門の弁当は煮物で彩られていた
康太は榊原を見た
榊原の弁当は、なかった
「伊織は?」
「僕は君のを食べます
そんなに食べれないでしょ?」
「伊織も皆と同じのを食えば良い」
「僕は君が食べてるのを見るだけで満足なので、構わなくて良いです」
榊原は康太を膝の上に乗せると、食事をさせた
康太は少しだけ食べると……食べれなくなり、残りを榊原が食べた
康太を食べさせ視線は源右衛門を見る
「慎一、源右衛門の熱を計って下さい」
榊原はそう言い胸ポケットから体温計を取り出した
一生は、えええええ!!!何で胸ポケットから体温計がぁぁぁぁ~と驚いていた
慎一は榊原から体温計を受け取ると、源右衛門の脇に体温計を刺した
ピピピッと言う音で熱を確認すると
「37°5分です」と答えた
榊原は体温計を返して貰うと除菌して胸ポケットにしまった
「大掃除も終わりです!
慎一、久遠先生に午後から診察に行きますと電話を入れておいて下さい」
慎一は、解りました!と言い会長室を出た
「何時からですか?」
榊原は源右衛門に問い掛けた
源右衛門はくしゅん……とくしゃみをして
「今朝には暑かった…」…と答えた
「こんな赤い顔して!
辛い時は言いなさい!」
榊原は怒った
清四郎や真矢には源右衛門の変化が解らなかった
源右衛門は何時も気丈に振る舞っているから……
なのに榊原の前では悪戯が見付かった子供みたいな顔をしていた
「大丈夫だ、伊織……」
その台詞に榊原の顔は険しくなった
「お弁当も食べれませんよね?
食欲が減るのが1番体力的に厳しい状態になると、煩く言いませんでしたか?」
榊原は源右衛門の横に座った
「もう少し食べなさい」
「味がしない……」
源右衛門がそう言うと慎一を見た
慎一は会長室を出て行くと、何かを取りに行き戻って来た
慎一は榊原に渡すと、榊原は封を切って源右衛門に渡した
「全部飲みなさい!」
「……美味しくない……」
源右衛門は我が儘を言う
榊原は無言で口に差し込むと少しずつ絞った
源右衛門は仕方なく飲んだ
全部飲ませると、榊原は副社長室にコートを取りに行った
榊原と康太の分のコートを持って来ると、康太にコートを着せた
榊原もコートを着ると源右衛門を立たせた
「何着て来たのですか?」
榊原が聞くと、源右衛門は上掛けを取り出した
ピキッと榊原の額に怒りマークが着いた
「一生、源右衛門の部屋に行きコートを持って来て下さい」
一生は「あいよ!」と言い会長室を出て行った
「力哉、お弁当の残りは家に持って行って下さい」
「解りました!
応接室で皆と帰りを待ってます」
「ええ頼みますね」
一生がコートを持って来ると、榊原に渡した
榊原は源右衛門にコートを着せて準備をした
「では、康太と源右衛門を病院に連れて行きます
一生、君も来なさい!その指見てもらいますよ!」
榊原がそう言うと清隆が立ち上がった
「伊織、私も行こうか?」
「ダメです!義父さんは甘いので源右衛門は甘えて言う事を聞きません!」
何と言う言い草……清隆は返す言葉を無くした
ズリズリ源右衛門を引きずって榊原は会長室を後にした
榊原と共に一生と慎一が病院へと着いて行った
清隆は「駄々っ子の源右衛門を見ようとは…」と苦笑した
信頼しているから口に突っ込まれても飲んでいた
玲香も「源右衛門は伊織が怖いのだな」と笑った
瑛太も「最近伊織は情け容赦がないですからね……」と愚痴った
清四郎は「息子が出過ぎでしたら、注意します……」と謝った
清隆は清四郎に
「飛鳥井の家は伊織がいねば回りません
源右衛門は頼りきっているのです!
源右衛門の管理………私達がせねばならないのに……私達も伊織に任せっきりでした
本当に伊織には頭が下がります
出すぎだなんて、とんてもない…
私達の変わりに伊織がしてくれてるのです」
と、逆に謝罪した
玲香は
「本当に伊織には頭が下がる
飛鳥井の家の事は伊織が統べて取り仕切っておる
伊織の変わりには誰もなれぬ」
と日頃の榊原に感謝してると告げた
瑛太は「伊織が背負う分は果てしなく大きい
今の飛鳥井に伊織をなくせば回っては行きません!
社員の信頼も厚い、伊織なればこそ……なんですよ」
と清四郎達に言い聞かせた
清四郎はそうは言って貰っても……あの性格は…
「私達は伊織の性格は知りませんでした
距離を置いていたのと、私が家族を見ていなかったので……知りませんでした
側に行けば伊織の性格の悪さは見えて来ます……
本当に伊織は性格が悪い……
ですが我が子です……
惚れ抜いた相手の側で添い遂げさせてやりたいのです
至らぬ所は直させるので、言って下さい」
清四郎は飛鳥井の家族に頭を下げた
玲香は、清四郎を止めた
「清四郎、性格の悪さなら瑛太も負けてはおらぬ!
伊織だけではない
康太の回りにいる輩は康太にだけ優しい
康太を取り巻く者にだけ優しい
他には容赦がない鬼と変わらぬ
気にするでない!」
玲香の言い草に聡一郎はたらーんとなった
当たってるだけに反論は出来ない
聡一郎は
「義母さん……図星刺しすぎ…」と零した
「僕も康太を取り巻くモノ以外は、どーでも良いので悪魔と言われますが、構いません
康太のいる場所にしか生きて行くつもりはないので、それで構わないのです
伊織も多分そうなんでしょうね
康太の護るモノを護りたい
それ以外は、興味もないんですよ」
と本音を吐露した
真矢は「聡一郎はいい子よ!」とニコッと笑った
「もぉ、飲みますか?
僕が準備しちゃいますよ?」
「それはよいのぉ」
玲香が言い、大掃除を終えたら直ぐに宴会に突入した
年末は泣いても笑っても、後少しだから……
笑って過ごさなきゃ……
そんな思いが大きかった
そんな飛鳥井を余所に榊原は康太達を主治医の病院へと連れて行った
康太と源右衛門は点滴
一生は治療、慎一はもう傷は治っていた
久遠は榊原に
「点滴は明日まで続ける
年内はそれで終わりだな
来年は四日から来い
それまでは薬で押さえられると思う
何かあったら電話して来い!」
と説明した
榊原は久遠に深々と頭を下げた
「本当にありがとうございます」
「年が明けたら検査する
落ち着かねば……入院してもらう
個室を取るから伴侶殿も付き添えば良い
でねぇと病院から逃げ出すからな!
あ!そうだ、昨日、弥勒と紫雲が病院に来たぜ!」
と、意外な言葉を告げた
「え??弥勒と紫雲が……ですか?」
「おう!康太の病状を教えやがれ!と脅迫さながらの態度で来たからな、病状は教えられねぇ!と言ってやった
そしたらデカい図体して泣くんだ
ボロボロ泣いて教えてくれねば帰らねぇと抜かすからな、教えておいた
本来家族以外には教えてはならねぇんだけどな……帰る気0の奴には……負けるわな」
「久遠先生、本当にご迷惑おかけしました
彼等は康太の事を誰よりも心配すればこそ…ですので、教えて構いません」
「おめぇも大変だな……」
久遠はしみじみと言った
飛鳥井康太の回りには厄介な奴ばかりだから……
榊原は笑って
「康太を奪おうとしなければ、僕は大概のモノは構いません!
僕から康太を奪うなら…容赦はしません!」
久遠は………コイツが1番厄介かも……
と今更ながらに感じていた
でなければ飛鳥井家真贋の伴侶では、いられない
強靭な精神力がなければ……支えられはしない
「年末年始、何かあれば直ぐに連れて来い
俺は入院患者もいるから敷地内の家から出る事はねぇからな、駆けつけられる」
「何かありましたら、宜しくお願いします」
榊原は深々と頭を下げた
「点滴が終わったら帰って良い
事務も年末年始は閉めてる
清算は年が明けてからじゃねぇと無理だな」
「解りました。」
「源右衛門は注射も打っておいた
熱は下がるが、年だからな
拗らせたら中々治らんだろう、気をつけてやってくれ」
「解りました」
久遠は説明をすると榊原から離れた
康太と源右衛門は点滴を終えると、榊原と共に飛鳥井の家に帰って行った
車の中で榊原は一生に
「一生、寝てないでしょ?君
熱も出てるので、少し寝なさい」
と告げた
「………大丈夫だ旦那……」
「君の大丈夫は当てになりません
熱も痛みも出てるんでしょ?
慎一、少し冷やして様子を見て鎮痛剤を使わねば、一生の体が参ってしまいますね」
「……ええ。様子を見ていましたが、やはり無理してますからね……」
慎一は心配して様子を見ていた事を榊原に伝えた
飛鳥井の家に帰ると、そこは宴会と化していた
源右衛門は交ざろうとするが、榊原に捕獲された
「熱が出てるのにお酒はダメですよ!」
源右衛門は情けない顔して……榊原を見た
「家族がいるなら皆といたいのじゃ……
一人で部屋にいるのは……淋しい…」
と訴えた
榊原は源右衛門のコートを脱がすとソファーに座らせた
お酒でなく栄養剤を溶かした水を持たせた
源右衛門はそれをチビチビと飲みながら、ニコニコ笑っていた
榊原は一生のコートも脱がせるとソファーに寝かせた
慎一が一生の手を冷やす準備をした
康太はコートを脱ぐと榊原に渡した
「コートを片して来ます
少し一人にします。待ってて下さいね」
チュッと康太の唇に口吻を落とすと榊原は応接室を出て言った
康太もニコニコと笑ってソファーに座っていた
瑛太は康太を抱き上げると頬にキスを落とした
「病院はどうでした?」
瑛太が優しく問い掛けると康太は一言
「痛かった!」と返した
康太らしくて……瑛太は苦笑した
「君の欲しいモノを買ってあげます
だから伊織を困らせらダメですよ……」
「おう!大丈夫だ!
困らせてなんかいねぇもんよー」
瑛太は康太の頭を撫でた
応接室に榊原がやって来ると、瑛太は榊原に康太を渡した
康太は榊原の首に腕を回し抱き着いた
慎一は一生を冷やしていた
応接室の備え付けの救急箱から体温計を取り出すと慎一に渡した
慎一は一生の脇に体温計を挟んだ
「聡一郎、慎一と変わって下さい
慎一、康太と源右衛門の食事を。
僕達も何か食べましょう!」
榊原が言うと聡一郎が
「弁当があるよ!皆で食べれる様に買い足しといた!」
と、榊原に言った
「良いですね、では皆で食べましょうか!
力哉、準備をお願いします」
聡一郎はピピッと鳴ると、一生の脇から体温計を取り出し確かめた
そして無言で榊原に差し出した
榊原はそれを受け取り静かに怒った
榊原は体温計を慎一に渡した
慎一はそれを見て……
「………この子は馬鹿ですかね?」と溜息を吐いた
康太が体温計を覗くと38°7分の文字を見た
「んとに、馬鹿だわ……」
と呟くと一生は泣きそうな顔をした
「無理するな……って胃潰瘍の時に言わなかったかよ?」
「無理なんかしてねぇ……」
一生はポロッと泣いた
「泣くな……一生」
一生は目を擦ると
「泣いてねぇ!」と強がった
榊原は一生を見ると
「一生、鎮痛剤は胃潰瘍になる可能性があるので、君に出された痛み止めは座薬なんですがね……誰に刺して貰いたいですか?」
と、まさかの発言をした
一生は顔を真っ赤にした
「……座薬?」
「ええ。お尻の穴にブスッと刺す……アレです!」
「……自分で遣るから構うな!」
「そう言う訳にはいきません
奥まで挿入しないと効果はないですからね」
榊原は楽しそうに、そう言った
康太が「俺が刺してやる」と言うと
榊原が「君の指は短いので却下です」と言った
康太は榊原の手を広げ、自分の手と合わせていた
憎たらしいが榊原の指は長い
そしてピアノをやってただけあって手が綺麗なのだ
康太はうっとりとして榊原の手を見ていた
慎一が「では俺がやります」と名乗りを上げた
榊原は「……無理矢理押し込むと切れますよ?出来ますか慎一に?」と心配した
慎一は撃沈した
康太は「オレがキスしてっから伊織が突っ込めば良いじゃんか」と言った
「それは良いですね!
では一生、リビングまで来なさい」
榊原は、そう言い一生を引っ張って応接室を出て行った
リビングのソファーに一生を寝かしズボンと下着を脱がすと、康太は一生に執拗な接吻をした
榊原は脚を持つと折り曲げた
康太のキスで意識が朦朧となってると、後ろに指を突っ込まれる感触がした
「……んっ……ぁ……」
一生は動こうとしたが、動きを封じられていた
榊原は一生のお尻の穴で座薬の先っぽで少し溶かし、奥へと挿入した
そして押し出そうとする腸癖を見越して指を抜かなかった
溶けるのを見計らって腸癖を、確かめる
その刺激で一生の股間は勃っていた
「康太、勃たせた責任は取らないだめですかね?」
「抜いとく?」
「康太、挿れますか?」
「おう!それ良いな!」
「君が一生の中に挿れたら僕は君の中へ挿れます」
「少し疲れさせねぇと寝ねぇかんな…」
「睡眠薬より効果は絶大ですからね」
榊原は一生を寝室に連れて行くと、寝室の鍵を掛けた
ベッドの上に一生を寝かすと服を脱がせた
「……冗談は……」
一生は後ずさった
「冗談じゃなく君には睡眠が必要ですよ」
康太は服を脱ぐと一生に執拗な接吻を送った
一生の上に乗る康太の脚を掴むと榊原は、康太の双丘を割って、お尻の穴を舐めた
康太は身躯を下へと這いずって叢に聳え勃つ性器を掴むと舐めた
康太の舌で翻弄されて一生は喘いだ
「……ゃめ……あぁっ……イッちまう……」
一生は腰をよじったが、呆気なく康太の口に吐き出された
はぁ……はぁ……息を荒く一生は放心状態だった
康太は一生のお尻の穴に指を差し込んだ
座薬が溶けて、一生の穴は程よく濡れていた
榊原は康太の腸癖を擦り上げ勃起させると
一生を俯せにした
腹に枕を差し込むと康太の性器を導いた
一生の穴に康太の性器が飲み込まれて行く
榊原は背後から康太を抱き締めると、更に深く康太のお尻の穴に性器を埋め込まれた
榊原が康太の中を擦ると、康太は一生の中を擦り上げた
意識が朦朧としていた一生は体内に康太の肉棒を感じて
「……あぁ……ゃめ……ぁん……いやだ…」
と抵抗した
榊原は容赦なく腰を使うと康太は鳴いた
鳴いて一生を突き上げた
「康太、君の中……凄すぎです……」
一生が締め付けるから……康太は感じ過ぎていた
康太はもう訳が解らなくなっていた
榊原が齎す快感に溺れて……鳴き続けた
一生も康太が絶妙な角度で責めて来るから…
息も絶え絶えに……喘いだ
康太はイク瞬間、性器を抜いて外に射精した
そして萎えない性器を挿入して
康太は何度イッても、榊原の齎す刺激に勃起して、一生の中を擦った
一生は意識を、手放して……気絶していた
だが、榊原は終わらなかった
康太も気絶すると、一生の中から抜いて、膝の上に乗せた
そして康太を下から貫いて、繋がり更に抱いた
「康太、愛してます」
ツンっと勃ち上がった乳首に吸い付き、執拗に乳首を舐めた
赤く熟れて美味しい乳首を榊原は何時まで口で愛して、康太の中を堪能していた
榊原は康太の中から抜くと、寝かせて脚を折り曲げた
康太の秘孔は口を開いて、榊原の精液を零していた
榊原は秘孔に口吻た
健気に榊原の性器を咥え続ける穴が愛しい
榊原はペロペロと舐めて、康太の腸癖を掻き回し精液を掻き出した
康太の中の精液を掻き出すと、気絶した一生を起こした
一生は起きるなり
「……もぉ……勘弁……」とボヤいた
「犯りませんよ?
お風呂に入らないと気持ち悪いでしょ?」
「………旦那……悪かった……」
「君は無理し過ぎなんですよ」
「………自分では……無理してる気はねぇけどな……」
「無自覚程タチの悪いのはいませよ!
少し休みなさい!でなければ入院させますよ!約束出来ますか?」
「する、約束する!」
「では、起きてお弁当食べに行きます
そしたら君は薬を飲んで寝なさい」
「解った!言う通りにする」
榊原は康太を抱き上げると、一生を支えて浴室に向かった
湯を溜めて、その間に身躯を洗う
榊原は一生の体躯を素早く洗うと浴槽に入れた
康太の中も外も綺麗に洗うと、浴槽に入れて一生に持たせた
そして自分の体躯も洗うとシャワーを浴びた
「さぁ出ますよ」
と康太を受けとるとバスタオルで包み、一生にもバスタオルを渡した
体躯を拭き終わると洗濯物を洗濯機の中へ入れ、榊原は康太の髪を乾かすと一生の髪を乾かした
そして、自分の髪を乾かし、支度をした
服を着せてると康太が意識を戻した
「……伊織……乳首吸ったろ……」
乳首がピリピリ痛かった
そして服が擦れると……ヤバい感覚に目が醒めた
「……美味しそうに目の前にありましたからね……」
エッチを始めた時はバックから挿入されていた
乳首を吸うのは不可能だと言うと……
気絶した後に吸ったのかよ……と、康太は想った
「伊織、プリン食いてぇ……」
「なら応接室に行きますよ」
榊原は康太を抱き上げた
そして一生を連れて応接室に戻った
応接室は酔っ払いが出来上がっていた
源右衛門は大人しく榊原が用意したドリンクを飲んでいた
慎一が榊原の前に弁当を置いた
康太の前にプリンを置いて、準備した
榊原は康太に消化の良い所を食べさせた
康太は餌付けされてるハムスターみたいに榊原の箸から食べ物を食べさせて貰いモグモグしていた
少し食べるとプリンをむいて康太に持たせた
一生は大人しく弁当を食べていた
首には……赤い跡があった
聡一郎は赤い跡を指で指した
「………跡……付けられる事しましたか?」
ピキッと一生は固まった
康太は笑って「マーキングだ捨てとけ聡一郎」と言った
「……一生だけマーキングなんて狡い!」
「今度聡一郎もマーキングしてやるよ」
聡一郎は一生の服の中を覗き込んだ
瑛太も便乗して覗き込む
すると全身……吸われた跡があった
一生は抵抗する気力も残ってなかった
「慎一、一生は此処で寝かせとけ
どうぜ、家族は此処で酔い潰れるんだろ?
皆の場所に置いておいて構わねぇ
じぃちゃんも皆といてぇだろうから構わねぇ
だが気にかけてやってくれ!」
康太は一生に薬を飲ませると、ソファーに寝かせ毛布を掛けた
慎一は「解りました」と言った
康太は食事を終えて薬を飲むと寝室に帰って行った
ベッドに入って榊原の胸に顔を埋め、康太は眠りに落ちた
榊原は康太を抱き締め、眠りに落ちた
康太は魘されていた
苦しげに魘されて、涙を流していた
榊原は康太を揺すった
「……康太……康太……」
名を呼んだ
康太は目を醒まし榊原に抱き着いた
「……いお……」
伊織と名を呼ぼうとして……
ゲホツと血を吐いた
榊原の胸を鮮血が流れて濡らした
「康太、病院に行きます
待ってなさい!」
榊原は起き上がると全裸のままリビングに向かった
保険証を出して、車の鍵を用意した
トイレに行こうとして廊下に出た慎一は、康太の部屋を見るとリビングに電気が点いていた
慎一は何かあったのかと、リビングのドアを開けた
すると血塗られた榊原が全裸で立っていた
「……伊織!」
慎一は叫んだ
慎一の声を聞き、一生が応接室から飛び出してリビングに顔を出した
「旦那!何があったんだよ!」
一生は慌てた
榊原は、しーっと人差し指を唇に当てると黙らせた
「康太が血を吐いのです」
一生はリビングの扉を閉めた
「旦那、シャワー浴びて来いよ
俺と慎一が康太を拭いておく!」
「頼みます」
榊原はそう言うと浴室へと向かった
一生はタオルを湿らせると寝室に向かった
ベッドで寝る康太を綺麗に拭いた
慎一は康太の身躯に服を着せた
そしてベッドのシーツを剥がした
榊原は浴室から出て来て支度を始めた
「慎一、そのシーツは捨てて構いません」
「解りました」
榊原は服を着て支度をすると康太を抱き上げた
慎一が久遠に電話を掛けた
直ぐに連れて来い!と言われて榊原は康太を、連れてリビングを出た
慎一が先に出てドアを開ける
一生がドアを閉めて、先を促した
地下駐車場まで向かい榊原の助手席に康太を寝かせた
一生と慎一は後部座席に乗り込み、飛鳥井の主治医の病院へと向かった
病院に着くと久遠は待ち構えていた
康太をストレッチに乗せてると処置する為病院の中へと連れて行った
一生は何があったんだよ?
と榊原に尋ねた
「今朝方康太は魘されていたんです
苦しそうに魘されてたので、起こしたら
伊織……と名前を呼ぶと同時に吐血しました
後は君達が駆け付けて、知ってる通りです」
榊原は苦しそうに待合室に座っていた
手が白くなる程握り締め…堪えていた
永遠とも言える長い時間を堪えていると久遠が顔を出した
「今は点滴を打ってる
眠ってるからな話を聞かせてもらおうか!」
久遠は、榊原の横にドサッと座った
榊原は一生達に話した事と同じ事を久遠に話した
「あの坊主は何かを悩んでいる
胃に穴を開ける程にな、悩んで苦しんでる
その原因を取り除かねぇと何度も同じ事の繰り返しだぞ」
「……康太が苦しんでいるとしたら……」
榊原は言葉を濁した
慎一が変わりに久遠に話した
「龍と契った産婦の診察をなさいましたね?」
「神楽夏海」
「そうです。康太は夏海の行く末を案じてました……
俺に夏海を託したので、俺は常に夏海と雅龍を見守ってくれと頼まれました…」
「…………人の人生までは背負えねぇのにな…
馬鹿な坊主だな……それで血を吐いて自分を追い込んで……」
「それが飛鳥井康太です!」
慎一は胸を張ってそう答えた
「本当なら入院させてぇんだがな……
明日……その夏海が尋ねて来るから家にいないといけねぇ……と断りやがった
穴は塞いでおいた、吐血はしねぇけどな油断はならねぇ……」
「家に帰ったら寝かせておきます」
「そうしろ!
今日は半日は病院にいてもらう」
「解りました!本当にご迷惑をおかけします」
慎一は久遠に深々と頭を下げた
「伴侶殿、康太の傍にいてやれ!
姿が見えねぇと無茶するだろ?」
榊原は立ち上がると久遠に礼をして処置室へと向かった
久遠は、それを見送り…
「辛いだろうにな…」と呟いた
慎一は何も言わず、榊原の後を追った
榊原は点滴され寝ている康太の横に座った
点滴されてない方の手を握り……頬に当てた
康太の温もりを感じ榊原は安堵の息を吐いた
何度も……何度も……
青龍は炎帝を看取った……
眠る様息を引き取った炎帝と共に黄泉へと渡った
自分の無力さを感じずにはいられなかった
死なせたくなんかない……
誰も愛する人を死なせたくなんかない
だが動けぬ真贋など要らぬ……と言う炎帝の言葉に止める事も叶わず
一緒に逝くしか出来なかった
愛しています……
愛してる
愛してる
愛してる……
榊原は堪え切れずに泣いた
出来るなら………
もっと楽な道を逝かせたい
こんな険しい道など……逝かせたくなどない
炎帝………ずっと一緒に……
それしか願っていません
君のいない世界では一秒たりとも息なんか出来ない……
君がいなければ……
僕は狂ってしまう……
正気でなどいられない……
「……愛してます……」
榊原はとめどなく流れる涙を拭う事なく
康太に口吻た
康太の顔に……榊原の涙の雫が落ちて……
零れた
「………伊織……」
康太は榊原を見た
「泣くな伊織……」
康太は榊原を抱き締めた
「………君のいない世界では……一秒たりとも生きられません……」
「オレはまだ死なねぇよ……」
「……血を吐く程に……君は苦しまなくても良い……
頼むから……哀しまないで……」
「………伊織……すまねぇ……」
「康太……愛してます」
「オレも愛してる
青龍だけを愛してる」
榊原は康太を抱き締めた
その腕が震えていた
康太は……榊原を苦しめている自分が恨めしかった
泣かせたい訳じゃない
だが……逝く道は険しく……
倍速で生きて逝くしかない
自分の命を削って生きている
榊原を泣かせたい訳ではないが……
現実は苦しめている
「………伊織……ごめん……」
「謝らないで良いです
それが君ですからね……」
榊原は康太の頭を撫でた
点滴を打たれた康太は、榊原に優しく撫でられて…
眠りに落ちた
榊原は康太の顔を……ずっと見つめていた
苦しまなくて良い……
康太……
榊原は康太の、眠りを守る様に傍にいた
午前中一杯、康太は病院で過ごした
久遠に昼過ぎに「帰っても良いぞ」と許可されて飛鳥井の家へと帰って行った
飛鳥井の家に帰ると瑛太が飛び出して来た
昼を回っても寝室から出て来ない康太を心配しつつ……
激しく愛し合って寝てたら……起こすのは可哀相だと焦れてた
やはり寝室をノック位は許されるかな……と立ち上がると聡一郎に
「康太なら寝室にはいませんよ」
と言われた
…………え??何があったのか??
と聡一郎に尋ねると
「伊織が病院に連れて行ってます……」と教えた
聡一郎は起きて見ていた
だが、病院に行くのなら大人数で行っても仕方ないと見送った
「瑛兄さん、今日は飛鳥井の大掃除です!
部屋は片付いていますか?」
康太の事は榊原がする……と言われたも同然の言葉に……瑛太は情けなく聡一郎を見た
「………そうでしたね
今日は飛鳥井の大掃除でしたね
伊織は………無理でしょ?」
「伊織は康太がいれば生きて行けます
僕達も康太がいれば生き行けます!
大掃除になんら支障はないですよ?」
「…………聡一郎……康太の顔を見ねば……何も手に着きません……」
「ならば、顔を見たら片付けに行かないと…
『埃で死にたいのですか!』と雷が落ちますよ!」
聡一郎は榊原の物真似をして瑛太に言い聞かせた
瑛太は嫌な顔をした……
そこにガチャッと玄関を開ける音が響き
瑛太は飛び出した
榊原は疲れた顔をして康太を抱き上げていた
瑛太は榊原に声を掛けた
「……何かありましたか?」
「……今朝方血を吐きました」
瑛太は言葉もなく……榊原を抱き締めた
「伊織……本当にすみません……」
「今康太は苦しんでます
親と子を引き裂く……その試練を与えねばならぬ事に苦しんで……胃に穴を開けました
今回の吐血は穴があく程……苦しんだ康太の想い……でした
元々胃の粘膜も薄くなっている……
そんな時に悩み苦しみ続ければ……吐血してもおかしくはありません」
「………康太は……気にしますからね……」
「………ええ。それが康太です
定めだと解っていても、ギリギリまで悩んで苦しむ……そして泣くんです……」
「……伊織……康太を頼みます……」
「解っています!義兄さん大丈夫です
康太は僕が支えます!
それより、今日は予定通り大掃除やりますよ
康太を寝かせたら部屋を見て回ります」
やはり……どんな時でも榊原伊織だった
瑛太は自室に駆け込み掃除を始めたのは言うまでもない
榊原は康太を寝室に連れて行くと、服を脱がせて寝かせた
「康太、予定通り大掃除せねば……家族は気にします
僕は大掃除をします
君は少し寝なさい」
「一人で寝るのは嫌だ……」
「康太……」
榊原は困った顔をした
すると康太はニカッと笑った
「嘘だ伊織、オレは寝てるかんな!
伊織は飛鳥井をピカピカにしてくれ
来年の春には引っ越すからと、飛鳥井の人間はやらねぇだろうからな!
ここはビシッと掃除しねぇとな」
「力は使わないで下さいね」
「使ってねぇだろ?
お前を泣かせてまでオレは使わねぇよ」
榊原は康太にチュッとキスを落とすと、動きやすい服に着替えた
「寝室のドアは開けておきます
僕達の部屋は大掃除なんて必要ないですからね。」
榊原はそう言い寝室を出て行った
康太は目を閉じた
『………康太……何故自分を追い込むのだ……』
弥勒の声が康太の耳に聞こえた
「追い込んじゃいねぇ!」
『……毒素は抜けたのに……』
「……毒素は抜けたが、毒を喰らった内臓までは元には戻ってねぇよ
源右衛門だって内臓の働きが低下してる
オレは焔をだすかんな……身躯が異常に動き過ぎてる感じは常にあった」
『……お前の焔を封印してしまいたい……』
「お前にオレは封印出来ねぇぜ!」
『……解っておる……また手立てを考えねばならぬ!
我はお前を死なせはしない……』
「弥勒……炎帝と言う神もな、そんなに長生きは出来ねぇぜ
次代の閻魔を確率したら、オレは冥府を渡る
元々オレは冥府のモノだからな
皇帝炎帝……それを呼び出したのはお前じゃねぇかよ!」
康太はそう言い笑った
『我等から炎帝を奪えば……我等は神に直談判に逝く!!
我等の命を懸けて……炎帝は助けたい…』
「弥勒、おめぇらがいねぇのに助けられても炎帝は喜ばねぇぜ!
誰かの犠牲の上に永らえても……炎帝は喜ばねぇ……そうだろ?」
『……それでも……だ!
我等はみすみすお前を見送りたくなどない……最期の瞬間まで……足掻いて悪あがきする!』
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