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第14話 眠り

康太は胃腸が働かない様に低体温にして眠らされていた 睡眠薬を使わなくても体温を下げれば人の機能は眠らせる事は出来るらしい 長期の治療法ではないが、短期の治療では時々使われる事もあった 脳がダメージを受けた場合とか 火傷で身躯がダメージを受けた場合 人は体温を下げて休眠状態に眠らせて容態を整える場合もある 康太がまさにそのケースを適用されていた 吐血を抑える為に内臓の働きを一時的に止める 康太は元旦に入院して……3日経っていた 面会は親族以外禁止となり、戸浪や三木……安曇や善之介は面会すら出来なかった 3日間眠らせて、徐々に体温を上げて行く すると4日目に康太は目を醒ました 目が醒めると榊原の顔があった 康太は憔悴しきった榊原の顔に……辺りを見渡した そこは飛鳥井の寝室じゃなかった 「此処はどこよ?」 康太は榊原に問い掛けた 「主治医の病院です」 「………オレ……何かあった?」 康太には記憶がなかった 元旦の昼前までは記憶はあった その後寝室に行き榊原に寝かされた それ以降の記憶は……抜けていた 「元旦の日、君は息苦しそうでした それで久遠先生に診て戴きましたら、吐血が詰まってると言われて処置して貰い様子を見る為に入院しました」 「今日は何日?」 「1月4日です」 「………4日……お正月が潰れた…」 「辛くないですか?」 「大丈夫だ……伊織……疲れてる?」 康太は一生を探した するとそれに気づき一生は康太に近寄った 「伊織が倒れたら…嫌だ…」 康太はそう一生に訴えた 一生は慎一を見た 慎一は病室を後にした 「……伊織……心配かけてごめん……」 「君が悪い訳じゃないです…」 榊原はそう言い笑った その顔は明らかに疲れていた 久遠が病室に顔を出すと榊原を見た 「成る程、寝かすか?」 久遠が聞くと康太は頷いた 久遠は榊原の腕を掴むと消毒した そしてブスッと注射を刺した 「………僕は大丈夫です……」 榊原が言うのも聞く耳は持たなかった 「おい!ソファーに寝かしとけ! 今、点滴を持って来るからな!」 久遠はそう言い病室を一旦出て行った 慎一は榊原をソファーに寝かせた 「………慎一、僕は大丈夫です」 「貴方が倒れたら康太は余計酷くなりますよ!」 半ば脅して榊原を寝かせた 久遠が点滴を持ってやって来ると、看護師が簡易ベッドを運び込んだ 「おら寝かせろ!」 久遠が言うと慎一が榊原を寝かせた 寝ると腕に点滴をブッ刺された 観念すると……榊原は眠りに落ちた 久遠と榊原の処置を終えると康太に声をかけた 「吐血が気管に詰まっていた 寝かせて吐血を抑えた」 と診察の経緯を告知した 「……お正月なのに悪かった…」 「嫌、構わねぇけどな… 明日検査する、それを見て良ければ退院させてやる」 康太は頷いた 久遠が出て行くと一生が 「辛かったのかよ?」と問い掛けた 「息がしにくかった……」 「そんな時は言えよ」 「ここ最近時々あったかんな 何時もの事だと想ってた…… 一生、伊織は?」 「おめぇにずっと付き添って寝てねぇ 寝ろと言っても聞きゃぁしねぇ…… おめぇが目を醒ます時に僕の顔を見たいから… と言って…ずっと付き添っていたんだ」 「…………4日間…寝ずに?」 「ほぼ、寝てねぇな……俺等は限界超えてるから寝させ様としたけどな……」 「………オレの身躯は……本当に口惜しいな…… 力を使ってなくても……役に立たねぇばかりか 伊織を心配さてばかりだ……」 「………康太……」 「………何故だ?何故……こんなにも伊織に心配させる事になるんだ?」 「康太……今は考えるな…… 早く良くなれば旦那も安心する」 一生は康太の頭を撫でた 康太は悔しくて泣いた…… 心配させたい訳じゃない 心配なんてさせたくない なのに……何故こうなる? 榊原を憔悴させて……倒れそうになるまで…… 心配させた 伊織…… どんな気持ちで4日間オレの顔を見てたんだよ 伊織…… 目醒めねぇオレをみてたんだよ? 口惜しい…… 何故この身躯は伊織をこんなに苦しめる? 康太の嗚咽が病室に響いた…… 病室にいた家族や一生達は…… それを見てられなかった 榊原は丸々一日寝ていた 翌朝、康太は検査をされた その検査の数値で退院が決まる 目を醒ました榊原は康太を探した 何故自分は寝てるんのか……最初は解らなかった 頭がハッキリとして来て、注射と点滴打たれた事を思い出した 榊原はベッドから出ると康太の側に行った 抱き締めると康太の温もりが伝わり……安心した 「あんで倒れる寸前まで無理するんだよ!」 榊原の腕に抱かれて康太は怒った 「………康太?……」 「目が醒めても伊織が倒れたら…… オレは自分を恨みたくなる……」 康太の想いが痛かった…… 「康太……目が醒めて1番に君の瞳に映りたかったんです…… 目が醒めて僕がいないと捜すでしょ?」 「………伊織……心配させてごめん……」 「気にしなくて良いですよ 君は約束を守って力は使ってませんでした 身躯が限界だったんでしょ? 怒涛の日々でしたからね……」 「伊織、辛くない?」 病人に心配されると言うのも……変な気分だった 「寝ましたからね大丈夫です」 「無理すんな……伊織が倒れたらオレは生きて行くのを諦める……」 榊原は康太を抱き締めた 「君を置いては死にません…… 逝く時は君と共に……です」 康太は榊原の背中に縋り付いた ラブシーンを展開していると久遠がやって来た 「………おい……始めるなよ?」 釘を刺したくなる程の抱擁だった 榊原は苦笑して 「………久遠先生……」と名を呼んだ 「明日、退院して良いぞ 後は無理せず薬を飲めば現状維持は出来る」 榊原は久遠に深々と頭を下げた 久遠は榊原の肩を叩き病室を出て行った 榊原は安堵した お昼になって康太の食事が運ばれて食べさせ様とすると普通食になっていた 康太は自分で食べ始めていた 榊原が、あ~んしてと食べさせたかったのに…… 恨みがましい瞳を向けると康太は箸を止めた 「あんだよ?伊織……」 「僕が食べさせてあげたかったのに……」 お粥ならスプーンで掬って食べさせてあげれた 「………伊織……オレ……食える…」 「残念です……」 お昼になり慎一が飛鳥井から作って来たお昼を用意する 「旦那、おめぇも食わねぇと点滴だぜ」 一生に言われて榊原は食事を始めた 康太が食べたくなるから沢庵はいれてなかった 「………井筒屋の沢庵……食いてぇな…」 康太の呟きが悲しげに響いた 榊原はお昼を食べ顔色も良さそうだった 一生や慎一、聡一郎は胸を撫で下ろした 隼人は時差が抜けたら仕事に駆り出されていた 大学が始まったら学業優先になるから、大学がない時は少し仕事に精出させようと真野の目論見だった 翌朝、康太は久遠から退院の許可を貰って退院した 飛鳥井の家にやっと還れる その日は朝から……瑛太も来ていた 清四郎も真矢も笙も来て安堵の顔をしていた 榊原が康太の服を着せたりしている間に、瑛太は慎一を連れて精算を済ませに行った 榊原は荷造りを済ませて精算に行こうとすると一生が 「……旦那……瑛兄さんが払いに行ってる」 と伝えた 「………義兄さんは侮れない男でしたね」 榊原が呟くと瑛太は慎一と病室に戻って来た 「………義兄さん……」 「何ですか?伊織?」 「精算に行っていたんですね」 「ええ。支払っておきました」 瑛太はニコッと笑って答えた 「義兄さん……」 「康太の退院ですからね 祝いをせねばなりませんね」 「義兄さん……会社は?」 「仕事始めは午前中に終わらせて来ました」 榊原は軽くなった康太を瑛太に渡した 榊原は荷物と持つと忘れ物はないかとチェックして 確認すると「行きましょうか」と言った 全員で病室を後にする 病院職員総出で送られ、康太は退院した 榊原は自分のベンツに康太を乗せると運転席に乗り込んだ 康太はニコニコして助手席に座っていた 榊原と共に還れる……その気持ちは大きかった 一生達は瑛太が乗せて、清四郎達は笙が乗せて 飛鳥井の家へと帰った 飛鳥井の家に帰ると清隆と玲香が出迎えてくれた 応接室に入ると………… そこには似つかわしく人物がソファーに座っていた 康太は唖然とした 榊原は康太を抱き上げるとソファーに座った 膝の上に康太を座らせて何時も通りだった 「………ビックリした……」 思わず康太は呟いた 「坊主が退院すると聞いたからな!」 堂嶋正義は笑った ソファーに座っていたのは堂嶋正義と弟の幸哉だった 「康太君大丈夫なの?」 幸哉が声をかける 「大丈夫だよな?オレ」 康太は返答に困って榊原に聞いた 榊原は「安定したので退院しました」と報告した 堂嶋は「この近くに住む事にしたからな!」と報告した 「………正義……本当なら御前は此処に来るべきではなかった…… 運命の歯車が回り始めた……オレは止めたよな?」 康太は悔しそうに堂嶋にそう言った 「坊主……俺等兄弟が今在るのは御前がいたからだ 俺は恩も返せねぇ恩知らずのままいたくなかったんだ 御前は怒るけどな……」 「………正義……御前……本陣突破しようとしてるだろ? 息の根を止めるつもりだろ?」 「運よくアイツの懐刀を潰れせれたからな! 命が上手い話を持ち掛けて来たからな、チャンスだった 外堀を潰して残るは本陣突破……もう止まれねぇ…」 「………与謝野を潰したろ?」 康太は総て見て知っていた 「与謝野はもう頭を潰された 出る事は二度とねぇ……本陣突破…長すぎだ」 堂嶋は長すぎた日々に……想いを馳せた 力を手に入れ、二階堂隆光を潰す! その日の為だけに生きて来た だが相手は強敵で……簡単には潰せる相手ではなかった それが射程範囲内に手が届く…… 「……正義……相手は狂犬だ…」 「………知っている」 「…………御前は何も解ってない……」 「坊主!俺の心配はするな それより身躯をもっと労れ!」 康太は立ち上がると正義に抱き着いた 「………正義……」 堂嶋は康太を抱き締めた 出来る事なら…… 狂った歯車を回させず……止めたかった だが……歯車は回り始めた もう止まれない…… 運命は………動き出していた 康太は願った…… 一生は幸哉に近寄ると耳元で何かを囁いた そして髪の毛を1本抜いて貰った 一生はそれをポケットの中の試験管の中に入れて慎一に渡した 慎一は部屋を出て行った 康太は堂嶋から離れると幸哉にニカッと笑いかけた 出会った……あの日と同じ笑顔だった 「幸哉、熱は下がったのかよ?」 「うん。もう直った 今度からは康太君の側に来れるね」 「幸哉、ウロウロ歩くな…… あ!そうだ!伊織、ネックレス持って来てくれ」 康太がそう言うと榊原は立ち上がり応接室を出て行った 「幸哉、お前にネックレスをやる! それは肌身離さず身に付けていてくれ!」 「解った!絶対に外さない」 「オレが特別に作らせた特注のお守りだ! 外したらご利益ねぇかんな!」 榊原が応接室に戻って来ると康太にケースを渡した 康太はケースからネックレスを取り出すと幸哉の首に嵌めた 「絶対に外させるな!」 康太は堂嶋に念を押した 堂嶋は頷いて「解った」と約束した 康太は榊原の膝の上に乗ると首に腕を回した 一生は堂嶋と幸哉に食事をしませんか?と話し掛けた 「お暇なら飛鳥井の家族や榊原の家族とご一緒しませんか?」 「あぁ。今日は予定もない ご迷惑でなかったらご一緒したい」 康太は榊原に口吻ていた 榊原は康太を抱き締め笑っていた 「………あの二人はお気になさらずに……」 一生は堂嶋はそう言った 「………新婚……だからな」 堂嶋は苦笑した 「一緒に暮らして2年の新婚ですが……」 と一生も苦笑した 「………長い片想いが実ったんだ…… 俺は目を瞑るさ、なぁ幸哉」 「うん!康太君の想いが実ったんだもん!」 「………康太の片想いをご存知か?……」 一生はどれ程古くからの付き合いなんだよ……と思った 「一生、慎一が戻ったら出ますか?」 榊原が声を掛けた 「そうだな!何処を予約しておくよ?」 「料亭ではなく普通の料理屋で構わないですよ」 「なら見繕って予約入れとく」 一生はそう言うと応接室を出て行った 康太は堂嶋に 「知ってると想うが我が伴侶の両親と兄だ」 と紹介した 堂嶋は清四郎達に会釈して 「お久しぶりです! 大阪でお逢い致しましたね!」 と握手をした 清四郎は「この前は話も出来ませんでしたね」と和やかに挨拶をし 真矢も「榊原真矢です」と堂嶋と握手して幸哉を撫でた 笙も「榊原笙です!」と言い堂嶋と握手して 「こんにちは、幸哉君!」と挨拶した 「この前は舞台に招待して下さってありがとうございました」 幸哉は嬉しそうに言った 真矢も「私も今度映画を撮るのよ!撮影所に見学においでなさい」と声を掛けた 幸哉は嬉しそうに笑っていた 幸哉は「瑛兄さん」と瑛太を呼んだ すっかり飛鳥井の家族とも仲良くなっていた 堂嶋は……信じられなかった 「幸哉、どうしました?」 瑛太が言うと幸哉はニコニコ瑛太に 「この前のスィーツは甘すぎでした……」 と話した 「甘過ぎですか? 康太に食べさせ様としたんですが…… 幸哉は大丈夫でしたか?」 「駄目でした……」 幸哉が甘えるから瑛太は幸哉の頭を撫でた 「また探して歩くね! 良い所があったら教えるよ」 「何時もすみませんね」 瑛太はそう言い堂嶋の視線に気付いて 「7年前の取り立てされたいですか?」と笑って謂った 堂嶋は驚いた顔して 「覚えておいででしたか……」と呟いた 「覚えてますよ! 幸哉も覚えていて懐いてくれました 康太のスィーツを探してる時に偶然出逢いました そしたら幸哉が協力してくれると言ったんですよ 私には妻も子供います!邪推はご遠慮願いたい」 「……邪推しておりません… 貴方の態度は弟と変わりない扱いですからね」 瑛太は笑った 「溺愛兄です」 その笑顔の苦悩を目にして……堂嶋は黙った 慎一が戻って来て、皆が外食に行く支度をした 康太にコートを着せて榊原は支度をした なすがまま笑ってる康太は何だか可愛かった 年より幼く見える顔に…… 堂嶋は胸が痛んだ 幸哉は……子供みたいな顔して世話を焼かれる康太を見ていた 「一生、何処に予約取ったんだよ!」 「鎌倉の抹茶がうめぇレストランだぜ」 「オレが食えそうなもんあるんかよ?」 康太は一生によじ登った 一生は康太を抱き上げ笑った 「あるから予約したんじゃねぇかよ!」 聡一郎が背中を差し出すと康太は聡一郎におぶさった 「聡一郎、悠大は?」 「まだニューヨークだと想いますよ…… ……僕は君の方が心配なので…確認は取っておりません……」 「ニューヨークに行けよ聡一郎……」 「厭です!君が心配で死にたくなります」 「どう言う理屈よ?」 康太は笑った 慎一が聡一郎から康太を剥がすと抱えてエレベーターのドアを開けた 皆が乗り込んだのを確認すると慎一はドアを閉めた 慎一の腕の中の康太を清四郎が剥がした 「体調は?」 心配して聞かれて康太は笑った 「悪くねぇ!」 「そうですか」 清四郎が安心すると笙が康太を奪った 「明日菜はどうしたよ?」 「少し体調を崩してます…」 「側についてないで良いのかよ?」 「食事が終わったら帰ります」 「大切にしてやれよ」 康太はそう言うと笙の腕の中から下りて榊原に腕を伸ばした 榊原は康太を抱き上げ頬に口吻た エレベーターは1階で止まった 慎一はエレベーターのドアを開けて皆を下ろした 一生は一足先にマンションから出てバスのドアを開けた 康太は「……バスかよ?」と呟いた 一生は笑って「10人以上は送迎してくれるって書いてあった」と笑った 皆でバスに乗り込み鎌倉へと向かった 鎌倉の閑静な住宅街を抜けて高台へと行く 数寄屋造りのレストランの駐車場にバスが停まると 康太達はバスを下りた 案内されてレストランの中へと入ってゆく 一生は「この店はワインが美味しいんですよ」と説明した 席に案内されて座る 一生が適当にメニューを見て注文を入れた 「ここの店のオススメが凄いらしいからな」 と一生が教える 康太はテーブルの向こうを見ていた…… 「やはり皮肉に……重なるのか?」 そう呟いた 堂嶋は康太に「何かあった?」と問いかけた 康太は堂嶋を見て 「振り返るな!」と釘を刺した 食前酒を持って来て康太達未成年以外はワインを注がれた 真矢は一口飲んで、その口当たりの滑らかさに 「………美味しい……」と絶賛した 清隆も玲香も源右衛門もワインで口を潤した 清四郎も笙もワインを飲んだ 堂嶋と幸哉もワインを飲んで美味しい!と言っていた 康太は幸哉に「………幸哉、未成年みたいな顔で飲んでたら補導されるぜ」と揶揄した 「酷い……康太君……僕二十歳だから…これでも……」 「………幸哉…ガキみたいな顔だかんな信じて貰えねぇと想う」 「………酷い……」 幸哉が言うと一生が康太を止めた 「康太、それは言っちゃぁならねぇぞ! お前は戦隊もののパンツが似合うじゃねぇか…返されるぞ」 一生が言うと康太は唇を尖らせた その時……… 「飛鳥井源右衛門さんじゃありませんか」 と声が掛かった 源右衛門は名前を呼んだ男を見た 「二階堂隆光……我に何か用ですか?」 「お久し振りです」 太々しい顔をした二階堂隆光が笑顔で源右衛門に話し掛けて来た 瞳は堂嶋正義に向けられ、皮肉に歪められていた 源右衛門は二階堂に 「飛鳥井家真贋は代替えした!」と宣言した 康太は二階堂を見ていなかった 二階堂は源右衛門に 「では真贋はどちらにおみえですか?」 と尋ねた 「来てはおらぬ! 用がないなら家族との団欒の席じゃ 遠慮願いたい」 二階堂は悔しそうに唇を噛み締めると 「今度、真贋に是非とも合わせて戴ける様にご配慮下さい」 と言い自分の席に戻った 「胸糞悪い……クソが!」 康太は吐き捨てた もう……変えられない定めだった 定めの法則に則って引き寄せられる…… 二階堂隆光は現飛鳥井家真贋を知らなかった 結び付きがなき者は見ない 現真贋はそう言い視る事はない 二階堂隆光は力を手に入れる為に源右衛門に声を掛けた 現真贋と知り合う為に…… そしたら憎っくき堂嶋正義がいた そして…………… 己の身の保身の為に……二階堂隆光は何処かへ電話を入れた 康太は出された料理を、榊原に食べやすくしてもらい待っていた 柔らかい消化の良いものだけを細かくして康太の前に出した 「良いですよ」 言われて康太は食べ始めた 「うめぇな!」 ニカッと笑って康太が食べる 堂嶋は「明日から坊主の食えそうなモノを届ける」と告げた 「大変だから良い……」 「その為に近くに来たんだからな!」 堂嶋は聞く耳を持たなかった 「正義、国会も始める 忙しくなるだろ?」 「気にすんな!」 堂嶋は笑った 康太はもう何も言わなかった 楽しい時間に水を指したくなかったから…… 美味しいワインを飲んで会話が弾む 4時間ちょっとの会食はほろ酔い気分で楽しく 幸せにさせてくれた バスに乗り込み飛鳥井の家に戻る 堂嶋は酔いを冷まして、夜更けに幸哉と共に帰って行った 康太は部屋に戻ると天を仰いだ 「……弥勒……いい加減姿を現しやがれ!」 康太は怒鳴った 年末に崑崙山へ行くと言ったきり……音信不通だった 『康太…待たせたな!』 弥勒の声がした 「崑崙山から帰って来たのかよ?」 『嫌、今も崑崙山だぜ!』 「あんで、音信不通だったんだよ!」 『………火龍……サラマンダーの鱗が必要だったからな ちと、火龍と闘ってたんだよ 手強い奴でさ……青龍殿に助けを求めようかと思った程であった…』 「………火龍……またお転婆に…… で、鱗はくれたのかよ?」 『火龍とお知り合いか? 負けたんだよ……だけど何で鱗が必要か聞かれて 炎帝に必要なんだよ……と話すと鱗を1枚くれた』 「皇帝炎帝のペットだった…… オレじゃねぇぜ……皇帝炎帝のペットだ! じゃじゃ馬でお転婆なレディの火龍だ」 康太はそう言い笑った 『で、我を呼び出した要件は何だ?』 「人の世にいねぇなら……いいや」 『……気になるではないか!』 「……教えても動けねぇなら……聞くだけ無駄じゃねぇかよ!」 『我は時空を操作出来る……忘れてはおるまい』 「………二階堂が動き出した…」 『……っ!運命の歯車は回り出したか…… 八仙に造らせたら直ぐに人の世に下りる』 「弥勒……もう……止められねぇのか?」 『仕方あるまい……定めだ……』 「………弥勒悪かった」 『体調はどうだ?』 「悪くはねぇけど、魔界に行ける体力じゃねぇな…」 『魔界に出向く用があったのか?』 「そう。でも青龍が今夜魔界に出向いてくれるかんな オレは人の世で待ってる事にした」 『運良ければ魔界で掴まえられる……と言う事か… ならな康太、明日には人の世に帰るとする』 弥勒はそう言い気配を消した 康太は榊原を見上げた 「伊織、魔界に行ってくれねぇか」 「良いですよ。君が大人しくしててくれるならね」 「動かねぇよ。頼めるか?」 「ええ。大丈夫です」 康太と榊原が話していると一生が顔を出した 今の会話を聞いていて 「何処かへ行くのかよ?」と尋ねて来た 康太は「オレは何処にも行かねぇぜ」と答えた 榊原が「僕が魔界に行くのですよ…」と説明した 「あんで魔界に行くんだよ」 と一生は聞いた 「康太……いえ、炎帝の名代です」 榊原は一生に説明した 「俺も行くわ!」一生は、そう言った

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