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第20話 始まり行く日々 ①
兵藤は顔を蹴り飛ばされて目が醒めた
顔をさすさす起きると目の前に康太の足の裏があった
兵藤は頭にきて、康太の足の裏をコチョコチョくすぐった
すると康太は「うわっ!ゃめ…」と暴れて……
下敷きになってる一生は……「うっ!……」と押し潰されて呻いた
「貴史!止めっ…康太を離せ……」
一生が訴えると、兵藤は康太の足を離した
榊原が康太を回収して一生は起き上がった
「………死ぬかと想った……」
「すまん……」
兵藤の頬は真っ赤だった
「蹴られたのかよ?」
「だろ?痛くて目が醒めたら康太の足の裏があったからな……」
「湿布貼っとく?」
「………男前の俺のほっぺに……湿布……止めてくれ」
「……貴史、自ら言うとお笑いにしか聞こえねぇぜ」
「お笑いで言ってるから大丈夫だ!気にするな!」
兵藤はそう言い起き上がった
榊原の腕の中の康太を摘まんで抱き上げると
「おめぇの寝相は直らねぇな!」
とボヤいた
「オレは熱ちぃのは嫌なんだよ…」
皆と寝ると熱いからついつい……寝相が悪くなる……
「俺の顔蹴り上げやって……」
「悪りかった……」
くしゅん……と謝ると兵藤は笑って榊原に返した
「酔っぱらい見て来ようかな…」
兵藤はそう言い笑った
「貴史、待ってろ!
布団をベランダに干したらオレ等も見に行く」
康太はそう言いベランダに布団を干しだした
物干し竿も使い、ベランダの手摺りと物干し竿に布団を干して行く
片付くと康太は「朝にするかんな!」と言い応接間に向かった
応接間のドアを開けると………
泥酔者の………山だった
榊原は窓を開け、テラスを解放した
康太は笙を見て「明日菜は?」と問い掛けた
「玲香さんの部屋で休まさせて戴いてます」
「あんまり連れ歩くな……」
「本人が来ると言うので仕方がないです」
「あの腹だぜ?何かあったらどうするよ?」
「気をつけるので……此処へ来させて下さい…」
「来るのは構わねぇけどな……気を付けてやれと言ってるんだよ」
康太はそう言い京香が連れて来た我が子を抱き上げた
「翔、おめぇデカくなったな……
母を追い越したら上から押さえ付けてやる」
翔はトコトコ歩ける様になっていた
紫雲龍騎の処で幼少期の修行を終えて還って来ただけあって瞳の色が違っていた
流生が康太の足に「かぁちゃ」と言い抱き着いた
康太は流生を抱き上げ、頬にキスを落とした
「頑固な眉毛は親父似だな…」と笑って一生に渡した
「太陽!大空!おめぇらもデケぇな
太陽、伊織よりも良い男になれ!」
榊原は康太の腕から太陽を取り上げた
「僕の方が男前です!」
と言い康太を抱き締めた
音弥は眠っていた
北斗は起きてて一生の膝の上にいた
和希と和馬は慎一の膝の上にいた
康太と榊原は子供に離乳食を食べさせていた
翔はガツガツ離乳食を食べていた
「おめぇ……もう普通食でも良いかもなぁ…」
康太が言う程の食べっぷりだった
流生は我が道を逝く……翔の世話をせっせと焼いていた
この年で……翔の世話を焼く…流石一生の子……だった
太陽と大空は笑顔を振りまき……中々食べない
音弥は……起きない……
隼人は康太にもたれ掛かって寝ていた
「音弥!お~い朝だぞ」
そう呼びかけると隼人が目を醒ました
康太は「音弥だし……」と呟いた
慎一は康太の子の食事を手伝っていた
和希と和馬は自分で食べれる
4月になったら初等科の1年生だ
今は桜林の幼稚舎に通っている
「和希、和馬、ランドセル買ったか?」
康太が聞くと
和希が「うん!ばぁばが買ってくれたよ」と瞳を輝かせた
和馬は「じぃじが買ってくれたんだよ!」と嬉しそうに笑った
康太は父と母を見た
和希と和馬がじぃじとばぁばと呼ぶのは今は飛鳥井清隆と玲香だけだったから……
「父ちゃん母ちゃん…ありがとう」
康太が言うと2人は……二日酔いだった
「構わぬ、和希と和馬も我が家の子
どの子も可愛い!
北斗も初等科に上がるしな北斗の分も買ったのじゃ」
玲香が言うと一生が
「北斗もランドセル買って貰った
めちゃくそ喜んで一日背負ってたな」
と苦笑した
「4月から初等科かぁ…
早ぇな……北斗と和希と和馬は小学生かぁ…」
康太が呟くと榊原が
「僕らの子も、あと2年もすれば幼稚舎に入りますよ
そしたら小学生になり、あっという間です」
「………コイツ等が高校を卒業するまでは……
生きていてぇな……」
康太はしみじみと呟いた
兵藤は康太を抱き締めた
「老人になるまで生きろ!
2人して町内のゲートボール制覇しようぜ!」
「お!それ良いな…
そしたらコイツ等が結婚する姿も見れるな…
……見てぇな………」
「見ろよ!そこまで生きろ!」
兵藤はそう言い泣いた
「泣くな……貴史……」
「おめぇが……変な事言うからだろ?」
「言ってねぇよ……」
「100まで生きろ!」
「無茶言うなよ……」
「無茶じゃねぇ!簡単には逝かさねぇぞ」
康太は笑って
「今は、んな事より
今年こそは留年しねぇように大学行くか…だろ?」
トドメを刺した
「………うっ!……キツい一撃を…」
兵藤は翔を渡されて膝の上に乗せて……呻いた
一生が「トドメを刺してやるな…」と助け船を出した
「一生、助かった……」
貴史は一生に抱き着いた
悠太が康太に「家族の食事、どうします?」と問い掛けた
「どうします……も冷蔵庫の中、空だろ?」
「康兄、食べに行くかデリバリ頼む?」
「食いに行きてぇけどな……まだやる事は山積してんだろ?」
「なら買いに行って来る?」
「慎一に聞いてくれ…」
悠太は慎一の所へ行った
慎一は榊原に「コンビニのお握り買い占めて来ますか?」と問い掛けた
「それしか有りませんね」
榊原が言うと一生が立ち上がった
「俺、コンビニに行くわ!」
一生が言うと慎一は「なら俺は味噌汁作ります」と言い一生にカードを渡した
一生はカードを受け取り兵藤を立ち上がらせると強引に引っ張った
「あんで俺も行くんだよ?」
ボヤく兵藤に「たまには良いじゃん」と言い強引に応接間を出て行った
悠太は朝食の準備に向かった
康太は朝食の散歩の為、ゲージに向かった
コオもイオリも尻尾を振って散歩を待っていた
康太がコオの首にリードを付けると
榊原がイオリの首にリードを付けた
2人して仲良く散歩に向かう
何時もの散歩コースを辿ると兵藤さんちの昭一郎と出逢った
昭一郎は康太の顔を見ると
「おはようございます」と挨拶をした
「よぉ!昭一郎!今日も一緒か?」
「ええ……妻と帰って来た息子は今日も飛鳥井にご厄介になってますからね……」
昭一郎はコタロウを抱っこしてコータの散歩中だった
「ばぁさんになったコータもよぉ」
康太は犬を見てそう呟いた
「コータは出産させた分老いるのは早いです」
コオは母さん犬にじゃれて嬉しそうだった
「………コオを産ませちまったからな……」
「気になさらず!
貴史の想いです」
昭一郎は親バカだった
息子が面倒見なくなったペットをせっせと可愛がっていた
「コタロウはカットされてべっぴんさんじゃねぇかよ?」
「美容院に行ったの解ります?」
「解るに決まってるやん!
それより犬のタカシの散歩は?」
「あれは美緒がやります
コータは年寄りなので一緒は無理なのです」
「そっか……昭一郎、寄ってく?飛鳥井に?」
「そうしたいのは山々ですが、散歩が終わると後援会の方とにお逢いせねばなりません」
「そっか、選挙があるかも知れねぇもんな」
康太は昭一郎と歩きながら散歩をしていると、前から両手に荷物を持たされた兵藤と一生が歩いて来た
「あれ、親父散歩かよ?」
「ええ。コータは年寄りなので朝一番に散歩してあげないとシュナウザーとは無理なので…ね」
「飯が来たから帰るか伊織」
「そうですね。
散歩の続きは源右衛門にお願いしましょう」
康太が散歩を辞めると昭一郎も一緒に帰るつもりだった
飛鳥井の家の近くまで一緒に来て、昭一郎は自宅に帰って行った
「貴史…」
「あんだよ?」
「おめぇさ、父親と何も話さねぇのかよ?」
図星を刺されて……貴史は押し黙った
「おめぇのペットの面倒を何も言わず見てるのは親父だぜ
何故おめぇが親父と何も話さねぇかは知らねぇけど…
昭一郎は寂しがってるぜ
言わねぇけどな、寂しいに決まってる
妻は家に寄りつかず
息子は父親と口も聞かねぇ……
おめぇんちは……昭一郎を蔑ろにしすぎだ……
昭一郎が倒れても……知らん顔かよ?」
言われてる事は……当然の事だった
「貴史、親父の目線になって見て見ろよ
自分の目線じゃねぇぞ!
親父の目線を考えて見て見ろよ
そしたら答えは見えるんじゃねぇのかよ?」
康太はそう言い後は何も言わなかった
飛鳥井の家の前に行くと清隆が待ち受けていた
康太は清隆に向けて走った
「父ちゃん!どうしたんだよ!」
飛び付いて来る康太を清隆は抱き上げた
「そろそろ戻って来ると想い待ってたんだよ」
「父ちゃん!ご飯!」
清隆は笑って「慎一が準備してます」と答えた
清隆は康太からコオを受け取ると足を拭いてリードを外して家の中へ入れた
榊原からイオリを受け取ると同じ様に足を拭いてリードを外して家の中へ入れた
「貴史君、おはよう」
清隆は優しい笑顔で兵藤を迎え入れた
康太はコオとイオリをゲージに入れると、手を洗いに向かった
せっせと手を洗う康太の手に、榊原は背後から重なり一緒に洗った
康太が榊原を見ると、榊原は康太の唇にキスを落とした
綺麗に手を洗い応接間に戻って行くと、朝食の支度は出来ていた
康太は何時ものソファーに座ると食事を始めた
榊原はクロワッサンとサラダとスープ
康太はお握りと味噌汁
榊原がお握りを剥いて渡していた
「父ちゃん、飛鳥井の会社の引っ越しはお盆過ぎだな
その前に真壁の土地のビルが立つかんな!」
「康太、その前に花見ですよ」
清隆は笑って飛鳥井家の一大イベントを口にした
「そうだ!花見だよ父ちゃん!
今年は三渓園で花見してぇな…」
視線が一気に一生に集まり……
一生はうっ!とお握りを喉に詰まらせた
榊原が一生の背中をポンポン叩いてやり、お茶を渡した
一生は貰ったお茶を飲み、一息着いた
「………今年は大丈夫だ!消えねぇからな!」
一生はそう言った
家族は大爆笑だった
「今年の花見は横浜でしてぇなぁ……」
二年連続……横浜で花見をしていなかった…
一生は肩身が狭かった……
「飯食ったら……まだ片付けあんだろ?
あと少しだかんな頑張るかんな!」
康太が言うと瑛太が
「……もぉ引っ越しは嫌です…」と嘆いた
「瑛兄、会社の引っ越しが残ってるやん…」
「………会社はもぉあそこで良いです
家からも近いですし……」
「んな訳に行くかよ!
お盆は会社の引っ越しで終わるかんな」
「……嫌です……また聡一郎に怒られます」
「瑛兄……大丈夫だ!
次の引っ越しは皆でフォローするかんな!
母ちゃんも会社に戻るしな助け合って生きて行こうな」
「……康太……」
「一人じゃ無理なら助け合えば良い
オレ等は家族なんだからよぉ!
オレと伊織は夫婦だかんな、オレに出来ねぇなら夫の伊織が変わりにやってくれる」
康太が言うと榊原が
「ええ。奥さん!
君が出来ないなら僕が変わります
僕達夫婦は助け合って生きてくと約束しました
家族もそうです!
助け合って生きて行けば良いのです」
康太は榊原に抱き着いた
それを慎一が剥がして食事をさせる
「良く噛んで食べて下さいね」
釘も刺しとく
「解ってんよ慎一」
康太は消化を良くする為に噛みまくっていた
兵藤は飛鳥井の家が羨ましかった
美緒も……飛鳥井が羨ましいのだろう
微笑んで座る母を見ていた
「伊織、部屋に絵を飾ってくれ」
「解ってます。
食事をしたら絵を掛けます
………その前に……この絵は素人では無理ですよ?
重すぎます……」
「……だよな?」
康太は思案して慎一に手を伸ばした
慎一は康太の携帯を手に乗せた
すると康太は何処かへ電話をした
「オー!オレだ」
一生は……それじゃオレオレ詐欺ですがな…と心の中で想った
「休みの日に悪いんだけどよぉ
飛鳥井の家に来て額縁を付けて欲しいんだけど
ダメか?」
康太の声に相手は息をのんだ
そして建て直し、声を出した
『…良いですよ!行きます
額縁は大きいんですか?』
「デカいからな、伊織じゃ無理なんだよ
なんか特殊な器具で付けた方が落ちて来ないだろうと想って電話した」
『なら会社に寄って工具を取ってきてから飛鳥井の家に向かいます』
「遼一」
『……何ですか?』
「喧嘩をしたまま家を出るな!
仲直りしてから来いよ!」
『……っ!………解りました…』
「遼一、誰にでも優しいってのは腹が立つもんだぜ
誰でも良いのかよ!と想うかんな!
おめぇは優しい男だけど、優柔不断な所は木瀬は許せねぇんだと想うぜ
面倒見が良いのも良いが、つまみ食いしねぇか心配なんだよ」
『……康太……言われみると俺って最低な奴ですか?』
「不安なんだよ!おめぇは不器用な奴だかんな!
しかも誰にも優しいし慕われてる
オレは、それを伊織がしたら殺すぜ!
他じゃねぇオレだけを見ろ!と怒るぜ」
『………康太……俺はどうしたら信用される?
俺はアイツ程賢くないし……』
「遼一、おめぇは飛鳥井康太が選んだ職人だぜ!
何処に出しても恥ずかしくねぇ職人なんだぜ!
木瀬に引け目を感じなくても良い!
木瀬だけを愛してると伝えてやれば良い
飛鳥井には一発やった後で良いかんな来てくれ」
康太はそう言い電話を切った
榊原は康太を抱き寄せると
「僕は君にしか優しくはしません!」
と言い頬に口吻た
「解ってんよ!
他なんか見せるかよ!」
康太はニカッと笑った
新婚の熱さが部屋を包む
「伊織、あの絵は遼一に頼むかんな!」
「それが懸命です」
「これから一発頑張ると昼過ぎだな!」
康太は遼一との電話で視えていてごちた
「では食事を終えたら、慎一を手伝います」
「今夜は来客あるかんな……
あ!慎一、料理頼んどいてくれた?」
「引越祝膳ですね?
頼んであります
今夜届けられる筈です」
「準備万端だな」
康太はソファーから立ち上がると堂嶋のくれた絵を見に行った
うっとり見詰めるその瞳に……
榊原は妬いて康太を持ち上げてソファーに座った
「あんでだよ?」
「何だか許せません」
「………言うか……自分じゃねぇかよ?」
「君は僕だけ見てれば良いのです」
康太を強く抱き締める榊原の姿に…
家族は微笑みながら食事をしていた
「じぃちゃん部屋は片付けて貰ったかよ?」
康太は源右衛門に話し掛けた
「あぁ、片付けて貰った」
「どうよ?部屋の使い心地は?」
「今度はベッドになったからな楽になった
やはり……布団の上げ下げはキツかった
部屋もバリアフリー仕上げで歩くのも楽だな」
「無理すんなよ!じぃちゃん」
源右衛門は頷いた
食事を終えると兵藤と美緒は自宅に帰って行った
清四郎は源右衛門と共に、源右衛門の部屋に向かい
笙と明日菜は榊原の家に帰って行った
慎一は脚立を持って来ると絵の配置に余念がなかった
榊原と二人、色々と試行錯誤して絵を取り付ける
康太はテラスで我が子や犬と遊んでいた
「伊織」
「何ですか?」
「若旦那と逢う……」
榊原は康太を見た
「……まだ早い……です」
「戸浪の子供も夏海の子の少し前に生まれてる
名前を付けてくれと頼まれたからな、名付けてやった
夏海も高校卒業したからな……
そろそろ教えねぇと……覚悟もあるだろうしな」
「………生まれたんですね海神の本体が……」
「海と名付けてやった
戸浪 海……煌星の兄になる」
「………煌星を見ました
煌星は……凰星程ではありませんが…龍ですね」
「伝えて……一歳の誕生日を迎えさせねばならねぇ
辛くてもな……星の導く先に逝かねばならねぇんだ」
榊原は我が子を見つめながら……
「………我が子と離れたくはないでしょうに……」
と呟いた
戸浪沙羅に至っては……我が子より愛して育てねばならない……
流生が榊原の足の掴まり笑った
榊原は流生を抱き上げて強く抱き締めた
「流生、君を曲げたりはしません」
愛して……真っ直ぐ育ててゆく
親の愛で……
護って育ててゆく
戸浪沙羅もきっと煌星を愛して育てて逝くだろう
血より濃いものはない
何時か流生も本当の親を知れば……
榊原達を恨むかも知れない……
翔も流生も太陽と大空も……
そして音弥も……
何時か……血の繋がりを探すかも知れない
その時は……送り出してやろうと榊原は決意していた
だが、それまでは……精一杯愛す
君達の親として!
誰よりも愛して育てる
それが託してくれた人達の愛に報いる総てだから…
「流生、重くなりましたね!」
高い高いされて流生は笑っていた
榊原の事を「とうちゃ」と呼んでいた
一生はそれを見て、嬉しかった
康太と榊原の子供として生きろ
飛鳥井 流生
それがお前の名前だから……
何時か名乗れ…と康太は言った
だが名乗る日なんて来なくて良い
飛鳥井流生として生き行く枷にはなりたくなかった
本当の父を知れば悩むだろう……
子供を悩ませたくなどないのだ……
戸籍を取っても康太の実子として入っている
名実共に飛鳥井康太の子供だった
一生は永遠に名乗れなくて良い……
見守って行くから……それで良い
と想っていた
緑川一生に取って一番大切なモノは飛鳥井康太
唯一人なのだから……
榊原は流生を一生に渡した
「かじゅ」と流生が笑う
「お前……何か生暖かい……」
一生は流生を抱っこして呟いた
康太は一生にオムツを放った
一生は流生のオムツを変えた
慣れた手つきでオムツを変える
もう立派なイクメンだった
太陽が泣き出すと大空も泣き出し
双子は何でも一緒だった
康太はせっせと子供の面倒を見ていた
オムツも変える
「お!立派なの持ってんな」
ムギュと摘まむのも忘れない
「康太……止めなはれ…」
一生に止められオムツを変える
立派な母ちゃんだった
コオとイオリも子育てを手伝う
康太の子の面倒を見る
聡一郎の子の永遠は、佐々木一弥に預けた
一弥が結婚したのを機に引き取りたいと申し出たので、預けた
一弥の妻が永遠を育てていた
一弥が後見人となって、永遠が成人したら四宮興産の社長になる予定だった
四宮永遠、戸籍はそのままで、育てるのは佐々木一弥夫妻……だった
聡一郎は悠太そっくりの息子を……見ていたくなかった
悠太が女を抱いて作った子…なのだ
永遠を佐々木に預けた方が良いと言ったのは康太だった
悠太は我が子の存在すら知らなかった
子育ては悠太も暇を見つけて手伝っていた
悠太は良き父になれる男だった
北斗を背中に背負って和希と和馬と散歩に出かけていた
北斗は足があんまり丈夫ではなかったから背負って散歩に出かけていた
聡一郎はその光景を何も言わずに見ていた
康太は聡一郎の苦悩は知っていた
知っていたが……何も言わなかった
榊原が絵を掛け終わって康太を持ち上げて連れて行った
「康太、出来ました!」
神野のくれた絵は応接間の壁に掛かっていた
小鳥遊のくれた壁時計は玄関の壁に掛かっていた
「すげぇな!お礼をしねぇとな…」
「お返しなら結婚祝いからせねばなりませんよ?」
「だな、会食の場を設けて土産を渡すか?」
「良いですね!
その前に康太は義兄さんにベンツを買わなきゃね」
「それだった!
真贋の仕事を少しだけ増やすしかねぇな」
「無理は禁物ですよ?」
「無理なんかしねぇよ
白馬からアスカイサンダーと言う馬が上がって来るかんな!
イオリーブラウンとアスカイサンダーとで優勝をしまくって貰うしかねぇな!
イオリーブラウンは最期の花道を逝くかんな
来年には引退だ……」
「そうでしたね……」
「余生は白馬でノンビリ過ごさせる
そしたらたまには乗ってやれ」
「解りました。楽しみですね」
「オレも楽しみだ
馬も子供も育ってくかんな
まだまだ追い越させねぇように走らねぇとな!」
「そうですね」
「伊織、オレを補充したくねぇかよ?」
「したいです!
康太不足です!」
「ならオレを連れて行け!
慎一、後は頼めるか?」
「ええ。タイムリミットは午後6時!
今は9時35分ですので、余裕ですね!」
「では行って来ます」
榊原は康太を抱き上げると行こうとした
「おい!待て!
タイムリミットは午後1時な!」
と一生が時間を短くした
「………え?何でですか?」
「遼一が来るだろ?
おめぇの大切な絵を誰かが触っちまうんだぞ!
見ていてぇだろ?」
「解った!伊織、1時には抜いてくれ」
「……値切りましたね…
解りました!1時には抜ける様に頑張って僕を感じさせて下さいね」
「……オレがかよ?」
「そうです!康太が頑張らないと引っ越し疲れの僕ですからね……」
「伊織……オレも引っ越しで疲れてるけど?」
「なら君は寝てれば良いです!」
そう言い榊原はズンズン康太を引き摺って行った
一生はそれを手をふり見送った
ソファーにドサッと座る一生の横に慎一は座った
「一生どうした?」
些細な一生の変化を読み取り慎一が問い掛ける
「どうもしねぇ……」
「引越の最中からテンションの上げ下げはんぱない……気付いてませんか?」
「引越の荷物片付けててさ……
俺、墓参りもしてねぇ事に気付いた」
「綾香さんの?」
「も、だけど親父の」
「………何時から?」
「…………死んだ時から……
康太は時々行ってくれてる
なんたって飛鳥井の菩提寺の中に入れて貰ってるからな……俺は、親父が許せなかった」
「………俺はあまり父とは過ごしていない
物心つく頃から……顔を合わせれば喧嘩ばかり…
あの人は家に帰るのを辞めたからな……」
「俺は親父に抱き上げられた事がねぇ
康太が牧場に来ると親父は子供みたいに喜んで康太を抱き上げるんだ
時には康太に縋り付いて泣いてた
俺はそれを見てて羨ましかったな
親父の視線は……俺に向けられる事はねぇからな……
大嫌いだった……憎くて…恨んでいた」
「今は?」
「何とも想ってねぇよ」
「なら墓参り行かなきゃ」
「近いうちに行って来る」
「俺も着いててあげますから……
帰りに俺の母親の墓参りも付き合って下さい」
「良いぞ!
慎一は偉いな
ちゃんと母さんの墓参りしてんだな」
「……いいえ……母親が死んで初めてです
場所は聞いてるのですが……
行く気にはなれませんでした
あの人が感情的に死ななきゃ…俺は違った人生を送れてのに……と想うと行けませんでした」
「なら、腹立つからな文句言ってやろうぜ」
「康太が送った人達ですから……何も言わずに線香を手向けます」
「………だな、今更……だよな」
「一生、消えるのは禁止ですよ」
「消えねぇし……三渓園で花見させてやりてぇからな…」
「流生は君の子ですね
君に初めて逢った頃によく似てる
頑固な眉毛は父親譲りですね」
「俺はおめぇが苦手だった…」
「……え?初耳……」
「康太にだけ優しかったもんなお前…」
「そんな事ありませんよ」
「……和馬はお前の子供の頃にそっくりだな」
慎一は何も言わず笑った
執拗な接吻で康太は立っていられてなくて、膝がガクンッと崩れ落ちた
すると榊原の力強い腕が康太を 抱き止めた
部屋に入るなり執拗な接吻で翻弄され
意識は朦朧となった
榊原は抱き上げた康太をベッドに寝かせた
そして自分の服を脱いだ
素早く服を脱ぐと榊原は康太にのし掛かった
服の中に手を入れると乳首が尖って自己主張していた
榊原は接吻したまま乳首を摘まんで転がした
「……んっ……ん……」
執拗な接吻で口を塞がれた康太の鼻から喘ぎが漏れた
榊原は康太の服を脱がしながら愛撫した
乳首に吸い付き散々吸った後に上着を脱がし
ズボンの前を寛げて……勃ちあがった可愛い康太の性器を散々弄ってズボンを脱がした
トランクスはまだ脱がして貰ってなかった
トランクスの横から手を入れお尻の穴に触れる
「……ゃ……全部脱がして……」
「君の下着……恥ずかしいシミが出来てます」
榊原が言うと康太は前を手で隠した
その手を持ち上げ、指を口に咥えられ舐められると……
隠してられなくなる
下着の中の性器が……どんどん濡れてシミを広げた
「苦しそうですね?」
下着に押さえ付けられた性器が窮屈そうに布を上げていた
「伊織……ぁぁっ……ねぇ…お願い…」
「脱がして欲しいのですか?」
康太はコクコク頷いた
榊原は康太の下着を脱がすと、中から出て来た康太の性器に吸い付いた
口に咥え吸う、舐める、されるとイキそうになる
すると榊原は根本で握り締め、更に舐めた
出口のなくなったマグマが体内を駆け回る
康太は榊原の性器に手を伸ばした
なのに……スルッと交わされて触る事すら出来なかった
榊原は性器を舐めながらお尻の穴に指を挿し込んだ
硬く閉じた蕾が榊原の指を飲み込むと淫らに開き始める
榊原はそれを見るのが大好きだった
康太が受け入れ様と感じてくれる
捲れ上がる程に艶めいて濡れて蕩けた蕾は、榊原を欲して蠢いて誘っていた
誘われて請われて一つに繋がる
その瞬間の為だけに榊原は康太をトロトロに蕩けさす
硬かった蕾が榊原の指を咀嚼をする
蠢き戦慄き誘って飲み込んでいた
柔らかく捲れ上がるまで舐めて解す
ローションではなく舌と指で康太を追い詰めてゆく
シーツを握り、悶える康太は妖艶に艶めき更に色香を増す
「伊織……来いよ…一つになろう」
誘われて……絡め取られて籠絡されるのは榊原だった
脚を肩に掛けて康太を折り曲げると艶めく秘孔が現れた
榊原はピクピク蠢く穴に肉棒を挿し込んだ
ゆっくりと肉棒が腸壁を掻き分けて入ってゆく
全部入ると康太は榊原の腰に脚を巻き付けた
動かない榊原に焦れて、康太の腰が揺れる
「……ねっ……伊織……」
「何ですか?」
「動いて……その太くて硬いので掻き回して…」
「掻き回して欲しいのですか?」
キュッキュッと榊原を締め付け搦まる腸壁
榊原のカタチを覚えた腸壁は厄介だった
榊原のカタチに纏わり付き締め上げる
「……ぁぁっ…突いてぇ……奥まで突き破ってくれ…」
「欲張りですね……」
榊原も焦らす余裕もなくなって来る
康太の腸壁は本当にタチが悪かった
動かずにいてもイカせてしまえる……
それ程に康太の腸壁は絶妙に榊原を締め上げ離さない
榊原は康太を持ち上げて膝の上に乗せると、更に深く康太を貫いた
そして腰を揺する
ラストスパートを掛けて、夢中に求める
康太に息もつかない執拗な接吻を送り、腰を揺する
「……あん……あぁっ……イクっ……」
康太は腹筋を引き締め……榊原の腹に精液を飛ばした
榊原は康太の奥深くに精液を飛ばした
その熱さに康太は身震いした
ドックン……ドックン……と脈打ち榊原が精液を吐き出す
最期の一滴までも康太の中に流し込むと、榊原は息を吐いた
「康太、素敵でした」
素敵も何も……訳が解らない
でも言われると嬉しい
榊原が自分に感じてくれていて、イッてくれる
至福の時だった
愛される身躯が誇らしい
榊原の精液を吸い込む身躯が嬉しい
「伊織、愛してるかんな」
「僕も愛してます康太」
「………伊織……抜こう……」
「嫌です抜きたくありません」
「……遼一が来る……」
「彼もサービスしてからなら、そんなに早くは来ませんよ」
「……伊織……硬くならないでぇ……」
「君が育てるんですよ?
僕を締め付け育ててるのは君なんですよ?」
康太は顔を赤らめた
蠢く腸壁は自覚はある
止まらない腸壁は榊原を求めて蠢き回る
榊原の存在に歓喜する
榊原の肉棒に纏わり付き締め上げ蠢く
「………伊織……止まらねぇ……俺の中……」
榊原に腕を回し……縋り付く
「僕を離したくないと‥‥君は何時も僕を搦めて離さない‥‥
遥か昔から君の中は僕だけのモノです
僕だけの君です」
「……伊織………伊織……オレの総てはお前の為に在る‥‥」
康太は魘された様に榊原を呼んで求めた
榊原も康太を求め、何度も硬くなり果てた
精根尽き果てるまで……互いを求め繋がった
途中で康太は意識を手放した
それでも榊原は康太と繋がり最期の一滴まで奥に流し込むと抜いた
康太の脚を開き折り曲げると
康太のお尻の穴は口を広げていた
榊原のサイズで口を開き、榊原の精液を溢れさせて流していた
榊原はヒクヒクと戦慄き閉じていく穴を見るのが好きだった
頑張って皺を伸ばし、榊原のサイズまで広がる穴を労る様に口吻た
康太の赤い腸壁が、畝って誘っていた
閉じてしまえば見えない……
抜いた瞬間だけ姿を見せる腸壁
榊原は舐めて精液を掻き出した
そして康太を抱き締めた
抱き締めたままゴロンっと転がり康太を上に乗せた
康太は少しだけ肉が着いて来た
少しだけ重くなった康太を嬉しく想う
愛する人を亡くしたくない……
見送りたくなんかないのだ……
本当なら逝かせたくなんかない
でも引き留めれば……真贋として生きられぬ自分を悔いて……康太はその命を散らすだろう
最期の瞬間まで……真贋として生き抜く
それが幾度転生しても変わらぬ炎帝の姿だった
家の為に死んで逝く
短き命は100年続く明日の飛鳥井を築き散らして来た
逝く時は一緒です……
榊原の願いだった
愛する者の意思をねじ曲げす添い遂げる……思いだった
愛してます康太
愛してます炎帝……
未来永劫、君しか愛しません
君だけを愛します
ですから……共に……
それだけが僕の望みです
君のいない世界では生きられません
君の声を聞けない所では息も手来ません……
お願いだから……
僕といて下さい……
倍速で生きる君と共に……
僕も駆け巡るから……
榊原は康太を強く抱き締めた
愛する存在を抱き締めて……
離さなかった
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