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第28話 哀しみの果て ②

戸浪は万里と妻と抱き合い、我が子の暖かさに感謝した もう大丈夫だと万里が謂うと…… 康太に礼を言い深々と頭を下げた 戸浪は何も出来ないが、万里を生かしてくれた存在の為に最大限の事はすると決めていた 戸浪は「明日の葬儀は家族で参列致します ですので、準備をするために還ります 本当に康太……ありがとう……」と礼を謂った 「またな、若旦那」 「また逢って下さい…」 「おう!またな!」 康太は片手をあげて笑った 戸浪は康太を抱き締めて……還って行った 紫雲と弥勒も康太を抱き締めて還って行った 榊原は康太を抱き上げて、寝室へと向かった ベッドの上に康太を置くと服を脱がせた そして榊原も服を脱いで、ベッドの中に入り込んだ 康太を抱き締めて……瞳を瞑った 康太も瞳を瞑って……榊原の温もりを感じていた 眠りに堕ちた瞬間 目の前に東矢が現れた 「……東矢……」 康太が呟くと、東矢は康太の傍に走って来た ギュッと康太を抱き締めて 「康太、康太‥‥志し半ばで逝くのを許して下さい 僕は君に救って貰い、君のモノでいられて幸せでした 僕は君のために在る存在だから‥‥僕は君を失って生きられない だからこれは必然であり当然な終わりだと僕は思っています」 「………東矢……それでもオレは……… おめぇを死なせたくはなかった……」 康太は泣いていた 東矢は康太の涙を拭った 「康太……泣かないで……」 「おめぇの犠牲の上に……」 康太が言い掛けた時、東矢は 「康太!僕は幸せだったよ! それはね、君がいればこそ!なんだ!」 「……東矢……」 「また逢おう康太 僕はまた君に還るからね!」 「早くしねぇと……オレのいねぇ世界に産まれる事になっちまうぞ!」 「大丈夫!ずっこして早めに転生するから!」 東矢はそう言い笑った とても幸せそうな笑顔だった 康太は東矢を抱き締めて……泣いた 「死は……終わりじゃない 始まる為に……人は死ぬんだよ 僕はもう一度君に逢う為に……必要だったのかも知れないね もう一度、君に逢って、君に仕える為に 僕は産まれて来るからね! 待っててね康太!」 康太は泣きながら……何度も頷いた 「康太、一つだけ頼みがあるんだ」 「何でも謂えよ お前にしてやれなかった分 何でも聞いてやるから‥‥」 「僕が愛した人‥‥あの人が何時までも幸せでいられるように‥‥‥君に託します 僕は‥‥‥あの人を幸せには出来なかった 僕は星を詠んで命を落とす事は知っていた だから‥‥あの人と別れた それこそが僕がしてやれる事だと‥‥別れたんだ」 「後悔してるのか?」 「うんん‥‥‥後悔なんてしてないよ 僕はね、あの人が幸せで笑ってくれれば‥‥と願ってるんだ もう僕が幸せにはしてやれない‥‥‥だから康太、あの人を頼むね」 「解った、お前に変わって‥‥‥見届けると約束する」 「ありがとう康太 僕はまた君に還るからね待ってて‥‥」 東矢は笑った 物凄く幸せそうに笑って‥‥‥‥消えて行った 康太は目が醒めても東矢の温もりを感じて…… 泣いていた 榊原は何も言わず…… 康太を抱き締めていた 康太の嗚咽が…… 部屋に響き渡っていた

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