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第30話 愛してる

康太は榊原の腕の中で目を醒ました 辺りを見ると……まだ暗かった 康太は榊原の唇に口吻を落とした 我慢ばかり……させる 今夜……と約束させて何日も我慢させた 榊原に愛された身躯は…… もう、榊原の跡も消し去ってしまっていた 榊原に愛される自分でいたい…… それしか望んでいなかった 康太は布団の中に潜り込んだ 榊原の股間辺りまで潜ると、榊原のペニスに触れた それはまだ……大人しく眠って静かだった 情熱に打ち震える熱さが好きだった 康太は榊原のペニスに唇を近付けると…… 口に咥えた ペロペロと亀頭を舐めるとペニスは硬くなり始めた 康太は榊原の肉棒に頬を寄せてスリスリした 硬い肉棒が手の中で脈打つ 康太は榊原の腰を甘噛みした ピクンッ榊原の身躯が跳ね上がった 榊原は不意に襲われた快感に…… 何が何だか解らなかった 康太を探ると何処にもいなかった それで、この熱の原因を知った 榊原は布団を捲ると、悪戯っ子を捕まえて引き寄せた 「悪戯っ子を捕まえました」 榊原は笑って康太の唇に接吻した 軽い接吻が深くなり、康太の唇を蹂躙する 口腔を犯され嚥下しきれなかった唾液が溢れて喉に伝って流れた 「僕に火をつけてどうする気だったですか?」 「そりゃあ、食べるしかねぇだろ?」 「どっちのお口で、ですか?」 康太は榊原の唇をペロッと舐めて笑った そして耳元で「下のお口…」と囁いた 「オレの身躯……伊織の跡も消えちまった…」 「また付けてあげます」 「伊織だけのオレにして……」 榊原は康太を強く抱き締めると 「僕だけの君です! 昔も、今も……僕だけの君です!」 と言い愛撫を始めた 榊原の唇が康太の身躯を這う 舐めて吸い上げて……丹念に愛撫を施す 「伊織……舐めたい……」 「イカせないで下さいよ?」 「舐めるだけ……」 「なら穴を解してあげます 僕の上に跨いで乗って下さい」 康太は榊原にお尻を向けて跨がって乗った 榊原は目の前に現れたシミ一つないお尻に触れると……キスを落とした 柔かな康太の双丘を鷲掴みにすると、その奥に慎ましく閉じているお尻の穴を見つけた お尻の穴に触れると…… ピクンッと震えた 榊原は舌で舐めて濡らした ペロペロと舐めて硬い蕾を解す 時間をかけて、舐めて指と舌とで解した 「少し経つと君のココは…… 固く閉じてしまいますね…」 榊原は指を挿し込み舐めた 「……ぁぁ……伊織を想い出すから……あぁん…」 康太は喘ぎながら榊原の性器を舐めた イカせない様に舐めるだけ…… 熱を感じるだけ…… それでも康太は満足だった 榊原が感じて…… 硬くなって脈打つのを見るだけで愛されてる実感が持てた 榊原の長い綺麗な指が康太の中に挿し込まれているのを想像するだけで…… 腸壁が蠢いた 戦慄く穴が……快感を覚えて緩むのが解った トロトロに蕩けて…… 榊原の指を3本飲み込む頃には…… 「ぁん…伊織……挿れてぇ……」と哀願していた 「なら僕の上に来て……」 榊原の肉棒を離すと康太は、榊原と向かい合わせに、榊原の膝の上に座った 榊原は肉棒を掴み康太のお尻の穴に擦り付けた 「……伊織……持ってて……そしたら食べるから……」 康太はそう言うと腰を落とした 榊原の肉棒を飲み込みながら……身躯を弛緩してゆく 「あぁっ……ぁん……伊織……熱い……」 榊原の肉棒を飲み込みながら康太は喘いだ 根元まで呑み込み、康太は息を着いた 榊原は康太の乳首を掴み吸い上げた 「……ゃん……吸わないでぇ…んっ……イッちゃう…」 「イクならリングで止めますよ?」 「やらないでぇ……我慢するから……あぁっぁん」 榊原は康太を押し倒すと激しく腰を使った 康太の身躯が揺れる 激しく中を擦られ……康太は榊原に縋り付いた 「……はぁん……伊織……イッちゃう…」 「僕もイクので一緒に………」 榊原が康太の感じる所をカリで抉ると…… 康太は白濁を吹き上げて飛ばした 「………はぁ……ぁぁっ………ぁぁ……」 康太はブルッと身躯を震わせると…… 榊原が弾けた 奥に榊原の熱い精液が掛かる 腸壁が濡れる感じがした 康太は悶えながら……榊原の背中を掻き抱いた 射精しても衰えない榊原の肉棒が康太の腸壁を押し上げて、更に硬く硬直する 「……伊織……硬い……」 「何日君を抱いてないと想ってるんですか?」 「………解んない……」 「君が誘ったんですよ? 最後の一滴まで付き合いなさい」 「伊織…ぁ……ぁん……愛してる…」 「僕も君だけを愛してます」 榊原は康太に口吻た 「伊織がオレの身躯で感じてくれてるのが嬉しい… 硬くなるのが……嬉しい…… オレを欲してくれてるんだって解って嬉しい…」 「君しか欲しくないんです 君じゃなきゃ勃起しません……」 「………嬉しい……」 康太はそう言い笑った 康太の中の榊原がグンッと硬さを増した 「……ぁん……伊織……待って……ぁぁっ…ぁぁ…」 「待ちたくないです……」 榊原は康太の中を再び掻き回し始めた 康太のイイ場所を集中的に擦りあげて責める 康太は幾度も榊原の腹に白濁を飛ばし…… 意識を手放した 榊原は最後の一滴まで康太の中に注ぎ込み 性器が抜け落ちると康太を俯せにした 榊原を咥えていたお尻の穴はまだ開いていた 指を挿れて掻き回すと…… 腸壁が蠢いていた 開いたお尻の穴から赤い腸壁が見える 精液が溢れた穴はかなり煽情的だ 挿入の激しさを物語る様に……精液が泡になって白く秘孔に纏わり着いていた 榊原はペロペロと秘孔を舐めて労る 伸びきった皺が……戻る様子が愛おしい 一頻り精液を掻き出して、康太を抱き締めるとゴロンと転がり胸の上に乗せた 無意識に康太が榊原の胸に擦り寄る 榊原は康太を抱き締めて…… 余韻に浸っていた 「……伊織……」 「気が付きましたか?」 「また気絶してた?」 「無理させましたね……」 「気持ち良すぎるのがいけねぇんだよ 伊織にされると訳が解らなくなる…… イキまくって止まらねぇかんな……」 「僕で感じてくれて、僕も嬉しいです 挿れてても感じて貰えないのは辛いです 二人で味わう想いですからね 二人で気持ち良くなりたいのです」 「めちゃくそ気持ちイイ……」 康太はそう言い榊原の胸に顔を擦り寄せた 「僕も気持ちイイです…」 「今何時?」 「……8時は回ってます」 「……伊織……仕事……」 「遅刻です……仕方ありません 君は今日はどうします?」 「義恭が横浜に来るからな 悟を呼び寄せて動こうと想ってる」 「そうですか ならスーツを着せますね 何かあったら呼んで下さい」 「おう!終わったら伊織に逢いに行くかんな!」 「ええ!顔を見せて下さいね」 「最近は連絡してるし、顔出してるだろ?」 「ええ。ちゃんと連絡してくれてますね 君の愛です…嬉しいです」 榊原は起き上がると康太を抱き上げて浴室に向かった 中も外も綺麗に洗い、二人で湯船に浸かった そして浴室から出ると、髪を乾かし、着替えさせた 榊原も髪を乾かし支度をすると、康太をリビングのソファーに座らせた ベッドのシーツを剥がし、簡単に掃除をする 終わるとリビングに向かい康太を抱き上げて 一階まで下りて行った キッチンに行くと聡一郎が食事をしていた 榊原は「一生は?」と尋ねると 「彼は牧場です!昨日、夜遅くに牧場に行って帰って来てませんよ」と告げた 「大変だな……所で隼人は?」 「連ドラ入ってて隼人も帰って来てません」 「そうか…皆忙しいな」 「僕は今日は予定がないので康太と共に動きます」 「……え?良いのかよ?」 「ええ。大丈夫です!」 「なら悟にはホテルに向かって貰うか」 と康太は思案していた 榊原は「聡一郎が着いててくれれば安心です」とニコッと笑った 「当分、康太と共に動くつもりです 慎一が帰って来ても牧場は今、出産ラッシュで、スタッフ任せと言う訳にはいきませんからね」 「そうなんだ…」 「康太、体調は?」 「………怠い……これは病気じゃねぇ方の怠さだ 心配すんな……」 康太が言うと聡一郎は 「最近、してなかったでしょ? 心配してました……やっとやったんですね」 「………聡一郎、言われると恥ずかしい…」 「良いじゃないですか! 夫婦生活は必要ですよ!」 康太は顔を赤くした 「所で清四朗さん達は?」 「たまには電車で……言い出し電車で向かわれました きっと和希や和真を気分転換させるつもりなんだと想います 駅に着いたら那智が迎えに来てくれるそうなので、電車の乗り方や場所を教えました そしたら和希と和真と楽しそうに出かけて行きました」 「そっか…悪い事をしたな…」 榊原は食事を終えると聡一郎に康太を頼み 会社へと向かった 康太は応接間で義恭からの電話を待っていた 昼近く、義恭から電話が入った 『横浜駅に着いた』 「なら今から迎えに行く! ヨドバシカメラの前で待っててくれよ」 『解った』 康太は電話を切ると立ち上がった 「聡一郎、行くとするわ」 「横浜駅ですね! ホテルの部屋は取っておきました」 「ありがとう」 「なら行きますか!」 聡一郎と共に地下駐車場まで下りて行き 聡一郎の車に乗り込んだ シャッターを開けて地下駐車場から出るとシャッターを下ろし、聡一郎は横浜駅に向かった ヨドバシカメラの前に行くと飛鳥井義恭が待ち構えていた 路側帯に車を停めると、康太は車から下りた 「義恭、待たせたな」 康太は義恭を後部座席に乗せると、ナビに住所を打ち込んだ 「聡一郎、ナビの通りに向かってくれ」 「了解!」 聡一郎は車を走らせた 康太は胸ポケットから携帯を取り出すと 「オレ!昼から時間取れるかよ?」 『昼からか、大丈夫だ!』 「直接ホテルに向かう?」 『……俺を迎えに来やがれ!』 「悟に行かせるか?」 『おめぇが向かいに来やがれ!』 「解った、向かえに行く前に電話を入れるかんな」 『おう!待ってるからな!』 康太は電話を切った 聡一郎は笑って 「迎えに来いって?」と問い掛けた 「そう。迎えに来やがれ!ってさ」 「ならホテルに先に行ってて貰いますか?」 「だな…後で連絡入れといて」 「解りました! 霊園に着いたら連絡入れときます」 聡一郎の車は高級住宅街を抜けて高台へと上っていく 横浜の街並みが眺められる霊園に着くと、聡一郎は車を停めた 「駐車場で待ってます」 「頼むな」 康太は車を下りると、後部座席のドアを開いた 義恭は遺骨を抱いたまま車から下りた 康太が霊園を歩くと紫雲龍騎が待ち構えていた 「康太、お待ちしておりまた」 「準備万端?」 「はい!」 「義恭、こっちだ」 康太に導かれて行くと……… 横浜港が一望出来る場所だった 思い出が蘇る…… 貧乏学生だった義恭と彼女は何時も横浜港が一望出来る場所で待ち合わせをして安デートをしていた 「義恭、納骨するかんな!」 「…はい……」 義恭は愛しそうに遺骨に口吻を落とすと…… 納骨した 紫雲龍騎に送られ……納骨される 「義恭」 「はい」 「夢を見たかよ?」 「………はい!見ました……」 「あれは久遠由美子の想いだ 本人の想いを紡いで来て貰ったかんな…」 義恭は目頭を押さえた…… 「………気持に区切りが付きました… 本当にありがとうございました」 「義恭、此処に会いに来い…… 彼女は消えても……想い出は消えねぇかんな」 「………はい……」 納骨して、紫雲が霊園の坊主にお経を読ませた 「さてと義恭、話し合いに行くとするか!」 「はい!」 義恭の瞳は覚悟が決まっていた 康太は紫雲に礼を言い別れると駐車場へと向かった 聡一郎は車の外で待っていて、康太の姿を見つけると 後部座席を開けて 義恭を先に乗せて 助手席のドアを開けて康太を乗せた 「では、久遠先生を迎えに行きます」 康太は携帯を取り出すと 「今から迎えに行くかんな 駐車場に出ててくれ!」 『解った!』 久遠はそう言い電話を切った 康太は何処かへ電話を入れた 「オレ!これから向かうから!」 『僕もお袋も既にホテルの部屋で待ってます』 「おう!待たせたな!」 『真贋、本当にありがとうございました』 「さとる!待ってろよ!』 悟は『はい!』と言い電話を切った そして榊原に電話をする 「伊織?これから久遠を迎えに行ってホテルに向かう」 『ホテルの話し合い 僕も同席します!』 「伊織、仕事は?」 『急ぎの仕事は片づけました 話し合いが終わったら、また手伝って下さいね』 「おう!ポンポンやる!」 『身躯は?どうですか?』 「………怠い‥‥‥」 康太が謂うと榊原は笑って 『愛が溢れ過ぎてますからね… ホテルの部屋番、メールで送って下さい』と謂った 「解った今送る」 康太はそう言い電話を切った 「聡一郎、小腹が空いた…」 「コンビニ寄りますか?」 「うん!」 元気な欠食児童が喜んでいた 久遠の所へ行く前にコンビニに寄り、運転の合間にオニギリの包装紙を破き食べさせる 「美味しい!聡一郎!」 「それは良かったです」 モグモグ食べる康太は可愛かった 聡一郎が病院の駐車場に差し掛かろうとした場所に、珍しくスーツを着た久遠が立っていた 聡一郎は久遠の横に車を停めると、久遠は車に乗り込んだ 「聡一郎、これも剥いてくれよ」 欠食児童は更に食べ物を要求してきた 聡一郎は剥いてやり康太に与えた 「康太、お茶も飲まないと詰まりますよ!」 モグモグ食べる康太に注意も怠らない 久遠はその光景を見て 「康太は腹減りか?」と尋ねた 聡一郎は苦笑して 「みたいです…少し飢えてます」と久遠に伝えた 「聡一郎、プリン」 「それはスーツが汚れます 伊織に怒られますよ?」 「………それは厭だ……」 康太は諦めた 紅茶のペットボトルをちびちび飲みながら 「スーツ汚すと黒しか着せませんよ……言われるかんな‥‥」 康太がグチグチ言うと聡一郎は笑っていた 車はホテルニューグランドに到着した ホテルに到着すると康太は車から飛び降り、走り出した 聡一郎は優雅に車を停めると車から下りた 「……おい……康太は良いのかよ?」 久遠が聡一郎に問い開けた 「あの足取りは伊織がいるんですよ」 聡一郎は笑って義恭と久遠を車から下ろした そしてドアを閉めてロックすると、歩き始めた ロビーに行くと榊原の姿が見えて 久遠と義恭は、成る程…と感心した 榊原は康太の傍に静かに立っていて、義恭と久遠を見ると軽く会釈した 聡一郎は「伊織がいるなら大丈夫ですね」と言った 「帰りますか?」 榊原が問い開けると 「はい!帰ります 帰ったら話、聞いて下さい」と言い深々と頭を下げた 「解りました!」 聡一郎が帰って行くと康太は歩き出した 丁度運良くやって来たエレベーターに乗り込み5階までゆく 5階でエレベーターを下りると、スタスタ歩いて部屋の前に止まった ドアをノックすると、悟がドアを開けた 「真贋、ご足労掛けました! さぁ、お入り下さい」 悟は皆を招き入れ、ドアを閉めた 康太は義恭の腕を掴むと、ソファーに座らせた 康太もソファーに座ると足を組んで、嗤った 「久遠、座れよ!」 康太が言うと久遠は座った 飛鳥井志津子は髪を綺麗に結わえて美しかった 凛と前を向く姿は……出来る女にしか見えなかった 志津子は立ち上がると康太に書類を見せた 「真贋、話し合う前に、決済のいる書類に判を押して下さい!」 「オレ、印鑑は持ち歩いていねぇかんな」 今は無理だと謂おうとすると、榊原がバッグを探り印鑑を取り出し康太に渡した 「伊織、持ってるの?」 「ええ、さぁ印鑑を押しなさい」 「伊織との婚姻届なら幾らでも判押すんだけどよぉ‥‥」 榊原は苦笑した 「美味しそうなお口してますね」 榊原は康太を引き寄せて、口に着いた海苔を食べた 「オニギリ食べた」 「いー してご覧なさい」 榊原が言うと康太は、いーと口を開いた 「海苔は着いてませんね」 「プリン食おうとして聡一郎に止められた」 「当たり前ですよ 今日のスーツは白です シミを付けたら黒しか着せませんよ」 拗ねる唇に口吻を落とし、書類に目を通させ判を押した 悟は「神奈川区の土地、此処までしか下がりません」と書類を見せた 「………これなら要らねぇな」 「………厳しい事をサラッと言いますね…」 「こんな奥まった土地を上乗せされたら採算も取れねぇ赤字まっしぐらだかんな」 「解りました!粘って落とします!」 「悟はいい女には弱いかんな!」 「そんな事ないです!」 「志津子、アスカイサンダーは来週にはデビュー出来そうか?」 「調整の為の認印ですので、走らせれると想います」 「うし!仕事の話は終わりだ! 待たせたな!義恭!久遠!」 康太が言うと志津子と悟はソファーに座った 志津子は康太に深々と頭を下げた 「真贋、本当にありがとうございました」 志津子は清々しい顔をしていた どんな結論でも受け止める決意が見えた 康太は胸ポケットから書類を出すと、義恭に渡した 「秋田に行った時にはもう預かっていたんだ」 義恭は封を破り、中身を取り出した グリーン色の紙が入っていた 離婚届だった 開いて見ると、妻の欄は志津子の文字で総て書いて在った 志津子は義恭に深々と頭を下げた 「貴方の想いのままになさって下さい」 志津子が言うと悟も 「僕にとって父親は父さん、貴方だけです 母さんと離婚しても僕の父親は貴方だけです  父さんと母さんの離婚など考えてもいませんでした 父さんが母さんと別れたら…… 僕は母さんを支えて生きて行こうと想っています ですので、母さんの心配は要りません…」 悟は父親が重荷に想わない様に伝えた 久遠は志津子と悟に詫びようとした 「久遠!黙ってろ!」と康太が言った 志津子は久遠に 「譲さん、貴方が謝る必要なんてないのよ」 と伝えた 悟も「譲君、君が詫びる事なんて一つもないよ 譲君は僕のお兄さんだと想ってる! 康太がくれた僕のお兄さんなんだよ!」と久遠に伝えた 義恭は志津子と悟に深々と頭を下げた 「………本当に身勝手な男で申し訳ない……」 康太は義恭の詫びを一蹴した 「義恭、謝罪はもう良い! お前がこの先どうするか……聞かせてくれ」 「康太……総て捨てて出て行った男が…… 帰って来たからと言って許されるモノでは有りません……」 「………だから?」 「……康太……」 「おめぇが志津子と別れるなら、別れれば良い 悟はおめぇの子供に違いがねぇ! 親子の縁までは切れねぇのは解ってるよな?」 「…………はい……解っております」 「悟と久遠が並べば、誰でも兄弟ですか?と問われるよな? 悟は間違いなくおめぇの子供だよな?」 「はい。悟は我の子に間違いありません 志津子が我以外の子を産む事など皆無です」 尽くして愛してくれた志津子が、他の男の子など産む筈がないのだ…… そう考えて………義恭はハッ!となった この想い……絶対の想い…… 長い年月を共に生きて来たからこそ……築かれた想い… 愛した女は……志津子にも当てはまる 愛していなければ幾ら金持ちでも……援助など受けなかった 甘えていたのだ…… 志津子に頼って……甘えていたのは義恭の方なのだ 改めて………志津子に甘えていた自分を想う 頼り甲斐ない男を全力で支えてくれたのは志津子だった 悟を一生懸命育てて、暮らした日々は確かに在った 「志津子、どうしたいよ?」 「……義恭の重荷になるから……言う気はない」 「悟は、どうしたい?」 「父さんの重荷にはなりたかないので……言いません」 「本当におめぇらは似た者親子だな!」 康太が言うと志津子も悟も笑った 榊原は黙って見ていたが、口を開いた 「義恭先生、貴方は罪を作った 志津子が平気な顔していたと想ってらっしゃるなら、一度殴らせなさい!」 「………え?……」 「飛鳥井志津子は誰よりも脆くて……儚い それを愛する想いだけで踏み留まり、送りだそうとしているのです 志津子の想いを無にする事は僕が許しません」 義恭は榊原の言葉を重く受け止めていた 「……我は志津子に甘えていました…… 志津子なら解ってくれる……と甘えていたのです 志津子の想いも知らずに……本当に身勝手な事を致しました こんな我が……志津子と何もなかった様に過ごす訳にはいかないと想っています」 「離婚すると言うのですか?」 「そう言うのとは違います 志津子と悟に解って貰おうと想っています 我は想いを断ち切れなかった…… 譲が出来た時に責任をとらねばならなかったのに… 一人で産ませて……育てさせてしまった 彼女は何も言わなかった…… それを良い事に甘えていたのです 二人に甘えて苦しめてしまった  償いたいと想います 志津子や悟、そして譲に償いたいと想っています」 「償わなくて良い 側で支えてやれば良い 離れていたら支えれねぇぞ? 還れ!義恭!」 康太は義恭に結論を突きつけた 悟は「譲君、一緒に暮らさないか?」と久遠に問い掛けた 「………え?……」   久遠は躊躇した 悟は更に続けた 「僕らは家族だが暮らせなかった そんな時間を埋める為に、一緒に暮らさない? 譲君が誰か大切な存在がいるなら……無理だけどね」 久遠は何も言わなかった…… 康太が変わって 「久遠には久遠拓美、拓人、と言う子供がいるんだよ 嫁は泊まりばかりの久遠に愛想尽かせて出て行ったけどな、子供がいるんだよ!」 久遠は驚愕の瞳で康太を見た 志津子は 「うちは広いからね、同居も大丈夫よ! 譲さんさえ嫌でないなら暮らしませんか? 私達の仕事は不規則ですが、面倒見れない訳じゃないですよ?」 「志津子さん……それは出来ません……」 久遠が断ると康太は榊原を見た 「伊織、蹴り飛ばして良いか?」 「………康太、平行線ですけど、蹴り飛ばしたら駄目ですよ……」 「ちぇっ……」 拗ねた康太にキスを落とし 「取り敢えず、お試しで暮らし始めなさい! 結論は飛鳥井の家に来て下さい 来週は………いません…… ですので、再来週まで、お試しで暮らしなさい 久遠先生もですよ! 拓美と拓人を連れて、同居なさい 義恭先生も四の五の言わすに還りなさい! そして出した結論は再来週聞きます」 榊原が言うと久遠が 「何処かへ出掛けられるのですか?」 と尋ねた 「……ええ……康太が少し遠くへに行かねばならないのです……」 久遠は訝る瞳を榊原に向けた 「……力を使う……つもりですか?」 遠くへ逝くならば‥‥‥力を使うつもりなのだろう‥‥ でなくば遠くへ出向く必要などないのだから‥‥ 「……仕方ありません…… 動けぬ真贋は要らぬと言われれば…… 共に逝くしかありません!」 「………還られたら、病院に来てください!」 「………解りました…」 「取り敢えず子供を連れて、義恭先生と共に暮らしてみます」 「親父……で良いですよ? 子供なのに……他人行儀は要りません 家族になりましょう 血の繋がりだけが家族になれる訳じゃないですよ 僕は飛鳥井の家族になってます 自分の親も飛鳥井の親も同等に大切です そうして生きて行く道もあるのです」 「………羨ましい限りでした……」 「久遠先生も家族を持ちましょう 不完全な家族のピースがはまる様に合わさる時 家族になって行くのです」 久遠は深々と頭を下げた 「では、飛鳥井志津子の家までお送りします!」 「………え?今?」 「そうです!僕達夫婦は忙しいのです! 奥さん、拓美と拓人を確保しますか?」 「おう!悠太に言えば確保してくれる」  「では悠太にメールして拓美と拓人を駐車場まで連れて来て貰います!」 榊原はそう言い携帯を取り出すとメールを打ち始めた 直ぐに返信を貰い 「直ぐに取り掛かるそうです!」と告げた 「なら行くか!」 康太は立ち上がった 「志津子、拓美と拓人を仕込んでくれ」 康太は志津子に頼んだ 「使われるのですか?」 「そう!布石は打っておきたい 天賦の才は親父譲り! 飛鳥井康太が資金は出す 勉強させて本質を見抜いてくれ!」 「解りました!その為にも近くで見た方が良いですね 私は祖母になりますね! 嬉しい限りです!連れ歩きます!」 「頼むな!」 「了解しました!」 志津子は深々と頭を下げた 「志津子、悟も家に帰ってろ! んで、飯でも食いに出掛けろ!」 「良いですね!」 志津子も悟も笑顔で答えた 康太は義恭と久遠を連れてホテルの部屋を出た 榊原はフロントに出向き精算をして、ホテルを後にした 榊原のベンツの後部座席に義恭と久遠を乗せて 助手席に康太を乗せた 康太はポケットから飴玉を取り出して舐め始めた 「その飴、どうしたのですか?」 「和希がくれた! 和希って慎一の子供の方な」 康太のお口から甘ったるい匂いがする コロコロ舐めていると…… 「………っ……」と声が聞こえた 榊原は路肩に車を停めると康太を引き寄せた 「お口見せて下さい」 口を開けると……飴で口を切っていた 榊原は康太の口から飴を取り出すと、ティシュに包み飴を取り出した 「………飴はもうダメです」 康太の舌からは鮮血が流れていた 「……止まりませんか?」 「そのうち止まるだろ?」 康太が言うと久遠が 「止まらなかったら言え処置してやる」と言った 榊原は「お願いします!では行きます」と言い車を走らせた 桜林学園の駐車場に車を停めると悠太が待ち構えていた 康太と榊原が車から下りると悠太は 「久遠拓美と拓人です!」  「悠太、ご苦労でした」 榊原が言うと悠太は嬉しそうに笑った 榊原は悠太と同時に聡一郎にもメールしておいた 2人は車に乗れないから…… 暫くすると聡一郎が駐車場に車を停めた 「聡一郎、この2人を乗せて、後を着いて来て下さい」 「解りました!」 聡一郎は2人を車の後部座席に座らせると運転席に乗り込んだ 「悠太、君はまだ帰れないのですか?」 榊原が訪ねると 「はい!今日は脇田に行かねばなりません」 「気を付けて還りなさい」 「はい!」 榊原は車に乗り込むと、悠太に手を上げ、車を走らせた 主治医の病院の裏にある志津子の家はかなり大きかった 駐車場に車を停め榊原は車から下りた 「義恭先生、久遠先生、まずは始めてみて下さい 答えは急いで出す必要なんてないです 家族としてスタートラインに立って走り出したにすぎないのです!」 「伴侶殿……本当に世話になりました……」 義恭は心から榊原に礼を言った 久遠も「………本心は……俺は許される存在ではないと想ってる…… だが子供にまで……それを押し付けるのは忍びなかった 始めて見ようと想う………チャンスだからな」 「そうです!始めてみて、模索して行けば良いと想います」 「康太の口、どうですか?」 言われて榊原は康太に近寄った 助手席の窓を開けさせ 「あーんして下さい」 と口を開けさせた 血は止まりかかっていた 「大丈夫みたいです」 榊原が言うと久遠は 「何かあったら言え!駆け付けるからな!」 と言った 榊原は「その時はお願いします」とと、ニコッと笑った 「では、在るべきカタチになる事を祈ってます」 と言い運転席に乗り込んだ 聡一郎は後部座席の2人を下ろし 榊原と共に車を走らせた 「お口、痛くないですか?」 「大丈夫だ! 血生臭いかんな…なんか飲みてぇ」 「会社に行ったらオレンジジュースがあります」 「なら会社に行く」 「もう飴は駄目ですよ?」 「うん……でもくれるとな……断ると可哀相でな…」 「………なら僕が食べますよ」 「伊織……」 「何ですか?」 「………今も挟まってる感じする…」 「……止まれませんでしたからね……」 「伊織、ポンポン行くぜ!」 榊原と康太は会社に、聡一郎は飛鳥井に帰って行った 会社で榊原の出した書類の副社長の欄にポンポン判を押して行った オレンジジュースは舌に染みて……ちびちびとしか飲めなかった それでも、榊原が康太の為に用意してくれたのが嬉しくて、榊原に抱き着いて離れなかった 愛してる…… 愛されてる実感 康太はそれを噛み締めながら時を刻んでいた 同じ日は二度と来ないから………

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