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第36話 失踪

飛鳥井の家から…… 康太と榊原が消えた 瑛太は事前に消えるのを知っていて、騒ぎ出す家族を 「康太と伊織は、還って来ます! 騒がないで待っていなさい!」 と家族に伝えた 清四郎や真矢にもそれは伝えられた 慎一の所に安曇や戸浪……堂嶋、三木、相賀、須賀 そして東都日報の東城と今枝が……コンタクトを取って来た 神野や小鳥遊も毎日の様に飛鳥井に顔を出した 兵藤も毎日飛鳥井にやって来る なのに………康太と榊原は…… 一ヶ月経っても…… 還ってはいなかった 一生は何故……… 離れてしまったのか…… 離れていたのか……悔いた 慎一も、聡一郎も隼人も……… ずっと側にいれば良かった……と泣いた 戸浪や堂嶋、安曇、三木は………… 何故あの日………逢わなかったのか…… 悔いていた 何かがあって姿を消したのは解る だが…………何処へ行ったのか解らず…… 皆、不安に想っていた 休日にもなれば飛鳥井の家に誰か彼か訪ねて来る ずっと………ずっと………待って還って行く…… その姿を見るのは…… 飛鳥井の家族も辛かった 堂嶋は康太と榊原の部屋のリビングに幸哉と来て過ごす 堂嶋が贈った絵は…… 壁に掛かっていた リビングには笙と榊原の笑顔のパネルも掲げてあった サイドボードの上には康太と榊原の写真が所狭しと飾ってあった 一際目を引く写真は結婚式の時の写真だった ウェディングドレスを着た康太が笑っていた 榊原が笑顔で花嫁を抱き締めていた 幸哉はそんな写真を手にして…… 「………何処に行っちゃったの……康太君…」 と呟いた 想いに浸っていると戸浪が、康太と榊原のリビングに顔を出した 「………考える事は一緒ですね……」 戸浪は苦笑した 「還る場所は此処しかないですからね」 堂嶋が言うと戸浪が頷いた 「………消える少し前……誘われたんですけどね 万里が誘拐にあってて仕事を疎かにしたのにで… 仕事が溜まってました…… あの日逢っておけば……と悔やまれます」 「万里が誘拐?……初めて聞きます…」 「康太が助けてくれました 慎一が入院してたのはその所為です…」 「…………彼は無償の愛をくれます……」 康太…… 何処へ行ったんですか? 還って来て下さい…… 祈る思いは…… 誰しもが一緒だった 魔界の炎帝の邸宅の庭にある湯殿で、蒼い龍が気持ち良さげに寝そべっていた 龍が「……気持ちイイです炎帝……」と赤い舌をデローンと出していた 「そうか!ピカピカに磨いてやるかんな!」 全裸の炎帝が青龍を磨く 鱗の一枚さえも愛しそうに磨いていた 角を握り締めて……洗うと青龍は喘いだ 「……ぁ……角はダメです……」 炎帝は角をペロッと舐めた 「……アァッ……イッてしまいます……」 「青龍……凄く綺麗だ……」 青龍の赤い舌が炎帝を捕まえ口に咥えた 龍の舌が炎帝を舐めあげた 炎帝は嬉しそうに青龍に頬擦りした 青龍の長い舌が器用に炎帝の脚の間に潜り込み…… お尻の穴の中へと潜り込んだ 「……あぁっ……青龍……ダメッ……」 くねくねと舌が奥を暴いて舐めあげる 炎帝のお尻の間に青龍の舌が潜り込み犯して行くと…… 炎帝は喘いで……青龍を求めた 立ち上がり……青龍の角を舐めて…… 炎帝の可愛い性器を角に擦り着けると…… 青龍の下腹部から……グロテスクな性器が生えて来て……自己主張していた 「アッ……イキます……」 青龍はイッた 龍の鱗を濡らして輝いていた 更に力を増す青龍の性器を、炎帝は見ていた 挿れたら………確実に………壊れるな……と苦笑する 青龍は人のカタチに戻り炎帝を抱き上げた 「龍の僕を怖がらずに愛してくれるのは君だけですよ」 「オレは青龍を愛してるからな…」 「気持ち良かったです……」 「ピカピカに磨きあげたかんな!」 「君が角にイタズラするから……」 青龍は熱く滾る肉を炎帝のお尻の穴に擦り「青龍の角は本当に綺麗だな 青龍の鱗と角見てるだけでオレはイケる」 「僕は君の中でイキたいのです……」 青龍の熱くで血管の浮き出た性器が炎帝の中へと潜り込む…… 「……ぁ……あぁっ……熱い……」 「君が育てたんですよ……」 「青龍……青龍……愛してる……」 「僕も愛してます炎帝…… こんな龍の姿の僕を全部愛してくれるのは君だけです 怖くないですか?僕の口に咥えられた時…… 君は笑ってましたね?……普通は怖がりますよ?」 「青龍になら噛み殺されても良い…… 青龍がする事ならオレは総て受け入れられる」 「止まりません……アァッ……炎帝…… 君の中……熱くで締め付けて気持ち良い……」 「お前の為に在る体躯……だからな…」 青龍の熱に翻弄されて……揺さぶられて掻き回され 後はもう夢中に青龍に縋り着いていた 何度も何度も……繋がり……愛され…… 炎帝は意識を手放した 青龍は炎帝の中の精液を掻き出すと……綺麗に体躯を洗い、湯殿に入った 泳げる程の大浴場は炎帝だけの為に在った 浴場を包み込む様に木々や花に囲まれいた 青龍は炎帝を抱き締めたまま、お湯に浸かっていた 炎帝は目を醒まし青龍を見ると微笑んだ 「そろそろ還らねぇと……皆が心配してるかな?」 人の世を離れた康太と榊原は魔界に来ていた 閻魔に尋ねモノをする為と探る為…… そして疲れた体躯を癒す為に…… 龍の体躯を日々洗って貰っていた 炎帝が鱗の一枚さえも愛しげに洗ってくれる様を、青龍は感激して見ていた 龍族でも……龍の姿を嫌う輩はいる…… 龍の容姿で愛し合おうとすると青褪めて逃げる奴もいた…… なのに炎帝はこよなく龍の姿の青龍を愛してくれていた 龍の姿で炎帝に体躯を洗って貰った 初めての事だった 龍の口を開けて赤い舌で炎帝を舐めた 口に咥えて舐めあげた…… なのに炎帝は少しも怯えたりしなかった こんなに自分を愛してくれる人は…… 未来永劫……見付ける事は出来ない 炎帝のそうした想いに触れると…… 青龍は涙が出る程に……嬉しくなった 「青龍、また洗ってやるからな!」 「ええ。楽しみにしてます 中々……龍の姿のまま体躯を洗うのは至難技です」 「魔界に還ったらオレがピカピカに磨いてやる」 「………炎帝……愛してます」 「オレも愛してるかんな! 魔界に還ったら龍の姿でいる時間を増やして良いぞ ありのままの姿で過ごすのが一番ストレスなくて良いかんな!」 「………炎帝……龍の僕を愛してくれるのは君だけです」 青龍は涙ぐんだ 「オレは青龍なら総て愛せれるんだ」 青龍は強く炎帝を抱き締めた 湯殿から出ると部屋に戻り服を着た そして閻魔の邸宅へと向かった 閻魔は弟夫婦の訪問を喜んで受けた 「炎帝、青龍、疲れは取れましたか?」 「兄者、助かった オレの青龍もすっかり元気になった」 「魔界に来られた時は……青龍は倒れそうでしたからね……金龍と銀龍が心配してました…」 「兄者、夜叉王の行方は解ったか?」 「転輪聖王も追っていたが、足取りすら掴めてはおらぬ……冥府に行ったのも、それを追ってであろう…」 「……え?弥勒は掴んでいたのか?」 「かなり前から探りを入れてました」 「………オレは聞いてねぇぜ?」 炎帝は怒った! 「絶交するかんな!弥勒!」 炎帝が叫ぶと……弥勒は姿を現した 「………絶交は……しないで、ねっ……炎帝…」 「てめぇ!オレに隠してやがったな!」 「………お前が征伐した夜叉王が誰かに手引きされて逃げ出していた……とは言えなかった……」 「いつ頃逃げ出したんだよ?」 「人の世で大きな震災が在った時……魔界と冥府に歪みが出来た…… その歪みに乗じて夜叉王は逃げ出した……」 「で、炎帝を打つ日をひたすら狙っていたか…」 「今、人の世に紛れておる…」 「いるだろうな……毒でも盛られたら堪らねぇかんな 巻き込みたくねぇからな……魔界に来たんだからよぉ!」 「………それより……その白い犬は?」 「見て解らねぇか?狐に決まってるやん」 「………これって……あの白狐?」 「無に還したからな、閻魔の邸宅のペットに連れて来た」 「覚えてはおらぬのか?」 「元々コイツは伏見の眷属だったのに…盗まれて作り替えられた… それを無にして元に戻してやった もうなオレ以外の奴には操られない様にしたかんな!大丈夫だろ?」 「伏見には戻さぬのか?」 「空狐が今更戻す方が酷だと言った… ならば閻魔の邸宅にはペットがいなかったからな……連れて来たら母上が気に召したみたいだ マフラーに欲しいと強請られた……」 マフラーに……弥勒は言葉を失った 「で、人の世はどうよ?」 「この前まで和希と数馬と北斗の周りをウロウロしていたので……ガードを付けさせた」 「瑛兄達は?」 「紫雲が寄せ付けぬ様に……ガードしておる」 「弥勒、オレを他の奴に見える様にしてくれよ そしたら、まずは、飛鳥井建設に偵察に行ってくるとする!」 「解った!他の奴にしか見えぬ幻術をかけよう 伴侶殿もか?」 「だな、伊織には動いて貰わねぇとな!」 「では、二人に幻術をかけてしんぜよう」 「弥勒、八雷神に魔界の結界を張らせた 幾十にも張り巡らせた結界は潜り抜けるのは至難の業……魔界へ戻るのは困難だろ?」 「なれば冥府に……行く……?」 「それも無理だ この前冥府に行った時に結界を強化しておいた 親父殿と二人で久し振りに結界をして歩いたからな ちょっとやそっとじゃ……破れねぇと想う」 「ならば安泰だな 何時人の世に行かれるのだ?」 「明日の朝、今夜は金龍が家族を連れて来るかんな 別れを忍んでからにしょうと想っている」 「なれば明日の朝、閻魔の邸宅に来るようにしよう」 「手間かけるな弥勒」 弥勒は炎帝を抱き締めた 「気にするな! お前の為に動けるのは嬉しい」 「ならな、明日の朝な」 弥勒は炎帝を離すと健御雷神の所へと向かった 炎帝はソファーから立ち上がると 「兄者、またな」と笑った 「もう家に帰られますか? 雪が……目のやり場に困ります……と言う程に仲良くしてて足りませんか?」 「足らねぇよ! オレは青龍と何時も一緒にいてぇんだ」 「黒龍が来たら私も顔を出します」 「おう!兄者、悪かったな」 「いいえ、お前が来てくれて私は嬉しい…」 「兄者……子閻魔をそろそろ八仙の所へ修行に出せ」 「解りました」 「ならな、また後でな」 炎帝はそう言い自分の邸宅に帰って行った 応接間に青龍と座って寛ぐ 青龍は龍になり炎帝に甘えていた 炎帝は龍の髭を引っ張って遊んでいた 「眠くなります……」 「寝ちまえよ」 スヤスヤと龍は眠りに落ちた 炎帝は龍の眠りを守って優しく撫でていた 金龍が妻や黒龍達と遊びに来た時 青龍は龍の姿で無防備に寝ていた 金龍は………その様子を見て驚いていた 龍の姿のまま……青龍が眠っていたから… 幸せそうに無防備に青龍は眠っていた 炎帝はニコッと笑って青龍を撫でていた 「………炎帝……怖くないのですか?」 金龍が尋ねた 種族が違うと、中々本来の姿を披露する事は困難になる ましてや……龍なれば……同じ種族の者でも敬遠する者もいる…… 「あんでオレが青龍を怖がるんだよ オレは龍のままの青龍とでもデキるぜ!」 金龍と銀龍は炎帝の愛を知った 炎帝の深い愛を知った 「オレの青龍程、綺麗な龍はいねぇんだぜ」 完全な惚気を言われて…… 黒龍は炎帝に抱き着いた 「惚気はそれ位で飲もうぜ炎帝!」 「少し待て」 炎帝は龍の頬に口吻を落とした 「青龍、時間だ起きろ」 「炎帝、キスして…」 「仕方ねぇな」 炎帝は龍の口にキスした 龍の姿は………人のカタチになり、見慣れた青龍になった 青龍はそのまま、炎帝を抱き締めてソファーに座った 「父上、母上、兄さんに地龍夫妻、お久し振りです」 金龍は「この前は労いの声も掛けられなかった…」とボヤいた 炎帝は真っ赤な顔になり……青龍の胸に顔を埋めた 「父上、僕の奥さんは……恥ずかしがり屋さんなので、それは言わない様にして下さい」 「………全てはお前が……抜けば良い話であろう…」 「嫌です!抜くなんて勿体ない!」 金龍は絶句した 本当にこの息子は……こんな性格だったのか…… と、改めて思い知る 黒龍が金龍に「親父殿……炎帝が恥ずかしがる…止めてやってくれ」と頼んだ 炎帝は青龍の胸に顔を埋めていた 「ちくしょう!オレはめちゃくそ長生きしてやる! 当分魔界には帰らねぇかんな!」 青龍は炎帝のつむじにキスを落として 「……ごめんね……」と謝った 「許して……ねっ!炎帝!」 そぉーっと炎帝は顔を上げた 瞳は……涙ぐみ……真っ赤な顔をしていた 黒龍は炎帝を掴むと「飲むぞ!」言った 雪がお酒の準備をして料理とお酒を運び込んだ 地龍も銘も手伝って料理とお酒を運んだ 金龍は青龍に「体調はどうですか?」と尋ねた 「魔界に来るまでは……倒れそうでした ですが、父上とか兄さん達が薬とか差し入れて下さったので、大分良くなりました 後炎帝が龍の姿で過ごせと言ってくれたので、龍の姿で過ごしてました 毎日、龍の体躯を洗って貰って、龍のまま眠る事もありました! 龍のままエッチもしました!」 聞いてない事まで聞かされて……金龍は苦笑した まったく………こんなに似ていたとは……嫌になる 閻魔が炎帝の邸宅の応接間に顔を出した 父の健御雷神も一緒だった 閻魔は炎帝の顔を見て…… 「炎帝、顔が赤い……熱でも出たのですか?」 と、溺愛心配性の兄は心配した 黒龍が説明して……納得した 「我が弟はシャイですから……」と言った シャイ………程遠いイメージしかない皆は苦笑した 健御雷神は「夫婦故当たり前の事だ!気にするでない!」と慰めた 「親父殿……」 「夫婦になるのに……肉体の繋がりがない方が心配であろうて! 愛されてるのが解って我も家族も安心しておるのだ!」 健御雷神は息子を撫でた 盛り上がり酒を飲み交わす 銀龍は「本当に炎ちゃんは可愛いわ…」としみじみ呟いた 「我ら龍族は魔界で何処か受け入れられない存在だと想っていた…… 龍の姿をする自分すら好きになれなかった……… だけど炎ちゃんと知り合って、私達はそのままで良いんだなって想える様になったの…… 見方を変えれば……我ら龍族は嫌われている訳ではなかった… 炎ちゃんと結婚する青龍を祝って下さる方も多くてね 話した事のない人達と話したり出来たの… 青龍が炎ちゃんを選べばこそ……解った事でした」 銀龍は心の内を吐露した 金龍は妻がそんな風に感じていたとは……知らなかった 「オレは青龍程綺麗な龍は見た事がねぇかんな 一目惚れの青龍と一緒になれて幸せだ…… オレは元々は冥府のモノだ……冥府から呼び出され創られた傀儡のオレが青龍には相応しくねぇんだけどな…」 炎帝は自嘲して笑みを零した 青龍は炎帝を強く抱き締めた 「僕にめぐり合う為に君は産まれたんですよ」 青龍はそう言い炎帝に口吻た 「………んっ……ぁ……」 喘ぎが洩れる程の接吻をされて………炎帝はクラクラだった 「僕の奥さんは君だけです! 炎帝、未来永劫、僕の妻は君だけです!」 恥ずかしくもなく、顔が赤くなる台詞を吐き続ける青龍に両親は唖然となった 黒龍が青龍の肩に手を置き 「お前……わざとやってるだろ?」 と告げた 「解りました?」 「お前って……知れば知る程親父にソックリ……」 「親子ですので似るのです」 青龍が言うと金龍が 「止めてくれ!俺は青龍程独占欲は強くねぇぜ!」 とボヤいた 黒龍は呆れて……… 「親父殿も中々ですよ? 龍族一のおしどり夫婦と言われる程にね」 「そのおしどり夫婦は青龍夫婦がなるからな」 「親子でなってれば良いでしょう?」 「俺は青龍程にベタベタしねぇ!」 「似たり寄ったりだと赤龍が言ってました」 「あの野郎!帰ったらただじゃ済ませねぇ!」 金龍は怒りに震えていた 黒龍はしれっと笑って「すぐ忘れる癖に…」と言うと…… 金龍に肩を掴まれた 「良い度胸だ黒龍!」 目が目が据わっていた…… 黒龍はヤバい……と想ったが遅かった 金龍にくすぐられ黒龍はギブアップした 本当に大人気ない金龍だった 地龍はそれを笑って飲んでいた 横には妻の銘が座っていた 炎帝は何も声は掛けなかった 炎帝と目が合うと、優しく笑っていた 包み込む様に………優しく微笑んでいた 銘は……そんな炎帝の顔を見て…… 涙ぐんだ 地龍はそっと銘を抱き締めた 「金龍、翼龍と火龍はどうよ?」 「一族に溶け込んで仲良くやってます」 「八仙の所から黒龍の子供は貰い受けたか?」 「…………帰らないそうです 炎帝が還られる時に虹龍と共に還るそうです」 「………あんでだよ?」 「………黒龍の子ですので捻くれているんでしょうか?………解りません……」 「……弥勒……何でだろ?」 『我が今八仙の所へ飛ぶ故、待っておれ』 「悪いな弥勒……」 「構わぬ、明日お前と共に人の世に還る!」 「おう!待ってるかんな」 弥勒は気配を消して崑崙山へと飛んだ 「人の世に還れば……夜叉王か……」 炎帝は呟いた 幻術、妖術、妖かし…これらを得意とするのが夜叉王と言う人間だった 人間と言うには……既に人ではなく かと言って神でもなく…… 妖魔になるしかない存在だった 炎帝は夜叉王を討伐し冥府に封印した その封印が……先の震災で綻び…その隙を突いて夜叉王は逃げた 妖術幻術を、使い人間を翻弄する その力は危惧され……討ったのに…… 今までの気持ち悪い出来事は、夜叉王の仕業だとすれば……頷けた 人に化け、人を操り、思いのままに動かす それが夜叉王だった 夜叉王は復讐に燃えて炎帝を……… 今は飛鳥井康太を亡き者にしようと躍起になっている 孤立させて、追い詰めて……惑わす 全てのピースが嵌まった 「僕は君を死なせたりはしません!」 青龍はそう言い炎帝を抱き締めた 金龍は「………悪名高き夜叉王……ですか?」 「そう!オレの命を狙ってやがる… で、建て直す為に魔界に来たんだよ 夜叉王に荷担した奴は昇華してやったしな! もう魔界で夜叉王に繋がる奴はいねぇ! 外堀を埋めて本丸に行かねぇとな!」 炎帝はそう言い唇の端を吊り上げて嗤った 残酷なその笑みに……戦慄を覚えずにはいられなかった…… 敵に回せば……… 容赦なく潰すだろう…… 「オレは兄者の護る魔界を明日へと繋げねばならねぇんだよ! 誰も邪魔なんてさせねぇ!」 黒龍は炎帝の肩を抱いて 「飲め!おめぇは無駄なもんばかり背負う… 直ぐに悪役を買って出るのは止せ」 酒を勧めた 「黒龍、おめぇは弱いんだから飲むな!」 「何よぉ!オレは酒豪と言われてた!」 炎帝は爆笑した 朝が明けるまで飲み明かし、青龍は炎帝と共に立ち上がった 「親父殿、母上、兄さん、地龍、銘、楽しい一時が後れました 本当にありがとう御座いました 閻魔、健御雷神、本当にありがとう御座いました」 青龍は姿勢を正して深々と頭を下げた 炎帝は「またな!黒龍!」と共に暫しの別けれを告げた 黒龍は炎帝を強く抱きしめたい 「あぁ、我が友よ!また逢おうぞ!」 黒龍はそう言い友を送り出す 「金龍、銀龍、本当にありがとう」 銀龍は何も言わず炎帝を抱き締めた 金龍は「楽しい一時でした!」と炎帝を抱き締め息子を抱き締めた 「地龍、銘と仲良くな!」 「はい!炎帝……そして兄さんお気をつけて」 銘は炎帝に縋り着いて泣いた 「……ご無事で……銘は貴方の幸せしか願っておりません…」 「愛されて笑ってろ」 炎帝は銘の頬を撫でた 「親父殿、兄者、またな!」 閻魔は弟を強く抱き締めた 「お前の幸せだけを……兄は願っている」 「オレも兄者の幸せだけを願っているぜ! 魔界を続ける!明日へと繋げて存続させる! オレはその為だけに在るんだからな!」 そう言い炎帝は胸を張り、深々と頭を下げた そして背を向けると、歩き出した 炎帝の邸宅を後にして、閻魔の邸宅へ行くと弥勒が立っていた 「行くか?」 「おう!逝くぜ!」 「なれば、何処までもお前と共に逝こう!」 弥勒は笑った 健御雷神は笑顔で友を送り出した 「聖王!また飲もうな!」 「健御!また飲もう!またな!」 硬く握手して離すと弥勒は背を向けた 炎帝は手に雷帝の刀を持っていた 「逝くぜ!良いかよ?」 「おう!構わぬ!」 炎帝は時空を切り裂いた 弥勒の道場を目掛けて時空を切り裂くと、向こう側に弥勒の道場が現れた 炎帝は片手をあげて「またな!」と言うと時空の向こうへ歩み出した そしてニコッと手を上げると……… 時空が閉じて行った 弥勒の道場に降り立つと、康太は携帯を取り出した 「彦ちゃん、頼みがあるんだ 誰にも告げずにやって欲しい事がある」 『解った!何をしたら良い?』 「オレと伊織の着替えをこっそり慎一を動かして長瀬に渡して欲しい」 『解った。長瀬に渡した後はどうしたら良い?』 「弥勒の道場まで届けて欲しい 今すぐに頼む! 消して誰にも気取られずに頼む」 『解った!』 佐野は電話を切った 佐野春彦と言う男は絶対の信用のおける男だった 気難しくて、誰よりも人間を見る そんな男の眼は確かで、濁らない 頼めば必ず完遂してくれる……信用に値した 30分も立たないうちに長瀬匡哉が、弥勒の道場を訪ねてやって来た 「誰にも付けられなかった?」 第一声が………それで、長瀬は面食らった 「付けられてはおりません 僕はそう言うのには敏感なので大丈夫です」 「悪かったな…」 「いいえ!お役に立てて良かったです 息子を預けるにしても、ますはあなた方を知りたかった所です」 康太は着替えと靴を受け取り榊原に渡した 榊原は手早く康太を着替えさせてゆく そして自分の着替えも済ませると、着替えをバッグに詰めた 「長瀬、話していたいけど、今は時間がねぇ」 「解っています レンタカーの所まで乗せて行きます!」 「悪いな……弥勒、幻術を掛けてくれ」 「承知した」 弥勒は康太と榊原に幻術を掛けた ちょっとやそっとでは、見破られない為に幻術を掛けた 「レンタカーは僕が借ります!」 「………悪いな……」 「佐野から仰せつかってます では、行きますよ!」 長瀬は康太と榊原を車に乗せると、近くのレンタカーショップへと向かった そして自分の契約でレンタカーを借りて、榊原へとキーを渡した 「僕の出来る事は此処までです!」 「助かった!今度飛鳥井に来い!話をしようぜ」 「はい!お願いします」 長瀬はそう言い帰って行った 康太と榊原はレンタカーに乗り込むと、飛鳥井建設に向かった 慎一が気を利かせて社員証も二枚入れてくれていた 康太は慎一にメールした この携帯は飛鳥井康太でない携帯だった 三木の秘書に頼んで、いざと言う時に使う為に隠しておいた携帯だった 「慎一、会社に顔を出せ オレと擦れ違ったら、カードと財布を寄越してくれ」 メールすると『了解しました』と返信があった 康太は三木にメールした 「当分泊まれるホテルを頼む」 『康太!解りました手配します!』 三木は頼られた事が嬉しかった 隠れて連絡を取ると言う事は…… 今も身を隠してる身なのだろう……と伺えれた 暫くすると『東急イン桜木町に岸谷と言う名前で部屋を取りました』と返信があった 榊原は飛鳥井建設へと車を走らせた 康太は瑛太のPCにメールを送った 「瑛兄、今から姿の解らぬ奴が会社に行くけど、オレだから……面会してくれ」 『解りました!名前は?』 「三上篤史と三上智史と言う兄弟と言う設定な」 『解りました!お越しください』 瑛太とメールを終えると携帯を胸ポケットにしまった 「伊織、オレはどんな姿してる?」 「君は体操のお兄さんばりの好青年ですよ? 僕はどんな風に見えますか?」 「伊織は髪を上に撫で付けて出来るエリートサラリーマンって感じ」 「………お互いにはお互いの姿しか見えないんですけどね……」 「おう!オレには伊織はずっと伊織にしか見えねぇ!オレの伊織だ!」 榊原は嬉しそうに微笑み、飛鳥井建設の地下駐車場へと向かった 地下駐車場に車を停めると、車から下りてエレベーターに向かった 「あ~緊張します先輩!」 康太が言うと榊原が 「君、他社では大人しくしなさい!」と冷たくあしらった エレベーターに乗り込み、受け受けに行くと榊原が 「社長の飛鳥井瑛太さんに、アポイントを取ってます三上篤史と智史です!お聞きして下さい」 受け受け嬢は社長に電話を入れた 「社長、三上篤史様と智史様がお見えですが?」 『お通しして下さい!失礼のない様にお願いします!』 瑛太に言われて受け受け嬢は「はい!解りました!」と電話を切った 「お通り下さい!社長室はそのエレベーターから上がった最上階に在ります」 康太が「ありがとう」と礼を言うと受け嬢は和やかに見送った 榊原がエレベーターの前に立つと、何処の誰だか解らぬ重苦しい空気を纏ったエリート然とした存在に、社員達は緊張していた エレベーターが到着すると榊原と康太は乗り込んだ 他の社員は乗り込まずに見送った 社長室のある階に止まると康太と榊原はエレベーターを下りた そして社長室をノックすると瑛太がドアを開けた 「ようこそ!お待ちしておりました!」 瑛太はそう言い康太と榊原を、部屋に入れた 瑛太は………「本当に康太ですか?」と尋ねた 目の前の男はとてもじゃないが……康太には見えなかった 「瑛兄……今は本来の姿になれねぇんだ だから済まねぇ瑛兄……」 「康太……やはり君は康太です…… 話せば康太だと解ります…」 「瑛兄、少しの間、オレ等はこの姿でいる 取引先として、会社に来るかんな!」 「解りました」 「副社長室を覗いて今日は帰るかんな」 「解りました……また来てくださいね」 「解ってる」 瑛太は康太を抱き締めた そして榊原も抱き締めた 「伊織……本当に君には苦労をかけます」 「義兄さん大丈夫です」 「なら、オレは行くかんな!」 康太はそう言い社長室を出て副社長へと向かった 副社長には力哉がいた 力哉は当然の顔をして現れた二人を見ていた 「………康太と伊織?」 呟くと……康太は人差し指を唇にあて、しーっと言った 力哉は口を噤んだ 「何で解った?」 「瞳……康太と同じ……優しい瞳だから…」 「しー!だぞ!」 力哉は頷いた そこへ一生がドアを開けて入って来た 一生は力哉とキスする位に顔を近づけている男を怪訝な顔で見た 榊原が康太を隠し「それでは副社長が戻られたら連絡を下さい」と言い副社長室を後にした 一生は二人が出て行くと力哉に 「誰?」と問いかけた 「社長から回されて来た方です 取引先の方ですので失礼のない様にお願いします」 「康太と榊原からは何の連絡もねぇのか?」 「…………ないです……」 「そっか………手伝う事あるか?」 「御座いません!」 力哉は他人行儀に言い捨てた そこへ人事課の田中一と言う社員がやって来て 「力哉君、今夜どう?」とお誘いをしてきた 一生は田中を睨み付けたが、力哉は 「あ!行きます!」と答えた 「なら待ってるね!」 田中は副社長室を出て行った 一生は何も言えずに副社長室を出て行った 力哉は一生を見送り…… 「………止めもしないんだ…」と呟いた 別に田中と二人で飲みに行く訳じゃない 人事課や総務、建築、施工、入り乱れて時々飲みに行くのだ それに最近は誘われて飲みに行くだけ 皆、気を遣って誘ってくれる それだけだった 力哉は……涙を拭きながら…… 仕事に取り掛かった 副社長室を出て行った康太と榊原は 慎一からのメールを待っていた 『今エレベーターに乗って下さい』 とメールが来て、康太と榊原はエレベーターに乗り込んだ エレベーターに乗ると慎一が立っていた 慎一は何言わず康太の足元に紙袋を置いた そして何も言わずにエレベーターを下りた 康太は紙袋を貰い受けた地下駐車場まで向かった そして、飛鳥井建設を出て東急イン桜木町へと向かった 飛鳥井建設を出る時、出入りする社員をチェックをする影が見えた 会社に現れないか様子を伺っているのが解った 「……伊織…家も狙われてるのかな?」 「家は流石と無理でしょ? 標的のいない今、家族は安泰だと想います」 「も少ししたら飛鳥井康太は出て来るけどな…」 康太は何処かへメールを送った 「貴史、会社の周りをチェックしている男を割り出してくれ!」 メールすると……… 『てめぇ!何処に消えてるんだよ!』 と返信があった 「今仕事してくれたら少しなら逢えるぞ ただし………オレ等は姿を変えてるけどな……」 『どんなカタチでも、おめぇなら逢いてぇよ! ならひと仕事して来る!逢える時に連絡くれ!』 兵藤は警察の叔父を使い刑事に解らぬ様に張り込ませてくれる その道のプロならば、足は着かない 「伊織、一旦ホテルに行くとするか?」 「ですね!三木が部屋を取ってくれてますからね」 榊原は桜木町へと向かった 東急イン桜木町へ向かい、予約した岸谷ですと申告しチェックインした カードキーを貰い、部屋へと向かい辺りを見回して部屋に入った 後を着けてる輩は皆無だった 『飛鳥井の家の前に不審者がいて善之介さんの警備会社が出動したしま』 慎一から逐一入るメールが情報を教えてくれていた 「伊織、家の前に不審者がいたってさ」 康太は榊原にメールを見せた 「相手も焦って来てますかね?」 「だろうな……1ヶ月だもんな……」 「そろそろ仕掛けねぇとな」 「………ですね」 「伊織、寝よう…」 「ツイン……ですよね? 離れて寝ろと?」 「男同士でダブルは怪しまれるからだろ? 狭いけど寮のベッドみてぇなもんだな 二人で寝れねぇ事もねぇよ」 康太はそう言い笑った 榊原は二人のスーツをハンガーに吊すと、康太と抱き合って眠りに落ちた 邀撃に出る前に暫しの休憩 動き出せば油断は出来ない…… 康太と榊原は深い眠りに落ちた

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