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第37話 偵察 ①

康太と榊原は鳴り響く電話の音で目を醒ました 誰も電話は教えていないのに…とボケで携帯を手にすると………静かだった 部屋の電話が鳴り響いていたのだ…… 榊原は電話を取った 『岸谷様ですか? お客様が尋ねておいでです』 「誰……ですか?」 『槇田と仰られる方です』 「お通しして下さい」 榊原は電話を切った 康太を起こして服を着替えた そして訪問者を待つ 暫くするとノックの音が響いた 榊原はドアを開けると………見知らぬ男が立っていた 榊原は部屋の中に入れた 「………誰ですか?」 榊原は訝しんで問い掛けた 「三木繁雄……私の変装も完璧ですか?」 三木は嬉しそうにそう言うと榊原に頭を下げた 「三木……ですか? 誰か解りませんでした…」 「ハリウッドのメイクを手掛けている奴にやって貰ったからな! 取り敢えず差し入れ!と服」 「飛鳥井の家の前にいた不審者、誰か解ったか?」 「それは貴史がやってるだろ? 私は京極の弟が不穏な動きをしていると掴みました」 「やっぱしな……そう来るか! 叩き潰してやったからな…」 「美濃部一徳、知ってますか?」 「………存在せぬ名前を聞こうとはな」 「存在してますよ? 今ちまたを賑わしてる占い師ですからね 美濃部一徳が妖しいと睨んでます」 「夜叉王の可能性も在ると言う訳か……」 「夜叉王は知りませんが、かなりの力持ちです 座ればピタリと当たる占星術師だからな」 「その美濃部一徳って何処で占いの店出してるのよ?」 「店はないです ネットの上で存在する人物です 幾ら調べても計り知れない力で妨害を受けます 危うく……消される所でした…」 え?………康太は顔色を変えた 「弥勒が介入して助けてくれなければ……今頃あの世でした…」 「………それ……いつ頃の話よ?」 「康太の誕生日を遅れながらやると言った頃です 弥勒は……何かを感じ取って消えました」 「海坊主は全部知っていてとぼけていたのかよ? ったくタチが悪いな……」 康太は毒づいた でも全部繋がった 美濃部一徳と言う占星術師が夜叉王なのだろう そして夜叉王はより強い神々を創りだそうと暗躍していた訳か…… 自分の意のままに操れる神々の復活 それは世界を手中に入れたも同然の力を持つ事となる 夜叉王はそれを夢見て、絵図に描いた… 悪意を感じずにはいられなかった気配… 「その美濃部一徳はどうやったら占って貰えるんだ?」 「解りません……私はもう深追いするなと釘を刺されています 次追えば‥‥‥俺は跡形もなく消されてしまうでしょう」 「三木、おめぇはもう出るな‥‥ おめぇを危険な目に遭わせてぇ訳ねぇじゃねぇかよ! オレ等は社運をかけたプロジェクトを装って、占って下さい… 的な書き込みをして誘うとするか?」 「………向こうは用心してますよ?」 「飛鳥井建設を出し抜きたい……と書けば飛びつくだろ?」 三木は成る程と感心した 三木は康太に新しいPCを渡した 「君の武器は今使えないでしょ? その代わりに使って下さい」 「繁雄、悪かったな」 「構いません! 君の力になれて私は嬉しいです では、私は此処で!」 三木は用件だけ言うと帰って行った 康太は三木からの差し入れを口にした 康太は兵藤に「貴史、何処かにホテルを取れ」 とメールを入れた 兵藤は美緒に頼んで別の名前で部屋を取った とメールしてきた メールの内容は、ロイヤルパークホテル、中川康志、部屋番と今夜7時と要件だけのものだった 康太は榊原にメールを見せて嗤った 「伊織、スーツ買うか?」 「………吊り下げのスーツですか?」 「平社員にはお似合いだろ?」 「………ですね……動かせるお金も知れてますし… 吊り下げのスーツを買って来ましょう」 カードとか個人情報は調べ上げられてると考えたら……そんなにお金は動かせない 瑛太が帰り際……10万円入った封筒を渡してくれた それで、買うしかなかった 「三木が差し入れしてくれてたスーツは上等過ぎますね……」 「……取り敢えず買い物してからランドマークタワーまで行くとするか」 「久しぶりに歩きでのお出掛けですね」 「だな、でもオレはおめぇと御出掛け出来て、少しだけ嬉しいんだがな」 「僕も君がいてくれるなら‥‥楽しい時間ですよ」 榊原は笑って康太を抱き締めた 康太は榊原の腕の中で幸せそうに笑って 「んなら行くとするか!」と謂った 康太と榊原は二人して出掛けて出掛けた 駅近くの紳士服の店に入ってスーツを買って、それに着替えて行くと伝え、着替えを紙袋に入れて貰い店を出た リクルートスーツを着た康太は新入社員に 同じリクルートスーツなのに榊原はデキる社員に……見えるからズルいと思いつつ…… 街並みを歩いた 「ファミレスで時間を潰しますか?」 「だな!オレ、ミルクティーが飲みてぇ」 「では行きますか?」 近くのファミレスに向かい暖かな飲み物を飲んで 午後7時少し前まで時間を潰した そして7時少し前に榊原は立ち上がった 「行きますよ!」 榊原に呼ばれ康太は立ち上がった ロイヤルパークホテルに到着すると、榊原はフロントに向かった 「シングル(エグゼクティブフロア)に泊まりの中川康志さんと約束している者ですが…」 と申し出ると連絡が入っていて 「三上篤史様と三上智史様ですね!ご案内致します!」 ベルボーイに連れられて兵藤の泊まる部屋へと案内された ドアをノックすると部屋の中から兵藤が顔を出した 「ご苦労さんでした!」 兵藤はチップを渡しベルボーイを下がらせた 部屋のドアを閉めて鍵を掛けると兵藤は 「やっと逢えたな!」とニカッと嗤った 康太はソファーにドカッと座ると足を組んだ 兵藤はそんな所はやはり康太だな…と苦笑した 「お前達、今まで何処に隠れてたのよ?」 兵藤が尋ねると康太は意図も簡単に「魔界!」と答えた 「……え?魔界かよ?」 まさか魔界に行ってるとは想わなかった…… 「オレは狙われてたかんな…… 天界に行ってもオレは殺され掛けた…… 去年からこっち、オレを狙う奴は後を絶たねぇ… オレの蒼い龍も傷付いていたのもあるしな 流石とな気持ち悪い現状を建て直さねぇとな… で、魔界に骨休めも兼ねて行って来た オレは炎帝の邸宅から出ねぇからな魔界の奴等は誰も解らねぇけどな……」 「で、お前を狙う奴は検討着いたのかよ?」 「夜叉王」 康太が言うと兵藤は顔色を変えた 「………冥府に封印したんじゃねぇのかよ?」 「先の震災で歪みが出来て、手引きされて逃げ出したそうだ まぁアイツも駒の一つだろう‥‥ オリンポスの神々を創り手中に収めて操ろうと手ぐすね引いてるらしい だが、んな事を夜叉王一人でどうとか出きるレベルじゃねぇからな‥‥ アイツも何等かの意図で動かされている駒だと想う 夜叉王の狙いはオレだ アイツはオレを亡き者にしようと暗躍している 良い素材もいたしな……京極瑠璃子の弟、飛鳥井に一矢報いたい奴を使って飛鳥井に挑んでいる」 康太の話す現実は重く、果てしのない憎悪を感じずにはいられなかった 「飛鳥井の家の前にいた不審者は、お前の読み通り 京極瑠璃子の息の掛かった残党だった 飛鳥井建設の周りにいたのは闇の世界の人間だ… 暴力団とかじゃねぇ…世界の各地で暗躍する集団だ 国をあげて手配をされてる輩が…… 何故か日本に集まってきてると叔父貴は言ってた その目的のターゲットに飛鳥井康太……おめぇが入ってるのは間違いねぇ……」 「だろ?だからな簡単には出られねぇんだよ 家族に迷惑掛けるかんな…… 蜥蜴の尻尾と同じだ、失敗すれば次が用意されてる胸糞悪いゲームの盤上に無理矢理乗せられた感は否めねぇ‥‥」 「…………だな」 「夜叉王を誘き寄せる……」 「どうやって?」 兵藤は心配そうな顔で問い掛けた 「飛鳥井建設を潰したい……力を貸してくれ…… と書き込みをした 夜叉王を釣るのは申し分のねぇ謳い文句だろ?」 「食い付くかな?」 「もう1ヶ月行方が解らねぇからな…… 向こうは躍起になってる…… そろそろ仕掛けて行きたい筈だ 飛鳥井康太が出ねぇなら飛鳥井建設を潰して見せしめにするつもりだろ? そしたら嫌でも飛鳥井康太は出て来ると想っている」 「……だな……夜叉王だからな油断はするなよ…」 「まぁな油断はしねぇに決まってやん! 夜叉王はもう魔界にも冥府にも逝く事は出来ねぇとだろう‥‥ 結界を強化して来たかんな 容易には結界の先へは逝けねぇだろう だからアイツは人の世にしかいられねぇんだよ! もう気付いているからな……捨て身で来るしかねぇんだよ」 「魔界や冥府には行けねぇのかよ?」 「神でない者が出入りすれば……消滅する様にした 妖魔ごときが簡単に出入り出来てた現状に漬け込まれたんだ仕方ねぇよな また閻魔が許可した者以外も同じだ そんなに容易には魔界には行けねぇよ 出るのは容易い……出してやるさ だがな、中に入るのは容易くない…… 強引に入れば消滅は避けられねぇ!」 「なら魔界にも冥府にも行けねぇな」 「オリンポスの神々の復活を絵図に描いてる奴だぜ 神々を操り、夜叉王が君臨する絵図を描いてやがった… それを夢見させた輩までは届かねぇかも知れねぇが‥‥‥一つずつ片付けねぇとな‥‥」 「………なんにせよ…それは素敵な夢じゃねぇかよ… 一気に逝けなくても夜叉王が片付けられれば、おめぇは家に還れるじゃねぇかよ!」 「だな、まずは一つ 夢は夢で終わらせねぇとならねぇよな! 絵図を描くなら潰すしかねぇぜ!」 「オリンポスの神々……ギリシャ神殿の跡地に闇の儀式の後が見付かったのも新しい…………」 「血を全部抜かれてるんだろ?」 「………そう……干からびた遺体が山のように重なって発見された……」 「復活の儀式の為だな…」 「…………そう言えば……万里も下手したら出血死…だったかも知れねぇんだったよな? 体躯の一部を傷付けて……血を抜く 1度にではなく生きている間少しずつ苦しみながら血を抜いてゆく……だったっけ?」 「そう………胸糞悪い事件だった!」 「オリンポスの神々の復活……するのかよ?」 「………無理だと想う…… オリンポスの神々が消滅してもコアは消える訳じゃねぇ コアさえあれば‥‥復活は容易いだろう だな、オリンポスの神々はその力を、誰にも継承しなかった オリンポスの神々は己が消えた後も、悪用されねぇようにコアを砕いたんだよ そのコアは世界中に飛び散り、幾多の人間に力を与えた 救世主が何故この世に現れたのか……気付かねぇのかよ?」 「………んなん、中々気づけねぇでしょ? 神の果てなんて誰も知らねぇよ……」 「神の果てに在るのは冥府だかんな…… 冥府のモノなら……知ってる事だ……」 「…………冥府は魔界のモノには知らねぇ世界だろ? 冥府と往き来出来てる者なんて魔界にも限られた奴しかいねぇだろ? 閻魔だって簡単には行けねぇと言ってた……」 「皆の周知の事実になるのは避けねばならねぇかんな! 冥府は中立公平な立場を崩さない ヴェールに掛かった存在で良い」 「夜叉王が何故‥‥お前を付け狙うか心当たりはねぇのか? 逆恨み‥‥‥にしては執拗過ぎだろうが‥‥」 「夜叉王は俺と来いと皇帝炎帝を口説いていた 何もない空っぽの皇帝炎帝を己のモノにしたかったんだろ?」 「…また厄介な奴に愛されてるな……おめぇはよぉ」 「愛されたくなんかねぇけどな!」 康太は笑った 「これからどうするのよ?」 「オレか?動いて邀撃に出るしかねぇでしょ? でなきゃずっと命を狙われていかねぇとならねぇじゃねぇかよ! オレは冥府に行ってバージョンアップして来たかんな 負けたりはしねぇよ!」 「バージョンアップ?あにしたんだよ?」 「それは秘密……って事で!」 「秘密にしといてやるよ!」 兵藤は笑った 「お前等今何処に泊まってるのよ?」 「東急イン桜木町に泊まってる」 「此処に住まねぇか?」 「………繁雄に取って貰った部屋だかんな…」 「チェッ繁雄に頼んだのかよ?」 笑っていた康太の顔が突然引き攣った…… 鋭い視線を向けて………康太は果てを睨み付けていた 「………東急イン桜木町の部屋に誰かが入ったぜ… オレのトラップに反応した‥‥」 「………え?……有り得ないでしよ?」 「PC回線を辿って来やがった……」 康太が呟くと榊原は 「僕達の事がバレたのですか?」 「………嫌……偵察だ…… 本当に……飛鳥井建設を潰したいのか……偵察だ」 「………どうします?……」 「オレ達は帰る事にする 何も知らない顔して部屋に戻り飛鳥井建設の資料を見ている事にする…」 康太は動きの早さに対応してかねぇとな‥‥と呟いた 向こうの出方が想ったよりも早いのだ 相当な焦りを感じずにはいられなかった 兵藤は「何かあれば呼べ! 四神を集結させてやる!」と宣言した 「………え?……」 「何処にいようとも、お前の処へ飛んで行ってやる!」 「………その時は頼むな……」 「夜叉王と言う妖魔に負けてたら…… 四神の名折れ!負ける訳にはいかねぇんだよ!」 兵藤は絶対に負けないと宣誓した 力強い後押しを貰い、康太は立ち上がった 「ならな!行くわ」 そう言い榊原と共に兵藤の部屋を後にした 安酒場に入り、愚痴を言いながら酒を飲んだ ブチブチ言いながら酒を飲む かなり年配の男性と意気投合して一緒に飲み…… 酔い潰れて東急イン桜木町の部屋に戻った 榊原が康太を介抱してベッドに寝かせた 「………先輩……すみません……」 「君は飲み過ぎです!」 先輩然として榊原は怒った それを偵察している視線を感じながら…… 「うぇっ………先輩吐きそうです……」 「………寝なさい!」 「先輩すみません……」 泣き上戸を装い康太が泣く 榊原は上手いな……誰の真似してるんですかね… と内心……笑っていた 榊原は視ている存在を感じながら 「君、僕達には余裕がないんですよ? 飛鳥井建設を弱らせねばならないんですよ 次の入札を飛鳥井建設に取られたら……うちは倒産の憂き目は避けられないんですよ!」 と叱咤する 「先輩!解ってます…… やっと入社したのに……何で倒産の心配なんですか?」 「君はもう寝なさい!」 榊原は怒ったフリをした 康太は酔ったフリをしてPCを触って……… 「酔ってるのにPCに触らないで下さい!」 「先輩!仕事をしましゅ…」 無茶苦茶触って………回線を遮断した 気配を伺って……康太は嗤った 「伊織、今日は離れて寝るしかねぇな」 「また見に来ますか?」 「解らねぇ……PC回線を辿って来たと言う事は、向こうに取ったらチャンスかどうか確認に来たんだろ? 確認したら向こうから何かしらのリアクションはあるだろ? 突然現れたら……驚けよ…」 「………解りました…… でも君と離れて寝るのは……嫌です」 康太はスーツを脱いで、ベッドにもぐり込むと、布団を開けた 「来いよ伊織!」 言われて榊原もスーツを脱いだ そして康太のベッドへ潜り込んだ 「エッチはするなよ…」 「解ってます! 僕の君を見せる気はありません」 榊原は康太を抱き締めて眠りに落ちた こんな潜伏生活も続けばかなりの負担になるのは解っている 動きを捉えて…… でも焦ってはダメだ…… 康太は勝機を呼び寄せながら……榊原の匂いに包まれ……眠りに落ちた 翌朝、目が醒めると榊原はベッドにはいなかった 康太はキョロキョロ辺りを見渡した 榊原は起きてPCを見ていた 気配を探りながら…… 「もう、起きてたのかよ?」と声を掛けた 「見て下さい 返信が来てます」 康太は起き上がるとPCを覗き込んだ 『貴殿達の望みは叶えてやろう! 飛鳥井建設を潰す協力を惜しみなくすると約束してやろう!』 鷹揚な文字がそこに在った 康太はそれを見て嗤っていた 「先輩!そろそろ支度しますか?」 「そうですね」 榊原は立ち上がり支度を始めうとした すると康太が「来るぞ…」と小声で呟いた 「先輩、腹が減りました」 「君は直ぐにそれですか…… 気が抜けない現状を解ってます?」 榊原が説教を始めようとすると……… 『我が力になってしんぜよう!』 と姿を現した 「うわぁ~先輩!額縁の裏にお札貼ってないか確かめましたか?」 と怯えて布団に潜り込むフリをした 榊原は怯えながら……気丈に振る舞う先輩を演じた 「……あのどちら様でしょうか?」 『我は美濃部一徳! 貴殿達が我の力を貸して欲しいと書き込んだのではないか?』 「………美濃部……一徳…… 藁をも掴む想いでした!」 『飛鳥井建設を潰したいんだろ?』 「はい!飛鳥井建設は目の上のタンコブですから…」 『なれば……飛鳥井康太を殺せば良い』 「昨日も会社に行きましたが…… その人は会社にはおられませんでした…」 『だから会社を叩けば出て来る そしたら出て来たら……叩けば良い』 「解りました! どうしたら良いですか?」 『飛鳥井建設の株価暴落……出来るか?』 「…………やってみます…」 『それが出来たら、何らかの手を貸してやろう』 榊原は深々と頭を下げて…… 「お願いします」 と後がないフリをした 美濃部一徳はニャッと嗤うと……姿を消した 榊原は気配がなくなると……息を吐いた 底知れぬ恐怖を感じた 存在感こそ……恐怖だった…… 康太はベッドの隙間からニャッと嗤って見ていた 「伊織、今すぐ此処を出るぞ」 「………解りました」 榊原はスーツに着替えると、康太もスーツに着替えた そして荷物を詰め込むと、ホテルをチェックアウトした 康太と榊原は……… 再び………雑踏に紛れて消えて行った… 三木はホテルを引き払ったと……スタッフから聞いて 二人の身を案じていた 兵藤は三木から、再び行方が解らない……と聞いた 兵藤は……何かしらのリアクションが来るのを待つしかなかった 飛鳥井の家に顔を出す 康太の居所が解らない一生達は……日々萎れて生気を欠いていく…… 兵藤は胸が痛かった…… 一生は兵藤を捕まえて「………何か知ってるのか?」と問い掛けた 「俺は何も知らねぇぜ? 知っていたら……飛鳥井にいねぇのに来るかよ」 「…………知ってたら教えてくれ…… 康太と旦那が元気なのか……教えてくれ…」 兵藤は………その気配を伺ってる存在に気付いていた 不用意な事は言えない…… 「何も知らねぇから……此処に来るしかねぇんじゃねぇかよ! 気晴らしにファミレス行こうぜ!奢ってやる」 「奢りなら行く!」 「現金過ぎる……」 兵藤と一生達は飛鳥井の家を後にした 家の外に出て……兵藤は息を吐き出した そして車に乗り込みファミレスへと向かった ファミレスの席に座り…… 「………あれは酷ぇな…」とボヤいた 「監視してるだろ?」 一生は呟いた 「見張られてるのか?」 「康太が来るのを待ってるんだよ 俺等のPC回線にも入り込んでチェックしてやがる 康太と連絡取らねぇかと……斜めの席に座ってる奴が… 会話を伺ってる…」 兵藤はその存在に気付いていた 「俺さ、最近さストーカーに合っててさ…… 俺の周りの人間はチェックされるからな…皆に用心されちまってるんだよ この防犯カメラもさチェックしてると想う 何処のどいつか……今頃特定してるかもな…」 兵藤が呟くと…… 斜め後ろの奴は……席を立って消えた 「反撃に出るしかねぇじゃねぇかよ?」 「だな……飛鳥井の家は俺達が守り抜いてみせる!」 「なら俺はお前等のサポートに入るとするわ!」 「………康太……元気だった?」 「………おめぇ、多分逢ってるぜ」 兵藤は嗤った 「……え?俺?逢ってねぇぜ」 「爽やかな体操のお兄さん風の男に逢った覚えねぇかよ?」 兵藤に言われて一生は思い浮かべてみた 「あ!………そう言う事か……」 と、一生は納得した 「今は知らねぇけどな俺も……」 「………え?……」 「消えたんだよ……また……」 「…………そうなんだ……」 一生や聡一郎……慎一は物凄く心配そうに表情を翳られた 「さぁ、行くぜ! 大掃除しねぇとな!」 兵藤は不敵に嗤った 「二度と飛鳥井を付け狙わせねぇようにしねぇとな!」 「やるか?」 「おう!やるしかねぇぜ!」 「魔界から玄武と白虎を呼んであるんだよ!」 「……え?……四神?」 「蒼いのは呼び寄せれば来るだろ?」 「……アレの側を離れるとは想わねぇけどな…」 「気にすんな!妖魔如きに負けてたら四神が廃る! てめぇら四龍の名折れだぜ! 魔界から黒龍と地龍も呼び寄せてあんだよ! 最悪…四天王も…呼ぶように閻魔に頼んだ……」 「…………四天王?」 「東西南北、冥府の門を守護する神だ 冥府の四天王と言える存在……… 聞いた事はねぇのかよ?」 「皇帝閻魔?」 「皇帝閻魔、皇帝炎帝、皇帝風神、皇帝阿修羅…聞いた事位ねぇかよ?」 「………皇帝炎帝?炎帝の事か? そっか……元々俺は冥府の者だ……と言ってたな」 「人の世にも東西南北、門を護る者はいるんだ! 魔界は俺等四神が東西南北の門を護ってる 冥府も同じ門番である四天王をも呼び出して……トドメを刺すしかねぇもんな…」 「その前に飛鳥井の掃除をしてくれ!」 「解ってる!家族は外に出しとけ!」 「今日は帰って来ねぇ様に言っといた」 「ならやるとするか!」 兵藤は立ち上がった 一生や聡一郎、慎一も立ち上がった 「あれ?隼人は?」 「アレは人一倍敏感な奴だからな…… 神野に言って外に出した」 「………そっか……暴走したら……皆無だもんな その力は……炎帝しか予測つかねぇだろ?」 「………だな……」 精算してファミレスを出て飛鳥井の家に行く 飛鳥井の家の前に紫雲龍騎と弥勒高徳が立っていた 「掃除すんだろ?」 弥勒が兵藤を見てニカッと嗤った 「相変わらず鼻が良い…」 「そうだ!我はアレと共に在るからな!」 「弥勒、玄武と白虎を人の世に連れて来て在る」 「それは、それは! 蒼いのを呼べば四神は揃うじゃねぇか!」 「俺等が東西南北、総結界を張る」 「ならば、結界内で闘えるな!」 弥勒は封印を解いて総ての力を漲らせて嗤っていた 「………今康太は?」 「………覇道も切って姿を消してる……掴めぬ今… 我等は飛鳥井を護るしかないと、こうして来たのだ!」 「………そっか……なら、飛鳥井を護ろうぜ! 玄武、白虎………そして青龍!姿を現せ!」 兵藤は天に向かって叫んだ 白い虎が天空を駆けて来た 背中には白い髭を生やした亀を乗せて、やって来た 「呼んだか?朱雀」 白い虎がニャッと嗤った 虎の背中の亀も顔を出して嗤う 「朱雀、人の世は初めてだから……戸惑うわ」 玄武が白い髭を振り回して天空に立った 「青龍!此処に来い!」 朱雀が叫ぶと蒼い龍が姿を現した 「……人の世で四神が揃いましたか?」 蒼い龍がニヤッと嗤って見下ろした 玄武と白虎は「「青龍、久方ぶりだな」」と暢気に挨拶をしていた 「用ならさっさと済ませて下さい 僕の妻が待ってますからね」 青龍が言うと朱雀が 「背中に乗せてねぇのかよ?」と尋ねた 「乗せてません……妻は今……妊娠中ですので 背中に乗せたら流産したらどうするんですか」 逃げの常套句 深読みするなとの牽制 「………え!!!妊娠!とうとうか!」 なのに朱雀は叫んだ 白虎と玄武は仰け反った 「嘘です……僕も妻も男同士では逆立ちしても妊娠はしません…」 何で信じますかね……青龍は苦笑した 朱雀は「……嫌……アイツなら妊娠しそうだからな…」 と呟くと玄武も 「………本当に妊娠したのかと想った…」と呟いた 白虎は「………炎帝だからな……妊娠もおかしくねぇかもな……」と嗤った 「………妻が聞いていたら……火を撒き散らして昇華されますよ?」 「………だな……青龍、内緒だぞ……」 朱雀が言うと、蒼い龍は何も言わず笑った 朱雀は羽を広げると 「東西南北に散れ!」と指図した 飛鳥井の家を中心に東西南北散らばると、弥勒が中央に立ちはだかった 「お前達の力を受けて天空に飛ばしてやる!」 四神は対面を向いて並んだ その中央に弥勒が立ち、それを受ける 弥勒は封印を総て解いて転輪聖王となった 「何時でも良いぜ!」 弥勒が言うと四方八方から弥勒に向けて衝覇を放った 東西南北からそれぞれの力を解放して封印を放つ 弥勒はそれを受けて一つにすると天空に放った 飛鳥井の家を中心に……綺麗な五芒星が描かれて天空に抜けて行った 「さぁ、結界は張れた! 中のマヌケを処分せねばな」 弥勒は一生を見て行った 青龍は「僕は帰りますね!妻が待ってますから!」と告げた 朱雀は「悪かったな!」と言った 「お気になさらず!では、また!」 青龍は天空に上って…………姿を消した 朱雀は兵藤貴史に姿を変えて、地に下り立った 「青龍が元気って事はアレも元気でいるんだろ? ならば、掃除してやれば頃合見付けて帰ってくるだろ?」 兵藤が言うと弥勒も地に下り立ち 「もう妖魔如きは飛鳥井の家には近付けぬからな… 焦った妖魔が動き出すに違いないな!」 と嗤った 兵藤は「飛鳥井の家を覗いてた奴は……跳ね返され……死ぬしかねぇよな?」と現実を突きつけた 「あぁ!確実に命を落としてるであろう! いっそ、夜叉王が落とせば楽なのにな…」 弥勒は至極残念そうに言った 「簡単に消えてる存在なら……アイツ等は姿を消す必要はねぇよな?」 兵藤が言うと弥勒は爆笑した 「本当に10000年も炎帝を想い付け狙うとは…… 何処まで愛されてるんだか……」 「仕方ねぇよ!アイツだからな…」 兵藤はそう言い嗤った 仕方ねぇよアイツだから……… それで納得してしまえる……愛すべき存在 アイツの為ならば……と命を懸けて守ろうとする 皆の願は一つだった …………それしか願っちゃいなかった 帰って来い…… 此処しかおめぇの居場所はねぇだろ! 兵藤は心から想った 「俺等が出来る事をする!」 兵藤が言うと弥勒が 「さらば、ザコの掃除をせねばならぬな!」と嗤った 「………弥勒……」 「何だ?」 「おめぇ……康太の居場所……知ってるだろ?」 弥勒は何も言わず嗤った 「我はアレの覇道を知れぬなら……狂う……」 「畜生!騙された! 元気かよ?アレは?」 「元気過ぎる……程にな元気だ もうじき飛鳥井に還って来る……待っておれ」 「待っててやるさ!」 兵藤はそう言いニカッと嗤った 「外堀を埋めたらなら、本陣突破しかない 外堀を埋めに行くとしようぞ!」 弥勒はそう言い兵藤達と共に何処かへ向かった 青龍は妻の元へと還って行った 出迎えてくれて妻を抱き締めた 「お帰り青龍…」 「ただいま!奥さん」 榊原は康太の体躯を抱き締めた 冷たくなり冷えた体躯を抱き締めて……暖めた 「まだ、夜は冷えます…… こんな薄着で待っていたら風邪引きますよ?」 「おめぇがいねぇ場所にはいたくはねぇんだよ」 「僕も同じです」 榊原はそう言い康太に口吻た 康太と榊原は安曇勝也の別荘に身を寄せていた 軽井沢に在る別荘はまだ春は少し遠く……寒かった 「五芒星……張って来たんだ…」 「ええ。急に呼び出されて……躊躇しましたが… 人の世に四神が揃ってました…」 「四龍も揃ってるだろ? 朱雀が呼び寄せてるぜ」 「………神の集結……ですか?」 「外堀を埋めてくれるらしいからな…… オレは本陣目掛けて逝けば良いらしい」 「飛鳥井康太……出ますか?」 「おう!もう隠れてる必要なんてねぇからな! 表に出て迎え撃ってやるさ!」 「君と共に……それだけが僕の願いです…」 「オレもそれしか願っちゃいねぇよ…」 康太と榊原は東急イン桜木町を出て姿を隠すと 安曇にコンタクトを取った 安曇は全面協力を約束してくれ、軽井沢の別荘を貸してくれた そこで情勢を伺っていた 飛鳥井の株価操作に失敗した社員二人は…… 事故で死んだ……と言う情報を流した PCも炎上した今、辿って行く術もなく…… 失敗に終わったのだと…… 夜叉王は想っているだろう 飛鳥井の株価操作などさせはしない! 誰が束になって掛かって来ようとも! 明日の飛鳥井は絶対に歪ませはしない! 潜伏して人を使い、夜叉王の居所を探って行く そろそろ、飛鳥井の家に顔を出す予定だ 「伊織……淋しかった…」 「ごめんね……呼ばれたら……行かない訳にはいきませんでした……」 「飛鳥井を中心にペンタグラム張って来た?」 「張って来ました!」 「オレの事、聞かれた?」 康太がそう聞くと榊原は……バツの悪い顔をした 「あんだよ?」 「………冗談で……妻は妊娠中ですので流産したら大変なので……置いて来ました……と言ったんです」 康太は驚いた顔して榊原を見た 「………そしたら……皆信じてしまいました…」 「………オレが妊娠したって?」 「……ええ……炎帝なら有り得る……と。」 「オレでも流石に妊娠は無理だわ……」 「僕達には愛があります そのうち妊娠するかも知れませんよ? ですから君の中に僕の総てを注ぎ続けます」 「………伊織……そんな無茶ぶり言うな……」 「無茶ぶりではないですよ? 君への愛は誰にも負けませんからね」 「……ならお腹が大きくなったら……大切にしてくれ…」 「勿論です!大切に大切にします 子供が出来なくても大切にします 僕だけの君ですから……」 「伊織だけのもんだ」 榊原は暖炉の前に康太を押し倒すと……服を脱がしに掛かった 「……ゃ……伊織……部屋に……」 康太は腰をよじって……榊原を止めた 「………僕も冷えてます……暖めて下さい…」 冷えた手で乳首を摘ままれ…… 「……ひゃっ……伊織……ゃ……」と拒んでみた 顎を舐められ……鎖骨を甘噛みされて……首筋に吸い付いかれた 「伊織……冷た……ゃ……」 「暖炉の炎に染まる君は綺麗です」 赤く艶めく康太の肢体は艶めいて揺れていた 康太は榊原の服のボタンを外した そして露わになった素肌に唇を這わせた 互いを……夢中に求め合う…… 体躯中……愛撫され赤い跡を散らされて榊原の愛に溺れる 俯せにされ……腰を高く突き上げ……開かれて舐められる 暖炉の炎に……顔がほてる…… お尻の穴を舐められた…… 皺の一つ一つを伸ばされる様に舐められた 指を挿し込まれ掻き回されると……腰が揺れた 「……ぁん……あぁぁっ……伊織……そこばっか……ゃ…」 「僕が欲しいですか?」 「欲しい………伊織が欲しい……ぁん…あぁん…」 「なら君が食べて好きに動いて良いですよ」 榊原は康太を持ち上げると、自分の膝の上に乗せた 熱く滾る榊原の肉棒が……… 康太の秘孔に触れていた ドクドク脈打ち、亀頭の口を広げで………濡れていた 先走りを康太の蕾に擦りつけ 「食べて良いですよ」と唆す 康太は双丘を開き秘孔に亀頭を固定すると…… 飲み込み始めた 榊原の唇が、康太の乳首を吸う…… 「……はぁん……ダメっ……」 「何で?君の乳首は吸って欲しそうですよ?」 康太の秘孔が皺を伸ばし…… 榊原の聳え勃つ肉俸を飲み込んでいく…… ギチギチに広がった秘孔は……別の生き物になり…… 榊原の性器を食べていく 到底無理だと想う大きさの性器を、小さなお口の秘孔が食べて行く様を見るのが、榊原は好きだった 女の様に濡れる訳じゃない…… 男の性器は本来は受け入れる器官じゃない それを必死に受け入れてくれる秘孔が愛しいかった 榊原を必死に受け入れてくれる康太を愛して止まなかった 「……ぁ……康太の中……蠢いて……僕を締め付けます…」 「伊織を愛してるからだ……止まらねぇ……」 「康太……愛してます…… 君だけを愛してます」 榊原は康太に接吻した 蠢く腰が榊原を擦り上げていく 自分のペースでなく……擦られる感覚に……榊原はいきり勃った 「……ぁ……伊織……太い……ゃん……ダメぇ……」 康太は榊原の首に腕を巻き付け……悶えた 「康太……もぉ止まりません……」 榊原は康太を押し倒し、脚を抱えると康太の中を激しく擦り上げた 康太の前立腺を、榊原の肉棒が擦り上げて行くと… 康太の体躯に電流が流れた様に……震えて締め付けた 「…ぁん……あぁん……イッちゃう……」 「イキなさい……次に突き上げた時に一緒に……ぁ……」 榊原は康太の中を奥まで突き上げると……熱い精液を康太の奥に飛ばした 康太は軽い痙攣をしながら……射精した ピクピクと秘孔が榊原を締め上げる 再び榊原を育ててるとも知らずに……康太の体躯は…… 痙攣を繰り返し……腸壁を蠢かした

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