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第38話 偵察 ②

止まらない愛に翻弄され……貪り尽くす…… 暫しの休憩…… 何も考えずに……互いを感じる時間…… 酔いしれて榊原に縋り着いた 熱が収まるまで……何度も何度も……翻弄され…… 欲望の限り康太を抱いた 総て出し尽くし……榊原は康太を抱き締めた 「………伊織……寝室まで待てなかったのかよ?」 暖炉の前で……まさか始まるとは想っていなかった 「ごめんね……君を妊娠させられる様に頑張りたくなりました…」 「……んとによぉ……」 康太は笑った 子供の様な顔をして康太は笑い……榊原を許すのだ どんなに抱き潰しても……康太は許す 榊原がする事なら無条件で許してくれるのだ…… 「掃除は僕がします…」 「………オレは立てねぇかんな」 「君を洗ったら掃除して……帰る準備をします」 「おう!逃げてばかりもいられねぇかんな…」 「僕の康太を付け狙う奴は許せません…」 「伊織……風呂に入ったら話をしようか…」 「………ええ。では、綺麗に洗ってあげます」 榊原は立ち上がると康太を抱き上げ借りてる部屋の浴室に向かった 浴室の壁に立たせて精液を掻き出し……中も外もピカピカに洗う 康太も榊原の体躯を洗ってやって、二人で湯船に浸かり寛いだ 浴室から出ると着替えて、1階の暖炉の前に向かった 掃除をしようとすると……そこは綺麗に掃除をされていた この別荘には安曇の使用人がいて、至れり尽くせりなもてなしを受けていた 康太は情事の後始末をされて……顔が赤くなった 表には中々顔は出さないが…… 安曇の別荘の使用人はプロの仕事をしていた 榊原は暖炉の前に康太を座らせた 「寒くないですか?」 ショールを康太に掛けて抱き締めた 「夜叉王……と言う男の話を聞いてくれ……」 「………はい。」 康太は静かに話し始めた 昔、人の世に力を持つ男がいた 類い希な力を持つ人の子だった その力を悪用されて、夜叉王は修羅の道に堕ちた 皇帝炎帝が夜叉王を見た時には…… 既に妖魔に身を堕としていた 『我が名は夜叉王!』 夜叉王は皇帝炎帝にそう名乗った 空っぽの皇帝炎帝を夜叉王は嗤って見ていた 『お前の中は……何もねぇな…』 「だから?」 『我と……共に逝かぬか?』 と請われて誘われた 執拗に……求愛めいた誘いを受けた 『我のモノになれ』 熱望され、請われても‥‥諾とは謂わなかった 『……お前を埋める存在になりたい……』 夜叉王はそう言い皇帝炎帝を欲した 幾度となく誘われる………その誘いを断った 「オレは冥府を出るつもりはねぇ!」 『……我と……共に…』 夜叉王は炎帝に共に逝こうと……迫った 皇帝炎帝は冥府以外に逝くつもりはない…… そう言うと………炎帝の前から姿を消した 次に逢った時……冥府は封印か消滅か……との判断を下す……妖魔に成り下がっていた 人の世で数々の悪事を行い……魔界に堕とされた 魔界で天魔戦争の混乱に乗じて、総てを手中に収める絵図を描いた…… 神はその行いに怒り狂って……冥府に堕とした 消滅か……封印か…迫られて…… オレが封印した 決して出られぬ様に……封印した その封印の結界が綻んで……夜叉王は今世に姿を現した… 後は………青龍が知ってる通りだ…… 静かに康太は語った 榊原は康太に 「………何故……消滅させなかったのですか?」 と問い掛けた 「それを下したのは皇帝閻魔……オレじゃねぇ オレは親父殿の命を受けて封印はした…… もしオレが下すなら………昇華させていたな…… 下手に生かしておく事こそ………アイツにとって酷だからな……」 「………君は何故……夜叉王と逝かなかったのですか?」 「オレは皇帝炎帝! それ以外になる気はなかったんだよ 空っぽのオレの使命は冥府を護る事だけ…… それ以外の使命など不要だった……」 「………空っぽ……だったのですか?」 「お前に初めて逢ったオレは…… 空っぽだった筈だ…… オレは命令さえあれば……躊躇する事なく…… 殺せるんだ…… 何百人……何万人……束になって来ようとも…… オレは殺せ……と言われれば躊躇する事なく殺せる それが皇帝炎帝……オレだった……」 榊原は康太を強く抱き締めた 「今……君は……それが出来ますか?」 「それは一番お前が解ってるだろ? お前がダメだと言うなら……オレは止まれる オレは破壊の限りを尽くす殺人兵器じゃねぇ…」 「君は僕の愛する炎帝です」 榊原はそう言い康太に口吻た 「………夜叉王は君が欲しかったんですね……」 「………どうなんだろ? 空っぽのオレをどうするつもりだったのか…… それは今更知りたくもねぇよ…」 「知らなくて良いです 君は僕だけ愛してれば良い……」 「………オレはお前を愛して良かった…… オレが自然でいられるのはお前の側だけだ…… オレは……空っぽの傀儡だった…… 傀儡は心を持たなくて良い……そう己に課して生きて来た‥‥ オレは……作られた存在だからな……仕方ねぇ…… そう想って日々何も考えずに生きて逝くんだ 命令されたら……それだけを完遂する…… それだけの存在……それが炎帝……オレの存在理由だ」 「僕の妻を勝手に使うのは許しません… 君が僕と共に在る限り! 僕は君を離しません……絶対に離しはしません」 榊原は強く……強く……康太を抱き締めた 康太は榊原の胸に顔を埋めた この温もりがあれば…… 生きて逝ける…… その幸せを噛み締める 明日……この命を賭したとしても…… 悔いなんか遺してない…… ずっと…… ずっと…… 一緒にいられれば…… それだけで良い…… 「僕は君を離す気はない…… なので、闘います! 共に炎帝……共に逝って下さい…」 「……あぁ……共に逝こう……」 この命が続く限り…… 共に……それしか願っていません 榊原と康太は立ち向かう覚悟を決めた 邀撃に出ると決めた 夜叉王が炎帝を望んだとしても…… くれてやる気は皆無だ 奪われるなら……共に逝く 死んでも離す気はない 絶対に! 「愛してます炎帝…」 「オレも愛してるかんな…青龍」 康太は胸ポケットから携帯を取り出すと安曇勝也に電話を入れた 「勝也?世話になったな」 『康太!どうしました?』 「明日、横浜に還る…」 『……そうですか……』 「勝也、本当にありがとう」 『何かありましたら…何でも言って下さい』 「今回は本当に助かった また連絡する……ありがとう勝也…」 『向こうに還りましたら…また逢って下さいね』 安曇は胸騒ぎを覚え……康太に言った 「おう!また連絡する」 康太はそう言い電話を切った 榊原は康太を抱き寄せた 「明日、新幹線で帰りますか?」 「おう!新幹線を下りたらタクシーで真壁の土地まで向かう」 「解りました!」 榊原は帰る支度をして、康太と共にベッドに入った 抱き合い……目を閉じた 互いのぬくもりを噛み締めて…… 抱き締めた 強く…… 強く…… 互いを抱き締め……離さなかった

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