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第40話 帰還‥その後 ②

【帰還‥その後】② 「……してはおらぬ…… 志津子に誘われて……抱いて……後は…アイツの思う壺だった……」 康太は爆笑した 「義恭、おめぇは志津子と離れては生きられねぇんだよ! 今までも、これからもな! 志津子の手に上で転がされておけ!」 「……志津子は拓美と拓人を可愛がっているからな…… 何か……奇妙な同居が続いておる…… 我はこのままで……良いのか? 許されて良いのか……解らなくなった……」 「義恭、同居が嫌なら拓美と拓人の為に早めに言ってやれ 子供は玩具じゃねぇんだ! あっちこっち行くのが良い訳がねぇだろ? 拓美と拓人は飛鳥井の病院の跡継ぎだ 久遠が継いだ後に拓美と拓人が病院を継ぐ それが定めだ……もう違えられねぇんだよ!」 「………真贋、我の長年の苦しみは…… 一瞬にして……消えました 何時か譲に我の跡を……そう願って参りました それが……意図も簡単に叶えられました… 志津子も……離れねばならぬと想っておりました ですが……側にいて良いと言われました…… 本当に総ては真贋のお陰です」 「………悟の話を……してやるつもりで…… 出来なかったな……」 義恭は我が子の名前を言われて…… 「……悟がどうかしましたか?」 と問い掛けた 「………おめぇは知らねぇだろ? 死のうとした我が子の事を…義恭、おめぇは知らねぇだろ?」 「………え?悟………が?ですか……」 「おめぇは……側にいられねぇ譲ばかり気にかけて……我が子の悟の事は何一つ知らねぇ…… 死のうと泣き叫ぶ悟を…… 志津子も一緒に死のうか……と共に逝こうとした… こんな苦しんだ親子の事を……知らねぇで過ごして来た……」 義恭は顔色をなくした…… 「……悟の事は何一つ知りません…… 親として……何を見て来たんでしょう…」 「悟はそんな過去の傷なんて見せねぇからな…… 手首に……切り刻んだ……跡を……何故見ねぇんだよ? 笑顔の裏に……危うい顔を隠してる 悟は切っ掛けさえあれば……今も……死ぬ気は抜けてねぇ… だから譲や拓美や拓人が居てくれるのが……逆に志津子は……心強いんだろうな…」 「……真贋……話してくれませんか?」 義恭は康太に頼んだ 「久遠に話してやるつもりだった…… オレが消えなかったら……話した」 久遠は「今度こそ聞かせてくれ…」と頼んだ 「なら今夜飛鳥井に来いよ 待ってるかんな」 康太は、診察を終えると栗田の病室まで向かった ドアをノックすると恵太がドアを開けた 「………康太……」 恵太は今にも倒れそうな顔をしていた 康太は榊原に「恵兄を久遠に診せて寝かてくれ」と頼んだ 榊原は恵太の腕を掴むと、久遠の方へ向かった 康太は病室に入った 「おい!一夫!起きろ!」 康太は栗田に向けて叫んだ 「………弥勒、夜叉王に操られてる訳じゃねぇよな?」 『過労だ……お前の声を意識の中に持って言ってやろう 声をかけてやれ!そしたら意識は戻るであろう』 弥勒の声が響き渡った 「一夫!起きろ!」 康太は何度も呼び掛けた すると栗田は目を醒ました 目を開けて直ぐに康太の顔が飛び込んで来て…… 栗田は泣いた 康太は栗田の頬を殴り飛ばした 「こら!病人を殴るな!」 久遠が病室に現れて……康太を注意した 「過労かよ?一夫は?」 「胃潰瘍と過労だな」 「あんで、意識不明なんだよ?」 「…………本人が起きるのを拒否ってたんだよ」 「寝てる暇なんてねぇんだよ! 一夫、飛鳥井は乱世に突入するだせ? 何時まで悠長に寝てるんだよ?」 「………康太……お前が居れば俺は……… どんな事だって頑張る…」 「………気絶して意識不明になる程! やれとは誰も言ってねぇよ! 誠一に返品してやろうか?」 「………康太……それだけは………」 栗田は涙をボタボタ垂らして泣き出した 「………恵兄……ぶっ倒れそうになってた 恵兄を幸せにしねぇなら……返して貰うぞ!」 「………ごめん康太……ごめん……」 「早く治して恵兄を安心させてやれ」 栗田はコクコクと頷いた 「体を治すまで退院しなくて良いからな!」 「直ぐに治します」 「無理は一切するな!良いな!」 「はい!貴方がいれば俺は生きて行けます」 「恵兄の為に生きてやれ」 「……恵太の為にも生きますが…… 俺は貴方の駒です!」 「それもな、元気なればこそ……だろ?」 「………はい……」 「久遠、意識は戻ったからな……もう大丈夫か?」 「あぁ、後は治療して行けば良いからな」 「ならな、今夜待ってるからな…」 「義恭と共に伺わせて戴きます」 「待ってるかんな」 康太は栗田の病室を後にした 駐車場まで向かいます車に乗ると……息を吐いた 「………疲れた……」 康太は疲労感を否めなくて呟いた 「大丈夫ですか?」 「………あぁ、大丈夫だ、まだまだやらねぇとならねぇ事は山積してやがる!」 「飛鳥井の家に還れば良いですか?」 「おう!」 榊原は車を走らせると、飛鳥井の家に向かった 飛鳥井の家に還ると、翔達が託児所から帰って来ていた ちょうど車から下りる所で、康太を見ると我が子達は泣き叫んだ 「かぁちゃ」 流生が康太を見付けて腕を伸ばしていた 京香は流生を抱き上げて康太に渡した 「かぁちゃ!」 太陽も泣き叫び 「かぁちぁぁぁ!」 大空も火のついた様に泣いた 京香は榊原に二人を渡した 翔も康太に近寄り抱き着いた 一ヶ月以上逢っていなかった…… なのに子供達は……ちゃんと「かぁちゃ」を忘れていなかった 「とぅちゃ」 かぁちゃに抱き着いた後は「とぉちゃ」にも甘えて…… 榊原は3人抱き上げていた 康太は2人抱きあげて……重くて……久し振りの重さだった 流生は鼻水と涙で……榊原はハンカチを出して顔を拭いた 応接間まで行くと、子供達をソファーに置いた 「かぁちゃ……いにゃいのや」 流生が泣いていた 康太は流生を抱き締めて 「かぁちゃは居なくならねぇから安心しろ!」 と、頬にキスを落とした 翔は「……とぅちゃ…ないない…や…」と泣いていた 太陽と大空は「「かぁちゃ……とぅちゃ……」」とハーモニーで泣いていた 音弥は「……う~……う~……」と唸っていた 子供達は……泣いて……泣いて……泣き疲れて……寝た 榊原は応接間に布団を敷いて寝かせた すんすんすん……と啜る息遣いが…愛おしかった 「………可哀想な事をしました…」 榊原は我が子にキスを落としながら撫でた 「………一ヶ月以上見てねぇと…… 忘れちまうと想ってた……覚えてたんだな…」 康太は嬉しそうに呟いた 「君と僕の子供です…」 榊原は康太を強く抱き締めた 飛鳥井に残ってた兵藤と夕飯を食って…… 康太と榊原は自室に戻って行った 慎一に「飛鳥井義恭と久遠が来たら通してくれ!」と頼んで寝室に戻った 寝室に戻ると浴室に行きバスタブにお湯を張った 2人してゆっくりと湯に浸かり、支度をする 私服に着替えると、慎一が飛鳥井義恭と久遠をリビングに通しておいた……と伝えた 康太と榊原はリビングに顔を出した 「待たせたな!」 康太はリビングに入って来ると、テーブルの上にアルバムを置いた ソファーに座り、アルバムをペラペラ捲ると…… 一枚の写真を義恭と久遠の前に置いた 「悟の妻だ……義恭……おめぇは知ってるよな?」 義恭は写真を見た 写真には仲良く並ぶ2人が…そこに在った 「悟の妻の聡美だ」 悟がどれだけ妻を愛してるか……その写真を見れば……伺えれた 「体調が悪くて義恭に見せた時には…… 手遅れの末期癌だったよな?」 康太は義恭に問い掛けた 「……あぁ……手の施しようがなかった……」 聡美は闘病生活の甲斐なく……逝った 義恭はその頃の事を思い出していた 妻の遺体に縋り着いて泣いている悟を…… 力が及ばなかった父親を…… 恨みがましい瞳で見て…… 『父さん……僕は何一つ貴方には期待しませんでした… ですが……今回は期待しました…… 父さんが聡美を治してくれる……と期待しました』 悟はそう言ったきり……義恭の前から姿を消した 志津子も……何も言わず義恭を見ていた 責めもせず……悲しげに見ていた そして志津子は義恭に背を向けた…… 長い結婚生活で初めての事だった 義恭には忘れられない女がいた 忘れられない女との間には……悟よりも年上の子供がいた 志津子は知っていた 知っていて……何も言わなかった 義恭は責められた気分で家に寄りつかなくなった 久遠由美子……彼女の傍で……消えゆく日々を過ごすチャンスが出来たと……見向きもしなかったのだ 「妻を亡くしてからの悟は廃人同然だった 勤めていた会社も……辞めて酒浸りの日々だ 手首をかっ切って……日々妻の後を追う…… 志津子は泣きながらオレの処へ来た 『悟が死にたいなら……一緒に逝ってやります そしたら飛鳥井の病院は久遠謙に継がせて下さい 歴代飛鳥井の主治医をして参りました 私の代で潰しては……ご先祖に顔向けも出来ません 悟は……もう駄目です…… 元々あの子は医者にはなる気すらありません それが親に対する……復讐なのです… 私は……義恭には愛されてません…… 無理矢理振り向かせ……罪を作りました…… 悟と共に逝きます……』 と、志津子は言った 志津子と悟は…死ぬ気だった 死ぬ気の志津子と悟を無理矢理仕事に着かせたのはオレだ 志津子は飛鳥井の馬関係の仕事を一手に担ってくれる様になった でねぇと暇が出来れば二人して、死ぬ事ばかり考えるからな‥‥」 康太は辛そうに言葉を紡いだ 伝えねばならない時が来たのだ 志津子と悟の想いを‥‥‥今伝えねばならない時が来たのだ‥‥ 康太は悔しそうに親指を噛むと 「オレはな義恭……てめぇを殴り飛ばしてやりたかった…… おめぇの妻だろ?……志津子は? おめぇの息子だろう?……悟は? 一緒に暮らしてても誰よりも遠いなら…… 別れろよ……オレは何度も志津子に言った 志津子はその答えを出すのは……義恭だと……譲らなかった だから志津子は義恭が離婚すると言うなら聞く決意は出来てるんだよ だから最後に……寝たんだろうな… 義恭に愛されて…… 愛された想いと共に逝くつもりなんだろうな……」 康太の言葉に義恭は慌てた 「………真贋……!」 「あんで志津子がおめぇを誘ったと想うよ? 最後に……愛された想い出だけ……遺したかったんだよ それで終わらせる気なんだ…」 久遠は康太に食って掛かった 「………それは本当の事なのか? なら志津子さんと悟は………」 「………死ぬ気だろうな 悟は今、オレが使っている 出来る男だからな、どんな要求を出しても、悟は応えてくれる でも……心の闇は……消えねぇ…… 死の影は消えてなくならねぇ‥‥ 悟は……妻とお腹の子供を一度に亡くした…… その日から時間を止めている……」 久遠は泣いて…… 「………悟を……救う手立てはないのか?」と康太に縋った 「……悟から死の影は消えねぇ…… 志津子は覚悟してるんだよ…… 母親として一緒に逝ってやる覚悟……をな 悟には母親しかいねぇ…… 母子家庭と変わらぬ生活をさせたのは…… 義恭、てめぇだ!」 義恭は言葉もなかった 我が子を見ていなかった…… 離れて暮らす我が子を常に気にかけて…… 何時も一緒にいられる子供の方は……疎かにした 「………真贋……悟を……苦しめたのは我だ…… 聡美を救ってやれなかった 悟は……絶望した瞳で我を見ていた…… 悟を追い詰めたのは……何も見ていなかった我だ… 「義恭……おめぇはもう無関係な存在なんだよ…」 「………え?……」 義恭は驚愕の瞳で康太を見た 「………志津子と悟を捨てて……出て行った その時点で……もう無関係な存在になってるんだよ 指を咥えて見ていろよ! 自分が不幸にした妻と子供をな!」 康太は言い捨てた 義恭は泣きながら………康太に土下座した 「………我が死んでも……悟は我が子だ! 無関係な存在になどなりはせぬ! そして志津子に受けた……無償の愛を踏みにじった まだ何一つ償ってはおらぬ…」 「志津子は償ってなど要らぬ!」 康太はそう言い捨てた 「志津子が苦しんでいるなら……傍にいたい 悟の父親として何一つしてやれなかった…… 悟が死にたいと言うのなら……我も一緒に逝ってやる せめて……悟の親でいさせて下さい!」 義恭は土下座した 握り締めた拳に涙が流れて落ちた 「遅ぇんだよ!義恭!」 義恭は顔を上げた…… 「……真贋……」 「義恭、そのアルバムを見ろよ 久遠も見て構わねぇ」 義恭はソファーに座ってアルバムを開いて見た 子供の悟が写っていた 志津子が写っていた 2人は代わる代わる写真を撮っていたのだ そのアルバムに…… 父の姿はない…… 久遠は驚愕の瞳でアルバムを見ていた 久遠のアルバムには義恭が多く写っていた イベントは何時も義恭と共に………写っていた だが……この親子には…… 父親の存在は………皆無だった 小学校の入学祝いも 中学校の入学祝いも 高校の入学祝いも 大学の入学祝いも…… 卒業祝いも…… 果てには……悟の結婚式も…… 父親の姿はなかった…… 「立派な母子家庭だよな 本当に志津子は悟を立派に育て上げた 志津子には悟しかなかった」 康太は皮肉に嗤った 何と言われても仕方ない………現実だった 榊原はアルバムを見て…… 「榊 清四郎も身勝手な男でした 仕事優先で……家庭は顧みませんでした でも………一緒に写った写真はありますよ?」 あまりの蔑ろにし過ぎな現実に…… 榊原は胸を痛めた 「悟と志津子の願いだ! 久遠、病院を継いでくれ そして拓美と拓人に継がせてやってくれ 御前達親子はあの家に住めば良い」 「……お言葉ですが……俺は志津子さんと悟を蔑ろにしてまで……住みたいとは想いません 償いたい想いはあります……ですが償える範疇を超えすぎてます…」 久遠は苦しげに言葉にした 「………悟は……もう結婚出来ねぇ……」 「……それは解らないでしよ! 決め付けるのは辞めて下さい!」 「………男として……機能しねぇんだよ」 「………え?……それはどう言う事ですか?」 「妻と子供を一度に亡くして……何度も自殺を繰り返した…… 悟は妻の傍に逝く事しか考えいなかった それ程の絶望の中にいた 3年前‥‥‥悟はビルからも……飛び降りた…… 慌てて助けに入ったけどな………間に合わなかったんだよ…… 脊髄を損傷した……足を引きずってるだろ?悟… 気付いていねぇのかよ?」 言われてみれば悟は足を引きずって歩いていた 天気の悪い日は……歩くのも億劫で……部屋に閉じ籠もる事も多々とある 「………足、捻挫じゃない?」 「捻挫ならな良かったが……な 永久に治らねぇ傷を負ってるんだよ オレが慌てて回避させなきゃ……死んでいた まぁ、それが悟の本望だがな…… 自殺したら聡美の傍には絶対に行けねぇぞ!と釘を刺しといた」 義恭は悟が……瀕死の重傷だった事すら…… 知らなかった どれだけ家族と距離を取って……家族を蔑ろににして来たんだ……と悔やんだ 「悟は永久に子供なんて作れねぇ…… 跡継ぎは作れねぇ……だから久遠を受け入れてるんだよ 悟は久遠の存在に救われてる 拓美と拓人を可愛がるのは……我が子を腕に抱けなかった……からだな…… 子供は好きなんだよ……志津子も悟もな そして何の罪もない2人を見守って行こうと心に決めてる そして想うんだ…… 久遠が完全に跡継いでくれたら……と、志津子と悟は死を選ぶんだ…… だからな、お前達2人を呼んで話をした」 義恭は言葉もなかった 久遠は何と言って良いか……解らなかった 自分の母親は愛人だった ずっと日陰の存在だと想っていた だが……日陰の存在よりも……… 本妻と子供が冷遇されて苦しんでいたなんて…… 想いもしなかった 康太は携帯を渡して貰うと電話を掛けた 「お!オレだ」 『……真贋!……本人ですか?』 「おう!オレしかこんな電話しねぇだろ?」 『………ええ……オレオレ詐欺じゃあるまいし… オレだ…で解るのは真贋、貴方しかおりません』 「志津子、悟と拓美と拓人を連れてな飛鳥井に来いよ 拓美と拓人を、和希と和馬に逢わせてぇと言ってたろ?」 『ええ。言っておいででしたね お邪魔でないなら、拓美と拓人を連れて悟と共に伺わせて戴きます』 「オレはおめぇらを邪魔にした事が一度でもあるのかよ?」 『御座いません 真贋、美味しいケーキ屋を見付けたので買って伺わせて戴きますね!』 「おう!志津子、待ってるからな!」 志津子ははい。と言い電話を切った 康太は慎一を呼んだ 「お呼びですか?康太」 「志津子が来るかんな そしたら拓美と拓人に、和希と和馬を逢わせて見ててくれねぇか?」 「解りました!年も変わりませんし、和希と和馬は喜びます」 「頼むな」 慎一は「はい!」と言いリビングを出て行った 「志津子と悟を呼んでやった 話したい事は本人に言えよ」 康太はそう言い榊原の首に腕を回した 「伊織、明日死んでも悔いがねぇ程に愛してるかんな!」 「ええ。僕も君だけを愛してます 今……死んだとしても僕は悔いはないです」 榊原は康太に口吻た 康太は榊原の首に腕を回して肩越しに久遠を見て嗤っていた 「久遠、おめぇ、飛鳥井になれ」 「………え?……また無茶ぶりを言いますね」 「飛鳥井拓美、飛鳥井拓人! おめぇの子供は飛鳥井に組み込まれた子供なんだよ 今のうちに違和感なく飛鳥井に馴染ませとけ そして通うのは桜林学園! 飛鳥井の家は歴代男子は桜林学園に通わす習わしがある!」 「………俺は久遠のままで良いです……」 「それは無理だ! 久遠、おめぇの子供は飛鳥井に組み込まれし存在だ…… 違えるならば、おめぇの子供を取り上げるしかねぇ!」 「……え?……」 「オレの子供は全部で5人 2人は伊織の母親の真矢さんが産んで、オレに託してくれた子供だ 後の3人は……オレが貰い受けた子供達だ…… 1人は瑛兄だけどな 後の2人は………赤の他人だ…… オレは適材適所配置するが役目 その為なら……子供を取り上げる事も容易い」 「………子供は渡さない!」 「女優の如月沙織……」 「……え?……」 久遠は驚愕の瞳で康太を見た 「沙織に親権取らせてオレが貰う事も出来るんだよ」 「………沙織とお知り合いですか?」 「相賀の事務所のタレントならな…… 相賀は協力を惜しまねぇ……そしてオレは有能な弁護士がいる……と言う事だ!」 飛鳥井康太の……底知れぬ恐ろしさを知る 「………坊主……子供とは離れたくない……」 「なら飛鳥井になれ! オレは飛鳥井の一族の為なれば、何としてでも守り通すぜ!」 降参するしかなかった 暫くすると志津子が悟と拓美と拓人と連れてやって来た リビングに通されて……志津子と悟は…… 動きを止めた 慎一は拓美と拓人に 「こっちにおいで! 友達になれるかも知れない子がいるよ 仲良くしてやってくれると嬉しいな」 と言い連れて行った 慎一が部屋を出て行くと、康太は榊原を離した 「志津子、悟、来い!」 康太は手を広げると…… 悟は康太に抱き着いた 榊原は少し席を離れてやると…… 志津子も康太に抱き着いた 「………真贋……何処に行ってたのですか!」 悟は泣き叫んだ 康太は悟の頭をなでてやった 「僕は……生きているのを止めるところでした」 悟は泣きじゃくって康太に甘えていた 「バカ言うなよ悟! おめぇにはまだ動いて貰わねぇといけねぇんだからよぉ! 解ってんのか?」 「……うん……うん……解ってるよ…」 悟は子供みたいに泣きじゃくった 義恭は………そんな悟の姿は初めて見た 何時も冷めた瞳をして義恭を見ていた 「………志津子……不安定だったろ?すまなかったな」 志津子は康太に抱き着いて泣いた 「………康太……今回はダメかと……」 「………切ったのか?」 志津子は頷いた 康太は悟の腕を掴んだ そこには………赤い傷跡があった その下に……無数の傷跡が残っていた 「……切らねぇ約束はどうしたよ?」 「………ごめんね……ごめんね康太君……」 悟は謝った 「聡美がこんな事して喜ぶと思ってるのかよ?」 「………生きてるのが辛いんだ…… 聡美の側に行きたい……」 悟は弱音を吐いた 「そろそろ、止まった時間を動き出せ…」 「………無理だよ……」 「無理じゃねぇ!」 悟は涙を拭うと……諦めた瞳を康太に向けた 「………おめぇが死ねば志津子も死ぬ…… おめぇの母親を……死なせて良いのか?」 康太が言うと久遠が 「悟!お前が死ぬなら俺も共に逝く事にする! 我が子が飛鳥井康太の果てに組み込まれているなれば、俺は共に逝ってやっても文句は謂わさない!」と叫んだ 義恭も「我も共に逝こう……我が子の苦しみも解ってやれなかった愚か者の父だが…… 悟……お前を愛している…… お前を大切に思っている お前の愛する人を助けてやれなかった…… 一番悪いのは我だ……だから志津子ではなく、我が逝ってやる…」 と言い悟を抱き締めた 「………父さん……」 「志津子……悟……我は何も知らなかった 知らずに過ごして悲しい思いをさせた せめて最期に親らしい事をさせてくれないか… お前に何もしてやれなかった……許してくれ」 義恭は泣きながら我が子を抱き締めた 志津子は信じられなかった…… 愛されてないとは想わなかったが…… 義恭の想いは常に…… 自分達以外に向いていた それでも良い……と義恭の妻になった だが……愛されない日々は……辛かった 自分の選んだ道に悔いはないけど…… 最期に愛されたかった………と、義恭を誘った 想像以上に愛されて志津子は覚悟を決めた もう何も想い遺す事はなかった なのに………志津子は泣いて詫びる義恭を唖然として見ていた 「……義恭と寝たか?」 「……真贋……」 「最期に愛されて……それで逝くつもりだったか?」 「……愛されぬまま逝くより……よいではないですか 私だって女です……夫に愛されて抱かれたかった 最期なれば大胆に誘えました……それだけで…良いのです…… もう何も望んではおりません…… 後の事は宜しくお願いします真贋」 「い・や・だ!」 「真贋……」 「ふざけるな!志津子 おめぇが悟と死んだら久遠は悔やんで…… 後を追うぞ!それで良いのかよ?」 「それは困ります! 譲は飛鳥井の病院を継ぐ者! 死なれたら……ご先祖に顔向け出来ません 歴代御殿医を携わる者の使命です!」 「悟……おめぇさ、そろそろ、その瞳に現実を写せよ おめぇが死んだら……後を追うぜ! 志津子は母親として息子を死なせた……と後を追う 久遠は志津子と悟を死なせたのは自分だと後を追う 義恭は……妻と子供に見向きもしなかった……と悔やんで、せめて最期は一緒に……と死ぬ そしたら拓美と拓人はどうなる? 考えた事はあるのかよ? あんで破滅にばかり向かうんだよ!」 康太は怒っていた その時慎一がリビングにやって来た 「どうしたよ?慎一?」 「………あの二人の親は久遠ですよね?」 「だろ?」 「一発殴って良いですか?」 「殴るに値する理由があるなら殴れ!」 康太がそう言うと慎一は久遠の胸倉を掴んだ 「子供を不安がらせてるのに……気付いてないのですか?」 「……え?…不安がってるのかよ?」 「………康太」 「うし!殴れ!」 慎一は久遠を殴ろうとした すると慎一の後ろを追いかけて来た拓美と拓人が飛び出して父親を庇った 「パパを殴らないで!」 拓美は父親の前に出た 拓人も「パパをたたいたらダメ」と泣いた 慎一は胸倉を掴む手を離した 康太は拓美を掴むと膝の上に乗せた 榊原は拓人を掴むと膝の上に乗せた 「拓美、覚えてるか?」 「こうたちゃん…」 「そうだ!和希と和馬とは仲良くなったのかよ?」 「なったよ」 「なら、お話ししてやる 和希と和馬は施設で育ったんだよ 母さんは二人を生むと同時に連れ去れて… 乳飲み子を抱えて生活できない慎一は生まれて直ぐの子を施設にいれた 退院しておうちに帰る筈が…あの二人は施設に連れて行かれたんだよ そして二年前まで父親にも逢えずに育ったんだよ 施設でな育ったんだよ和希と和馬は…」 施設で…… 全員言葉もなかった 「慎一もな施設で育ってるんだよ 親にな捨てられて生きて来たんだ そして唯一自分を解ってくれる愛した女と引き離された…… 慎一は孤児だからな施設に入れられ……脱走したからな戸籍も動かせなかった そんな男に渡す気はないと親は激怒して娘と慎一を引き離した そして……和希と和馬の母親は我が子を見る事なく死んだんだよ……」 壮絶な話だった 康太は慎一の腕を取った 腕時計を外すと……… そこには………深く刻んだ跡があった 「親もいねぇ 子供も愛する女とも引き離された… そして生きて行く為に犯罪だと解ってて生きていた それが緑川慎一だ」 慎一は胸を張り笑った 「俺はまだ恵まれています! 康太…貴方に巡り逢えた…… 貴方が和希と和馬を俺にくれたのです……」 悟は慎一を見た…… 「………君は今………生きてて良かったと思う?」 「ええ。俺は死ななくて良かったと想います 貴方も、そう思う日は来ます 貴方には家族がいてくれる 貴方を大切に思ってくれる人がいてくれる その人達の為に……貴方は明日を生きねばなりません」 「……慎一君……」 「亡くしても……人は生きねばなりません 幾ら辛くても……朝は来る… 俺が死んでも変わらず日々は過ぎる ならば、その日々に自分を刻む…… 貴方には慕ってないてくれる甥っ子がいるじゃないてすか! 拓美と拓人は、あの家を出たくないみたいです なのに……貴方は何時か出なくちゃだめなんだと子供を苦しめています! 子供の言い分を聞いた事がありますか? 拓美と拓人を無視するなら…俺は本当に貴方を殴り飛ばします!」 慎一はご立腹だった 康太は笑って 「拓美、拓人、あの家が好きか?」 と問い掛けた 拓美と拓人は久遠を見ながら……頷いた 「志津子ちゃんは優しいし、悟君も優しい 手を繋いで歩いてくれるんだ 段差は持ち上げてくれるんだ…… 悟君…足悪いのに……必死に持ち上げてくれるんだ… そして勉強も教えてくれる お仕事先にも連れてってくれた 康太くんは仕事先で知り合ったんだよ 志津子ちゃんも悟君も何時も美味しいの沢山食べて良いよって……言ってくれるのに 自分達は食べないんだ……」 拓美はそう言い泣いていた 拓人が後を続けて言った 「ボク達を大切にしてくれるのに…… 志津子ちゃんと悟君は……あんまし自分を大切にしないんだ…… 悟君の手の傷……いたいよ…… それを志津子ちゃんは苦しそうに見て泣くんだ ボク達は……そんな時何もしてやれないんだ パパならしてくれるかな……って想うのに…… パパはボク達のお話をあんまし聞いてくれないんだ」 拓人も、そう言い泣いた 慎一は額に怒りマークを露わにして 「……殴りたい想い……解りますよね?」 と言い捨てた 「拓美、拓人、オレが説教してやる! だから和希と和馬と遊んで来い 嫌いか?あの二人? お前達と同じ一卵性双生児なんだぜ」 「嫌いじゃないよ!」拓美は言った 「大好きだよ」拓人も言った 康太は二人の頭を撫でて 「なら仲良くな! 北斗って言う足の少し悪い子もいるたんぞ」 「逢ったよ!北斗君も好き」 拓美は素直な子だった 「北斗は親がいねぇだよ……」 康太が言うと拓人が 「可哀想ね!でも大丈夫だよ ずっと好きだから大丈夫だよ」と言った 「良い子達だな」 康太は二人を抱き締めた 「慎一、も少し頼むな」 「はい!殴れないのは不本意です」 康太は笑った 慎一が二人を出て部屋を出て行くと 久遠が「………北斗って子は……総合病院で見た子か?」と尋ねた 「…そう……おめぇに処置して生かして貰った子だ 北斗は元の名前は雪と言う 近親相姦……の罪を犯した子だ 父親は腹の子に産まれるな……と呪いをかけた 生まれた子供は真っ赤な髪をして鬼の角を持って産まれた…… 雪は産まれた瞬間喋った…… 雪を魔界に送り、北斗として生を残し育てているのがあの子だ 一生の子として育ててる 果ては緑川ファームの跡継ぎだ」 悟は……… 「………真贋……そんな子供が闘ってるのに…… 僕が試合放棄してたら恥ずかしいじゃないですか! 僕が死んだら…父さんや母さん…譲君まで後を追うなんて……させられないよ 譲君には子供がいるんだよ!」 「不器用な男だからな……… 志津子と悟とでサポートしてやって欲しい 聞いたか?……あの子達の言い分……」 「………聞きました……僕の手で悩ませてしまいました そして、そんな子供の言葉に耳を貸さないなんて… 僕は許しませんよ!」 「悟、拓美と拓人を育ててくれ…… この男は不器用だ……仕事に入ったら授業参観とか行かなさそうだ……」 「大丈夫です!僕と母さんとで行きます 父さんも今暇なんでしょ? 父さんも暇ならさ、拓美と拓人を育ててよ 彼等は傷付きやすいんだよ!」 「………悟………済まなかった……」 「………僕は父さんに何一つ期待はしませんでした 聡美を助けて欲しい……その時だけは…… 父さんに期待しました… 聡美が手遅れの末期癌なのは解っていました…… でも父さんなら……そんな期待が……あったのです 父さん……僕達も貴方から遠ざかっていたのです 何一つ期待せず……諦めていた…… 歩み寄る事すらしなかった…… 母さん……最期に一度と言わずに……ずっと愛されて生きて下さい…… 父さん……母さん……夫婦なんですから……ずっと死ぬまで寄り添って生きて下さい」 義恭は泣いた 許されて……良い訳がなかったから…… 久遠は「………志津子さん……これからは家族で沢山写真を撮って下さい」と言った 父親の一枚もないアルバム…… そんなアルバムに父親を埋めて行って下さい…… そんな願いを込めて……言葉にした 志津子は 「あら、譲、写真を撮るなら貴方もよ 飛鳥井になるんでしょ? 良かったわ!本当に良かった 御殿医の時代から受け継ぐ病院を人手に渡さないで本当に良かったわ! 譲が受け継いで、拓美と拓人に渡す その子供達も引き継いで繋がるのですね真贋」 「良かったな志津子!」 「はい……取り敢えずは……ホッとしました」 「これからは義恭も譲も家族として同じだけの荷物を持たせろ! おめぇ一人が背負って堪えているんじゃねぇぞ!」 「………はい……康太さん…」 志津子は深々と頭を下げた 康太はキリキリ痛み出した腹痛に…眉を顰めた 「康太……痛いんですか?」 「………少しな…大丈夫だ伊織…オレはまだ死ねねぇ… オレらの子供達を……ある程度まで見守らなきゃな……」 久遠は立ち上がると康太に近寄った 脈を取り、熱を測った 「明日、病院に来れますか?」 久遠が言うと榊原は 「会社に行く前に寄ります」と約束した 「そんなに無理ばっかすると、俺よりも早く死ぬぞ!」 久遠は怒った 悟はその台詞に…… 「……康太君……どう言う事?」と問い掛けた 久遠は、 しまった……と言う顔をした 「悟、気にするな 久遠は何時もこんな感じだかんな!」 「明日、病院に来て下さい 今夜は注射を打って帰ろうか?」 久遠はもしやの時の為に往診用の鞄は持って来ていた 義恭も康太の容態を見ていた 「消えていた間吐血されたか?」 榊原に問い掛けた 「………いえ、吐血はしてません でも時々……痛みはあったみたいです…」 「痛み止めを打っておこう 容態が変われば直ぐに連絡をくれ」 義恭は手早く注射の用意をすると、康太の腕を消毒して注射を打った 久遠が「沢庵、少し禁止な…」と告げた これに反応したのが悟だった 「えぇぇぇぇぇ!康太君の沢庵……」 封印だなんて…… 悲しすぎる……悟は、べそべそ泣いた 「真贋……沢庵も食べられないなんて……」 志津子もハンカチで目頭を押さえた 「今日はもう寝かして明日見せに来て下さい」 「そうします」 「………伴侶殿……貴方も……心安まらぬ日々を送られたのですね……」 「僕は大丈夫です」 「貴方も検査します」 「え……僕は大丈夫です」 「伴侶殿、今日は本当にありがとう御座いました」 帰ろうとする久遠に康太は 「久遠、真壁のビルが建ったら、病院も転院になるの知ってたかよ?」 「………え?……知りません……」 久遠が言うと義恭は 「………伝えてはおらぬ……」 と康太に謝った 「真壁の1階と5階まで病院が入る 今の病院の倍の広さでベッド数も倍にする お前達はそのビルの最上階に7LDKの家を作っておいてやった 病院と自宅の土地は飛鳥井のモノだからな、あの後にビルを建てるつもりで寝かせていた土地だ! やっと本来の役目を果たせる日を迎えたって事だ」 久遠は驚いた顔をしていた 「………真壁のビルに入る病院…… 今巷で持ちきりの噂の病院に入るんですか?」 「最新の設備を備えた 大学病院にしかない機材も入れた 医者も増やす お前に名簿見せたやん 使えそうな、上手く調和を取れそうな医者を選べって! それも来るからな、お前が仕切っても行けよ」 久遠は……言葉もなかった 「病院の経営もな設備投資しねぇと患者も足が遠のく…… 少し設備投資して、患者を呼び寄せる様にしねぇとな!」 「………よく……認可が下りましたね……」 「何年も根回ししてるんだからな当然だろ?」 「………もう、坊主は寝てろ! んとによぉ!無理ばっかししやがってよぉ!」 久遠は立ち上がった 「真贋、本当にありがとう御座いました」 義恭も立ち上がった 「家族のあり方を見直してみたいと想います」 そう言い志津子を立ち上がらせると抱き寄せた 康太は慎一を呼び寄せた 「慎一、拓美と拓人を連れて来てくれ」 「………和希達と寝てしまってます……」 「そっか……なら源右衛門を呼んで宴会だと言ってくれ」 「解りました!」 慎一はリビングを出て行った 「久遠、寝てるって…… 寝てるのを起こして連れて行けねぇだろ? 来いよ!応接間で飲み明かそうぜ! オレは無理はしねぇからな源右衛門呼んどいた」 榊原は康太を抱き上げた そしてリビングを出て1階に下りて行った 応接間に顔を出すと、やはり流生がめざとく 「かぁちゃ」 とヨチヨチ歩いて飛び込んで来た 康太は流生を抱き上げた 「起きたのかよ?」 康太は流生の頬にキスを落とした 「俺の子供だ!次男の流生だ」 頑固そうな眉毛が……何処かで見た気がした 「かぁちゃ かぁちゃ」 流生は甘えて康太に擦り寄っていた 康太は流生を一生に渡した 「頑固な眉毛は親譲りなんだよ」 そう言い笑った 一生は「俺は頑固な眉毛はしてねぇよ!」と怒った 康太は笑った 「伊織、清四郎さん達に声かけてくれ」 榊原は康太に頬に口吻を落とすと、電話をしに行った 太陽と大空が「「かぁちゃ!」」とハモっていた 「オレの4男と五男になる、太陽、大空だ 鼻水すげぇな……風邪か?」 康太が言うと久遠が太陽を手にした 義恭が大空を手にした 流石医者だった 「熱はないな…… 気になるなら明日連れて来い」 「悪かったな この双子は伊織の母親がオレに託してくれた子供なんだ 伊織の血を継ぐ子供をオレにくれたんだ」 康太は寝ている音弥を抱き上げた 「音弥、起きろ!」 「かぁちゃ…」 音弥は康太に抱き着いて来た 「オレの三男になる音弥だ 音弥は超未熟児だったんだよ…」 「何グラムじゃ?」義恭は問い掛けた 「550グラム」 「超低出生体重児(超未熟児)か……よくぞ此処まで育ったな……」 「生まれて数日で音弥の母親は死んだ 残されたコイツを幸せにする義務があるだよオレは! だからまだ逝く訳にはいかねぇんだよ」 「当たり前だ!」 義恭と久遠と話してると清四郎が走って応接間に来た 康太を抱き着き……清四郎は泣いた 「………清四郎さん危ねぇ…」 榊原は音弥を受け取った 「康太……逢いたかったです……」 しくしく泣きながら訴えた 翔が手を伸ばしてかけゆは?と泣いた 「かぁちゃ……かぁちゃ」 翔が泣く 康太は翔を抱き上げた 「……重っ……瑛智もそうだけど翔も重い… オレの長男の翔だ……重いな」 康太は翔を清四郎に渡した 清四郎は翔を渡されて「…本当に…重いです」とボヤいた 真矢は顔色が悪く……久遠はそれに気付いて声をかけた 「顔色が悪いですね?」 「……久遠先生……少し疲れてますの」 「一度検査に来て下さい」 「………はい。」 真矢は返事をした ソファーに座り宴会を始めると源右衛門が顔を出した 「義恭!久方ぶりだな」 源右衛門は喜んだ 瑛太も清隆も仕事を終えて帰って来た 玲香も仕事を終えて帰って来た 久遠は玲香の顔を見て 「……疲れが抜け切れてませんか?」 と声をかけた 「……疲れ……と言うより…… 不正出血が……ありまして…それで病院へ行こうか悩んでました…」 「え?姉さんもですか? 私も不正出血があって……病院へ行こうか悩んでましたの……」 と苦しい胸の内を吐露した 「康太が戻って来る前に病院に行きたくなったからな」 玲香は身を呈して康太を待っていた 「康太がいなくて悲しんでる清四郎を置いて検査には行けませんでした…」 真矢も……本心を吐露した 久遠は「婦人科系ですか……知り合いの医者を病院に呼びます!なので明日必ず来て下さい」と申し出た 玲香は「明日午前中に必ず行きます」と約束した 真矢も「私も姉さんと共に午前中に行きます」と約束を、入れた 「かぁちゃん、オレも明日病院に行くかんな 乗せて行くもんよー!」 玲香は顔色を曇らせた 「何処か悪いのか?康太……」 「それを検査に行くだけだかんな」 「なら一緒に行こうか真矢」 玲香は真矢に声をかけた 「はい!姉さん! あら、志津子さんお久し振りね!」 真矢の声をかけられて志津子は嬉しそうだった 「真矢さん、玲香さんお久し振りです」 「今度飲みに行きましょうよ 美緒ちゃんも誘ってさ! いいお店があるのよ」 「そうなんですか!行きたいです!」 女性陣は話に花を咲かせて盛り上がるのも早かった 義恭は「………志津子と玲香さん達はお知り合いだったのか?」と唖然とした 「オレの仕事の用で飛鳥井に来るかんな志津子は!」 それで納得! 義恭は源右衛門の側に行き飲み始めた 久遠は瑛太や清四郎達と飲み始めた 意外に話があって盛り上がり、飛鳥井の家は笑いに包まれた 源右衛門は嬉しかった こうしてまた皆で飲めて…… 康太のいない家は明かりが消えて…… 家族は笑顔を失う…… 夜更けまで話して盛り上がり… 応接間で、酔い潰れて眠った 翌朝、悠太が応接間に顔を出したら…… 酔っぱらいの巣窟だった 康太の姿はなかった 廊下を見ると……榊原が掃除をしていた 悠太は信じられない想いだった 「義兄さん……」 「悠太、おはよう」 何時もの榊原だった 「康兄は?」 「……体調が良くないので寝てます」 「そうなんだ……では皆を起こして朝食の準備に掛かります」 悠太はキッチンの方へ手伝いに行った リビングに寝ている酔っぱらいを回収して、朝食を取った 義恭と久遠は恐縮しまくりで、朝食を取った後 「診察に来て下さいよ!」 と約束して志津子と悟、拓美と拓人を連れて帰って行った 康太は真矢と玲香に 「母ちゃんと真矢さん、病院に行くかんな!」 と声をかけた 食事を終えて、支度をすると 玲香と真矢と清四郎は康太と榊原と共に 主治医の病院へと向かった

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