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第46話 撮影旅行 笑顔 ②

クラクションを鳴らしまくりで、騒音妨害は免れなかった…… 戸浪は……此処まで酷いとは想像もしていなかった 「若旦那、此処の責任者は?」 「………いると想います……」 …………康太はため息を着いた 「この倉庫は立て直すまで閉鎖だな 責任者をちゃんとして教育しねぇとな 今いる社員は解雇だな……レベルが低すぎる トナミ海運の恥にる部署は入れ替えねぇとな」 「解ってます!田代、倉庫に行きますよ」 戸浪は田代と共に倉庫へと入って行った 康太達は後を追って、何も言わずに着いて行った 戸浪は倉庫へ行くと事務所に顔を出した 社長が来たと言うのに…事務所の社員は無視だった 邪魔者扱いで「退けよ」と言われる始末だった 康太は戸浪の前に出ると 「本日を持って、この倉庫は一時閉鎖となります!」と大きな声で宣言した 「一生、PCを シフトダウンさせてくれ! 慎一、社員を整列させろ! 戸浪海里!社員に訓告しろよ!」 社員は唖然として……立ち尽くしていた 康太は一歩前に出ると 「今までの勤務ご苦労様でした この倉庫は近隣住民と対立する程に品行が悪いので一時閉鎖となります レイプなさった社員の方、警察が逮捕状を取りましたので解雇とさせて戴きます 事故を起こした社員の方、今後当社では雇用は御座いません! クラクションを鳴らして傍若無人、好き放題やられてたドライバーの方々 貴方方も解雇とさせて戴きます!」 康太が言うと社員は 「おめぇは何処の誰なんだよ! そんな奴の言う事を聞くと想ってるのか?バカか?」 と小馬鹿にして言った 事務所にいた社員は全員爆笑した 「トナミ海運 社長、戸浪海里です!」 戸浪が自己紹介すると一斉に黙った 「支店長、以下の社員、バイト、全員解雇致します! これより、この倉庫は閉鎖となります 私物を持って帰宅なさって構いません! 今後、トナミ海運とは関わらぬ様にお願いします 田代、全員解雇です!」 戸浪が言うと田代は 「一生さん慎一さん手伝って下さい」 PCをシフトダウンさせてロックを掛けた 金庫と伝票、収納帳、それらを押さえて、社員を外に追い出した 倉庫も鍵を掛けて、開けられない様にチェーンを巻いた 警備会社に連絡を入れて、会社の警護に当たらせた 不当解雇だと居座る社員に、それなりの書類を見せて、黙らせてお帰り願った 「若旦那、夜中のうちに荷物を持ち出されると困るかんな、小樽の営業所の奴に総て運び出させろ!」 「解りました!田代、連絡して下さい!」 「その時、トラックの回収もな!」 田代はテキパキと動いていた 一生と慎一が手伝って動いていた 榊原は「戸浪の全部の営業所の見直しが必要な時期に来てるのかも知れませんね 社員のレベルの低下は否めません 今の企業は社員の教育にそれ程時間を掛けてられませんからね…… ですから社員には常に勉強と意識改革が必要なのです トナミ海運の社員としの誇り……長い道程になるかも知れませんが……必要ですね」 と言葉にした 戸浪は痛感していた 「……伊織……本当に社員の教育に時間を掛けれないので、現地任せになってました…… 今回、立ち退き運動を起こされて……トナミの全営業所の見直しをせねば……と想っています」 「若旦那、おめぇは任せて安心だと言う人間を配置しなかった事に原因もあるんだぞ 地元に放り投げ……これが一番危険だ…… 上の目が届かないからな好き放題、やっても大丈夫…… それが自分達を見失わせてるんだ 適度な締め付けは統制を取る為には必要なんだ」 康太の言葉が胸に突き刺さる 戸浪は自分を建て直せずにいた…… 康太は田代に近寄ると指示を出した 「田代、この地域の方々には謝罪を込めて説明会をしろ 佐藤栄作が中に入って地元との軋轢は解消されると思う そしたら再始動すれば良い ここの地元に明るい社員を頭に据えて取り仕切る 店長クラスの人材を集めて月に一回、営業報告 各支部との連携を取らせる それ位しねぇと地元に放り投げ状態で統制なんて取れねぇぞ!」 田代は康太の言葉を総てメモしていた 警備員が到着すると、康太は 「オレが出られるのは此処までだ!」 と線引きした 戸浪は康太に深々と頭を下げた 「撮影旅行中でしたのに…… 本当にご迷惑をお掛け致しました」 「若旦那、海外も良いけどな、国内の地盤を固めねぇと……足を掬われるぜ! 全くその通りだった 戸浪は目の前の現実を受け止めた 乗り越えなければならない現実を…… 「康太…正念場なんですね! 腹を据えて国内を安定させて行きます!」 「楽じゃ……ねぇがな……」 「それでも……今……を逃せば……収拾はつかなくなる なれば……今やらねば……明日へ続きません」 戸浪は自分に言い聞かせる様に言葉にした 「明日のトナミを煌星達に渡さねぇとならねぇもんな 揺らがせたりしねぇように見張っといてやんよ!」 「ええ……康太……我が子に遺す義務が私にはあります なので、国内を見直して絶対の安定をさせねばなりません!」 「若旦那、海運に相応しい倉庫に作り替えて…… 出直すと良い……オレが絵図を引いてやんよ」 「飛鳥井建設に頼めますか?」 「………東北は飛鳥井建設は支店はねぇんだよ だから宮瀬那智に指揮を取らせて完成させてやる」 「………宮瀬那智……社長に就任なさった方ですか?」 「そう!元々社長だったけどな、ちと修業して、この度社長に返り咲いたんだよ 倉庫を作るなら那智自ら乗り出してこさせよう」 「………康太……」 「この地は生まれ変わる 地元の人間には佐藤栄作が根回ししてくれる そしたら揺るがぬ発信地になるだろ?」 戸浪は深々と頭を下げた 「……康太……休日返上で総ての支店を抜き打ちしたいと想います なので、空港まで送って下さい」 「おう!行って来い!」 田代は倉庫を閉鎖して手続きを取ると、康太と共にリムジンに戻った 康太は運転手に空港まで……と告げた リムジンは空港に向けて走りだした 「目の前に……望んでねぇ現実があったとしても… それで絶望したら……そこで終わりだ 力の限り……尽くせ …………そして……どうしようもなくなったら呼べ オレは何処へでも駆け付けて行くかんな 若旦那が前を見据えて進む限り… オレは若旦那の処へ駆け付ける!」 康太の言葉書き胸に響く 戸浪は康太の胸に顔を埋めた 震える肩を抱き締め……前を見据えた 「田代、限界まで行く前に呼べ」 「………解りました」 「戸浪は変革期にある 会社が変われば人も変わる 働く人間も日々勉強させて極めさせて行かねぇとな、取り残されるぜ」 「……頑張ります…… ここが私の正念場なんですね…… 踏ん張って耐えて見せます…」 「なら行くとするか!」 康太が言うと、戸浪は歩き出した リムジンに乗る為に倉庫をでる そして振り返った 同じ過ちは繰り返さない為に…… 胸に刻んだ リムジンに乗り込み、戸浪は千歳空港で別れた そして康太と榊原と一生はホテルへと帰って行った 長い一日だった 康太は榊原の胸に顔を埋め、甘えた 榊原は何も言わず康太を抱き締めていた ホテルに戻り、部屋に帰ると、流生が走って抱き着いて来た 「かぁちゃ……かぁちゃ……」 康太の傍へ走って来る 康太は流生の傍に駆け寄り抱き上げた 「流生、良い子にしてたか?」 「かぁちゃ……ちゃみちぃ……」 流生は泣いた 「ごめんな……かぁちゃお仕事してたんだよ」 「かぁちゃ…りゅーちゃ ちゅき?」 「大好きだぞ流生」 流生は康太の胸に顔を埋めた 康太の足を……翔が抱き着いて泣いていた 「……かぁちゃ…」 康太は流生を榊原に渡すと、翔を抱き上げた 「翔、どうしたよ?」 「……ちゃみちぃ……」 「かぁちゃお仕事だったからな…」 「……かけりゅ……ぎゃまん…ちゅる」 翔は涙を堪えてそう言った 「翔……ごめんな」 頬にキスを落とし謝った 寝てた太陽が康太を見つけて笑った 両手を伸ばして、笑っていた 康太は翔を一生に渡して、太陽を抱き上げた 「ひな、おっきしたか?」 「かぁちゃ、まってちゃ」 待ってた……と言い甘えた 榊原はソファーに座ると、翔と流生を膝の上に乗せた 翔と流生は、とぅちゃも大好きだから喜んだ 康太もソファーに座り……榊原にキスした 「………伊織……泣きたい位……幸せだ…」 「僕も幸せです」 榊原は幸せそうに笑った 大空がムクッと起きて、康太の方に駆けて来た 「かぁちゃ……」 と康太の胸に飛び込んで泣いた 「かな……お腹空いてねぇかよ?」 何時もお腹減ったとポンポンを叩いて知らせてくる食いしん坊さんは……母を恋しがって泣いていた 「おとたん…えんえんちてた…」 大空が康太に訴える 康太は京香を見た 「音弥……泣き止まなかったのか?」 「……音弥は母さんっ子だから……保育園でも先生を困らせる位の母さんっ子だ……」 京香は説明した 「……明日から撮影に入らねぇと駄目なのに……」 康太は困った顔をした 「顔が見られれば安心してる…… 音弥から顔の見える所にいれば大丈夫だ」 「……京香……悪かったな…」 「私はどの子も可愛い 一緒にいられて幸せだ」 音弥は泣き疲れて寝ていた 時折……ひっく……としゃくり上げる寝息が…… 胸に痛かった 「……音弥は……康太にしか懐いておらぬからな…」 「………気難しい隼人の子だからな……」 「………音弥は隼人が苦手みたいだな……」 京香は感じた事を康太に伝えた 康太は予期していたが謂われてみると‥‥不安を感じない訳がなかった 「………音弥……隼人はダメか?」 「……近寄ろうともしない……」 「……そっか……多感な子だからな…」 「……琴音が中に入っているのだろ? 時々…びっくりする程に琴音で……泣けてくる…」 「………琴音が強すぎるのかな?」 「……それも溶け込んでなくなると想う」 「………何故?そう思う?」 「音弥は誰の子でもない 飛鳥井康太の子だからな」 京香の願いだった 康太は京香の頭を撫でた そして寝ている音弥を抱き上げソファーに座った 「音弥は偏食を直さねぇとな…」 康太が言うと榊原が 「無理矢理はダメですよ」 と予防線を張った 「無理矢理なんてやらねぇよ でも……食えるのが少なすぎるだろ?」 「………ですね…」 音弥の話をしてると、音弥はパチッと目を開けた そして康太に抱き着いた 「かぁちゃ……」 必死に抱き着いて来る……可愛い我が子たちだった 「おとたん…」 流生が音弥を撫でる 翔も太陽も大空も、音弥を撫でた 「夜にはかぁちゃ仕事だからな……」 「………○※△☆……」 音弥は鼻水を垂らしながら……何だか言っていた 康太は榊原に助けを求めた 「音弥……どうしました?」 榊原が音弥を抱き上げた 大空が「おとたん……ちゃみちぃ…ってたにょ」と通訳してやった 榊原は音弥を抱き締めた 「音弥……淋しいのですか?」 音弥はうん……と頷いた 「りゅーちゃもちゃみちぃ…」 康太に抱き付いて流生が言う 「かけゆも…ちゃみちぃ…」 「かにゃも、ちゃみちぃ」 翔も大空も淋しいと訴えた 康太は困った…… 淋しい想いをさせてるのは……解っていた でも……側にはいてやれなかった やらねばならぬ事があるから…… 康太は困った顔をして……泣きそうになっていた 慎一が流生を抱き上げた 「りゅー、オヤツ食べないのですか?」 話題を変えると流生は瞳を輝かせた 「おやちゅ…たべゆ…」 慎一に翔も訴えた 仲良し5兄弟は何時でも一緒だった 「かけゆも!」 「ちなも!」 「かにゃも」 「おとたんも」 瞳を輝かせオヤツを待っていた 「……慎一すまねぇ…」 「貴方は遣るべき事を優先すれば良いのです 子供達は淋しくても……大丈夫 貴方の子供ですから優しく強く育って行きます」 5人が並んでプリンを食べ始めた 流生が「かぁちゃ!」と自分の食べてるプリンを掬って康太に向ける 「流生が食べろ!」 「いらにゃい?」 「あぁ、流生が食べろ!」 お口をベタベタにして流生はプリンを食べていた 康太は我が子を見ていた 笑って 最高の笑顔で 我が子を見ていた 榊原はそんな康太と我が子を優しい瞳で見守っていた 「りゅーちゃ」 「かけゆ!」 流生と翔は何時も抱き合って、チュッとしていた 一生はそんな2人を離して 「かぁちゃととぅちゃの真似は後で!食え!」 と怒る 「かじゅ、きゃるちゅーむたりゃにゃい」 流生が偉そうに言うと、一生は流生の唇を摘まんだ 「そんな事を言うのは、この口かよ!」 「いにゃい!」 流生は痛い……とかぁちゃに訴えた 康太は一生の手を離して抱き上げた 「一生、流生を虐めるな…」 「んとによぉ!生意気な口ばっかし聞きやがるんだからよぉ!」 一生はボヤいた 一生のボヤきに榊原は 「……一生も口ばっかしですからね」 笑ってキツい一撃を放った 「……旦那……」 「何ですか?一生?」 ニコッと微笑まれて一生は……嫌な顔をした 「……かじゅ……ちらい……」 流生は泣いた すると温厚な大空が一生を蹴飛ばした 「りゅーちゃ!」 流生の前に立って護る 「かなちゃ」 「りゅーちゃ」 2人は抱き合って……チュッとキスしていた 「……旦那……子供の目の前でキスするの禁止な」 「………そんな事を言いますか?」 「…………言わねぇよ…」 一生はふて腐れた 榊原は笑って我が子を抱き締めた 「僕の可愛い子供達…」 榊原は優しい父親だった 「とぅちゃ、だいちゅき」 子供達が榊原に抱き着いた キャッキャと遊んでお腹が膨れると……… 5人は眠りに着いた 一生は流生を抱き上げ 「……口ばっかし達者になりやがって……」 と嬉しそうに……ボヤいた 榊原の家族も、飛鳥井の家族も…… 榊原と康太を暖かく見守っていた 真矢は大空を抱き上げた 「………本当に大きくなりましたね」 としみじみと答えた 兄弟の為に一生を蹴飛ばして護ろうとする 本当に良い子に育った 榊原は太陽を抱き上げた 「母さん、僕達の宝物です」 「………本当に大切にされて…」 真矢は涙ぐんだ

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