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第47話 撮影旅行 記録 ①

康太は我が子が眠ると自分達の借りてる部屋へと移った 水野と一色と撮影の準備を詰めて行く 詳細な絵コンテを水野に渡して場所と秒数 コマを決めてゆく そこへ長瀬匡哉が康太の部屋を訪ねて来た 慎一が部屋へと通した 「長瀬、悪かったな」 「北海道に来られて僕はラッキーでしたので、お構いなく」 長瀬は気にすると言ってソファーに座った 一生が長瀬にお茶を出した 「……真贋……悠斗に逢われますか……」 「………朝陽はどう言ってるよ?」 「………ひなちゃんは……わが子は手放したくない……と言っております…」 「……そろそろ……能力を発揮して来てるだろ?」 「………はい……あの子は……どんな力を持って産まれたのですか?」 「長瀬悠斗は姿なき者を見る…… 声なき声を聞く……そろそろ修行させねぇと…… 自分は人と違うと悩むだろう…… ちゃんと修行して己を保てば力をコントロール出来るだろう」 「………修行をせねば……ならないのですね」 「………より力の強いモノに取り込まれ…狂うかもな… 自我の崩壊……食われたモノの宿命だな……」 長瀬は……苦しそうに……胸を押さえた…… 「………妻に…逢って下さい……」 「良いぜ!説明はする 悠斗は飛鳥井康太が来ると言ってるだろ?」 「…………はい……」 「……おめぇの子供が何故力を持って生まれるのかも話しておく必要があるしな…… 明日、撮影が終わったら連れて来い」 「解りました ……僕の愛する妻を……見せたくはないのですが… 仕方ないですね」 長瀬が言うと榊原も 「………僕も愛する妻を…君に逢わせるのも嫌なんですが逢わせてます……少しくらい我慢して下さい」 と反論した 「……そう言いますか?」 「ええ……」 「僕の妻が一番可愛いので心配になるのです」 「………それは僕も同じです」 それを聞いた一色が 「副社長!俺も千秋が一番可愛いので誰にも見せたくないんです!」 と参戦した 長瀬は負けずに 「僕のひなちゃんはモテるんです」 と応戦 「僕の康太もモテます」 「俺の千秋もモテるんで困ってます 副社長、長瀬さん、俺の千秋が一番可愛いんですから!」 ギロッと榊原と長瀬の視線が飛んだ 「僕の康太が一番可愛いんです!」 「何を!僕のひなちゃんが一番可愛んです!」 バチバチっと熱い火花が飛び散る 収集は着かない…… 康太は榊原を止める訳にもいかず、長瀬の持って来た書類に目を通した 流石、一流企業に身を置いただけあって目の付け所が違った 「長瀬、これは?どう言う意味だ?」 康太が問い掛ける 「見ての通りですよ 空き部屋は……社員の愛引きの部屋と化してます 不倫……盛んですよね?」 「………空き部屋がそんなにあるのがおかしいだろ?」 「リニューアルがあるそうですよ? オーナーが変わるので、リニューアルオープンすると聞きました」 「……そうか……そう言う事か……」 「従業員がなってないので……それだけが残念でした…… 有名なホテルだから……期待していたのに……」 「従業員の名前と写真もあるのかよ?」 「当たり前でしょう? 貴方は、そこまで要求して僕をこのホテルに行かせたのでしょ?」 「最高だ、長瀬!」 「当たり前です!」 「長瀬、朝陽に逢わせてくれ……」 「………何時ですか?」 「明日、何時でも良い来てくれ 明日は撮影だかんな手が空いたら話が出来ると思う」 「解りました…… 貴方の伴侶……榊 清四郎の息子なんですね 何処かで見た顔だと思いました……」 「明日、撮影を見れば良い 中々、お目にかかれねぇぜ」 「宜しいのですか? 妻が真矢さんのファンなんです 和哉は榊原笙のファンなんです ですから物凄く喜びます 僕も惚気合い出来て楽しかったです この3人で飲みに出ませんか?」 長瀬の言い分に一色は 「良いですね! 惚気ならどれだけでも出て来ますからね!」 「僕の康太への愛も溢れてます 話せば尽きません……」 「楽しいです! こんな風に話が出来た事ないですからね」 長瀬は純粋に喜んだ 康太は「惚気3人衆…」と名付けた 楽しい時間を送っていると…… 榎並公章が直々に康太を呼びに来た ドアをノックされ、開けると公章は深々と頭を下げた 「貴方の申し付け通り一族の者を集めておきました…」 康太は立ち上がった 「なら行くとするか!」 康太は長瀬の調べて来た書類を持った 慎一が康太の後ろに控えると、榊原が康太の横に立った 一生と聡一郎と隼人も康太の後ろに控えて立っていた 「長瀬、一色、また明日な 今夜は部屋に戻るのは遅くなる」 「では俺達も失礼致します」 一色は水野と共に部屋を出て行った 康太は長瀬に「一緒に来るか?」と問い掛けた 「貴方を知る機会ですね……宜しいですか?」 「おう!オレと共に来い!」 康太はそう言い歩き出した 公章が案内する為に少し先を歩く 康太の髪は風に靡いていた 「真贋、広間に集めてあります」 「親戚だけ?」 「はい!公家の親戚に御座います」 「なら明日、後で渡す書類の奴をオレの前に連れて来い!」 「承知しました! 真贋……本当にお世話になります」 「礼は要らねぇよ 食えねぇもんは受け取らねぇ主義なんだ」 康太はそう言ったきり黙った 公章は広間の扉を開くと康太と榊原、長瀬を先に通した そして榎並公章が入ると、ドアを閉めて鍵を掛けた 康太は中央の席にドカッと座ると足を組んだ テーブルに肘を着いて、唇の端を吊り上げて皮肉に笑っていた 榊原がその横に座って親族を見据えた 「公家グランドパレスホテルの買収は頓挫したぜ!」 親族は……ざわめいた 「お前は誰だ! 部外者が偉そうに口を挟むな!」 買収を進めていたであろう……親族が激怒する 康太に背筋も凍る……瞳を向けられ…… 公家の親族は……何者なのだろう…と想った 公家の親族の中で一番年長者が立ち上がった 「公家頼継に御座います 失礼ですが……貴方様は?」 「オレか?オレの名を聞いたら後には引けねぇぜ?」 「………後に引く気など毛頭ない」 「オレの名は、飛鳥井康太 現 飛鳥井家 真贋だ」 会場がざわめいた 「………飛鳥井家真贋が何故……公家の家の騒ぎに口を出されるのか……お聞かせ下され」 「公章の父、榎並公伸はオレに尽くしてくれた 榎並親子はオレにとって大切な存在 公章が本懐目前に倒れるのを阻止する為にオレは、この地に下り立った!」 「……………少しだけ……恨み言を言わせて下され…」 「聞きたくねぇ! 公家の終焉が何故解らぬ? 公家杠が終焉に導き……終わらせるつもりだった 違うか?」 長右衛門はカクンッと崩れ落ちた 「公家の一族は総て撤退して貰う! 買収は佐藤栄作と話し合って振り出しに戻った! 話が拗れれば佐藤栄作は仲介に出ても良いと申し出てくれている このホテルの名前は変える 公家の名前は一切出さない! 名実共に公家は去れ! また公家の買収に荷担した社員、従業員は解雇とする! これは決定事項だ! おめぇらが飲もうが飲もまいが関係ねぇ! 総ては決められし理なり! もう何一つ覆る事はねぇ!」 康太は宣言した 公家の一族は…… 「お前にそんな権限などない!」と叫んだ 「お前の方こそ、能書き垂れる権限があるのかよ?」 康太は揶揄して言う 「このホテルの筆頭株主は飛鳥井康太じゃなかったけ? 榎並公伸は……何時か……公家の家の者が…ハイエナの様にホテルを売り飛ばすのを見越して勝手に出来ねぇように託されてるんだよ! お前等が勝手にホテルを売り飛ばしたら、飛鳥井康太から告訴されんぞ! 筆頭株主を無視して出来るもんじゃねぇかんな! オレが勝算もなく、ノコノコと来る訳ねぇんだよ 公家の一族は去れ! お前等の所有するモノは一切ない! 公家杠が何故、公家の一族ではなく榎並公伸にホテルを託したか解るか? 公家杠は誰よりもホテルを愛してたんだよ 自分が亡き後……売り飛ばされるのも視野に入れていた 榎並公伸は、息子を苦しめるのが解っていた だから絶対的存在であるオレに託して……逝ったんだ 榎並公伸の遺言でもあるかんな このホテルは好き勝手にはさせねぇ! やるなら命を賭けろよ! 何時でも買ってやるからよぉ!」 康太は言い捨てた 公章は黙って…… それを見ていた…… 康太が筆頭株主なのは知っていた 公伸が何時も口にしていたから…… 『骨の髄までしゃぶり尽くす……愚かな一族だからな……あの方に……お願いした』 父は……公伸はそう言って……この世を去った 愛する妻が……遺したホテルを…… 誰よりも愛して……遺そうとした そんな父の意志を継いで、公章は社長になり受け継いで逝こうとした 「法的に来るならな、何時でも来てくれ 今後公家の介入は一切許しはしない! さぁ、帰れ!邪魔だ!」 康太は言い放った 「こんな事して……ただで済むと想うなよ!」 捨て台詞が吐かれた 康太はニャッと嗤い…… 「ただで済まねぇのは、おめぇらの方だぜ ホテルに損害を与えたからな、今引かねば損害賠償請求をする! 億と言う損害賠償請求をしてやる! それでも良いならな遺って闘え! 証拠ならな在るんだよ そして総べての公家の親族がやった事だと、佐藤栄作も証言してくれるからな! とことん遣ろうぜ!」 公家の一族にとったら最悪のシナリオだった 引くしかなかった 「公章、公家の方々を排除して社員を一同に集めろ!」 康太はもう終わったとばかりに…… 書類に目を通した 「公章、解雇通告、作ってくれた?」 「………はい!貴方に申されて直ぐに取りかかりました 総て用意してあります!」 「半分の社員は解雇通告する 瓜生健一郎が道内のホテルから応援を回してくれる 解雇通告を出す社員に変わって、まともな社員を補充してもらい、その間に社員教育しろ!」 「はい!総て……貴方の思いのままに……」 公章は深々と頭を下げた 公家の一族を会議室から出して、社員が続々と会議室に入れられる 何が起きたのか…… 社員は……一番前の席で嗤っている康太に恐怖を覚えていた 「公章、応援のスタッフは来たのかよ?」 「はい!ですからこうして今日、出勤している社員は揃っております」 「なら名前を呼べ! いねぇ奴は出勤したら事情を話せ」 「解りました では、名前を呼ばれた方は、此方の方に来て下さい」 公章はそう言い、康太に頭を下げると 姿勢を正し、名前を呼び上げた 半分以上の社員が……ふるいに掛けられた 名前を呼ばれた社員に公章は書類を渡した 「お疲れ様でした 貴方達は本日付で解雇とさせて戴きました 明日から会社には来なくても良いです」 と、公章は書類を渡し終えると言い放った 社員は唖然とした 康太は敢えてスケープゴートにする為に 名前を呼び、解雇通告を渡させた 会社は全部知ってるんだぞ……と言う為に…… やはり解雇通告に不服を言う者は出て来る 裁判にするぞ 脅し文句とばかりに言う奴がいる 康太はそいつら全員に解雇の内容を写真付きで突き付けた 「解雇通告の不服な奴、解雇理由を教えてやるから来い!」 先陣切って反撃に来た奴に 「ホテルの空き部屋で不倫相手とセックス三昧 ほれ、これは解雇理由になるよな? 勤務時間内だもんな!」 康太はそう言いセックスしてる写真をヒラヒラと見せ付けて、そう言った 榊原は「社員の本質が欠如した社員など不要!」と一蹴した 「飛鳥井建設で、この様な行いをしたら数時間後には解雇通告が渡されてます! 貴方達はトップを甘く見過ぎたのです! 転職なさった暁には、会社に尽くされる事を進言させて戴きます!」 榊原は付けいらせる隙も与えず斬り捨ててゆく 「ほれ、次!出て来いよ!」 誰も………康太の前に出て来る奴はいなかった 「公章、これを解雇する奴に渡せ!」 公章は書類を貰い受け、一人ずつ手渡した 「その写真はコピーだ 裁判にするなら何時でもどうぞ! だが、その写真や勤務実績を出されると勝敗はついてるけどな! オレの弁護士は負け戦はしねぇ! 裁判になれば、もっと決定的に家庭の調査とか入る それでも戦いたい奴は受け立つ所存だ! 異存がないなら立ち去れ!」 解雇通告を受けた社員は…… 渡された決定的な写真に……ぐうの音も出なかった 力なく項垂れ…… 会議室を出て行った 「残った社員の方 このホテルは生まれ変わる 今までのような働きをしてたら、貴方達は応援の社員達から弾き出されるでしょう! 残るなら本気を見せて下さい そうでないなら、退職をお勧め致します 以上、仕事に戻られて構いません!」 康太は要件は終わったとばかりに斬り捨てた 「公章、明日は早めに出勤しろ! 明日から応援に入ってくれるスタッフがいる 向こうはプロだ! プロ意識のあるスタッフばかりだ 足手纏いになるなら辞めて貰え それがホテルの存続にも繋がる! 気の緩みが出れば接客の手薄に繋がる 自分達はお客様をもてなす! そう言う気心と信念がなくば、邪魔だ解雇しろ!」 「御意!本当に真贋には何から何までお世話になりました!」 「明日から撮影に入る このホテルは【杠の里グランドホテル】に名称を変えろ!」 「はい!直ぐに変えさせて戴きます」 「それだけだ! 警備員をオレのフロアに強化してくれ! 逆恨みした社員がオレの家族に危害を加えようとしてる! オレの家族に手を出せば……生かしちゃいねぇぜ!」 身も凍る程の瞳を向けられ…… 公章は息を飲んだ 「貴方の家族には指一本!触れさせは致しません」 「なら、話はそれだけだ! オレ等は部屋に帰る 後はお前の手腕だ!」 康太はそう言い立ち上がった 康太が立ち上がると榊原がその横に控える 二人は……一対の存在だった 公章は深々と頭を下げた 社員も深々と頭を下げて康太を見送った 康太は会議室を出ると長瀬に 「………悪かったな……」 と声を掛けた 「いいえ!息子が飛鳥井に還るなら…… 僕は今後も飛鳥井康太の為に動こうと想っています それが息子を……護る為に繋がる……」 「また明日な…… 明日は撮影だ…」 「はい!家族で伺わせて戴きます」 康太は長瀬の肩を叩くと…… 家族のいるフロアまで上って行った 長瀬はそれを見届けて……妻と子供の待ってる部屋へと向かった 康太は榊原に抱き着いた エレベーターの中は誰もいなかったから…… 榊原は康太を抱き締めた 最上階に到着して、エレベーターから下りると 先に帰った慎一が待っていた 「慎一、どうしたよ?」 「………主人の帰りを待つのは当たり前です」 そう言い慎一は康太を抱き締めた 「お腹減ってませんか?」 康太は何かをやらねばならない時、極端に食が落ちる それを危惧して慎一は待っていたのだ 「少し腹減ったな……」 「そう想って部屋に用意してあります!」 慎一は主にそう告げた 貴方だけを主に…… そう想い貴方の奇蹟を追って来た 貴方に仕えれる人生は楽ではない 楽ではないが……貴方から目が離せない 目を離した瞬間 貴方は……皆を置いて逝ってしまいそうだから…… 「消化の良い物とプリンを用意しました 伊織も消化の良い物です」 榊原の体調も最近は管理していた 榊原は自分の事には無頓着だから…… 「慎一、ご苦労様でしたね」 「伊織、皆……待ってます……」 夜もかなり更けてるのに? 榊原は慎一を見た 「………行けば解ります」 そう言い慎一は康太と榊原を促した 「康太、水野が撮りたくなったら……と言ってカメラを置いて行きました フィルムも入ってます」 慎一はそう言い康太達を部屋へと招き入れた 部屋には…… 「かぁちゃ!」 駆け寄って来る流生もいた 「………おめぇ……ねんねの時間だろ?」 康太は流生を抱き上げた 「とぅちゃ」 翔が榊原に手を伸ばして来た 「翔……眠くないんですか?」 「とぅちゃ、ちゅき」 翔は笑って榊原にチュッとした 榊原は嬉しくて翔を抱き締めた そしてソファーへと座った 康太と榊原の部屋には飛鳥井の家族も、榊原の家族も揃っていた 「音弥、かな、ひな……おめぇらも起きてたのかよ? オムツしてるのは寝なきゃダメじゃねぇかよ!」 康太はボヤいた 康太が流生を抱っこしたまま座ると、太陽も大空も康太に抱き着いた 音弥も頑張って康太に手を伸ばした 康太は全員膝の上に乗せて抱き締めた 「清四郎さん楽しんでますか?」 「康太、楽しいです こんなに楽しいのは久しぶりです」 清四郎は本当に楽しそうに謂った 「それは良かった 真矢さんは?」 「康太、楽しんでますよ 康太の子供は本当にとぅちゃとかぁちゃが好きなんですね とぅちゃとかぁちゃを待って良い子にしてます 淋しいのに……健気に堪えて……」 真矢は涙を拭った 「淋しい想いもさせてます……」 「それでも……子供達はとぅちゃとかぁちゃを待つのですね 本当に良い子達に育ちました 貴方の子供です……本当に良いお母さんとお父さんになりましたね」 子供を抱き締める榊原の顔は…… 何処から見ても父親だった 父親の愛で子供達を精一杯、不器用ながらも育てている 真矢はそれが嬉しかった…… 「とぅちゃ」 太陽が榊原によじ登る 榊原は太陽を抱き上げた 「ひな、何ですか?」 「とぅちゃ、あげゆ」 そう言い太陽は榊原に、しわしわになったお菓子を渡した とぅちゃにあげる為に太陽はポケットに入れて、取っておいたのだ 甘いのが苦手な榊原の為に……塩煎餅をポケットに入れていたのだ 榊原は太陽から貰ったお菓子を食べた 太陽をギュッと抱き締め……榊原は目頭を押さえた 煎餅を見つけて、とぅちゃにあげる為にポケットにしまっておいた煎餅だった 「とぅちゃ、おぃちぃ?」 「ひな……美味しいですよ」 榊原は嬉しそうだった 人の親になり……榊原は強くなった 優しくなった 昔では考えられない……人間味が出て来た 親になればこそ……榊原を、変えたのだ 大空が康太に抱き着いて……眠りに落ちた 「かな……風邪ひくだろうが……」 ギュッと大空を抱き締めた 流生は相変わらず、ポッケがプクッと膨れていた 康太の上で暴れて逆さになったり……流生はご機嫌だった 流生のポッケから……ポロッと蒼い塊が落ちた 流生はポッケを探り……泣いた 「……かぁちゃ……ないの……」 康太は足元を探った 「蒼い球見なかったか?」 康太が尋ねると一生が見付けて、康太に渡した 「りゅー、落とすなら首から吊すぞ」 「ちょれ……いや…」 流生は泣いた 康太は流生のポッケに蒼い玉を入れてやった 「ほれ、戻ったぞ!」 流生はポッケを確かめた ポンッポンッと叩いて確かめた そしてニコッと笑った 一生は「………それ……」と口にした 「とぅちゃ、とぅちゃ」 流生は榊原を見て笑った 「………甘い父なので……」 子供が持つには高価すぎるモノを榊原は、流生がほしがったから……と与えた 「………鉱石……入ってますがな……」 「康太と同じ事を言いますね」 榊原は苦笑した 真矢は流生に 「りゅーちゃん、ばぁばに見せて」 と言い手を出した 流生はポッケから蒼い玉を取り出すと真矢の手に乗せた 「とぅちゃ!」 くれたの……言えないからとぅちゃを連発する 康太は真矢に 「それは流生の宝ものなんだ!」と告げた 蒼い玉は鉱石がキラキラと光っていた とても綺麗な蒼に鉱石がキラキラと光っていた かなりの値段なのは伺えれた 「伊織が買ったのですか?」 「ええ。奥さんに何かをプレゼントしようと入った店で、流生が見付けました そして……ほちぃ……と言うので買いました 奥さんはトイレに行ってました……」 「……まぁ……甘い父親だこと……」 「……自覚してます」 まさか………榊原が甘い父親になろうとは…… 真矢は想像もしていなかった 真矢は流生に蒼い玉を返した 流生はポッケに入れて貰い、ポッケを確かめた 入っていると流生は安心した顔をして笑った 康太は慎一に用意してもらった食事を食べ始めた 音弥が口を開ける 康太は柔らかそうなおかずを音弥の口に入れた ガツガツ食事を始めるが、音弥が口を開けると ポイッと口に放り込んでいた 「おとたん……ポンポン」 満腹になるとお腹を叩いて……眠そうだった 翔は康太のお茶を飲んでいた 「にゅくいね……」 この渋い台詞は欠かさない 「……翔……オレのお茶……」 康太が言うと榊原が自分のお茶を康太に差し出した 「………この緑茶好き……誰に似たんだよ…」 皆……一斉に康太を見た 康太もズズッと緑茶を飲んでいた 翔もズズッと緑茶を飲んでいた 何処から見ても……親子だった 「……あんだよ?」 笙は「そうして並ぶと、何処から見ても親子ですよ」と笑った 康太と翔は顔を見合わせた 「お茶、美味しいか?」 翔は頷き「おちちゅくね」と言った 全員大爆笑である 源右衛門はあまりの渋さに…… 「………此奴は年寄りか……」 と零す程だった 皆笑っていた 康太はカメラを回した 「カメラの調子を見とかねぇとな」 と言い調整するフリして、家族を撮っていた 夜更けまで家族の笑いが響いていた 翌朝、康太は撮影に入った 朝からホテルは活気が戻ってスタッフがテキパキと動いていた 康太も朝から忙しくて動き回っていた 「水野!行くぞ!」 「はい!康太さん!」 水野は慣れたものでライトを照らす 今までの撮影に水野はスタッフとして入っていた 水野はライトを照らした 清四郎、真矢、笙は寛いで笑っていた 康太の足元に子供達が纏わり付く 榊原はハラハラとして、清四郎達と一緒にいた 「りゅー、とぅちゃの所に行って来いよ!」 康太が言うと流生は榊原目掛けて走った 榊原の顔が笑顔になった 清四郎や真矢、笙も笑っていた 流生は、とぅちゃ……ではなく 「ばぁば!」と駆け寄ったから真矢は大喜びだった 「流生!ばぁばよ!」 真矢が流生を抱き上げた 太陽と大空も駆けて行く 「じぃじ!」 呼ばれると清四郎は、もうデレデレだった 自然な家族の姿が、そこに在った 音弥が遅れて泣いて行くと笙が、音弥を抱き上げた 「音弥大丈夫だ!」 笙は音弥を抱き上げて榊原へ渡した 「音弥、大丈夫です」 「とぅちゃ……」 音弥が抱き着く 「はい!OK! 次はロビーから日本庭園へ行きます」 康太が言うと水野が一色と共に機材の移動を始めた ホテルの中をCM撮影してたり 榊 清四郎や榊原真矢、笙親子の撮影と言うだけあって…… 旅行客は遠巻きに、それを眺めていた そして榊 清四郎の次男 榊原伊織に若い女の子は目が行っていた 『…あの人、格好良くない?』 と言う声が聞こえた 『ホテルの従業員に聞いたけど、榊清四郎の家族なんだって!』 『芸能人?デビューでもするのかしら?』 若い女の子達は、もっぱら榊原の事で夢中になっていた 日本庭園でお茶が飲める様にセットした そこに榊原の家族は座っていた 日本庭園には長瀬匡哉の家族も顔を出していた 清四郎も真矢は撮影を忘れて話をしていた 笙と榊原も、その話に加わり 撮影が始まるのを待つ 真矢は笑顔だった 清四郎も笑顔だった 笙は自然な感じで 榊原はやはり……この家族の子供だと……… こうして並ぶと解る 撮影の周りは人集りが出来る 慎一は勝手に写メを撮らない様に見張っていた 中庭の撮影は榊原達が知らないうちに終了していた 「中庭の撮影は終わりました! 次は宴会場に移ります」 康太が言うと機材を片づけて、水野と一色は先に移動した 康太は長瀬に近付いた 「ついて来いよ」 そう言い慎一に託した 榊原は撮影を終えて康太の傍に行こうとすると、若い女の子達に囲まれた 「サイン下さい」だの 「一緒に写メを撮って下さい」と言われていた 榊原は冷ややかに笑って 「僕は芸能人ではないので、そう言うのはご遠慮願います!」 と言い冷たく背を向けた 「康太、腹減ったのだ!」 隼人が康太を追って日本庭園に来ると、榊原に群がっていた女性達は隼人に群がった 聡一郎が前に出て 「一条隼人はオフ中につき、ご遠慮願います」 と一蹴した ホテルの関係者が出て来て、騒ぐ見物人を排除してくれた 「隼人、少し待てるか? 待てねぇなら誰かと食いに行け」 康太に言われて隼人は拗ねた 「………誰かじゃ嫌なのだ……」 隼人の足元に音弥が纏わり付りき……隼人は音弥を抱き上げた 「ぎゃまん、ちゅるのだ」 音弥は隼人に我慢するのだ……と告げた 「……音弥は……冷たいのだ……」 隼人がボヤくと……音弥は隼人の頭を撫でた 「ひゃやと」 「音弥……」 康太は2人が仲良くしてるのを笑顔で見ていた 移動中、家族や仲間や子供を見る すると北斗が大分遅れて慎一に連れられていた 「北斗、どうしたよ?」 「……康太ちゃん……足が痛いの…」 康太は慎一を見た 「………北斗はオペの時期が迫ってるのかも知れませんね……」 「………ずっと痛がってるのか?」 「……学校に行き始めて…… 皆と同じ様に動けないので無理してるのもあります」 「………骨が歪んでるんだよな……」 久遠が処置して…… 飛鳥井に貰って来た頃よりは動ける様にはなっていた だが……動きたい盛りの小学一年生…… 人と同じように動けば……確実に痛みに襲われていた 「………横浜に帰ったら久遠と相談するしかねぇか」 「……そうですね…… 一生が気にして付きっ切りでした 過保護過ぎなので……少し離した程です」 「北斗、帰ったら病院に行こうな」 北斗は頷いた 長瀬は康太に「その子は何処か悪いのですか?」と尋ねた 康太は北斗の前で話すのは避けた 「……後でな、この子のいない時にな……」 その言葉に……自分は不用意な事を言ったのだと……気付いた 子供は……感受性が強いのだ

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