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第50話 暗雲

北海道撮影旅行から還って来て 日常は戻った 小鳥遊の見舞いに逝くと、小鳥遊はこの世の終わりの様な顔をしていた 康太に抱き着き号泣した 榊原は久遠を呼び寄せ病状を説明させ、絶対に完治する約束をさせた それ以外は何事もなく穏やかな日々を送っていた 季節は梅雨を過ぎて夏へと入ろうとしていた 長梅雨に………じとじとと……鬱陶しい梅雨は抜けていなかった 「カビ生えるぅ…… 」 康太は毎日雨ばかりで……呟いた 榊原は笑って康太に口吻た 「カビ生えちゃうんですか?」 「おう!こうもジドジト雨だとよぉ…… もぉなカビだらけになりそうだ……」 「僕が何時も磨いてるのに?」 ギシッと音を立てて……ソファーが軋んだ 「……伊織……」 「何ですか?」 康太のネクタイに手を掛け……体重を乗せた 流石と……此処まで来ると康太は焦った 「……伊織……止め……」 「……君と僕の2人しかいません……」 たから気にするな……と榊原は言った 「……ちょっ……止め!」 康太は榊原を押し退けて……立ち上がった 榊原は康太に「……ケチ……」と投げ掛けた ケチ…… 「……伊織、此処……何処か解ってる?」 「副社長室ですね! ノックもせずにドアを開ける不粋な奴などいませんよ?」 「……不粋な奴がいなくても……オレは此処じゃ嫌だ……」 「なら家に帰りますか?」 榊原はしれっと言った 「……伊織……仕事中……」 「……僕は君より大切なモノなんてないです」 榊原はキッパリと言った 康太は…何も言えなくなった 「康太…」 榊原は康太を押し倒し…口吻た ヤバい…… 副社長室なのに…… 流されそうな勢いに…… 困ってると康太の携帯電話が鳴り響いた 康太は榊原を押し返し携帯に出た 「オレだ!」 康太は何やら話して……… 「伊織、オレ少し出掛けて来るわ」と言い立ち上がった 「僕も……」 行きましょうか…… と言う前に…… 康太は副社長室を出て行った 榊原は康太の出て行った部屋を見つめて…… ため息を着いた 解ってる…… 副社長室なんて……何時、誰がノックするか解らない場所で…… 康太は犯りたくないのは…… 榊原は自嘲的に笑いを零した 榊原は仕事を片付け、社長室へと出向いた ノックをすると秘書の榮倉がドアを開けた 「社長、副社長です」 榮倉がそう言うと瑛太は立ち上がった 「伊織、どうしました?」 「大阪に行きます」 「…大阪支店の不祥事……君が出て証拠を掴みますか?」 瑛太は榊原の覚悟を知りながらも問い掛けた 「大阪支店の人間は僕の顔もそんなに知りません 大阪支店に入って偵察して来ようと想っています」 「……何時立ちますか?」 「……今すぐに立ちます」 「……え?」 「では義兄さん、後はお願いします」 榊原はそれだけ言って社長室を出て行こうとした 「康太は?……康太には言いましたか?」 榊原は何も言わずに……社長室を出て行った 会社を後にした榊原は飛鳥井の家に戻って着替えを持って家を出た 康太の顔を見れば…… 行けなくなるのは目に見えていた 康太と離れたくないのだ…… 片時も離れたくない ……そんな事……出来る筈などないって解ってるのに…… 榊原はベンツを飛鳥井の家の駐車場に置いて、タクシーを呼んでそれで横浜駅に向かった 携帯で大阪のホテルを予約する 何日で帰れるかな? ………康太……君と離れなくないです…… 君は……僕の不在を……悲しがってくれますか? ……それとも……清々して…… 榊原は首をふった…… 思考がマイナスに行くのは悪い癖だ…… 嫌われたくない…… だけど……時々……康太の言う事も聞かないで…… 強引になってしまう…… 康太は困った顔してるのに…… 榊原は自嘲した…… 少し………頭を冷やしましょう…… でなければ…… 康太を雁字搦めにしてしまう…… 榊原は新横浜に着くと、新大阪行きの新幹線に乗り込んだ 康太…… 君のいない世界は…… 光がない……モノクロの世界になる 君がいないだけで……僕は…… 息をするとも苦しくなります…… 榊原は康太を断ち切る様に…… 動き出した 康太が副社長室に戻って来ると…… 榊原の姿はなかった 「……え?伊織…」 康太は机の下や引き出しの中まで…… 榊原を探した それて……見付からないと…… 瑛太の部屋を訪ねた 「………瑛兄…」 康太は涙ぐんでいた 「………伊織の事ですか?」 「何処へ行ったんだよ!」 「大阪です」 「…………え?大阪?」 「不穏な動きを伊織は掴んでいました で、それを確かめる為に大阪へ行きました」 「あんで……一人で……」 「確実に尻尾を掴む為でしょ? 君は大阪へ行ってはなりませんよ!」 「あんでだよ!」 「伊織の苦労が無駄になります」 康太は瑛太を睨み付けて…… 社長室を後にした 早足で飛鳥井の家へと帰る 朝、榊原も一緒に出勤して来たから、康太は歩いて飛鳥井に行くしかなかった 飛鳥井の家のドアを開けて、3階の寝室に行く そこには…… 榊原の気配はなかった クローゼットを開けると…… 確実に…… 榊原のスーツは減っていた 康太は荷造り始めた 栗田一夫に電話を入れた 「一夫?」 『康太……どうしました?』 「頼みがあんだよ?」 『何でも聞いてあげます』 「なら今直ぐに飛鳥井に来いよ そしてオレを大阪に連れて行け!」 『解りました!今すぐに!』 康太は弥勒を呼び出した 「弥勒……オレじゃねぇ存在にしてくれよ」 『康太の気配を消すのか? それとも全く違う存在にすれば良いのか?』 「全く違う存在にしてくれ! 外見も……変えるからよぉ!」 『承知した!』 康太の前に弥勒が下り立ち、呪文を唱えた 康太は気配を消して別人になり大阪に行くつもりだった 栗田が康太を迎えに来た時、栗田には康太だと解らなかった 「康太ですか?」 「オレ以外におめぇを呼びつけられると想っているのかよ?」 飛鳥井康太の駒である栗田なれば解る台詞だった 「俺の主に間違いないです」 「ならばオレを連れて行け!」 康太は栗田と共に…… 飛鳥井の家から消えた 夜になっても帰って来ない二人に…… 一生は慌てた 康太に電話をすると 「よぉ!一生、ナイスタイミングだ! オレの為に動いてくれるってか?」 『……あたりめぇじゃねぇかよ!』 「なら大阪に来いよ 命に連絡を取って高校生の制服を用意してくれって頼んでおいてくれ」 『あいよ!所で……旦那も一緒なのかよ?』 「今回は伊織が消えたんだよ」 『旦那が?』 「オレを厄介事に巻き込みたくなくて…… 会社から姿を消した…… オレを置いてきぼりにした……」 康太は哀しそうに……そう言った 一生は『今すぐに支度して行く』と答えた 「絶対に飛鳥井建設の奴に気付かれるな!」 『了解!』 一生は電話を切った そして命に連絡をつけ高校生の制服を頼むと、大阪に行く準備をした 途中、慎一に見つかり……一緒に行く事となったが…… 二人して大阪へと向かった 康太は大阪に到着すると 「一夫、美容院に行く、何処か探してくれ! その間に一夫は命の処へ向かって高校生の制服を貰って来てくれ 途中で一生と慎一を連れて 来てくれ」 康太は栗田に百目鬼命の父親がやってる店の住所を渡した 栗田はそれを受け取り、携帯を駆使して美容院を見付けると康太を美容院に預け 百目鬼命の父親の店へと向かった 途中で一生と連絡を取り、大阪に着いたら連絡を貰う算段を取った 命の父親の店へと向かって、命に高校生の制服を渡して貰った 店に入り百目鬼命に制服の件を切り出す 「………本当に突然で済みませんでした」 栗田が謝ると命は笑って 「康太さんは何時も突然ですから!」と気にするなと言ってくれた 「俺も飛鳥井建設でバイト中やから、明日会社で! と言っておいてください!」 「解りました」 「俺の友達にも康太さんは同級生と言う事にしてあります」 「助かります」 栗田は命にお礼を言った 「大阪に康太さんの情報屋……来てるやろ?」 「………それは知りません…… 私は康太の駒ですが……他の駒の事は知りません…」 「そっか……康太さんの情報屋やと思ったんやけどな…」 「誰?」 「東京でかなり有名なホスト 隆二、省吾と俊作……と言うホストなんやけどな 大阪に来てるんや……」 「観光かな……」 「………だけやないと想う……」 「勘繰るのはよそう……では制服、借りて行きます」 命は黙った 栗田は美容院へ向かった 康太の髪は高校時代の時の様に綺麗な茶髪になっていた 「一夫、ホテルに戻ろうぜ」 支払いを済ませて康太と栗田はホテルに戻った ホテルの部屋で栗田は命が言ってた事を康太に伝えた 「………ビンゴ……なのですか?」 「さてな!んな事は知る必要ねぇかんな! それよりも一生を連れて来て、明日オレを会社に連れて行けよ」 「解ってます 大阪の知人に頼まれたと本社にいた奴に頼むつもりです」 栗田の携帯がけたたましく鳴り響き、栗田は電話に出た 電話の相手は一生だった 一生にホテルの名を告げると、自力で行けると告げられ電話は切った 康太の胸ポケットの携帯がブルブル震えた 康太は電話に出た 栗田は部屋を出て行った 一生達が入って来ると……バレてしまうから…… 『康太……』 榊原は康太の名前を呼んだ 「…………」 康太は黙っていた 『康太……怒ってるの?』 「………怒ってねぇし……」 『康太……愛してます…』 「………」 『康太……何で言ってくれないんですか?」 「愛してるは、起きてる時に顔を見て言えって謂われてるかんな!」 『…………っ!……』 「またな、伊織」 『……あ!康太待って……』 康太は電話を切った 電源まで落として…… もう携帯に出る事はなかった 栗田が部屋を覗いた 「一生達来た?」 「ええ、大丈夫ですか?」 「おう!連れて来てくれよ」 一生と慎一が部屋に入って来ると、慎一の携帯が震えた 電話に出ると榊原からだった 「伊織、どうしました?」 『康太が掴まりません…』 「康太なら俺の横でプリン食べてます 電話は充電が切れたのです 何か用ですか?」 『………いいえ……康太がいるなら良いです……』 榊原はそう言い電話を切った 康太は「PC持って来てくれた?」と問い掛けた 慎一がバッグの中からPCを取り出した 「一生、命と共に動いてくれ」 「あいよ!」 「慎一、伊織対策を頼むな…」 「解ってます!」 一生はツインのベッドを見て…… 「………男四人で……ツインはキツくねぇ?」 と問い掛けた 「一生はソファーで寝ろよ」 「………慎一は?」 「オレは慎一と寝るからよぉ!」 「………ズルい……」 「なら順番な」 一生は了解した 「明日から大変だぜ!寝るかよ?」 康太はさっさとベッドに入って眠りに落ちた 慎一は康太の眠りを守るように眠り 一生はソファーで、栗田はベッドで眠った 翌朝、早く起きた康太は洗面所にいた 携帯を見ると…… 榊原から電話が入っていた 康太は榊原に電話を掛けた 「伊織……おはよう」 『………康太……君を抱きたいです』 「仕事でオレの前から消えたんだろ? なら完遂して来いよ!」 『…………康太……君の側から離れるんじゃなかった… でも君を巻き込みたくはなかった……』 「伊織が帰って来るまで待ってるかんな」 『……康太……』 榊原の声は震えていた 『………康太……絶対に君の傍に還ります 待っていて下さい…』 「おう!待ってるかんな! 今、オレが伊織の代わりをしてるからな 電話に出られない時もあるから……」 「……解りました……」 「慎一も今馬が出産ラッシュだ 一生と慎一は掴まらない時も出て来るからな」 『………解ってます……』 榊原は愛してます……と言い電話を切った 電話を切ると康太は高校の制服に身を包んだ 「一夫、テスト休みだかんなバイトしたいと紹介してくれ」 「解りました!行きますか?」 「おう!それが終わったら横浜に帰って良いかんな!」 「………大丈夫ですか?」 「おう!バイトをコネで入らせてくれれば、一夫の役割は終わりだ」 「解りました、バイトを紹介したら還ります」 「一夫、助かった」 「君の役に立てて良かったです」 栗田は康太を抱き締めて…… 飛鳥井建設へ向かった 栗田は本社にいた同僚に康太を頼んで、飛鳥井建設の大阪支社を後にした 「君は他のバイト達とコピーや書類作成を手伝ってくれ」 「解りました!」 「あ!名前を聞いてなかったね?」 「オレは田中太郎と言います!」 「じゃ頼むね田中君」 「はい!」 康太は制服のまま他のバイト達と顔を合わせた ぱっと見、飛鳥井康太には、見えなかった 命は………本当に……康太?と想う程だった 他のバイト達とコピーや書類作成を手伝って あっちこっちの部署の掃除をした 榊原は自ら辞令を出して大阪支社に転勤した社員になりすました 分厚い眼鏡をして、冴えない男になった 経理に回されて……雑用をやらされた 「あの、佐藤公平と言います あの……ヨロシクお願いします」 冴えない男の言葉を聞く……社員はいなかった 上司から、どうでも良い仕事を任されてる その部署に……地元の高校生のバイトがやって来る 榊原はそのバイトの一人に……心を奪われていた 一目見て……目が離せなくなった 康太不足……なのだ その子が……康太に見えた…… 似ても似つかぬ姿なのに…… 「………あの……田中くん……」 「何ですか?オレ忙しいんです 口説くなら仕事終わってからにしてください」   ………口説く…… 冗談じゃない 康太しか要らないのに…… 榊原が黙ると……康太は仕事をささっと片付けて部署から出て行った 榊原は大阪支社の中をあっちこっち調べて歩いた 尻尾を掴まないと……帰れない…… 愛する康太にも……逢えない 尻尾を掴む為に入った会社の一日目が…… 終わろうとしていた 榊原は康太に電話をしようとして……辞めた 声を聞けば逢いたくなるから…… メールを入れようとして…… それも辞めた メールが返って来れば…… 逢いたくなるから 康太… 康太…… 康太…… 君に逢いたい 君に逢わねば……狂ってしまいます 榊原はお酒を飲み…… 酔い潰れて眠る事にした 「………これじゃあ……青龍じゃないですか……」 炎帝を想って…… 酔い潰れて眠った…… あの頃と…… 変わっていなかった 榊原は気絶する様に……眠りについた 朝起きると……康太のいない現実に打ちのめされる 榊原は会社に行く支度をした 早く尻尾を掴まないと…… 焦る心が榊原を追い詰める 冷静になる……? 冷静になる所か…… 冷静さを欠いて行く…… 榊原は自嘲した 会社に出て、尻尾を掴もうとする 夜遅くまで残って…… PCを叩いて…… 調べ物をする 何も出て来ない…… そのうち噂が広がる ダサい男が…… 怪しい? そんな疑念を抱かれるのに…… そんなに時間は要らなかった 「あの、邪魔なんですけど?」 榊原が振り返ると……田中太郎が立っていた 「……あ……ごめんね……」 榊原は慌ててコピーの前から退いた 「……田中くん…」 「何ですか?」 「………いえ……済みませんでした…」 榊原はそう言い……田中に背を向けた 康太の面影を求めてしまう…… 違うのに…… 榊原は田中を見ないようにした 康太は各部署の仕事を片付けて、部署や会社の雰囲気を計る この会社は……バイトは人として扱って貰えなかった 中途入社の社員や転勤した社員には…… まともな仕事を与えない これでは不正はまかり通る 風通しが……とにかく悪い そして今一番の問題は榊原だった 残業でもないのに夜遅くまでPCを操作してれば…… 怪しまれても不思議じゃない…… 「………ヤベぇな……」 康太は独り言ちた 榊原が追い詰められている 日々萎れていく榊原は見ていられなかった 目の下に隈を作って…… 髪はボサボサ… 榊原じゃ考えられない有様だった 康太は榊原から目が離せなくなった 「伊織、何してる?」 康太はメールを送った …………だが榊原は康太にメールを送り返してはくれなかった 榊原はメールを見ていた スマホの画面をじーっと見つめて…… 携帯を抱き締めた 康太は見ていて胸が痛くなった 「伊織、無理するなよ お前が帰って来るの待ってるかんな」 そうメールを送る 榊原は席を立った トイレに駆け込み…… 泣いていた 康太…逢いたい 日々追い込まれて逝く 焦りは募り‥‥想いだけが逸る その日も夜遅くまで榊原はPCを使って内部を探っていた 相手も尻尾を掴ませない為に…… 巧妙に細工してあった 榊原が大阪支社が怪しいと想ったのは…… 書類が完璧過ぎるのだ 完璧に作られ過ぎた書類に疑念を持つと…… 大阪支社に不正融資や会計処理と収入と合わない現実が現れた 榊原は瑛太に相談した 瑛太は「………尻尾を掴まないと……証拠隠滅されますね」と悪賢い相手に…… 瑛太も勘づいて頭を抱えていた 今までも何度も不正を暴こうと……社員を回した だが、回した社員が退職して行ってしまって…… 何も捕まえられすにいた 榊原は瑛太に 「………康太には……言わないで下さい」 と頼んだ 「聞けば康太は無理をします……」 「……解りました……」 「僕が大阪に出向いて……尻尾を掴んで来ます」 そんな話をしていた 何時行くか…… それを思い悩んでいた 康太と離れたくないのだ…… だけど放置しておいて良い場合じゃなかった 榊原は康太を求めてしまう心に歯止めが掛けられず…… 康太を困らせた それが解ってるから…… 敢えて頭を冷やそうと……離れた 頭は冷える所か…… 心が冷えて…… 狂いそうだった その夜も遅くまでPCを触っていると 帰宅した筈の社員が3人が…部署に戻って来た 「スパイさん、何か出ました?」 「出る筈ないのに……お疲れさん」 「労ってやろうと集まった訳だ!」 男達は口々に皮肉を良い、榊原に近寄った 「………こんなダサい男は趣味じゃない」 「今までて一番……ダサい」 「………勃起するかな?」 男は榊原にジリジリ近寄り楽しんでた 「………君達……今までの社員も…… そうやって……強姦してたのか?」 「黙らせるのには……好都合だもんな」 「そうそう!犯して脅せば大体は黙ったな」 「黙らないのには犯した写真を見せて黙らせた」 最低の言葉に榊原は胸糞が悪くなった 「お前も会社を辞めたくてしてやるさ」 男達が榊原に近寄った……その瞬間 田中太郎が男達を殴った 鳩尾に蹴りを入れて、投げ飛ばし…… 怯んだ隙に榊原の手を掴んだ 「グズグズするな走れ! 田中太郎は榊原の手を掴み走っていた 榊原は信じられない気分で……田中太郎を見ていた 「………康太?」 「………田中太郎だ……」 「僕の心は君にしか反応しません……」 榊原は田中太郎を抱き締めた 榊原は田中太郎を自分の泊まってるホテルへと連れ込んだ ベッドに田中太郎を押さえつけ…… 「……何でそんな格好してるんですか?」 「………アンタ……人違いじゃない?」 田中太郎が言う 「康太です……人違いじゃありません」 「オレが違う人物だったら? 恋人にどう説明するんだよ?」 「違う人物だったら……? 僕が康太を見間違う訳ありません…… 僕は康太しか欲しません……」 田中太郎はため息を着いた 「………重いんだけど?」 榊原は田中太郎を離した 「…………済みません……帰って良いですよ……」 榊原は背を向けた 康太を見間違うなんてない ………康太は怒ってるのか? 置いて行ったから…… 怒ってるのだろう ならば……許されるまで待つしかなかった 「………抱かねぇのかよ?」 「………出て行ってくれませんか?」 「………自分で連れ込んだのに?」 「………済みませんでした……帰って下さい…」 榊原は背を向けて立ち上がり、窓の外を見ていた 田中太郎はベッドから立ち上がると…… 部屋を出て行く……… フリをしてドアを開けて閉めた 榊原はずるずると床に崩れ落ちた 何をやってるんですかね……僕は…… 康太しか愛せない 康太…… 康太…… 逢いたい…… 逢わないと……狂う もう狂っているかも…… 榊原は顔を両手で覆った 康太しか見たくない……… もぅ………何も見たくない…… 田中太郎は榊原を見ていた 榊原だけを見ていた こんなに苦しい顔をして…… 苦しんでる榊原を置いて行けなかった 榊原に近寄り………抱き締めた 「………え?……」 榊原は驚いた顔して……田中太郎を見ていた 「………帰ったんじゃ…」 「こんなに苦しい顔してるのに?」 「………君を置いて行ったから…… 許してくれないんでしょ?」 「オレを置いて行くのは関心出来ねぇぜ伊織」 「………君を……危険な場所に連れて行きたくなかった…… 退職した者は総て……精神科に通院を余儀なくされてます…… 何人もに何日もレイプされて……心を病みました そんな所に……君を連れて行きたくなかったのです…」 榊原は震えていた なくしたくないのだ…… なくしたら……死んでしまう 生きていられないから…… 「………直ぐにオレだって解った?」 「…………僕が君を解らない筈ないでしょ?」 「………見てたもんな……」 榊原は田中太郎の髪に触れた 「髪……染めたの?」 「高校生に見える様にな」 茶髪にしなくても十分高校生に見えます…… とは言えなかった 「………康太……初日から……大阪に来てたんですか?」 「おう!伊織の後を追って来た」 「………電話にも出てくれなかった……」 「落ち込んでる時にメールしても返さなかったのは…… 伊織じゃねぇかよ……」 「………声を聞くと……君に逢いたくなります メールを見ると……君の所へ……飛んでいきたくなります」 「オレから離れるな伊織……」 榊原は康太を抱き締めた 田中太郎じゃない……飛鳥井康太を…… 強く……抱き締めた でも…… 抱き締めるだけで…… 何もしなかった 「………伊織?」 「………今夜は遅いですね ホテルに戻らなくて良いんですか?」 「………欲しくねぇのかよ?」 「………欲しいですよ…」 「………なら……」 あんで抱かないんだよ…… 康太は榊原を睨み付けた 「………僕はまだ帰れません…… 尻尾を掴んでません…… 君を抱けば離したくなります……」 「………離さなきゃ良いじゃねぇかよ!」 「………康太……」 榊原は康太を抱き上げた ベッドの上に下ろして重なった 口吻は甘く……榊原に火をつけた 止まれない想いに翻弄される…… 康太の服を脱がそうとすると…… 胸ポケットの携帯が震えていた 榊原は康太の携帯を取り出すと……康太に渡した 康太は携帯を受け取ると、電話に出た 「あんだよ?」 『お前がぶった押した輩は確保した 今は社内を警備員に警護させて聡一郎が調べてる ネズミ一匹入り込めねぇ様にしといた!』 「オレが行かねぇとダメか?」 『来なくても良い 旦那といるんだろ?』 康太と榊原が会社から出て行くのを確認して社員を総て追い出した 出入り口を警備員に警護させて総てのPCや書類を調べているのだ 横浜から聡一郎も瑛太も呼び出し、栗田や陣内、蒼太も出向き書類の確認に当たってると教えてくれた 康太は「明日の朝、飛鳥井康太として会社に出るかんな!」と一生に告げた 『あぁ、俺らは会社で待ってる事にする』 電話を切ると康太は 「捕り物で何か見つかるだろう?」と榊原の苦労を労う様な言葉を吐いた 「………康太……」 榊原は康太を抱き締めた 「オレを愛せよ伊織 そしたら弥勒の掛けた魔力が消える」 「………康太……」 榊原は康太の服を捲り上げた 艶めく乳首に…榊原は口吻て吸った 執拗に……乳首ばかり責められ……康太は勃起した性器が下着の中で窮屈だった ヘソを舐められ…… ベルトを外すと……ジッパーを下ろした 康太の下着は濡れていた…… 榊原は康太の下着を見て 「……濡れてますよ?」と触った 「……伊織が触ればオレは我慢出来ねぇ……」 「僕も君を手にしたら我慢出来ません」 榊原は下着の上から康太の性器を舐めた どんどん濡れてシミを作っていく性器は……はち切れそうに下着の中で自己主張していた 榊原は下着を少し下ろすと…… 康太の性器を舐めた 可愛らしい性器を執拗に舐めて……陰嚢を揉んだ 「………伊織……ズボン……脱がして……」 「……脱がしたら最後までしますよ?」 「おめぇがしねぇならオレが食うぜ!」 康太は笑った 愛する者にしか見せない人懐っこい顔で…… 榊原は康太のズボンを脱がせた 康太の脚を持ち上げて……折り曲げると 「康太……脚を持ってて……」 と康太に脚を持たせた 康太は自分の脚を言われた通りに持っていた 恥ずかしい 脚を広げて持っている…… 榊原にお尻の穴を丸見えにさせてるんだから…… 恥ずかしくない訳がなかった 「……あぁっ……伊織……早くぅ……」 「………康太……一度一緒にイキますか?」 榊原はそう言い……ジッパーを下ろして自分の性器を取り出した 康太の性器と合わせて持つと扱きだした 「……ぅ……あぁ……康太……康太……イキます…」 「……ぁん……あぁっ……伊織……あんで?」 2人は同時に達した 二本の合わさった性器から……精液を飛ばして…… 尚且つ……止まらないでいた 「君に触ってません…… そんなの挿れたら…… 裂けますよ?」 だから一回出したのだと榊原は、説明した 康太を俯せにすると康太のお尻の穴を舐めた 指を挿れて解していく 「伊織……来いよ……」 オレの中に来い…… 康太は榊原のスーツの背中に縋り付いた 榊原はまだスーツは脱いでいなかった 康太も……下だけ脱いだだけだった…… それ程に……性急に求め合っていた 「挿れますよ?」 「来いよ伊織…… オレの全部はおめぇのもんだろ?」 「ええ……君の全部は僕のモノです 僕の全部は君のモノです……」 榊原は康太のお尻の穴に性器を突き刺した 久しぶりの感覚に…… 康太はキツさを感じる 「………ぅ……んっ……」 苦しそうな声に……榊原は抜こうとした 「……まだ……解し足りませんでしたか?」 心配する榊原の顔が愛しい 康太は榊原の背中を掻き抱いた 「離れるな伊織…… もっと奥を掻いて……そしたら思い出すから…… お前のカタチを想い出すから……」 榊原は康太の唇に執拗な接吻を送った 少しでも苦痛が半減する様に優しく…… 康太の中を掻き回した 榊原のカタチを体躯は覚えている 榊原のカタチに腸壁は歓喜して搦み着く 「……あぁっ……伊織……イイっ……ずっと伊織が足らなかった……」 満たされる 足りなかった部分が満たされていく 体躯だけじゃない 心も……体躯も…… 互いを不足していたのだ 「………康太……愛してます」 顔を見て言えと言われた 愛してます…… 気の利いた事を言えない不器用な男は…… 愛してます………を封印されたも同然だった 康太…… 君の気に入る言葉は……何ですか? 僕は……… 君に愛してます…… しか言ってませんでしたね 君が許してくれるから…… 僕は君に甘えていたのです 幾ら仕事が出来ても…… 秀才だ……天才だ………と持て囃されても…… 君に伝える言葉が浮かばない こんな男…… 何故君は愛してくれるんですか? 君を喜ばせる言葉もない男を……… 「伊織……オレを抱いてるのに…… 他事は考えるんじゃねぇ!」 「康太……」 「愛してる青龍 おめぇだけを愛してる」 「………炎帝……僕も愛してます 君だけしか愛せません……」 榊原はピッチを早めた 執拗な接吻をしたまま……康太を追い詰めていく 互いの手を握り締め……接吻をしたまま…… 2人は……同時にイッた…… 榊原は康太を抱き締めた 「………伊織……スーツ脱いでねぇじゃんか……」 榊原のスーツに康太の精液が飛び散っているだろう…… 「クリーニングに出します」 榊原は康太の中から抜いた ズルッと抜ける感覚に……康太は榊原を引き留めて……締め付けた 「康太……君も下しか脱いでません……」 榊原はそう言い康太の服を脱がした 「………オレ……着替えねぇじゃねぇかよ…」 「持って来てます…… 僕の着替えの中に君のスーツと私服が混ざって入ってます…… 無意識に君の分も荷造りしていたみたいです」 「……伊織……」 康太は榊原に抱き着いた 榊原は、スーツを脱ぎ始めた 全裸になると康太に重なった 馴染んだ温もりが互いを包んだ 「伊織の体温だ……」 康太は嬉しそうに笑った 榊原は康太を抱き締め…… 「君の温もりです 君の匂いです……」 魘された様に呟いた その言葉で……… 如何に榊原が康太を欲していたか伺えれた 「………伊織……足らない…… オレをお前で詰め込んでくれ…」 その言葉に榊原は理性を簡単に手放した 「康太、上に乗って…… 下のお口で僕を食べて…」 康太は起き上がると、榊原に跨がった 愛する男の望みなら……何でも聞いてやりたかった 榊原に跨がり、秘孔に榊原の熱を押し当てた 精液で濡れた秘孔は榊原を美味しそうに咀嚼を始めた 「……あぁっ……太くなった……」 康太の中で榊原が硬く大きく育っていく 康太は仰け反った その体躯を抱き締めて……康太の乳首に吸い付いた ピアスを入れた乳首を咥えて、ピアスごと舐めると…… 康太の腰は妖しく蠢いた 榊原は康太をベッドに押し倒し…… 康太の手を取り…… 結合部分を触らせた 「康太、君と一つに繋がっています 君のお口……僕を美味しそうに頬張っています…」 「………伊織……嬉しい……」 離れたくないのだ 「……あぁっ……伊織……動いて……」 康太の亀頭のお口は赤く開いて液を流していた 「康太……君が足りませんでした……」 「オレも伊織が足らなかった……」 康太は榊原の背中を掻き抱いた そして脚は榊原の腰に巻き付け…… より深く榊原を受け入れて…求めた 互いの飢えを満たす様に求め合い 何度も射精した でも衰える事なく榊原は康太を求めた 榊原は愛してます……と幾度なく伝え…… 康太も愛してると榊原に返した 互いを満たし合い…… 康太は意識を失った それでも榊原は止まれずに……康太を求めた 康太しか愛せない 炎帝しか愛せない 榊原は康太を強く抱き締めて…… 眠りに落ちた 康太は朝早く目を醒ました 目の前には愛する榊原の顔があった 「伊織……寝た?」 「寝ましたよ 久しぶりに眠れました」 「………寝てなかったのか?」 「君が傍にいなければ……僕は眠れません お酒を飲んで気絶する様に寝てました……」 その言葉で………榊原の苦悩が伺えれた 「………まるで青龍の様で……生きてるのが嫌になりました……」 「………伊織?」 「君を想って酒で誤魔化し……酔い潰れる…… まるで昔の青龍みたいで……君とで会う僕は……… こんなにも……何もない…… 気の利いた言葉も言えない 僕は……君を楽しませてやる事も出来ません…… こんな男……何時か愛想つかされてしまう…… そんな事ばかり考えていました…」 「伊織!よく聞け!」 康太は榊原の両頬に手を当て、自分から反らせない様にした 「オレは未来永劫、青龍しか要らねぇんだよ! 青龍しか愛せねぇ! 青龍はこんな人形のオレでも愛してくれる 青龍をなくせばオレは生きていられねぇ…… オレの命より大切なんだよ! お前をなくしてオレは生きていられねぇんだよ!」 「………炎帝………」 榊原の瞳から…… 涙が零れた 康太はその涙に口吻た 「愛してる青龍……」 「………炎帝……愛してます」 榊原は強く強く……康太を抱き締めた 不器用な男の精一杯の愛を…… 康太は受け止めくれる こんなに愛せる人は…… もう現れはしない… 「………君が傍にいなかったので………落ち込んでいました」 「一人で乗り越えられない壁でも、二人なら必ず乗り越えて行けます そう言ったのは……おめぇじゃねぇのかよ? なのに一人でこんな所に来るから……だろうか!」 「………康太、怒ってます?」 「あたりめぇだろ? 伊織、おめぇの体躯はオレのもんだろ? なら不用意に傷を付けさせるな!」 「康太……ごめんね…… 許してくれませんか?」 「許してるから……抱かせたんじゃねぇかよ……」 解れよ……と康太は榊原の胸に顔を埋めた 「……康太……ごめんね……」 「もう良い……絶対にオレから離れるな!」 「ええ。絶対に君から離れません」 榊原は康太に口吻た 「さてと、伊織会社に行くとするか」 「………康太!戻ってます!」 榊原は康太の姿を見た すると愛する康太に戻っていた 「伊織がオレを抱けば術は解ける様にして貰ったんだ」 「……康太……僕の康太……」 「……本当に田中太郎…… オレだと確信があったのかよ?」 「僕は君以外には心は惹かれません 今世は僕の記憶を、君が封印をしましたよね? 何も知らない榊原伊織は……青龍の様に認めたくなくて抗っていましたが……君しか愛せませんでした その僕が……田中太郎に目が止まった 容姿は違うけど……こんなに気になるのは君しかいません!」 「………オレじゃなかったら……とか想わなかった?」 「僕は炎帝、君しか愛せません その僕が心惹かれるのなら……それは君しか有り得ない 炎帝しか愛せない 炎帝しか興味の持てない僕です 僕は君の器には拘らないと言いましたよね? 姿カタチじゃない……僕は君の魂が欲しいのです」 「……青龍……オレを口説いてどうするんだよ? もぉ……お前の台詞に……メロメロだ……」 気の利いた台詞が言えない? そんな事ないって………何故気付かねぇ? 「………メロメロになる台詞など言ってませんよ?」 ………これだもんな 根が真面目過ぎるのだ……この男は…… 「伊織、掃除に来たんだろ? 掃除が終わったら還ろうな飛鳥井の家に オレ達の子供が待ってるからな」 「……ええ……還りましょう…… 君と僕の子が待ってる家に還りましょう」 榊原は立ち上がると康太を抱き上げた そして浴室に連れて行き、外も中も綺麗に洗い上げた 二人してバスタブに浸かり……暫しの休息 そしてお風呂から上がると支度をした 久しぶりに康太の支度をして、自分の支度をした 榊原はダサダサじゃなく、本来の姿に戻った 「この僕をレイプしようとするんですからね… 許しておく気は皆無です! 後、あの会社は風通しが悪すぎです リストを作っておいたので……解雇しようと想っています」 「伊織には指一本触れさせるかよ! 伊織はオレのだかんな!」 「そうです!髪の毛一本たりとも僕は君のモノです!」 榊原は康太を抱き締めてキスを落とした 「行きますか?奥さん」 「おう!行くぜ伊織!」 手を繋ぎ、ホテルの部屋を後にした ホテルのロビーに行くと、一生と慎一、そして瑛太が待ち構えていた 慎一は康太のスーツ姿を見て…… 「やはり、伊織は貴方のスーツも持って来てたんですね」と言った 康太のスーツを吊して見てるだけで……良かったのだ それで堪えれると想っていた その為に……榊原は康太のスーツと着替え一式持って出ていた 榊原は何も言わず……苦笑した 瑛太が榊原に 「伊織、尻尾は掴めましたか?」と問い掛けた 「退職者を説得して裁判まで持ち込みました 特定の人間はリストを作成しました 風通しが悪いし、バイトや転勤した社員はゴミ扱いですね ………このまま続ければ大阪支社は完全に破綻が来ます」 榊原の言葉に瑛太は納得した 「私達も昨夜、会社に踏み込みました 聡一郎が経理のカラクリを暴いてくれました 横領で告訴の準備をします! 後、社内に面白いモノが出回っていました 最低のイジメですね…… 聡一郎が発信先を特定してくれた」 瑛太がそう言うと 「オレは駒を放って情報収集している 会社の経費はクラブやキャバレーのお姉さん達の接待に消えてるらしいな 確証も得ているし、証拠も揃った クビにする社員もリストアップした 大阪支社は最悪、潰すしかねぇとオレは想ってる」 風通しが良くならないなら…… 不要だと康太は言った 瑛太は康太の肩を抱き締めた 「大阪支社には腐ってない人材もいます……」 「………だと良いけどな」 「なら行きますか?」 瑛太は康太にそう言った 康太は不敵に微笑んで頷いた 聡一郎、一生と慎一は瑛太と同じタクシーに乗り 康太と榊原は二人してタクシーに乗り込んだ 「伊織……」 「君には僕がいます」 康太は頷いた 茶色の髪が靡いていた 榊原は康太の髪に口吻た 「茶色の髪……久しぶりで……高校時代を想い出します」 康太は嬉しそうに笑った 「伊織に内緒で染めて……ごめん」 「構いません……気にしなくて良いです」 「伊織……もう……離れるな…」 「ええ!もう離れません! 君と離れて……思い知らされました…… 離れては生きていけません…」 榊原は康太の手を強く握り締めた タクシーは飛鳥井建設 大阪支社へと到着した 康太と榊原はタクシーを下りた 瑛太もタクシーを下りて待っていた 「掃除に行きますか?康太」 榊原が康太に問い掛ける 「おう!掃除して子ども達の所へ帰るかんな!」 康太と榊原は、瑛太と共に会社へと入って行った 瑛太の後ろに康太と榊原 その後ろに一生と聡一郎と慎一が護るように付いて歩いていた 飛鳥井建設の前に行くと…… 堂嶋正義が康太達を待ち構えていた 「………正義……どうしたよ?」 「命に坊主が来てるのを聞いた」 「正義、百目鬼命は使える男だが……口が軽すぎる 詮索も……多い それを続けるなら……身を滅ぼす事になる お前の足を引っ張る事にならなきゃ良いけどな…」 「………坊主、それは警告か?」 「そうだ!オレの事を嗅ぎ付けるなら次は確実に消すかんな…」 「………解った……そう警告しておく」 「次はねぇ……おめぇは……アイツに……寝首を掻かれて失脚……なんて事にねらねぇようにな…」 「………それは困るな…… 今一度躾のし直しをする」 「正義、飛鳥井建設には介入無用だ……」 「介入無用にしたいがな……これを」 堂嶋は康太に書類を渡した 康太が書類を見ると、瑛太と榊原が覗き込んだ 「政治献金に贈収賄だろ?」 「知っていたか……」 「オレはその為に大阪に来たんだからな」 「俺の手は必要ないか?」 「正義、心中してくれるなら来てくれ! と言いたいが……正義……こんな所に顔出すな おめぇの政治生命が脅かされたらどうするだよ!」 康太は怒ってそう言った 「坊主らしいな 何か手伝える事があったら呼べ 俺は今日は大阪にいる」 「ありがとう正義」 「何時まで大阪にいる?」 「明後日までだな…」 「そうか……食事を……と言いたいが無理そうだな」 「近いうちに時間を作る 正義に話しておかねぇとならぬ事もあるからよぉ!」 「………解った……横浜で待っている 時間が出来たら声をかけてくれ!」 「正義、悪かったな」 「坊主の役に立つなら……俺の存在理由があるってもんだろ?」 堂嶋は康太を抱き締めて……飛鳥井建設を後にした 康太は飛鳥井建設の中に入った 突然の社長の視察に……社員はざわめいた 支店長室へ出向き、康太はソファーに座った 「大阪支社、支店長 高野久志……」 康太は背筋まで凍る瞳で……支店長の名を呼んだ 「………社長……失礼ですが……この方は?」 「彼は飛鳥井家真贋 指一本でも触れれば……御前の命はないと想いなさい!」 飛鳥井家真贋……と聞き……支店長は息を飲んだ 「この支社は半分以上が解雇だ 解雇通告は作ってある 社員を一同に集めろ! 聡一郎、一生、慎一、総てのPCをシフトダウンさせろ!」 聡一郎、一生、慎一は康太の指示通り各部署に飛んでいきPCをシフトダウンさせた 各部署の社員を一番広い会議室に集めた 社長の飛鳥井瑛太が待ち受けていた 康太は皮肉に唇の端を吊り上げて嗤っていた 「今までご苦労様でした! 明日から貴方達の席は、飛鳥井建設には御座いません! 転職なさるなら、会社の為に身を尽くし働かれる事をお勧め致します この不景気なご時世に再就職は大変でしょうが、頑張って下さい! 今日限り大阪支社の社員は総て解雇と言う事にさせて致します」 康太が言い終わる前に…… 社員は騒ぎ出した 「ふざけるな! そんな一方的に言われて、はいそうですか! と了承すると思うか!馬鹿なガキだな」 男は吐き捨てた その顔に見覚えがあり、康太は嗤った 「納得出来ないなら書類を渡してあげましょう! はい!君!レイプの罪で近々裁判所から逮捕状が出るでしょう! レイプされた皆様は勇気を振り絞って、告訴致しました! はい!お疲れ様! 我が飛鳥井建設はレイプ魔は必要致しません 総て証拠があります! 社内イジメ? 卑怯極まりない輩も、我が社は必要とは致しません! はい!お疲れ様でした!」 康太は慎一に解雇通告を渡した 慎一は名前を敢えて言って、解雇通告を差し出した 「支店長、お疲れ様でした! 贈収賄で我が社は告発致しました! 証拠は御座います 贈収賄、横領、我が社にもらした損失は、キッチリと貴方から取り立てさせて頂きます 後、各部署の課長、係長クラスの方々 キャバクラやクラブのママやお姉さんに、会社のお金で貢いだ証拠は上がっております キッチリと取り立てさせて頂きます 飛鳥井建設は大掛かりな裁判をせねばならぬ状態です 会社から書類を持ち出すのは許しません PCも凍結させて戴きました 解雇通告渡された方、お帰り願います 次は裁判所で、お会い致しましょう! 解雇通告を渡されてない方も、一旦保留とさせて戴きます お疲れ様でした!お帰り下さい!」 康太は毅然と言い放った 「瑛兄、大阪支社は凍結する 再始動する時は、今いる社員以外となる! こんな風通しの悪い会社……不要だ」 「異存は御座いません! バイトや他の支社から来た社員はゴミ扱いする支社など……腐りきってます! 今度は逃れは出来ません!」 警備員が大量に突入されて、会社から社員が排除された 運送屋を呼び会社のPC、書類、総てを持ち出した 一旦コンテナに置いて、後日 本社に持って来る予定だった 大阪支社は一旦凍結されて、機能を全て停止した 大阪支社の仕事は兵庫支店がカバーする事となった 総てを片づけて、康太達は飛鳥井建設 大阪支社を後にした タクシーに乗りホテルへ向かう 「伊織、逆恨みした莫迦が……牙を剥いて来るかもな… 常識が通用しなさそうな輩が逸脱しねぇと良いんだがな‥‥」 「……そうですね……大阪支社の人間は一筋縄ではいかない、逆恨みが怖いと想っていました」 「………レイプで裁判に持ち込まれた奴は……ヤケになりそうだしな…」 「………康太……気を付けて下さいね…」 「当たり前だ……伊織も気を付けろ!」 榊原の荷物を先に持って来て、康太のホテルへと向かった 胸騒ぎが止まらない 康太は榊原の胸に顔を埋めていた 榊原も胸騒ぎが止まらなかった 瑛太も…… よからぬ事の前触れか…… 胸騒ぎを感じていた 康太は… 「何もなければ良いけどな……」 と独り言ちた 想いは皆一緒だった 瑛太は康太に 「この後、どうしますか?」と問い掛けた 「一旦、横浜に戻って状況を立て直す 大阪支社は凍結して神戸支社と名古屋支社とで協力し合いやって行くしかねぇ 本社に戻ったら支社のPCを総て本社直結回線に直す! 好き勝手される前に、本社である程度の管理はしておかねぇとな」 「それは言えます 今回、野放し状態でしたので横領や政治献金…… などが見付け難くなってしまいました」 「近いうちに会見もしねぇとな……」 「………ですね……それは避けられません」 「………怖いのは……逆恨みだな どんな出方をするか予測がつかねぇからな…… しかも今回は誰かに踊らされて……じゃねぇ! 自分の意思で来る訳だからな…… 瑛兄……ガード付けろよ… 伊織も……ガード付けねぇとヤバいかもな…」 瑛太は「康太、君にもガードは必要ですよ」 と弟を想って言葉にした 「飛鳥井の家の強化……頼んだ」 「私の方でも警察にパトロールをお願いしておきます」 「…………子供や母ちゃんや京香は家から離した方が良いかもな……」 「………納得しませんよ……」 「それなんだよな……」 康太は胸騒ぎに……身を掬われそうだった 「帰るぞ!」 横浜に…… 家族のいる場所へ

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