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第54話 遺した愛

飛鳥井建設 前真贋の社葬が大々的に開かれる事が決定した 親類縁者だけで送った葬儀告別式から3日後の事だった 各方面から源右衛門を知る関係者が続々と社葬に参列した 黄泉から還って、康太は熱を出して寝込んだ 玲香も……倒れて……寝込んでいた 慎一は源右衛門の部屋を片づけた 遺書らしきモノが置かれてそうな場所を探した 飛鳥井源右衛門の遺書は…… 仏壇に供えてあった すぐに見付ける事が出来た 遺書は全部で7通 飛鳥井清隆 飛鳥井玲香 飛鳥井瑛太 飛鳥井康太 榊原伊織、清四郎、真矢へ宛ててあった 慎一は遺書を康太へ持って行った 「康太、遺書が在りました」 「………そうか……宛名の人間に渡してやってくれ」 「皆……応接間に集まって戴いて貴方が手渡したらどうですか?」 「解った……皆を応接間に集めてくれ…… ついでに清四郎さんと真矢さんを呼んでおいてくれ」 「解りました!」 慎一はそう言い寝室を後にした 康太はベッドから起きようとした 榊原が康太を抱き締めた 「着替えないと駄目ですよ」 康太はパジャマを着ていた 「良いだろ?」 「……そうですね……この跳ねた髪も……そのままで構いませんよね?」 榊原は笑っていた 「……跳ねてるのかよ?」 「……ええ……ピョンピョン跳ねてます」 「面倒だし…このままで良いや」 「では行きますよ」 榊原は手を差し出した 康太はその手を握り締めた 一階まで下りて、応接間へと行き、何時もの席に座った 足を組んで肘おきに肘をついて、何時もの康太だった 瑛太は応接間に入ると康太を抱き上げた 「康太……大丈夫ですか… 兄は心配でなりません…」 「瑛兄…熱は下がった 社葬には主席出来るから安心してくれ」 「康太…無理しなくて良い…」 「無理じゃねぇよ瑛兄 じぃちゃんを送るのに…現真贋がいねぇと…… 会社の信用にも関わるかんな」 「……それでも!……兄は……お前が大切なのです」 「瑛兄、大丈夫だ 源右衛門の遺書を渡したいからな…… 清四郎さんと真矢さんも飛鳥井に来る…」 「………遺書……ですか?」 瑛太は康太を下ろしてソファーに座らせた そして榊原の頬に手をあてた 「……伊織……少し痩せましたね」 「………大丈夫です 康太が元気になれば僕も戻ります」 「………康太は……」 フラッシュバックしてるの……?と言葉に出来ずに黙った 榊原は「………不安定ですから……」とだけ呟いた 「……そうですか…… 伊織には苦労を掛けますね…」 瑛太は榊原を抱き締めて、ソファーに座った 暫くすると清四郎と真矢が飛鳥井の家にやって来た 応接間に入って直ぐに…… パジャマ姿で、髪がボサボサの康太に目が止まった 「………康太……大丈夫なの?」 真矢は康太を抱き締めた 「真矢さん、話があるんで座って下さい」 真矢は清四郎と共にソファーに座った 全員が揃うと康太は口を開いた 「飛鳥井源右衛門が遺した遺書が在ります それを渡したいので集まって戴きました」 康太は立ち上がると 「源右衛門は真贋をオレに継がせる時に遺産相続は総て終らせています 遺書には源右衛門の想いが綴られている事だけお知らせしておきます」 康太はそう前置きして、一人ずつ遺書を手渡した 「父ちゃん」 遺書を手渡されて清隆は……嬉しそうだった 遺書を胸に抱き締めて……源右衛門を感じていた 「母ちゃん」 「………我に?……」 「オレは母ちゃんに見せたくて慎一に源右衛門の遺書を探して貰う様に頼んだんだ」 「……康太…」 「母ちゃん、じぃちゃんは黄泉に渡った 清香と二人、転生の準備に入った もう苦しまなくて良い……母ちゃん、自分を責めなくて良いんだよ!」 玲香は遺書を手渡されて貰って……泣いた 「瑛兄、源右衛門からだ」 康太は瑛太に遺書を渡した 瑛太は遺書を受け取り深々と頭を下げた 「清四郎さん」 「私にもあるのですか?」 「貴方は飛鳥井源右衛門の息子だ 戸籍には入ってないが、れっきとした息子だ 社葬にも親族の席に座って参列して下さい 父ちゃんの兄として……父ちゃんや母ちゃんを支えてやって下さい」 康太は深々と頭を下げた 「………康太……頭を上げて下さい」 清四郎は康太に頭を上げさせた 「清四郎さん……太陽と大空は貴方と真矢さんの子供ですよね?」 「君の子供でしょう? あの二人は………」 「オレの子供ですが……本当の親は清四郎さん貴方達ですよね?」 「……ええ……それがどうしました?」 「清四郎さん、貴方は間違いなく飛鳥井の人間だ 太陽と大空は……力持ちの可能性が大きい 飛鳥井の血……が濃く出てるんでしょうね」 「え………やっぱり?」 「ええ……貴方は飛鳥井源右衛門の子供 貴方の中に飛鳥井源右衛門の血が流れているんです」 康太の言葉に清四郎は涙を流した 「真矢さん、源右衛門の遺書です」 「康太……」 「源右衛門の想いです 封を開けて見て下さい」 康太はソファーに座ると榊原に源右衛門の遺書を渡した 康太も遺書の封を破いた 康太への遺書は 『明日の飛鳥井を頼む    飛鳥井源右衛門』 だけだった その一行に源右衛門の想いを感じ取っていた 榊原への遺書は 『伊織、お前には辛い道を歩ませる だが康太を支えて生きて行って欲しい 悔いのない生涯……をな。       飛鳥井源右衛門』 と書いてあった 清隆は源右衛門の遺書の封を開けた 『清隆、お前には厳しいばかりの父で許してください わしには腹違いの息子が頭から離れなかった お前に接するたびに……逢えない息子達に恨まれてるみたいで……お前とは距離を取った お前の父でいたい想いと… お前だけの父にはならない想いと……入り乱れて… 結果……お前に取ってよき父ではなかった 許してくれ…… 清四郎と仲良く……兄弟助け合って生きて行って下さい それだけが……父の願いであります           飛鳥井源右衛門』 清隆は泣いていた 父の背中は大きくて近付くには怖い想いしかなかった 父と向きあった事なんてなかった 何処か……距離を置かれているのを知っていた でも………恨んでなんていない…… 父なのだ…… 愛しているのだ…… 「父さん…狡いですよ……最期にこんな…」 清隆が初めて貰った父からの手紙だった 玲香も封を切って中の遺書を読む事にした 『玲香、お前には何時も辛い想いをさせる わしは自分の最期を……知っておる 星の指し示す先を……わしは視た わしは家族を守れて散れるなら……満足だと想う だが心残りは……目の当たりにして心を痛める……玲香……お前だ わしはお前を……孫達を守りたかったのだ お前達を守るならば……わしはこの命は惜しくはないと想った だから玲香……苦しまないでくれ お前には明日の飛鳥井を……わしの代わりに…… 見届けて貰わねばなぬ 玲香、お前は本当に飛鳥井の女だ まだまだ……お前の荷物は下ろせはせぬ 責任は感じずともよい 頼むな玲香 康太や康太の子供達をわしに変わって頼む 玲香……もう苦しむな       飛鳥井源右衛門』 玲香は遺書を胸に抱いて泣いた 源右衛門は自分の最期を知っていて… それでも家族を護ったのだ 源右衛門の代わりに…… 玲香は心に決めた こんな所で苦しんでいる場合じゃない 源右衛門に託された飛鳥井を…… 見届ける義務があるのだから…… 瑛太も封を開けた 『飛鳥井家 総代 飛鳥井瑛太様 お前の進む道は棘の道かも知れぬ だが康太の事を……どうか頼む お前の溺愛し弟を……どうか護ってくれ 総ては明日の飛鳥井の為 家の為…… お前に棘の道を逝かせる……許してくれ         飛鳥井源右衛門』 瑛太は涙を堪えて………覚悟を決めた 清四郎も同じように遺書を、見た 『清四郎、お前を捨てた父なのに…… お前は暇を見つけては逢いに来てくれた わしはお前達親子を忘れた日はない だが飛鳥井家真贋として生きて行く道を選んだ 我が子……清隆はお前達に悪くて……愛してやれなかった…… お前も……お前の兄も……哀しい思いをさせた 罪ばかり作った……許してください どうか清隆と兄弟仲良く生きて行って下さい それだけが……わしの願いです           飛鳥井源右衛門』 清四郎は涙が止まらなかった 誰が悪い訳ではない…… そんな時代が……親子を引き裂いたのだ…… 清隆も……幸せに大切に育てられた訳じゃないのは…… 一緒に過ごして直ぐに解った 清四郎は立ち上がると清隆の側に行き、清隆を抱き締めた 真矢も封を開けて遺書を見た 『真矢、本当にありがとう 太陽も大空も、流生、翔、音弥……皆、可愛いわしの曾孫だ 康太に子供を授けてくれて本当にありがとう 清四郎を支えて、玲香を支えてやってくれ 体に気を付けて元気な子を産め       飛鳥井源右衛門』 真矢は源右衛門の言葉に…… 涙した 「じぃちゃんの想いだ…… じぃちゃんは悔いはないと言ってた 口に出せば……未練は多々とあるけど、悔いだけは残してない……黄泉に送って行った時にそう言ってた…… オレ等は……それでも生きて行かねぇといけねぇんだ…… じぃちゃんの想いを……胸に抱いて… オレ等は明日の飛鳥井の為に生きて行かねぇといけねぇんだ!」 康太の言葉に家族は頷いた 「瑛兄、社葬で弔うぞ! 飛鳥井の家族全員揃って前真贋を送る! 我が子はその日は預けて公には姿は見せない! 飛鳥井家真贋の弱味の材料にされたら‥‥堪らねぇからな‥‥」 康太が言うと瑛太は「それで宜しいかと!」と賛同した 「清四郎さん、飛鳥井の親族席に‥‥と、想っていますが‥‥ そこに座るには貴方達にはリスクが大きい気もします ですが、それでも良いと謂うのなら、清四郎さんと真矢さんは親族席に座って下さい 源右衛門も喜びます」 康太に謂われ清四郎は覚悟を決めて 「飛鳥井のご迷惑になると想っていました ですが許されるなら……親族席に座り父を送られて下さい 飛鳥井源右衛門の息子として……参列させて下さい」 真矢は隣に座った清四郎を抱き締めた そんな想いを抱いて…… 迎えた社葬の日だった 社葬には飛鳥井源右衛門に縁の者から旧友や、 真贋として仕事をしていた時代の顧客が参列した 偉大な……飛鳥井家 真贋としての功績を称えた葬儀だった 花が好きだった源右衛門の遺影を真っ白な花で飾り 生前の元気な源右衛門が笑っていた 康太が撮った写真だった 穏やかな優しい笑みを浮かべた源右衛門の遺影だった それが参列者の涙を誘った 飛鳥井建設は全支店の社員の参列を義務付けた 飛鳥井清隆は喪主として社葬を厳正に取り仕切っていた 康太は親族席の先頭に真贋の喪の着物に身を包み榊原と共に座っていた 飛鳥井家 現真贋を誇示して、物凄い存在感だった 参列者は飛鳥井家 現真贋に深々と一礼して席へと戻っていった 読経が響く中、康太はマイクの前に立った この日の社葬は報道陣も入っていた 東都日報の今枝浩二はカメラを抱えて取材していた 家族に気配りが出来、邪魔にならない様に今枝は息を殺して追跡取材をした 「本日は飛鳥井源右衛門を送る社葬に多数のご参列、本当にありがとうございます 前真贋 飛鳥井源右衛門は家族を守り… 見事な最期を散らしました…… だが!…生きていて欲しかった…… じぃちゃんを失って……哀しみに家族は暮れました だが、飛鳥井は止まってはいられねぇ! 明日の飛鳥井を築いて確かにする義務が、オレにはある 飛鳥井源右衛門は、大阪支店を解雇された者の逆恨みによるものでした オレは絶対にじぃちゃんを死に追いやった奴を許しはしない! 飛鳥井建設は源右衛門の意志を受け継ぎ、先へと進む! 怯むな! 怖じけるな! オレ等は進むしか道は遺されていない! 現飛鳥井家 真贋のオレの示す先へと進め! 我等は一丸となり、そこへと行こうじゃねぇか! 飛鳥井建設は絶対に負けねぇ! それが飛鳥井源右衛門に報いる事なる!」 康太は天に向けて人差し指を一本立てて示した 「飛鳥井建設は明日へと続く! 飛鳥井源右衛門はそれを……天から見ていると想う 頑張ろうぜ! これを持って真贋の話は終わる」 現真贋の話の後には参列者からの言葉を送り 喪主の飛鳥井清隆が喪主の挨拶をして、社葬は終わりを告げた 「本日は飛鳥井源右衛門の為にお集まり下さいまして本当にありがとうございます 我が父、源右衛門は厳しい人間でした 父は偉大すぎて……近寄れませんでした 晩年の父は……優しい……曾祖父として存在していました…… 孫を愛し、家族を愛し…… 生き別れになっていた息子にも会えて…… 幸せそうでした この幸せは……まだまだ続く筈でした 私は……父の命を奪った人間を許しはしません 改革に着手するたびに……我々は狙われてきた 飛鳥井康太が襲われた事もまだ記憶に新しい筈だ それでも………我が飛鳥井建設は止まれません 今止まれば……明日の飛鳥井は続けはしないのです どれだけ苦しい茨の道であろうとも…… 飛鳥井家 現真贋は進みます 我々はそれを支える礎にならねばならぬ! 違える事は出来ない定めに乗っているのです それが守れぬと言うのなら、会社を去りなさい! 我が社はこの厳しい乱世を逝かねばならないのです 飛鳥井源右衛門の意志を継いで、我等は逝くのです それを此処で知ら示します! 今日は本当にありがとう御座いました」 清隆は深々と頭を下げた 社員は清隆に深々と頭を下げた 心に刻まねばならない言葉だった しめやかに社葬は執り行われ……幕を閉じた 会場を後にする社員は真贋に深々と一礼して会場を後にした 総てが終わると……康太は会場を後にした 報道各社も社葬の模様を中継していた 報道協定に基づき、飛鳥井康太の子供は一切映す事はなかった この先も飛鳥井康太の子供は表舞台には出て来ない それが子供を守る為だった 社葬を終えた康太は飛鳥井の家に還って来た 子供を引き取りに行き着替えさせて、応接間に遊ばせ その間に着替えに向かった 3階の寝室のドアを開けて部屋に入ると、康太は喪の着物を脱ぎ始めた 康太の素肌には……キスマーク1つ 着いていなかった 源右衛門を亡くした日から…… 榊原は康太に触れていなかった 着物を脱いだ康太を抱き締めた 「………康太……不謹慎……ですか?」 「伊織?」 「………ずっと君に触れてない……」 康太を抱き締める腕は……震えていた 「……伊織……」 「……その気に……なれませんか?」 康太は笑って、榊原を抱き締めた 「伊織、お前に触られてその気にならねぇ訳ねぇだろ?」 榊原は康太の頬に触れた 「………愛してます」 「オレも愛してる……この魂が消える瞬間まで愛してる…」 榊原は康太に接吻を送った 執拗な接吻で康太の口腔を味わう 執拗な口吻けに康太の膝がカクンッと崩れると、榊原は康太を抱き上げベッドに押し倒した 康太の上に馬乗りになって榊原は服を脱いだ 康太は勃ち上がった榊原の性器に触れた 「……ぁ……触らないで……」 自慰もしていない…… なのに愛する康太に触られたら……イッてしまう 「伊織……オレの体躯に……飽きたりしねぇ?」 康太は不安だった 榊原を引き止めておけるだけの……魅力的な体躯などしていないから…… 「君に飽きる日なんて来ませんよ 君は?僕に飽きてませんか?」 「伊織に飽きる日なんて来ねぇよ オレはおめぇしか愛せねぇ…… 青龍しか愛せねぇ……」 「僕も炎帝にしか興奮しません 龍の僕を愛してくれるのは君だけです 僕の総てを愛してくれるのは……君だけです」 「………伊織……その言葉だけで……イッちまいそうだ…」 「僕も……ヤバい……一回イッときますか?」 「………ん、伊織……触って……」 榊原は自分の性器と、康太の性器を2本同時に掴んで扱き始めた 物凄い快感に……2人は同時にイッた あまりにも早い放出に2人は顔を見合わせて笑った 「………伊織……早くねぇか……オレ等…」 「……ええ……少し早過ぎですね」 榊原は笑って康太を抱き締めた 「ローション使って良いですか?」 舐めて解す余裕がないから…… 「ん……ローション使って……早く欲しい」 想いは一緒だった 1つに繋がり……何処までも1つに溶け合いたい 交わりたい…… 榊原は康太を俯せにしてお尻を高く突き出させた 榊原はローションを手に取ると、康太のお尻の穴にローションを垂らした ローションの助けを借りて秘孔を解した 康太の秘孔に指を挿れて皺を伸ばして行く 「康太……挿れて良いですか? 君の……ココ……僕の指を4本も咥えてます」 「……あぁっ……はぁん……伊織……挿れて……」 榊原は康太の脚を肩に欠けた 開いた秘孔に…榊原の肉棒を挿し込んで行く… 「……康太……キツくないですか?」 「大丈夫だ伊織……動いて……ねぇ……吸って…」 榊原は康太の赤く艶めいた乳首を吸った 「康太…繋がってます…」 一つに繋がり溶け込みたい程の快感を共有している 榊原は康太の手を取ると、結合部分に触れさせた 榊原を咥えている秘孔は……蠢いて喜んでいた 「……ぁん……ぁはん……伊織……愛してる…」 「……僕も愛してます…康太」 榊原は抽挿を早めた 何度も放出して……それでも抜く事なく榊原は康太を求めた 康太が意識を飛びしても…… 榊原は止まる事が出来なかった…… 榊原は康太を強く抱き締めた 愛してる…… 愛してるのだ…… 榊原は目を閉じて……康太の体温を感じていた 康太は目を醒まして、榊原の胸に顔を埋めた 康太を抱き締める力強い腕に、康太は安心する 「伊織、今日……病院に行きたいんだ」 「………辛かったの? ごめんね……無理させましたか?」 「違う、北斗を検査に連れて行って力哉に逢って来ようと想うんだ…」 「……北斗……検査に連れて行ってませでしたね… 夏休みも近いです……オペをするなら今しかないですね」 「…… それもな相談して来ねぇとな 後……力哉…一生に任せておいても……治る気配ねぇかんな……見て来ねぇとな…」 「解りました」 「………母ちゃんは……どうだろ?」 「………連れて行きますかね」 「だな…」 「起きますか?」 「………今、何時?」 榊原は壁掛け時計を見た 「午前6時……少し早いですかね?」 「伊織、掃除するだろ?」 「ここ最近念入りにしてませんからね…」 「なら支度しよう オレはリビングで寝てるかんな」 榊原は起き上がると康太を抱き上げた 浴室に連れて行って、外も中も綺麗に洗い上げた 康太は気持ち良さそうに榊原のなすがままだった 浴室から出ると、髪を乾かし支度をした 康太にはスーツではなく私服を着せた 榊原も私服に袖を通して、康太をリビングのソファーに座らせた 「掃除と洗濯して来ますからね」 榊原は康太にキスを落として、掃除と洗濯をしに行った 康太がうとうと寝ていると隼人が康太の横に座った 隼人は康太の頭を撫でていた 「隼人、どうしたよ?」 「………康太……オレ様は悲しいのだ…」 「……皆がいるだろ?」 「………誰かがいなくなるのは……辛い オレ様は菜々子を亡くした時を思い出して……」 「隼人……死は終わりじゃねぇ 死は始まりなんだよ 次へ逝く始まりに過ぎねぇんだよ だから哀しむな隼人……」 「………康太……オレ様は臆病だから……」 怖くて堪らない……と隼人は弱音を吐いた 康太は隼人を抱き締めた 「オレがいる……おめぇにはオレがいる… 伊織もいる……そうだろ?隼人…」 「………康太……」 「音弥は……? おめぇの子供だと実感するたろ?」 「………オレ様は時々……音弥が羨ましい」 「良い子に育ってるだろ?」 「……音弥には……絶対に庇ってくれる兄弟がいる オレ様は……少しだけ音弥が羨ましいのだ……」 「おめぇにはオレ達がいる そうだろ?」 隼人は康太に抱き着いた 「そうだのだ……オレ様には康太がいる 伊織がいる……仲間がいるのだ」 「ずっと一緒にいようぜ! 近いうちにお前を……魔界に連れて逝く」 「……え?……」 「オレとずっと一緒にいてぇんだろ?」 「いたいのだ…」 「なら、顔見せに逝こうぜ」 「解ったのだ」 「その前にオレは病院に行くんだ 隼人、おめぇ仕事は?」 「少し休みを取ったのだ…」 「そっか、なら一緒に病院行こうぜ」 隼人は頷いた 榊原が掃除を終えてリビングに来ると、隼人がいた 「隼人、どうしたのですか?」 「……伊織……オレ様は……亡くした悲しみに囚われていたのだ……」 榊原は隼人を抱き締めた 「人は……哀しくても先に進まねばならないのです 隼人……哀しみに囚われてはいけません…」 「解っているのだ伊織…」 「良い子です さぁ食事に行きますか?」 「おう!行こうぜ」 康太は立ち上がると隼人に手を差し出した 隼人は康太の手を取った 3人でキッチンに行くと、慎一が出迎えてくれた 「康太、今日はどうされますか?」 「今日は北斗を病院に連れて行って検査をさせる オペに踏み切るなら夏休み前にやるしかねぇだろ? そして力哉を見舞って来る予定だ」 「………貴方は……大丈夫なのですか? 「心配するな慎一 オレは伊織がいれば生きて行ける」 慎一は何も言わずに頷いた 康太の前に朝食を置いて行く 康太達がご飯を食べていると、聡一郎からキッチンに現れた 「聡一郎、おはよ!」 「………康太……」 聡一郎は背後から康太を抱き締めた 「どうしたよ?聡一郎」 「……ここ最近……君のそんな顔…… 見た事もなかったから…」 康太はニカッと笑った 「聡一郎大丈夫だ!心配すんな!」 聡一郎は康太を離して席に着いた 食事を終わる頃、瑛太や清隆がキッチンにやって来た 「父ちゃん、母ちゃんは?」 康太は清隆に問い掛けた 「………玲香は寝てます」 「今日、北斗を検査に連れて行くから、母ちゃんも病院に連れて行く」 「………康太……頼めますか?」 「おう!オレも診察に行かねぇとダメだからんな!」 康太はそう言いキッチンを後にした 3階に行って我が子を起こす 子供部屋のドアを開けると……皆、起きていた ドアを開けたのが康太だと、子供達は嬉しそうだった 「かぁちゃ!」 流生が康太を呼んだ 榊原も子供部屋にやって来た 「とぅちゃ!」 翔が嬉しそうに榊原を呼んだ 音弥は眠そうだった 太陽と大空は……「おむちゅ」「ベヨベヨ」とオムツ事情を訴えた 榊原は大空を寝かせるとオムツを替え始めた 康太は流生のオムツを替えていた 流生が終わると音弥を替えていた 榊原は大空が終わると太陽のオムツを替えて 翔のオムツを替えた 皆、オムツを替えて貰って気持ちよくなると着替えさせて貰い キッチンに抱き抱えて行った 「……そろそろオムツ取らないとダメですかね?」 「早くねぇか?」 「オマル……始めますかね…」 「無理強いはダメだかんな…」 「トレーニングです 慣れさせて行かないとオムツ取れませんよ」 「……だな…」 「後、好き嫌い多すぎです…うちの子は…」 「……だな… ……子供って難しいな……」 「てすね……託児所の先生にアドバイス貰いますか?」 「しかねぇよな…」 「今日は病院があるので、託児所に連れて行ったらトンボ帰りですけどね…」 「だな…」 康太は子育ての難しさに 直面していた……

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