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第62話 新社屋 完成披露パーティー
新社屋 完成披露パーティーは飛鳥井建設1階レストランで開かれる事となった
招待客は全部で100人
同業者や真贋の顧客や各界の著名人が招かれる事となっていた
一生と聡一郎、慎一はレストラン内を忙しそうに飛び回っていた
窓という窓にプロジェクターを貼っていたのだ
総指揮は飛鳥井康太
康太はPCを見ながら微妙な位置の調整をしていた
九頭竜遼一や建築部門の人間も協力して手伝っていた
「おい!康太、こんな感じでどうだ?」
遼一はスケルを片手にセンチと位置を確認して問い掛けた
「後は?」
「天井だな!」
遼一はキッパリと答えた
「天井って……やりにくいよな?」
「大丈夫だ!おめぇの意思の通りに俺はやってやる
今までもそうして来たろ?
これからもそれは変わらねぇ」
遼一は康太を抱き締めた
康太は長身の遼一と並んだら子供みたいに小さかった
遼一は康太を抱き上げた
「軽すぎねぇか?」
そして心配する
「もっと太る予定だ心配すんな!」
「心配するさ!俺の雇用主だからな!」
遼一はそう言うと笑って康太を下ろした
九頭竜遼一は康太の意思のままに仕事をする
聡一郎と一生はプロジェクトマッピングのプログラムを打ち込み作成していた
慎一はそれを見届けるかの様に康太の側にいた
新社屋完成披露パーティーの準備は午前中一杯掛かった
午後からプロジェクトマッピングの調整をして、パーティーを迎えるばかりにして、副社長室へと戻った
「康太、着替えますか?」
「飯食ってからで大丈夫だろ?」
「康太……これで少しは肩の荷が下ろせますね…」
「ん……忙し過ぎたな……少し休みを取るか?」
「旅行に行きますか?」
「おう!二人だけで行きてぇな!」
「康太……」
康太と榊原は抱き合っていた
そこへ「おい!そんな暇ねぇぞ!」と一生が割り込んで来た
「ほら、飯食いなはれ!」
一生に促されて慎一が用意してくれたお弁当を食べた
軽く昼食を取り、着替えた
一生や聡一郎、隼人に慎一も着替えた
隼人は午前中仕事を入れていた
だが午後から新社屋完成披露パーティーの為に、康太の側へとやって来た
「隼人、着替え持ってきたかよ?」
「神野に頼んで持って来て貰ったのだ!
今日は神野も出るらしい……張り切っていたのだ…
オレ様の服もこの日の為に誂えたそうだ」
「お!おニューかよ?」
「そうなのだ
翔達はパーティーの時はお留守番か?」
お留守番なら可哀想なのだ………と
「翔達はパーティーに連れて行くぜ
その変わりガードも付けるけどな……」
狙われない為に策は講じておかねばならなかった
「康太は忙しいだろうから、オレ様も見てるのだ」
「隼人…」
「なんだ?康太」
「頼むな!」
康太は隼人の頭をグシャッと掻き回した
「解ってるのだ」
隼人は笑っていた
最近、隼人は逞しくなった
大人の男に成長しつつあった
「隼人、着替えろよ
写真撮ってやるからよぉ!」
隼人はニコッと嬉しそうに笑った
全員正装して、康太は全員の写真を撮った
榮倉に言って、自分も入って写真を撮った
全員笑顔で、榮倉は見ているこっちが楽しくなる様な1枚を撮った
正装した瑛太が副社長室のドアをノックした
慎一がドアを開けると
「時間です!」と迎えに来た
「瑛兄、やっとこさパーティーまで漕ぎ着けたな」
「ええ……ですが長い一日になります…」
「……仕方ねぇよ…」
「………乗り切りましょうね……康太」
「おう!瑛兄、頑張ろうぜ!」
康太は榊原に手を伸ばした
榊原は康太の手を取った
一生と聡一郎と慎一は
「翔達を託児所から貰い受けてパーティー会場まで連れて行く」
と言い先に部屋を出て行った
康太は榊原と共に瑛太と1階まで下りて行った
「……康太……兄は胃が痛いです……」
パーティーとかは苦手な瑛太だった
「瑛兄、今日は京香をちゃんとエスコートしろよ!」
「解ってます!飛鳥井建設の社長夫人としてエスコートします!」
「瑛智と美智留は佐伯が見てるんだよな?」
「ええ。身重なので佐伯は遠慮させました」
「………瑛兄……」
瑛太は緊張のあまり……目が据わっていた
これでサングラスでもしたら………
ヤクザにしか見えないってば……瑛兄……
康太は心の中で呟いた
「何ですか?康太」
「笑え!」
「………え?」
「だから、笑え!」
康太は瑛太に言った
瑛太は笑顔を作った
…………が、余計………怖かった
「………笑わなくて良い……」
ガックシ……康太は肩を落とした
「………笑顔の方が怖いって……どんだけよ?」
瑛太は情けない顔で康太を見た
「………兄を……虐めないで下さい……」
榊原は仕方なくフォローに回った
「大丈夫です!義兄さんは黙ってても飛鳥井瑛太です!」
榊原なりの最大限のフォローだった
「…………伊織……」
榊原は康太の背中に隠れた
「……僕はフォローは下手みたいです……」
「……伊織……」
どよーんとして康太と榊原と瑛太は、1階のパーティー会場になるレストランまで向かった
レストランはパーティー会場の様相をしていた
1階が立食パーティー形式
2階がディナー形式
だった
プロジェクトマッピングが起動してレストラン内を綺麗な緑で彩っていた
康太は白の燕尾服を着ていた
榊原と瑛太は黒の燕尾服を着ていた
胸には蘭の花を付けて、お迎えする準備万端だった
お客様をお迎えようとしていたら、戸浪海里が一足先に康太に逢いたくて会場に来た
「康太、君に逢いたくて一足先に来てしまいました!」
戸浪は康太に向かって走って来た
その後ろを田代が着いて走っていた
「若旦那!」
康太は両手を広げて戸浪を待ち受けると、戸浪は康太の胸の中に飛び込んだ
「……逢いたかったです……」
「忙しかったんだろ?」
「………忙しかったですが……君……支店に手を回しましたね?」
「………田代……言ったのかよ?」
康太は田代を見た
田代は両手を上げて降参のポーズを取った
「………まさか……社長はスムーズに行く支店の見回りに貴方の気配を感じたんです」
「………犬並みの嗅覚持ってたのかよ?」
「………貴方にだけ社長は鼻がきくみたいです」
田代は笑った
「おめぇがパーティーに間に合わねぇから何とかしろと言ったんじゃねぇかよ…」
「はい……それは黙っておきました」
何という屁理屈……
康太は田代の胸を叩いた
田代はこんな仕草……瑛太と似てると想う
飛鳥井瑛太が愛して溺愛して育てた弟だけあると思い知らされる
「若旦那、オレ等はお出迎えがあるかんな
傍にはいられねぇけど、寛いでいてくれ!
流生達もいるかんな」
康太達は慌ただしく、正面玄関へと向かった
時間より早く三木繁雄がやって来て康太に抱き着いた
「康太、逢いたかったです」
「繁雄!また美味ぇの連れてってくれよ!」
「胃に負担にならないの探しておきました」
「お!近いうちに誘ってくれ」
三木は康太にスリスリした
そして会場へと向かった
次に来たのは相賀和成と須賀直人だった
須賀は康太を見付けると走った
リハビリの甲斐あって、歩くのは問題なく歩けていた
だが走ると……足がもつれたりする
なのに須賀は必死で走った
康太は須賀の所まで駆け寄り、転びそうになる須賀を支えた
「慌てなくてもオレは消えねぇぞ」
須賀は康太を抱き締めて
「逢いたかったのです君に……」
と訴えた
「今度ゆっくり飯食おうぜ!」
「絶対ですよ……」
「おう!楽しみにしてるぜ!」
康太は笑って須賀の背中をポンポン叩いた
相賀が康太の横で笑っていた
「仕事に復帰した直人は私を唸らせるライバルとして頑張ってます
冷徹で血も涙もないと言われてるんですがね……
貴方の前に出ると、我が儘な駄々っ子と化しますね」
相賀は笑ってそう言った
「相賀……」
「いつの間にか……私は須賀の保護者です…」
と相賀は苦笑した
康太は須賀に
「直人……少ししゃがめ」
と言うと須賀はしゃがんだ
「良かったな直人」
康太は須賀の頭を撫でてやった
須賀は嬉しそうな顔をした
「康太、蔵持善之介さんがお越しになられました
相賀さん須賀さん、こちらの方へ」
慎一は須賀と相賀を会場の中へと案内して行った
蔵持善之介が会場の中へとやって来た
善之介は康太を見ると抱き着いた
「………康太……逢いたかったです…」
「今度時間を作る…」
「待ってます!
伴侶殿、この前はお世話になりました
近いうちに打ち合わせをしましょう!」
善之介は榊原と固い握手をして会場の中へと入って行った
清四郎と真矢夫妻が会場へとやって来た
それを皮切りに続々と来客が会場へと詰め掛けた
瑛太や清隆も出迎えていた
代議士の先生も続々とパーティーに出席した
宮瀬建設から宮瀬那智
蕪村建設からは佐々木蔵之介がやって来た
蔵之介も那智も康太の顔を見るなり飛び付いた
「師匠、逢いたかったです」
那智はそう言い康太にスリスリした
「師匠 僕だって逢いたかったです」
蔵之介も康太にスリスリした
その横を渡来揚一朗が娘の麻里を連れてやって来た
渡来揚一朗は総合商社 渡来の社長だった
材木の買い付けや相場を決めるのは渡来だ……と言っても過言ではない日本一の総合商社だった
その渡来が自慢の娘を連れてパーティーに出席したから……騒ぎになった
清隆と瑛太は出迎えをした
堂嶋正義が少し遅れて来るとの連絡は入っていた
一応、出席者リストを見て全員の出席を確認した
出席者のお出迎えを終えて、瑛太と清隆は主賓席に着いた
力哉が司会進行役を担って進めていた
会長の清隆がご挨拶して
社長の瑛太がご挨拶した
康太は締めくくりのスピーチをする事になっていた
パーティー会場ではご挨拶も終わり
関係者の言葉となった
生演奏が繰り広げられるレストランではプロジェクトマッピングの画面から癒し系の映像が流し出されていた
色んな人達が人脈を広げようと虎視眈々に入り乱れて会食となった
瑛太の横に立つ榊原の横に美しい女性……渡来麻里だった
美しい自信に満ちあふれた女性はニコッと笑みを浮かべて榊原伊織に近付いた
「エスコートして下さらない?」
渡来麻里は榊原にターゲットを絞り誘った
榊原は固まった
こんな時……どうやって切り抜けよう……
でも下手に断れない
断って何かあったら……
責任を感じで……
差し出された手を……榊原は取った
「お嬢様、僕はエスコートには不向きです」
お許しを………
と榊原は麻里の手の甲に口吻を落として……
その場を逃げ切ろうとした
康太はその場面を目にして……
『伊織に近づくなバカヤロー!』と怒りに満ちていた
「大丈夫!私の横にいてくれれば良いのよ!」
麻里は榊原の腕に手を回して……榊原に抱き着いた
『……え!………伊織……』
康太は泣きそうになった
子供達と同じ席に座る康太に、子供達は心配した
流生が「かぁちゃ……」と泣きそうになった
音弥が「らいびょうぶぅ?」と聞いて来る程だった
榊原は康太の方を見た
すると怒りを全開にした康太の顔が在った
『………康太……』
身動き取れないでいると、麻里は
「この私と付き合いなさい!」
と、さも当然とばかりに言われた
『………断れ!伊織!』
康太は心の中で叫んだ
伊織はオレのモンだ!触るな!
康太は心の中で怒りまくっていた
「………僕には妻と子供がいます」
榊原はキッパリと言った
麻里は「この私の申し出を断ると言うの?」
と皮肉に笑った
榊原は……こんな時……
どうして良いか……解らなかった
困っていると……
榊原の前に誰かが立ち塞がった
「お嬢さん、彼は妻子のある身
俺は彼が妻を泣かせるなら…
容赦はする気はない!」
麻里の前から庇って一歩も譲る気はないとばかりに麻里を睨み付けた
麻里は怒りを露わにした
「邪魔よ!お退きなさい!
たかが議員如きが私に意見など許せません!」
「たかが一介の議員ですがね、敵に回さない方が良いと想いますよ?」
堂嶋正義の横に現総理大臣の安曇勝也が立っていた
三木繁雄、戸浪海里、蔵持善之介、が堂嶋正義の横に並んだ
榊原真矢が美しい笑顔で麻里の前に立った
「わたくしの息子が何か致しましたか?」
どう見ても麻里の不利だった
その時、プロジェクトマッピングの画面が……
『伴侶殿を諦められよ!
でなくば……我はどんな手を使っても……破滅に導いてやる』
と、弥勒高徳の顔が映し出された
一生は慌てた
そんなプログラムなどなかったから……
『我の名は 弥勒高徳!』
会場がざわめいた
名は知っていても……
お知り合いになりたい者などいなかった
悪名高き呪術師の名前だったから……
麻里は……何なのよ!と弥勒を見た……
そしてその瞳の冷たさに……戦いた
堂嶋正義は
「お嬢さん……彼は……本気です
彼は……飛鳥井康太の為なら……その命惜しくはない
そんな相手は叶う筈などない……
諦められるのが得策と想いますよ?」
と麻里に言い捨てた
康太は席を立った
ツカツカと歩いて行くと、中央で立ち止まった
そしてプロジェクトマッピングに向かって
「弥勒、消えろ!」
と吐き捨てた
『……やだ!康太を泣かせる奴は許しておく気はない!』
とキッパリと言い捨てた
「飛鳥井建設の新社屋完成披露しただぜ?
こんな事で潰したくねぇんだよ!
弥勒、消えねぇと……覇道を断ち切るぜ
今後一生!繋げる気はねぇけど、それで良いのかよ?」
『………う!………では引く……
だが……我は康太が幸せなら……』
「弥勒、明日、海坊主の処へ行く
おめぇも呼びに行ってやるから引け!」
『………解った……』
弥勒は姿を消した
康太はマイクを持つと
「大変お見苦しい場面をお見せ致しました
今のは余興とお想い下さい
人のいる場所に出て来ない弥勒厳正が息子が出たのですから、弥勒院の倅をお見知りおきを!
では、堂嶋正義も参りました事ですし
堂嶋正義さん、お言葉をお願いします」
康太はニコッと笑うと堂嶋にマイクを渡した
堂嶋はマイクを貰い受け
「新社屋完成おめでとうございます
今日は遅くなり申し訳御座いません
交通渋滞に巻き込まれて走ってやって来たのです
真贋、凄いと想いませんか?」
堂嶋は会場の皆の笑いを誘った
榊原の手を真矢が掴んだ
「こっちに来なさい伊織!」
母は怒っていた
真矢は康太を我が子以上に可愛がっていた
だから康太が榊原の子を欲しがるなら、榊原伊織を産んだ母が子供を……産んであげる
と、言って太陽と大空を康太に託したのだ
「……伊織……」
「母さん……言いたい事は解ってます
僕は……断って飛鳥井建設に何かあったら……と思うと身動きが取れなかったのです…
「解ってます….
ですが康太が泣きそうな顔をしてました
だから弥勒さんは出て来てしまったんです
解っていますね?」
「解っています……僕は康太しか要りません…」
「ヤキモチを妬く康太は可愛かったです
ですが…ヤキモチ以上になりそうでね……
康太を泣かせたくない……と想いました」
「母さん……僕はフェミニストではないので……
身動きが取れなかったのです……」
「………お前は顔だけは清四郎に似て……
良いので……女性は好むのです」
何だか酷い言い草に……
榊原は言葉をなくした
康太は立ち上がって来賓に挨拶に回った
渡来揚一朗の所にも挨拶に回った
「飛鳥井家 現真贋 飛鳥井康太に御座います
以後お見知りおきを!」
皮肉に笑って渡来揚一朗を見た
「………こんな小僧が……真贋ですか」
フンッ鼻で笑って渡来揚一朗は康太を見下した
「………総合商社がどれ程偉いか知らねぇけどな
身の程を弁えねぇと痛い目を見るぜ!」
と言い捨てて、康太は渡来揚一朗の横を通り過ぎて行った
「ちょっと待ちなさい!」
渡来揚一朗は康太を呼び止めた
康太は知らん顔して歩みを止めなかった
円城寺貴正の方へと向かった
円城寺貴正
日本で一番の赤蠍(レッドスコーピオン)商事の社長をしていた
武器から食料品まで輸入出来ないモノはない
と豪語する会社だった
日本の輸入の殆どはこの会社のルートを使っているという商事会社だった
「貴正さん、お久しぶりです」
康太は円城寺に声を掛けた
円城寺貴正は50代半ばの紳士だった
顔はイギリス人とのハーフと言う事もあってハリウッド俳優ばりに男前だった
サーの称号をを持つ貴族で、滅多とこう言うパーティーに顔は出さない人間で有名だった
「康太久しぶり」
円城寺は康太を抱き締めた
「相変わらず君は弥勒憑きでしたか…」
「アイツが離れねぇんだよ」
円城寺は笑った
「………弥勒ですからね……死んでも離れないんでしょうね……」
円城寺は呆れた様に呟いた
「今日はパーティーに出てくれて本当にありがとう」
「君の会社のパーティーですからね
何を差し置いても出席しますよ?」
「おめぇはこう言う会場が好きじゃねぇかんな…」
「好きではありませんがね
君に逢えるなら都合は付けます!」
「ありがとう貴正…」
仲良く円城寺貴正と話してる姿を渡来揚一朗は悔しそうに見ていた
目の上のタンコブ
総合商社を生業としている上で何時も競い合っているのは赤蠍商事だった
「……しかし、面白いモノも見れました
いきなり貴方の伴侶に言い寄るとは……
本当に身の程を弁えない愚か者ですね」
円城寺は渡来に聞こえる様に言った
渡来は円城寺に
「それは我が娘の事を仰ってるのですか?」
と文句を言いに詰め寄った
「貴方が国王なれば……言う事を聞かせるのは容易いでしょう
でも此処は日本で、貴方にはそんな力なんてない
堂嶋正義をそこら辺の議員と見下す世間知らずな娘に……足下を掬われますよ?」
「………議員など潰すのに労力など要りません」
「それは……それは……
なら、やってみたらどうですか?
貴方が潰れるか……堂嶋正義が潰れるか」
「………私が……議員如きに潰されるとでも?」
「議員如きが、この日本の礎を築いているのですよ?
何もかも横槍が入ったとしたら……貴方にとっても…ダメージになると想いますけど?」
円城寺はニヤッと嗤った
そして「破滅の序章……を唱えられたら……貴方は確実に破滅に向かう……そうならない事を祈ります
このパーティーの出席者の大半が飛鳥井家真贋の人脈だと想いなさい」
とトドメを刺した
そして円城寺は渡来の横を離れた
飛鳥井家真贋……
まだ小僧の様な顔をした……真贋に、それだけの力があるのか?
渡来には解らなかった……
渡来揚一朗は娘の麻里を連れて帰って行った
帰りの車の中で麻里は
「お父様、私…あの男を婿に貰いたいのです」
と告げた
こんなプライドを傷付けられた事ない
「止めておきなさい!
彼には妻も子供もいると言う……」
「戸籍上は彼は独身のまま……出来ない事はないわ」
渡来は驚愕の瞳を……麻里に向けた
「……麻里……お前は彼を知っているのか?」
「有名ですものね!
あんなチビと結婚したなんて言って……
男同士の癖にね……
彼は頭脳明晰の上に、あの顔でしょ?
かなり有名人なのよ
その彼を私のモノにしたなんて告げたら皆驚くでしょうね」
麻里は嬉々として言った
「…………止めておきなさい!
これ以上動くなら……私は許さない」
「………お父様……」
「飛鳥井康太には関わるな……
業界では……有名な彼を怒らせたら……破滅に向かうしかないそうです
実際……盛田が破滅の序章を唱えられ破滅に向かった
それを見届ける前に……当主は自殺した……」
「………え………」
麻里は言葉を失った
「飛鳥井源右衛門の上を行くそうだ
あんな子供みたいな顔して……
親しくなれば冨をもたらし、敵に回れば破滅に向かう
私はあんなガキに跪くのはご免だ
なれば関わらぬ様にするしかあるまいて!」
「………解りましたお父様……」
リスクを冒してまで手に入れるべき相手ではない
麻里はそう思い……近付かないと決めた
パーティー会場は、さっきの諍いなどなかったかのように賑わいでいた
康太は席に戻る事はなかった
近寄る人達の真ん中に立っていた
あんな事があれば……
康太は黙って座っている訳にはいかない
解っている
だが……榊原は康太に無理をさせて……
後悔していた
自分がもっと上手く立ち回っていれば……
一生は自分を責めている榊原に
「旦那……おめぇの所為じゃねぇ!」と言葉を掛けた
「……一生……僕は社交術を習うべきかも知れません…」
「……ただでさえ忙しいのに……
そんなの勉強していたら康太といる時間
なくなるぜ!止めときなはれ!」
「………康太といる時間がなくなるのは嫌です……」
榊原が呟くと流生が
「りゅーちゃ かぁちゃ いちゃい!」
と笑って言った
子供達は次々に
「かけゆも!」
「おとたんも!」
「ちなも!」
「きゃなも!」
と楽しそうに言った
子供達との時間も少なくて寂しい想いをさせいてる
榊原は立ち上がって我が子を抱き締めた
「「「「「とぅちゃ!らいちゅき」」」」」
我が子が言ってくれる言葉は魔法の様に、榊原の心を和ます
「沢山、食べましたか?」
「りゅーちゃ」
ポンポンを叩いて満腹だとアピールした
「慎一、スィーツとか貰って帰りましょう」
「はい!もう飛鳥井家の分は確保して来ました」
慎一はそつなく立ち回り確保済みだと告げた
「僕は食べませんが……流生達が美味しそうにスィーツを食べてましたからね……」
「美味しいに決まってます
若林シェフのスィーツなんですからね!」
「若林シェフのでしたか!
なら僕も食べれるスィーツありますね!」
「ええ。確保済みです」
慎一は楽しそうに、そう答えた
清隆も玲香も家で見せる顔ではなく、社交界で生きている気品高き顔をしていた
瑛太も京香も、飛鳥井建設を背負って立つ責任を胸に、立ち振る舞っていた
今日の京香は美しかった
飛鳥井建設社長夫人として毅然と立ち振る舞っていた
榊原はそんな家族を見て
「………僕は……期待に添えてませんね……」
と悲しそうに呟いた
一生が何か言おうとしたら……
康太がツカツカと榊原の傍にやって来て、榊原の手を掴んだ
榊原は康太に引っ張られて……
パーティーの中心まで連れ出された
康太は榊原の手を強く握り締めた
康太と榊原の横で真矢が誇らしげに笑っていた
「真矢さんの息子さんでしたか!」
と、知らない誰かが言うと
「そうなんですよ!
私の次男ですの!
長男は皆様ご存知の榊原笙
そして次男が、榊原伊織
私の息子ですの!
顔だけは清四郎に似て男前ですが
性格は……几帳面で面白味もないんですの!」
真矢は、ほほほ!と笑った
榊原は、母さん………何も今それを言わなくても……
と、ドヨーンとした
清四郎が息子の肩を抱いた
落ち込んだ榊原の前にやけにイケメンが姿を現した
「康太君の伴侶にやっとお目にかかれました!」
と笑って目の前に立った、かなりのイケメンに榊原は目を向けた
「篠崎健人と言います」
握手を求められ…榊原は握手した
康太は「篠崎青磁の息子だ」とサラッと言った
篠崎青磁……え……えぇ…………えええええええ!
「………篠崎さんの息子さんですか!」
やっと考えとイメージが合わさって榊原は声に出した
「そう。売れっ子なんだぜ?」
「…………知ってます……」
今 売れに売れてるboarderのリードボーカル
テレビを付ければ目にしない日はない……
とまで言われる人気ロックバンドだった
まさか……彼が……
篠崎青磁の息子だったなんて……
「健人がデビューしてぇって言ったからな
直人に託してみたんだよ
そしたら人気出ちまってな、流石直人の手腕はすげぇわ!」
康太はケラケラ笑った
健人は伴侶の顔をマジマジ見た
「康太……こんな男前じゃ……俺がフラれたのも納得だわ!」
「だろ!オレの伊織は良い男なんだぜ!」
「………惚気はもう良いです……
失恋した俺の前で惚気ですか?」
「健人、おめぇの相手はオレじゃねぇ!」
「誰かも教えてくれないのに……」
「言えば、おめぇの人生が狂う」
「解ってます!
今度コンサートに来てよ」
「おう!ぜってぇに行くかんな!
それより、おめぇ、少し来い!」
康太は榊原の手を離すと、篠崎健人の手を掴んだ
そして子供達のいる席に向かった
「隼人!」
康太に呼ばれて隼人は振り向いた
「あ!一条隼人………すげぇ……本物だ……」
篠崎は感激のあまり……固まった
榊原は康太の後を着いて来て、康太の背中から腕を回し引き寄せた
「隼人、篠崎の息子で、健人!
仲良くしてやれ!」
何という説明……
篠崎は……憧れの俳優を目の前にして……
もっとちゃんと説明してくれよ……と思った
「隼人、コイツは馬バカの父親を持つからな……
一人で育った様なもんだ
喧嘩ふっかけて来たかんな打ちのめしてやったんだ!
そしたら篠崎の息子だった訳だ!」
「そうなのか……」
隼人は納得した
健人はそれで納得しちゃうのぉ~と不思議がった
「おめぇと対して変わらねぇ育ち方してる!
それを叩きのめして作り替えた
お前と同じ世界に生きてんだ
仲良くしてても損はねぇと想うぞ!」
「解ったのだ!損がないなら付き合うのだ」
隼人は篠崎に手を差し出した
篠崎は隼人の手を取った
「オレ様は飛鳥井康太の長男なのだ
宜しく頼むのだ」
「俺は飛鳥井康太の舎弟だと自負してる篠崎健人
宜しく隼人さん!」
「気が合うかも知れないのだ……」
「俺も逢ってみてそう思いました!」
「今度カラオケに行くか?」
隼人が言うと一生が
「………止めとけ……一晩中アニソン聞きてぇなら止めねぇけどな……」
と、忠告した
健人は瞳を輝かせて
「え?アニソン……一晩中歌うんですが?
是非一度ご一緒して下さい!
俺、一人でアニソン歌いまくります!」
「おお!お仲間なのだ!
なら今度好きなアニメの主題歌一緒に歌うのだ」
「それ良いっすね!」
隼人と健人はすっかり意気投合した
そんな光景もパーティー客の注目を集めた
それより気になるのは……
パーティー会場の片隅に、めちゃくそ可愛い子供が5人座っていた
この子達は誰なの?
と、皆が想っていた
会場に来ている皆が、あの子達は誰?と想うが……
セキュリティガードが付いていて近付く事すら叶わなかった
飛鳥井康太の横にも影みたいに男が一人着いていた
その影は寸分違わず康太の傍にいて離れる事はなかった
だが、榊原が横に来ると影は離れて二人を見守っていた
瑛太が康太の傍までやって来た
「康太、飛鳥井家真贋として締めくくりなさい!」
そう言われて康太はマイクの方へと歩いて行った
力哉がマイクを持って康太に渡す為に立っていた
近付いた康太に、力哉はマイクを渡した
康太はパーティー会場の来客の方を向いて深々と頭を下げた
そして顔を上げるとニコッと微笑んだ
「今日は飛鳥井建設、新社屋完成披露パーティーにご出席、本当にありがとう御座います
飛鳥井建設は蔵持善之介さん所有の警備システムを導入して、会社丸ごとセキュリティシステムを入れました
外部の者が入り込むのは不可能な要塞を建設しました
来世まで生き残る為に絶対な産物を手に入れ、生き残りを懸けます
飛鳥井建設に押し入ろうとする暴漢は作るつもりはない!
無血の砦を作るつもりです!
飛鳥井家真贋が飛鳥井建設を絶対なモノへと導いて行く
その手始めが新社屋完成披露パーティーだったのです
そのパーティーも無事に終わりを迎えられ本当に良かった
参列者の皆様 本当にありがとう御座います
今日の良き日を…亡き源右衛門も喜んでくれてると想います
本当にありがとう御座いました
この言葉を持ってご挨拶は終わらせて戴きます」
康太は深々と頭を下げ、礼をした
その挨拶がパーティーの終わりを告げたていた
出席者にお土産を渡たし、3時間ちょっとのパーティーは終焉を告げた
パーティー客をお見送りに出た康太は皆に頭を撫でられ抱き締められ……
次の約束を取り付け、そのスケジュールを管理する力哉は忙しそうに手帳に明記していた
主席者全員を見送り……
その日のパーティーは終わった
ともだちにシェアしよう!