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第64話 距離

飛鳥井建設が新社屋に移り 慌ただしい日々は成りを潜めて平穏な日々が戻って来た 季節は夏から秋へと移り変わっていた そんな平穏を取り戻した日々に 飛鳥井家真贋だけが忙しく駆け回っていた 康太にはニック.マクガイヤーと言うガードが付いていた 康太はほぼニックと共に行動していた 何をしているかは…… 榊原も、秘書の力哉も解らなかった 「………力哉…」 力哉は忙しく動き回っていた 「何ですか?」 「康太は何をしているのですか?」 「それですね、僕なりに探りを入れて見ました 一生や聡一郎に聞こうとしたんです するとですね一生は捕まらない…… 聡一郎に至っては悠太が言うにはここ一ヶ月逢ってもいないそうです 慎一も雲隠れです……探りの入れようもないです 下手な話……日本にいるかも怪しいと踏みました」 「………え?日本にいない?」 「一生のパスポートが消えてました…」 「………え?……康太……飛行機嫌いです…… パスポート……誰が管理してるのですか?」 「それ、瑛兄さんに問い合わせました 康太はパスポートは自分で持ってます」 「それ……僕……知らないです……」 「社内には栗田も陣内も蒼太さんもいません 瑛太さんも出掛けてます 何かあったのは確かなんですがね……僕では掴めません……」 「僕も……探りを入れてみましたが……無理でした」 榊原は窓の外を見た 康太…… 逢いたいです…… 康太…… 何処にいるんですか? 榊原は康太に想いを馳せながら…… 振り切る様に仕事に没頭した 康太はフィンランドに来ていた ニック.マクガイヤーが康太に 「Today's schedule? Kouta」と予定を聞いて来た 「I go to dealings」 不敵に嗤って康太は取引に行く……と答えた 隣には四宮聡一郎と佐々木文弥がいた 四宮興産の社長と副社長は北欧のルートへと足を運んでいた 今回康太は同席させて貰いに着いてきていた 「マック、日本語で話せよ!」 マックと言われてニックは嫌な顔をした 思い起こせば……やはりマックや辞めさせとくべきだった ……と想う ニックは一応……康太に申し入れした 「………マックは嫌です…… 何故、マックなんですか?」 「だってよぉ、お肉は嫌なんだろ?」 ニックだから……康太は「お肉…」と呼んだ ニックは日本で育っただけあって日本語はペラペラだった 「何で肉やねん!」 ニックは大阪弁でツッコミを入れた 「ならマックな」 「何でやねん!」 ニックの蒼い瞳が怒りで濃くなる 「ニックって噛みそうで……親しみ込めてマックにした」 「ルーファスをルーと呼んでたじゃないですか!」 「ならニーか、マーか?」 それも嫌だった…… 「ニックで良いじゃないですか?」 「親しみを込めれない」 どう言う屁理屈よ?それは? ニックは嫌がった 「日本人はマクドナルドをマックと言うそうですね?」 「関西人はマクドだぞ?」 「………貴方のいる地域はマックじゃないですか?」 「マック!」 「何ですか?」 「オレはマックには行かねぇ!安心しろ!」 康太が言うと聡一郎も 「あぁ、僕達はマックには行きません だから安心して下さいマック!」 とフォローを入れた ニックは……無駄な抵抗は辞めた 「マック、敬語じゃなくて良いぞ おめぇ話し出すと大阪弁で話すやん そのまんまで構わねぇ…」 そう言われ外部の者がいない時は…… 砕けた感じで話すようになった ニックは康太と共にフィンランドの地に降り立った 康太が伴侶を連れずに遠出は珍しかった ニックの携帯が鳴り響いた ニックは「Hello」と携帯に出た 「Please tell me your name and an important matter.」 名前と要件を教えて下さいと相手に問い掛けた 「Iori Sakakibara Where is Kouta?」 榊原伊織からの電話だった ニック.マクガイヤーの雇用主は彼だった 依頼者も彼だった 「Kouta is in Finland.」 「……Excuse me,...... once again.」 「Kouta has come to Finland.」 「Don't you mind in Japanese?」 「Yes. It's all right with Japanese.」 「ニック……康太はフィンランドにいるのですか?」 榊原は呆然として……ニックに問い掛けた 「そうやねん! フィンランドのど寒い国に来やがったんですわ」 「………誰と?康太と一緒に行ったのは誰ですか?」 「四宮聡一郎と佐々木文弥ですねん」 「………一生と慎一は?」 「来てまへん!」 「…何故……フィンランドに?」 「それはコタに聞くしかありまへんわ」 ニックはそう言い携帯を康太に渡した 「伊織か?」 「康太……君…フィンランドにいるんですか?」 「伊織……すまねぇ… 逢いたいと思っても逢いにいけねぇ距離だかんな…」 「何をしに行ったか教えて下さい」 「飛鳥井建設に資材が入らなくなったんだよ」 「……え?……資材が……何時から?」 「新社屋完成披露パーティーの後くらいからだ……」 「……で、何故フィンランド?」 「四宮興産の北欧ルートも…壊滅的な被害を受けた このままでは飛鳥井建設には資材が届かねぇ…… そして四宮興産が唯一強みにしてきた北欧ルートが壊滅したら……会社にとって大打撃だ」 「………康太……一言 ……何故言ってくれなかったのですか?」 「……おめぇの顔を見たら……離れたくなくなる 今でも逢いたくて死にそうなのに… 声なんか聞いたら帰りたくなる……伊織…… おめぇのぬくもりを感じずには眠れねぇ…… 伊織……逢いたい……我が儘言っちまうだろ? そしたら困るやんか……」 「………康太、少し待ってて下さい! 君のいる場所へ僕が行きますから!」 そう言い榊原は電話をぶち切った 「……伊織!おい!伊織!」 康太は叫んだが……榊原の声はもうしなかった 電話を切った榊原は会長室へ向かった ノックをすると清隆がドアを開けてくれた 「義父さん、康太はフィンランドにいるとの事…… 知ってましたか?」 榊原の言葉に清隆はギョッとした 「……知りません……フィンランドぉ?」 最近康太を家でも会社でも見ないと想ったら…… フィンランドにいたのですか…… 清隆は驚愕の瞳を榊原に向けた 「資材が……入って来ないとか?」 「………らしいです その為に瑛太は駆けずり回ってます」 「康太はその為にフィンランドにいるそうです」 「……寒がりのあの子が……」 清隆は目頭を押さえた 「義父さん、僕はフィンランドに行きます! 何としてでもフィンランドに行って康太の手助けをして来ます!」 「解りました! 外務省に友人がいます その友人に口利きして貰いチケットを手に入れましょう!」 「……義父さん……僕は旅立てる様に支度をして来ます!」 榊原は慌ただしく会長室を出て行くと会社を後にした 電話を切った康太は唖然としていた ニックは康太に 「どうしたんだよ?」 と問い掛けた 「……伊織……来るって……」 「フィンランドに?」 康太は頷いた このカップルは本当に…… 離れて生きられないんだから……こんな面倒な事をしなくても良いのに…… とニックはつくづく想った 「では何時到着するのか? メールを送ります」 「………ん……伊織に逢いたいなぁ……」 康太の心には…… 榊原に逢いたい……で一杯だった やらねばならない事があるのに…… 伊織…… 怒ってる? ごめんな 本当なら……ちゃんと言って行きたかった だけど……離れたくない想いが…… 榊原に言い出せずに来てました 榊原の顔を見たら…… 泣いてしまう 逢いたい……って泣いてしまう だから電話もしなかった…… 康太は榊原の来る前に……予定した面会だけは済ませとこうと……立ち上がった ニックは榊原にホテルの名前と部屋番を知らせた そしてフィンランドに到着したら教えて下さいと書いて送信した フィンランドに来てからの康太は空元気なのは解っていた 愛する榊原がいないと…… この人はこんなも儚くて……小さいんだと……想った 清隆が外務省の友人にフィンランドに行きたいんだけど、便宜を図って貰えないか…… と問い合わせた 丁度その時総理大臣をしている安曇勝也は外務省に来ていた 渡航担当者が失礼……と電話に出た相手は飛鳥井清隆だった 「お!飛鳥井どうした!」 渡航担当者が親しげに飛鳥井と言うから安曇は、電話を替わってくれと申し入れだ 「もしもし、安曇勝也ですが 飛鳥井の方ですか?」 「あ!勝也さんでしたか! 私は飛鳥井清隆です」 「清隆さんが外務省関係者に何のお電話なんですか?」 清隆は安曇に康太がフィンランドにいる事と 榊原がフィンランドに行きたいと伝えた 「康太がフィンランドに…… あの話は本当なんですか?」 「あの話?何なんですか?」 「飛鳥井建設が資材が入らなくて困ってる……と言う噂です」 「………それ、かなり広まってますか?」 「この噂事態……意図的な何かを感じていました 伊織はフィンランドの康太の所に行きたいのですか?」 「はい。一時でも早く行かせてやりたくて旧友を頼りました」 「私はこの後すぐに日本を立ちます 北欧へ首脳外交会談に出掛ける所です 伊織を乗せてヘルシンキ・ヴァンター国際空港まで行きます」 「……え?……宜しいのですか?」 「伊織は康太に逢いたいでしょう! そして誰よりも伊織に逢いたいのは康太でしょ? 二人は離れてては駄目なんです」 「……伊織に伝えます!」 「これから空港に来る様に言って下さい」 「解りました」 「空港に着いたら電話をするようにお願いします そしたら秘書に迎えに行かせます」 「解りました!今すぐに伝えます」 清隆は安曇との電話を切ると榊原に電話を掛けた 安曇がヘルシンキ・ヴァンター国際空港まで一緒に行ってくれる事を伝えると、榊原はすぐに行きますと言い電話を切った 清隆は二人の子供の安否を祈った 康太…… 伊織…… どうか……無事に日本に還って来れます様に… 祈って…… 自分が今出来る最大限の仕事を始めた 瑛太も…… 康太の駒も…… 必死で動いているのは解っていた 明日の飛鳥井を築く為に…… 必死で動いていた 清隆は旧友に頼んで…… 資材の入らぬ原因を調べに当たった 願わくば…… 康太の築く明日が…… 崩れたりしませんように…… 願うばかりだった 清隆は榊原に連絡を入れた 「伊織、安曇勝也さんが空港に着いたら連絡を入れたら迎えに行くと言ってくれました」 『解りました 義父さん、これからタクシーを呼んで行きます』 「伊織!」 『何ですか?義父さん』 「気を付けて……父はそれだけを……祈ってます 君と康太が仲良く日本に還る日を待ってます」 『義父さん……ありがとう御座います…』 榊原はそう言い電話を切った タクシーを呼び、来たタクシーに飛び乗った 運転手に「速く走って下さい」と榊原は頼んだ 幸い道路は空いていて、スムーズに空港まで走って行けた 空港に近づくと榊原は安曇に連絡を入れた 「榊原伊織です」 『伊織、何処ですか今?』 「あと少しで空港に着きます」 『なら秘書が待ってます』 安曇はそう言い電話を切った 空港に到着すると榊原はカードで支払い、タクシーから飛び降りた 空港の中へ走って行くと一人の男が榊原に近付いた 「榊原伊織さんですか?」 「はい!榊原伊織です」 「時間がありません急いで下さい」 榊原は荷物を持って秘書と共に走った 秘書に促されて走る 「伊織さんパスポートを!」 榊原は秘書にパスポートを渡した 榊原に変わって安曇の秘書が搭乗手続きをした 榊原は言われるままパスポートを返されて…… 気が付くと飛行機の中だった 飛行機の中には安曇勝也が座っていた …………榊原の知る……飛行機とは形相が違った ホテルのラウンジ並みの畿内に…… 榊原は言葉を失った 「伊織、物凄い偶然ですね きっと康太が呼んだんですよ」 安曇は笑って榊原を受け入れてくれた 秘書に安曇の横に座る様に促され、座った 「………伊織……大丈夫ですか?」 「勝也さん……本当にありがとう御座いました」 榊原は深々と頭を下げた 「こんな偶然はないです 本当に康太が引き寄せたとしかないと私は想ってます」 「………勝也さん…僕は康太がフィンランドにいるなんて知りませんでした……」 「飛鳥井の家の為……でしょ? 彼は……愛する君を巻き込みませんたくなかったんでしょうね……」 「………勝也さん……僕は……この命が…… 亡くなったとしても……康太の傍に逝きたい…」 「君達二人は一緒にいないとダメだよ」 「勝也さん……」 「離れたら……心配で堪らない…… 君を置いて逝く康太は考えたくない……」 榊原は自分の手を……強く握り締めた 康太……傍に逝きます 待ってて下さい 君が何と言ったって…… 僕は離れる気は皆無なんです 死んでも……離れる気はありません! 康太……君は僕のいない場所では生きては行けないのに…… 僕も君のいない場所では生きては行けない…… そうでしょ?康太…… 逢いたい…… 君の顔を見ないと……僕の心は壊れてしまうよ? ねぇ……君は僕の顔を見なくても…… 生きて逝けるの? 僕は…… 君がいないだけで…… 世界が色褪せて…… 輝きを忘れてしまうよ? 康太…… 康太…… 僕が逝く事を許して下さい 榊原は不安で一杯だった 康太が許してくれなかったら…… 考えるだけで…… 榊原の胸は張り裂けそうだった 成田(成田国際空港)からヘルシンキ・ヴァンター国際空港まで 所要時間 約10時間20分 康太は……… どんな気持ちで…… 遠離る距離を過ごしていたのか? 離れる日本を眺めていたのだろう…… 康太…… 君は僕の事を想ってくれましたか? 僕は…… こんなにも遠く離れてしまった君を追います どれだけ離れようとも…… 僕は君を追います この命尽きようとも…… 尽きた後も…… 僕は君を追います 僕には君しかいません 君がいるから僕は生きているんです 君のいない世界は色を失って…… 総てがモノクロの世界になる 逢いたいです康太…… 愛してます康太…… 君しか愛せません 康太はアポを取った仕事を片付けてホテルにいた 榊原は来ると言った 来ると言った以上は必ず来る 康太は榊原の想いが嬉しかった 逢いたかった 聡一郎は康太に 「伊織は来るんですか?」と問いかけた 「来ると言ったら伊織は何としてでも来る……」 「ならダブルの部屋を取らないと駄目ですね」 フィンランドに来て、聡一郎は康太に添い寝していた 佐々木文弥はツインベッドの横のベッドを使っていた ニックはソファーに寝泊まりしていた 聡一郎は康太を抱き締めた 「壊滅的だった北欧ルートも何とか持ち越しました」 聡一郎が言うと佐々木も 「円城寺貴正さんの協力の元、資材の買い付けも出来ました そろそろ帰ろうと予定を立ててるんですが?」 「オレはまだ還れねぇ…… やられた事は倍返しにしねぇとな! 資材が入れば良いと言う安易な結末なんて望んでねぇんだよ!」 康太はそう言い唇の端を吊り上げて不敵に嗤った 瞳は……その先を見据えていた 甘いだけではないのが……こう言う時に味あわされる ニックも康太のチョロい容姿に騙されると痛い目に遭うと痛いほどに思い知らされた 倍返し 本当に倍返しにする 言った言葉は二度と引っ込めない 有言実行を地で行く 聡一郎は「力哉が一生や慎一と連絡が付かないと言ってました……」と言うと 康太はニャッと嗤った 「一夫や蒼兄、陣内とも連絡が付かないと零してたろ?」 「……何をやらせてるのですか?」 「倍返しだよ!聡一郎 やられたら、やり返さねぇとな!」 聡一郎は言葉もなかった 「一生はカイロ、慎一はインド、陣内はニューヨーク 一夫はロシア……散らばって倍返しにしてくれる手筈に協力してくれてる」 「………一生はやはり日本にいませんでしたか……」 「オレは飛鳥井家 真贋…… ナメた事をされたら動かねぇとな…… その仕上げも、もうじき終わる オレが日本に還る頃にはカタがついてる」 「……何をやられるのですか?」 「聞かねぇ方が身のためだぜ聡一郎 牙を剥くなら……やられる前にオレはトドメを刺す 例え親でも兄弟でもな…… オレに歯向かうならば! オレは躊躇する事なくトドメを刺す! 聡一郎、それがお前でもな!」 「君にトドメを刺さられるなら僕は笑って死んでやります 何年君といると想ってるんですか! 僕が君に歯向かう? 寝言は寝て言いなさい!」 聡一郎は康太の頭をペシッと叩いた 康太は情けない顔を聡一郎に向けた 「痛ぇよ……聡一郎…」 「んとにこの子は! 伊織が来たなら明日の夜まで補充して貰いなさい! んな考えをする程にヤサグレちゃって!」 「……聡一郎…」 「部屋を取っておきます!」 聡一郎は佐々木に 「激しく動き回ってもギシギシ言わないダブルベッドのある部屋を予約して来て下さい」 と注文した 「………聡一郎……それ……言えません……」 「仕方ないですね! 僕が予約して来ます! マック、文弥! 康太を抱き締めていて下さい」 聡一郎はそう言い部屋を出て行った ニックと文弥は康太を抱き締めた もう何日……この人は寝てないんだろ? 寝ている姿を見た事がない 聡一郎はそんな康太を見て…… 悲しそうな顔をしていた 暫くして聡一郎は戻って来た 「康太、君の携帯……海外で使えない事…… 伊織は知ってますか?」 「……多分知らないと想う……」 「……君の携帯……何時から伊織の名義になったんですか?」 「式を挙げた後……伊織が契約してくれて…… オレは契約状況知らなかったんだよ……」 聡一郎は頭を抱えた 康太の携帯は海外では役に立たなかった 契約者は榊原伊織 康太では契約の変更は……無理だった 「……こんなんなら……自分で作っとけば良かった」 「それ……伊織に言わない方が良いですよ」 「……え?あんでだよ?」 「………君が他の誰かに掛けるの……嫌がってましたからね……」 「伊織しか要らねぇって何万回言えば安心するんだよ?」 「…………一日……何万回言っても…… 伊織は満足も安心もしませんよ……」 「……オレ……伊織の声聞きたかったのにな……」 「……聞くだけで治まれば良いけど…… テレフォンセックスに突入になると想いますよ」 聡一郎の言いぐさに……康太は顔を真っ赤にした 「康太、今日はもう寝ますか? マックが教えた部屋番は、この部屋なので君はこの部屋に残り伊織を待ってて下さい 僕達は借りた部屋へと移ります」 聡一郎はそう言うと荷物をまとめて部屋から出て行った ニックも佐々木も聡一郎と共に部屋を後にした 康太は一人、榊原の到着を待った 日本から此処まで10時間半 伊織… 今 何処の空にいる? 康太はずっと榊原を待っていた 日本から10時間半近く掛けて来てくれる 部屋を出てロビーで待っていたい想いはある だが、榊原に合う前に拉致られて連れ去られたくない… 多分向こうは倍返しの余波が知れ渡ってる頃だろう 手を回され…… 榊原を哀しませたくはない…… 康太は榊原の到着を待ち兼ねていた 何時に日本を出たんだろ? 榊原と電話したのは何時頃だったかな? 逸る想いを押し止める康太は窓の外を見ていた 伊織…… お前はどんな想いで…… ヘルシンキ・ヴァンター国際空港までの道程を来るんだ? 何を想って…… 伊織…… 伊織…… 逢いたい…… 逢ったら泣いてしまう 口吻されたら気絶してしまう…… 嬉しすぎて…… 正気じゃいられない…… 伊織…… オレを埋めてくれ お前の存在のない世界では…… オレは満たされず飢えていってしまう…… 伊織が欲しくて 伊織のぬくもりが欲しくて…… 伊織の匂いがしない世界にいると…… 涙が止まらなくなる…… 恋しくて…… 愛した男が欲しくて…… 力強い腕に抱き締められたくなる…… 足らない…… 伊織が足らない 伊織…… 伊織…… 康太は窓の外を見て…… 榊原に焦がれた 自分の身を抱き締めて… 寒さに身を震わせた…… 羽田空港を昼には飛び立ち 日付変更線を空で迎えて尚……飛び続け 榊原はやっとこさヘルシンキ・ヴァンター国際空港に到着した 安曇は康太のいるホテルに宿泊するから、一緒にホテルまで行きましょう!と要ってくれた 榊原は本当に有難い申し入れを受け入れて、ホテルまで送って貰った 携帯のメールを開け、ニックからの届いたメールを見た 榊原は康太の部屋番をフロントに告げて、部屋までの案内を口頭で受けた 大体場所は解りエレベーターに乗った 逸る想いを押さえて、榊原は康太の部屋へと急いだ 部屋の前に立ちドアをノックしようとすると…… 急にドアが開いた 「………え?………」何で……… 榊原が驚いていると…… 目の前に康太が現れ……ニコッと笑い榊原に抱き着いた 榊原は信じられなかった…… 逢いたかった康太が目の前にいるのに…… 動けずにいた 「伊織………逢いたかった…」 康太は榊原に抱き着いた……その手が震えているの気付くと…… 榊原は胸の中の康太を強く抱き締めた 「康太……逢いたかったです…」 榊原は胸に顔を埋めている康太の顔を上げさせた 両手で優しく包み込む様に上を向かせると…… 康太の瞳から涙が溢れて流れた…… 榊原はドアを閉めると鍵を掛けた 「康太……話したい事は沢山あります……」 「ん……でも……話よりも先に伊織が欲しい……」 「僕も君が欲しいです…」 康太は榊原の腕を掴むと寝室のドアを開けた 榊原を寝室に招き入れドアを閉めると 康太は服を脱ぎ始めた 「伊織……」 榊原のネクタイに手を掛け康太は問い掛けた 「……オレのいない間……どうしてた?」 ズボンのベルトに手を掛けて……前を寛げると…… 下着を押し上げてる榊原の性器に触れた 「康太は? 僕が傍にいない間……どうしてました?」 「オレは伊織が触らなきゃ性欲は皆無だ…」 「僕も君がいなければ…… 性欲は皆無です」 榊原は康太の唇に触れて………唆した 「このお口で……確かめれば良いです 僕の味を覚えているでしょ?」 榊原の濃い味を覚えいるだろう……と榊原は唆した 射精(だ)したか…… 射精(だ)していないか…… 自分のお口で確かめろ……と唆す…… 「なら伊織の味を確かめるから…… 伊織はオレの締まりを確かめろ……」 誰も欲していない 指すら挿れていない その場所は榊原伊織の為だけの場所 青龍だけの為にある場所なのだから…… その目と舌と指で確かめろ……と康太は訴えた 「なら……服を脱いだら……お尻をこっちに向けて僕に乗って下さい」 榊原は服を脱ぎ捨て全裸になるとベッドに寝そべった 康太も服を脱ぎ捨て全裸になると榊原の上に跨がった 「伊織……キスして……」 康太の唇に…… 優しく口吻すると……理性の糸は切れた 口腔を貪る接吻になり執拗に口腔を犯した 「……んっ……伊織……イッちまう……」 接吻だけで達してしまえる…… 榊原に触られるだけで細胞が歓喜して暴走を始める タチが 悪かった 互いの体躯だけが麻薬の様に欲して狂うのだから…… 榊原は唇を離すと、康太にお尻を向けさせた 硬く閉じた蕾は慎み深く閉じていた 連日触れていた紅さもない 本当に誰の手も…… 自分の指すら挿れていない証拠だった 榊原は硬い蕾に口吻た 康太は榊原の味を味わうべく口に咥えた 舐めて……吸って扱くとみるみるうちに先走りを零し……濡れて行った 「…ぁ……康太……君のココ……本当に硬いです… ローションはないので君の精液を下さい」 榊原は康太の性器を舐めて吸った 陰嚢を揉んで射精を促そうとした 「……伊織……んぁっ……ローション……枕元にある…」 「…え?……」 何故ローションが? 榊原は枕元に手を伸ばした するとローションのボトルが枕元に転がっていた 「…君……これ……」 榊原はローションを手に取り呟いた 「伊織が来るって言ったから……マックに頼んで買いに行って貰った……」 ニックに…… それは……嫌な買い物だったろう…… 「良く承知しましたね……」 榊原はローションを手に取り……康太のお尻の穴に塗り込んだ 「舐めて解す時間も待ちたくねぇんだよ! 伊織に触ったら伊織が欲しくなる……」 榊原の肉棒を握り締めて……照れ隠しする康太を抱き締めたくなり、康太を抱き上げた 抱き上げて膝の上に乗せると、執拗な接吻をした 指は康太のお尻の穴を解した 指を出し挿れすると康太は仰け反った 榊原は康太の尖った乳首に吸い付いた 紅い跡を散らばめて康太を確かめる 「もう良いから……挿れろ……」 康太はそう榊原に訴えた だが榊原の方がまだ余力が残っていた 「欲しい時は、どう言うんでしたか?」 榊原は残酷に微笑んだ 自分ばかり欲しがって康太を追い掛けてばかりいる 康太もちゃんと榊原が欲しいと言って欲しかった 解っている…… 康太は飛鳥井の為なら榊原と離れて目的を必ず完遂する そこに自分の自我はない 解っている 解っているけど…… 離れていた間……苦しかったのは自分だけじゃかいと教えて欲しい 「Please……Iori's penis.…… Please put it in.……」 「………何で英語ですか?」 「………日本語だと……恥ずかしい……」 「恥ずかしくても…… ちゃんと君のお口で言って下さい」 「………伊織……硬くて太い伊織のアレを……挿れてくれ……」 「何処に挿れて欲しいんですか?」 康太は榊原の上から下りると俯せになりお尻を高く上げた 「ココ……」 康太はそう言いお尻の穴に指を挿し込んだ そして開く様に榊原に見せ付けた 「挿れて……ねがっ……早く……」 榊原はローションを手にすると康太の秘孔にローションを垂らした そして何度も指を挿し込み……… ぬちゃっ……ぬちゃっ…… と秘孔を湿らせた そして自分の性器にもローションを垂らして…… 康太の秘孔に挿入した 「………あぁっ……イイっ……伊織……もっと奥……」 欲張りな腸壁が榊原を飲み込み煽動する 締め付けられ蠢かれ……纏い付き……搦められる 康太の秘孔は狭かった 「……っ……康太…緩めて…」 「無理っ……どうして良いか解らねぇよ……ぁん……止まらねぇ……」 腰が揺れ……榊原の肉棒を咀嚼する 榊原は康太の手を掴むと、結合部分に触れさせた 「君と僕と……繋がってます…ぅ……絞めないで康太……」 「伊織……久し振りすぎて……どうして良いか判らねぇってば……」 「僕が挿れる時、息を吐いて 僕が抜く時、息を吸ってみて下さい 出来ますか?」 「やる……伊織…気持ちいい?」 「気持ちいいですよ 君とするのに気持ちいいに決まってるじゃないですか!」 「オレも気持ちいい…」 康太は榊原を迎える為に体躯の力を抜いた 榊原の肉棒が体内を這いずる感触に身を震わせた 腸壁が榊原を搦め取るから…… 性器の血管の浮き出たカタチがリアルに解った 「……あっ……あぁっ……んっ……イクっ!………」 あまりの気持ちよさに康太は達しそうになった 「僕も……イキます……康太一緒に……」 康太は榊原の腹に……射精した 榊原は康太の中に熱い白濁を飛ばした はぁ……はぁ……と荒い息が部屋に響き渡る 一ヶ月近く離れ離れになっていた 肌を合わせば止まれなかった 「……伊織……ごめん……」 康太は謝った 「何で謝るんですか? 僕に謝る様な事をしたんですか?」 「伊織を日本に置いて来たから……」 「そうしなきゃならない理由が在ったんでしょ?」 「ん……飛鳥井建設の副社長の不在は……すぐに知れ渡る…… 根回しする前に……時間を稼ぎたかった……」 「ならば、謝らなくて良いです 僕は君の側に追い掛けて行きますから!」 「………伊織……」 「僕の腹に康太の精液が飛んでます ドロドロに濃い…です…」 榊原は康太の精液を手に掬うと舐めた 「僕のも濃いですよ? 味を確かめなくても良かったんですか?」 「味を確かめる前に……欲しくなった…… 伊織のが入って来ると想像するだけで…… 中が止まらなかった……」 榊原は康太を強く抱き締めた 「君の中……凄かったです そして今も……凄い…… 僕を寝かせない気ですか?」 康太の体内で榊原の性器が育っていく 太く硬く……嵩を増し、体積を増して存在感を主張する 溢れた精液は蓋をした肉棒から溢れて流れ出していた 「伊織……吸って……」 「何処をですか?」 「乳首……」 榊原は康太を抱き締めたまま体躯を起こした 榊原の肉棒は刺さったままだった 康太の尖った乳首を吸った 舌で転がして……吸って……甘噛みした 仰け反る康太の鎖骨に………榊原は噛み付いた 「………っ!………伊織……痛ぇってば……」 「痛いって言いながら……ビンビンですよ?」 榊原は康太の性器を扱いだ 「……ぁん…触るな伊織……あぁん……ダメっ…」 榊原は噛み跡の着いた鎖骨を舐めた 薄っすら血が滲んだ鎖骨を舐めると…… 康太の中はうねった ピアスの乳首を咥えて引っ張ると…… 康太は下腹部を引き攣らせ……射精した 「………康太……早すぎです根元で縛りますよ?」 「…ゃ……ごめん……やらないてぇ……」 「ならこの次は一緒にですよ?」 康太は頷いた 根元を縛られるとイッてもイケない状態になる 汗が吹き出る程に敏感になって…… そうなると……熱を放出し尽くさねば終われない 「……やらないでぇ……縛らないで……」 「康太愛してます」 榊原は康太に優しく口吻た イジメたい訳じゃないのだから…… 「オレも愛してる オレを……嫌いにならないでくれ伊織……」 何時も何時も榊原には辛い思いをさせる 何時か嫌われてしまうんじゃないかって…… 康太は不安で仕方がなかった 「君を嫌いになる日なんて来ませんよ こんなに愛してるのに……」 榊原は康太に口吻……執拗に口腔を貪った 「伊織……伊織……愛してる……」 体内の榊原が嵩を増して自己主張を始めた お尻の穴の皺を伸ばし……ギチギチに食い込んだ穴を更に広げる勢いで太く硬くなった 「……ぁん……伊織……壊れる……」 「君に触れなかった日々に…… 僕の理性は崩壊してます 壊れても僕を愛してください」 康太は榊原の背中を掻き抱いた 「ん……壊れてもいい…… オレの全部……伊織のだから……」 榊原は康太を押し倒して足を抱えた 後はもう尽きるまで互いを貪った 榊原は意識を手放した康太を胸の上に抱き上げた 榊原の胸に乗っかる康太が愛しかった 榊原は何度も康太の髪に口吻を落とし…… 強く抱き締めた 離れたくないのだ…… もう離したくない 離れている時間は……… 辛くて苦しい 康太を想って……涙する 康太…… 康太…… 逢いたいです その思いしかなかった 今こうして手にしたら…… 二度と離したくない気持ちが大きい そんな気持ちが…… 康太が気絶しても抜けれずに暴動する 気絶した康太の中へ何度も何度も……… 熱い飛沫を放ちイッた 抜いた後…… 康太の脚を広げて、溢れ出すお尻の穴を見ていた 紅く無理させた蕾は腫れぼったく戦慄いていた その赤い穴から……白濁を吐き出して……ヒクヒクひくつく様が…… 淫靡で…… 榊原は秘孔に口吻た 指を挿し込み精液を掻き出した 無理させた秘孔をペロペロと舐めて労った 康太は意識を手放して気付く事はないのに… 秘孔に挿れた指を……咀嚼していた 細胞が覚えた指を受け入れて懐いていた 愛されてる そう思うのは……こんな時だった 康太は意識をなくしても榊原の存在を嗅ぎ取る 愛する男の存在を嗅ぎ取り受け入れる この世でたった一人にしか見せない姿だった 無防備に意識を手放した康太が愛しい 榊原は優しく康太の頭を撫でた せめて朝まで…… この人に安らぎを…… 榊原は康太に安らぎを与えるかのように、優しく康太を撫でた 額にキスを落とし…… 愛する康太をこの手で抱く 榊原は幸せだった 逢えない時間が嘘のように穏やかな自分に苦笑する 逢いたくて…… 逢いたくて…… 気が狂いそうだった 「愛してます炎帝……」 榊原はそう言い康太を抱き締めた 「オレも愛してるぜ青龍」 「………康太……気が付いたんですか?」 「愛の言葉はオレにしか聞かせねぇんだろ? なら意識のあるうちにしてくれ!」 康太の言い草に榊原は笑った 「どんな君でも言いたいのです」 「勿体ない ちゃんとオレが起きてる時に言ってくれ! そしたらちゃんと愛してるって返してやるからな」 榊原は笑った 「辛くないですか?」 「体躯の痛みは我慢できる…… 心の痛みは……伊織を感じなきゃ……治らねぇよ」 「寂しかった………ですか?」 「何度も……帰ろうと想った でも飛鳥井建設に資材が入らねぇ以上は…… 動かなきゃならねぇ現実があったから還れなかった……」 「手は打ったのですか?」 「伊織に一ヶ月泣いてもらったんだ… 使える手は総て使って倍返しするに決まってるじゃねぇかよ!」 榊原は康太を抱き締めた 「まだ、この国にいるんですか?」 「後2日な、その後ロシアに向かう」 「僕は……同行しても大丈夫ですか?」 康太は榊原の首に手を回し 「離すかよ! 行くに決まってんじゃねぇかよ!」 康太は榊原に口吻た 「オレを離すんじゃねぇぞ伊織」 榊原は強く康太を抱き締めて 「離しません! 絶対に離しません!勿体ない! この命がなくなっても僕は君と共に! それしか望んでません!」 「オレも離さねぇかんな! 離れるならオレは躊躇する事なく死を選ぶ! 愛する男は未来永劫お前一人と決めている 青龍を愛して良いのはオレだけだろ?」 「ええ。炎帝を愛して良いのは僕だけです 誰にも触れさせません!」 康太は嬉しそうに笑った 「ロシアには正義と貴史がいる」 「………え?……」 「ロシアで懇意にしてる議員と正義を逢わせる どの外交よりも強いパイプを正義と結ばせる それが両国の結び付きを強くする……」 「ロシアですか……寒がりなのに……」 「………伊織が暖めてくれるだろ?」 「暖めますとも! でも寒さは半端ないので毛皮のコート買ってあげましょうか?」 「…………おめぇはパトロンのかよ……」 康太は頬を赤くした 毛皮のコートを買ってあげましょうか? 貢ぐつもりかよ……康太はボヤいた 「寒がりの君ですからね……言っただけですよ? パトロン……僕以外に貢がれないで下さいね!」 「あ!そうだ!伊織……オレの携帯……この国じゃ使えねぇぜ」 「………え?……」 榊原は驚愕の瞳を康太に向けた 「内容変更しようにもお前の名義じゃ触れねぇ……」 「…………ぁ……………君からの連絡がないのは……… 僕のせいでしたか……まさか携帯……でしたか」 海外は視野に入れてなかった榊原は国外で使えるようにはしなかった まさか………そんな理由で……連絡すら入らなかったと言うのか…… 「日本に帰ったら君の名義に変えます そして海外でも使えるようにします!」 康太は笑った 「聡一郎の電話でもマックの電話でも連絡は取れたんだよ…… でもしなかったのは……お前に逢いたくて…… 目的を放り投げて帰りたくなるからだ……」 「………康太……」 「オレが生きて行く上で必要なのは金でも身分でも財産でも地位でもねぇ…… 青龍…お前がいるか……だ オレの傍に青龍がいてくれるか……だ」 「僕もそうです この世に君がいないのなら…… 僕は生きていたくない……僕を離さないで下さい 僕だけを愛して下さい…… 君の愛を失ったら僕は生きてはいけません…… 君をなくした世界など………考えたくもない……」 榊原は震えていた 康太は強く榊原を抱いた 「離す訳ねぇ……お前はオレの命だからな」 「康太……」 榊原の瞳から涙が溢れて流れた 康太は榊原の目尻に口吻を落とした 「愛してる……愛してる……愛してる! 何度でも言って欲しけりゃ言ってやる! オレは青龍だけ愛してるんだ 何度生まれ変わっても…青龍、おめぇしか愛せねぇ…青龍しか要らねぇ……」 「康太……こんな愛の告白されたら……嬉しくて死にそうです」 「伊織にしか言わねぇ」 「当たり前です!勿体ない!」 榊原は笑った この人を愛して本当に良かった 何度だって心は想う 「伊織、重くねぇか?」 胸の上に乗っているから榊原を心配して、康太は問い掛けた 「………重くないですよ 君……帰国したら久遠先生に怒られますよ?」 「…………沢庵がねぇ生活は……オレには向いてねぇんだよ……」 何という屁理屈…… 「帰ったら君のために食事を作ります 胃の負担にならない食事を作ります」 「………それ慎一が譲らねぇと想うぞ」 「やっぱり? 君の執事は主の事は譲りませんからね……」 「………慎一は今回一番過酷でキツい場所に行ってる 帰ったら休みをやらねぇとな……」 「彼は休みませんよ? 主がいれば主の為に………でしょ?」 「オレも大概帰りてぇ……子ども達も淋しがってるかんな…帰りてぇ……」 「………僕まで来てしまいましたからね……」 「………また淋しがらせたな……」 「帰ったら沢山時間を作りましょうね」 「ん。伊織……体躯を洗ってくれよ!」 「一ヶ月の間、お風呂入ったんですよね?」 「……………シャワーは浴びた……」 「…………今度から僕は必ず連れて行って下さい!」 「ごめん……オレ……汚かった?」 「君なら一ヶ月お風呂に入ってなくても大丈夫だと言ったでしょ? 今度から二カ月入ってなくても大丈夫と言い換えます」 「………シャワーは浴びてるんだ」 康太は唇を尖らせて拗ねた 榊原はそんな康太の唇にキスを落とした 「綺麗に洗ってあげます」 「ん。伊織…」 康太は榊原の胸に顔を埋めて甘えた 榊原はそんな康太を抱き締めて、つむじにキスを落とした 互いの体温を感じてダラダラと過ごす時間が愛しい このまま……時間が止まってしまえば良いのに…… 康太を抱き締めていると何時も想う 榊原は時間の許す限り康太を抱き締めていた 康太はそんな榊原に甘えた 榊原の体臭を胸一杯に嗅いで……擦り寄った 康太も想う 榊原とこうしていられる時間が止まってしまえば良いのに……って 離れたくないのだ 離したくないのだ でも逝かねばならないのだ 「伊織………凄く寂しかった……」 「僕も寂しかったです」 一緒にいられなかった時間を埋めるかの様に…… 強く抱き合った

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