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第66話 粛正

やられた事は倍返し キッチリとカタは着ける それで命を落とそうとも構わない! オレは、オレのケジメを貫く! 決して曲がらねぇオレの道は 次代の飛鳥井の礎になる オレの前には道はねぇ オレの後ろには道は出来る オレはその為だけに前へと進む エンパイア・ステート・ビルの最上階に飛鳥井康太はいた 仕上げは上々 渡来揚一朗が飛鳥井建設を潰す為に妨害工作をした そのせいで飛鳥井建設には資材が入って来なくなった 飛鳥井建設は工事の遅延が余儀なくされた 飛鳥井瑛太は連日、資材の調達に奔放した 父 清隆もツテを頼って連日駆け回っていた このままで行けば……確実に飛鳥井建設の信用は失墜する…… 康太は赤蠍(レッドスコーピオン)商事の会長 円城寺貴正に話を持ちかけた 総合商社 渡会に飛鳥井に食らった以上のダメージを食らわす その助けをしてくれ! と協力を求めた 円城寺貴正は康太の強力を惜しまない事を約束してくれた アレクセイ.ルドルフスキーを介してロシアは潰した ロシアは赤蠍の独壇場となる 中国 台湾 韓国は李暁慶《リー・シャオチン》に強力を要請して渡会を追い詰めて貰った 李暁慶《リー・シャオチン》は喜んで渡会を追い詰めてやると約束してくれた アメリカ、極東 東南アジア ヨーロッパ諸国は赤蠍の独壇場と言っても過言ではない 渡会を市場から追いやり潰す 生き残りたいなら…… 赤蠍商事の協力を得ねばならない…… どっちに転がっても損はない 円城寺貴正は高みの見物をしていた マンハッタンの最上階から下界を眺め…… 飛鳥井康太は、その時を待っていた 緑川一生、四宮聡一郎、一条隼人、緑川慎一 堂嶋正義 兵藤貴史 戸浪海里 そして円城寺貴正 彼等はニューヨークに集まっていた 各々 役務を終えてニューヨークに集結した 一生は康太を見るなり泣き出した 自分から……離れた事はある 飛鳥井康太を失って…… 生きる自分 を知りたくて……康太のいない世界に行った だが……逢いたくて……恋しくて……狂いそうだった 飛鳥井康太のいない場所では生きては行けないと思い知らされた 以来、片時も離れず生きてきた なのに……今回のミッションでは康太の傍を離れて…… 動かねばならなかった 苦しかった 逢いたかった 逢いたくて…… 逢いたくて…… 総てを投げ出して…… 逢いに行きたくなった しなかったのは…… 康太だって……何も想わない訳がないから…… 子供や肉親……そして仲間と離れて…… 康太が何も想わない筈がない 康太は何時も…… 傍にいてくれた 康太の為に…… その想いだけで踏ん張った 康太が「お帰り!」って言って両手を広げた時 一生は康太の胸に飛び込んで号泣した 逢いたかったのだ それは一生だけでなく…… 聡一郎も隼人も慎一も同じだった 堂嶋や戸浪……瑛太だって……どれだけの想いを抱えていたのか…… そんな想いを抱いて堪えたのだ 堪えて 堪えて…… やっと迎えた日だった 飛鳥井康太はエンパイア・ステート・ビルの最上階にいる と噂を流した 餌はばらまいた 後は……渡会と言う獲物が釣れるのを待つだけだった その日のために1ヶ月以上費やした 倍返しの為だけに…… 根回しした その総仕上げを迎えて康太は嗤っていた 渡会揚一朗は怒り狂って……来るだろう 来るなら来れば良い 落とし前は着ける 円城寺貴正の携帯に渡会揚一朗から電話が入った 「円城寺です」 『渡会揚一朗です お逢いして話がしたいのですが…』 「良いでしょう どうせ、近くにお越しなんでしょ? 待っているのでお越し下さい」 円城寺はそう言い電話を切った 「康太、来るそうです」 「そうか……捨て身で来るか…」 康太はそう言い、足を組んだ 康太の横には榊原伊織が座っていた 康太の横にはニック.マグガイヤーが護衛していた 後ろには双児の番犬緑川一生、慎一が構えていた その横には四宮聡一郎、一条隼人が立っていた 横のソファーには円城寺貴正、戸浪海里、堂嶋正義、飛鳥井瑛太が座っていた 渡会揚一朗は警護の者を薙ぎ倒し突破して来た 円城寺貴正の護衛の者が円城寺を護って立っていた ノックと共にドアが乱暴に開けられ…… 振り向くと渡会揚一朗が立っていた ニック.マグガイヤーの銃口が渡会揚一朗に向けられた 円城寺は嗤って 「騒々しい来訪ですね」と立ち上がった 「とても愉快な事をされたので…… こちらも筋を通す必要などないと想いまして…」 渡会揚一朗が言うと康太も立ち上がった 「先に愉快な事をしたのは貴方の方だ」 「………お前などに話はしてない!」 渡会揚一朗は康太に吐き捨てた 円城寺は「康太に暴言を吐くのは止めなさい!」と渡会を止めた 「何故貴方が飛鳥井などの為に出るのですか?」 「私は飛鳥井康太を愛してます 彼を陥れる輩は……私の敵でもあるのです」 と嗤って渡会を見た 「……愛してます……? 貴方も……ゲイだと仰るのか?」 「下世話な話しか出来ない人間はいけませんね 私は人間として彼を愛していると言っているのです 彼が……生きて……いてくれるだけで良いのです 時々逢って……彼を見られるだけで良いのです 遥か昔から……私はそうしてした この先も……私は彼の幸せだけを願う……」 円城寺に睨み付けられ渡会は顔色をなくした 「貴方は……よりによって飛鳥井建設を潰そうとした 飛鳥井に手を出さねば……目障りな存在では在りましたが……見逃してやる手段もありました ですが君は飛鳥井康太に牙を剥いた…… 彼に牙を剥けば……黙っていない人間は数多い 私もその中の1人だと言うのを忘れずに!」 「………あの小僧のせいで……我が社は……窮地に立たされたというのか?」 「そもそも、飛鳥井康太の伴侶に手を出そうなどと……考えた娘の教育から間違いだと想うがよい 飛鳥井康太の伴侶は未来永劫……彼1人 その伴侶に近付けば……それ相当の報復は当たり前だ そして君は娘可愛さに……飛鳥井康太を敵に回した 我等は……飛鳥井康太だけは…… 敵に回したりはしない 味方に着けば千人力だが、敵に回せば……潰される 力で潰そうとすれば……力で潰される 因果応報を身を持って味あわされる それが飛鳥井康太…なのです 彼を軽んじた結果なので仕方在りませんね 彼に牙を剥けば……倍返し 君の会社は風前の灯火……違いますか?」 渡会は言葉がなかった 「飛鳥井家真贋を敵に回す…… それを身を持って知るが良い」 円城寺は吐き捨てた 渡会はガクッと崩れ落ちた 飛鳥井康太は渡会の前に立った 「飛鳥井建設を潰す気だったか?」 冷たい瞳だった 「………潰せるとは……思ってはいない ただ……少しだけ……資材を妨害した… ……娘が……馬鹿にされたも同然でしたので‥黙ってられませんでした‥‥」 「飛鳥井建設に牙をむくなれば 倍返しで返すと決めてる! やられたら倍返し それがオレの鉄則だ オレは会社を潰させる気もねぇし 伊織を誰かに渡す気も皆無だ 盗られるなら潰す…… 潰して欲しいか?渡会揚一朗 おめぇはオレを初対面から見下していたよな? オレはてめぇに見下される謂われはねぇんだよ 舐められたら舐められねぇように頑張らねぇとな! 理不尽な戦いには理不尽な報復を! それがオレのプライドだ オレの心も体躯も安くはねぇんだよ!」 康太は吐き捨てた 「………渡会は……終わる…… お前が望んだ通りになって気持ちが良いだろ!」 渡会揚一朗はそう言い捨てた 飛鳥井家真贋に牙を剥いた こんな小僧などと……軽んじた結果だった 「潰れたくなくば目線を落とすしかねぇ 何時までも下に目が行かねぇ経営者など要らねぇんだよ お前は上流嗜好で上しか見てなかった オレが今手を下さなくとも……先は見えていた 解ってるだろ? 今の時代上流階級の人間ばかり相手なんか出来ないって…… 遅かれ早かれ来た終焉だ お前は手を組む相手を間違えた 自分の見栄ばかり生かして繋がる関係を築いてない お前のために駆けつけてくれる人間がいねぇ それはお前は財産を持ってない事と変わりねぇって事に気付いてもいねぇからだ」 言葉もなかった 「オレは大切な仲間がピンチになるなら駆け付けるぜ 命を懸けてオレは護ろうと動くぜ 相手もオレの為に動いてくれる 何の見返りもなく堂嶋正義や戸浪海里はいてくれる 円城寺貴正も然り オレの為だけに時間を裂いて来てくれている だからオレはその人達の為に闘う 命を賭しても護ると決めてる そんな人間関係をお前は築いてない それがお前の敗因だ」 「………そうですね…… 私は……貴方が羨ましい……」 「羨ましがる前に、そう言う関係を築けよ やり直す事は出来る」 「………え?……」 「円城寺貴正が助け船を出してくれる お前は円城寺に報いる仕事をしろ 損得なく助け船を一度だけ出してくれる それを……勝ち取るのも、泥船にするのも総てお前次第だ お前が決めて動け」 「………何故……助け船を……? 貴方に得する事はないのに……」 渡会は信じられない瞳を康太に向けた 「潰すのは容易い トドメを刺せば良い だけどなそれだと……情けがねぇじゃねぇか! 人は情けに生かされる時もある お前を今助けるのは明日の飛鳥井の為 円城寺貴正の為 明日へと繋げねばならぬ命もあると言う事だ 後はお前次第だ お前が道を誤れば……道は一つ 破滅しかねぇ 破滅がいやなら抗って生きて行きやがれ お前の肩には社員の生活が掛かってる 社員を生かすも潰すもお前次第なのを忘れるな! どうするかは?お前が決めろ オレはカタは取る それが明日の飛鳥井の為だからな」 「生きる道が一つしかないのでしたら 私は躊躇する事なくその綱に縋り付きます 生きる道を模索する それが経営者としの務め 私は間違った道を逝ってました 軌道修正する為に無くすモノも多かった でも気付けて良かったです 本当にありがとう御座いました」 渡会揚一朗は深々と頭を下げた 「渡会 この後どうする?」 康太は渡会に問い掛けた 「………決めておりません……」 「円城寺貴正がいて何もせずに帰るなよ 赤蠍商事グループの傘下に入ると世界配信しろ! 今後、渡会は赤蠍商事の傘下として共存を計る それで渡会に目を付けてる外資系は手を引く 同じモノを輸入してるんなら折り合い着けて摂政するのも策だ」 康太が言うと円城寺は 「では世界に向けて配信しますか! 渡会さん、それが終わるまで私共にいて下さい 以後の詳細は詰めて行かねばなりませんね なんにせよ悪いようにはしません 貴方が飛鳥井康太に牙を剥かねば……息の根は止めないと約束しましょう 後、貴方のご令嬢は再教育が必要ですね 何処かの貴族に嫁がれる予定でも? そうでないのでしたら世間は知らせておくべきでしょう!」 「解りました 娘は家から出して独り立ちさせます 現実を知らせずに来てしまった私達の罪です」 心底……反省しているのが解った 「オレは伊織に手を出さなきゃ何にも言わねぇよ」 康太はそう言い笑った 渡会は「二度と貴方の前に娘は出しません! 非常識なままなら……親子の縁を切るしかないと想っております 好き放題させて躾もして来なかった…… 親の責任だと想っております」 と非礼を詫びた 「それが解るなら良い お前との闘いは終結だ 今後飛鳥井に牙をむけばトドメを刺す それだけは忘れるな!」 「肝に銘じておきます 今後は渡会揚一朗、命を賭けて貴方のお役に立とうと想っております!」 「役に立とうなんて想わなくて良い 時々うめぇモンでも食わしてくれ!」 「是非とも!」 渡会は深々と頭を下げた 「渡会」 「はい!」 「日本の市場が変わるぜ 大きな塊がうねって市場を変えていく 日本と言う国の起爆剤になれると想うぜ 渡会と赤蠍商事の事業提携…… 謂わば渡会は赤蠍商事の傘下に入った訳だからな 赤蠍商事が扱ってねぇモンは渡会がカバー出来る 渡会が扱ってねぇモンは赤蠍商事がカバーする 日本の市場を手に入れたと言っても過言じゃねぇ 取り敢えず日本の起爆剤にはなった 善之介が喜びまくるネタを引っ提げて、やっと帰れるな」 康太はそう言い笑った 「帰りはご一緒しませんか?」 渡会が言うと康太は断った 「オレは此処を出た足で空港に行って帰る 我が子を待たせてるんでな帰りてぇんだ」 そう言う顔は親のモノだった 我が子……飛鳥井康太の子供は有名だった だが決して……表には出ない存在だった 「今度、君のお子さんに玩具をプレゼントさせて下さい! 妻が子供の玩具のデザイナーなんです」 渡会は嬉しそうにそう言い、妻の写真を康太に見せた 「なら席を設けてくれよ 誰も……目につかない席にしてくれよ オレの子供は決して表には出さねぇつもりだかんな」 「解ってます 今日は本当にありがとうございました 私は今日が命日になるつもりで来ました」 「ならお前は今日死んだんだ 明日を生きるお前は生まれ変わった そうだろ?なら死に物狂いで生きてみろ」 渡会は深々と頭を下げた 「貴正、話はついた オレは帰るな」 康太は円城寺貴正に帰宅を告げた 「康太、私も君と共に帰ります 専用の飛行機を出すのでご一緒しましょう!」 「………正義……お前帰るか? 若旦那もどうする?」 康太は堂嶋と戸浪に問い掛けた 堂嶋は「ご一緒します」と言った 戸浪も「私も帰ります」と賛同した 「ねぇ康太、日本に帰ったらお食事しませんか?」 戸浪は康太に申し出た 「それ良いな 皆で飯食って帰るとするか! オレは沢庵食いてぇ……」 もう一ヶ月以上、日本食を食べてなかった 兵藤も「コメ食いてぇな」と本音を漏らした 「だろ?早く帰ろうぜ!」 康太は日本食か恋しくなり帰宅をせかした 赤蠍商事と渡会の事業提携を世界配信して 契約書をとり交わし 総てを終わらせて日本に帰る為に、円城寺貴正が用意した専用ジェットに乗り込んだ 康太はやっと日本に帰れると……榊原に抱き着いた 榊原は康太を抱き締めた 「やっと帰れるな…」 「ええ……流生達に……やっと逢えます」 榊原は康太のつむじにキスを落とした 心は……我が子の元に…… 想いが逸る 康太は瞳を瞑った やっと…… 早く帰りたかった 我が子に…… 家族に…… やっと逢える…… 逢いたい 逢いたい想いなら…… 日々募っていた

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