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第67話 帰宅

円城寺貴正が用意した専用機に乗り込み日本へと向かう ニューヨークとの時差 13時間 日本に到着したのは夕方だった 円城寺貴正達と空港の近くの料亭で会食をして、それぞれ別れる事にした 円城寺貴正と渡会は迎えに来た車で帰る事にした 会社に行き正式な契約を結ぶ事になる 円城寺と渡会は次の約束をして帰宅した 戸浪と堂嶋達と兵藤とも料亭で別れる事にした 戸浪は会社に、堂嶋は安曇の所へ向かうと言った 「正義、本当に助かった」 康太が言うと堂嶋は康太を抱き締めた 「お前の為に俺はいる 俺を作り出したのはお前だからな!」 そう言いつむじにキスを落とした 康太は笑って堂嶋から離れた 「若旦那も本当に悪かったな」 「君には無償の愛を沢山貰いました 私に出来る事でしたら帰すのは当たり前です」 戸浪と康太を抱き締めた そして堂嶋と戸浪とは次の約束をして別れた 兵藤は美緒が迎えに来ていて家へと還って行った 康太は瑛太に「まだ会社にいるかな?」と問い掛けた 「流生達?」 「そう……そして母ちゃんや父ちゃん達…」 「なら会社に行きますか?」 「ん……逢いてぇな…」 「ではタクシーに乗って会社に行きましょう!」 瑛太は康太を促してタクシー乗り場に向かった タクシー2台に分かれて飛鳥井建設に向かった 瑛太はタクシーに乗ると父 清隆に電話を入れた 「父さん、まだ会社ですか?」 『瑛太、どうしたんですか?』 「日本に着きました」 『康太は?康太はいるんですか?』 「ええ、一緒です 会社に顔を出します 流生達を会長室に連れて行って下さい」 『解りました! じぃじ自ら連れて来ます』 清隆は嬉しそうに言った 電話を切ると、清隆は妻玲香に電話を入れた 「玲香、康太が帰って来ます 流生達はまだ託児所ですか?」 『流生達はまだ託児所じゃ そうか……康太が帰って来るのか』 玲香は嬉しそうに言った 「流生達を迎えに行きます」 『我も行く! 一緒に行くとしょうぞ!清隆』 「では託児所で待ってます 君が来たら会長室で待っていましょう」 玲香は了解じゃ!と言い電話を切った 清隆は秘書に託児所に行くと告げて会長室を後にした 康太と榊原と瑛太とは同じタクシーに乗っていた もう一台のタクシーに一生、聡一郎、隼人と慎一が乗って、飛鳥井建設を目指した 康太は「やっと逢えるな……」と呟いた 榊原は康太の肩を抱くと引き寄せた 放っておきたくなんかない…… 何時も傍にいて愛してやりたい だが……それは出来なかった 明日の飛鳥井を築く為に…… 逝かねばならないのだから… 抱き締めて…… もう離れないよ そう約束しても…… 飛鳥井のピンチが来たならば、何もかも顧みず飛鳥井の為に動くしかない 傍にいてやりたい 大切なわが子を抱き締めて…… 繋いだ手を離したくなんかない…… それが出来ないのは…… 解っている 解っているが…… 康太は瞳を瞑った 先のことは……今は視たくなんかなかった 今は我が子のことだけ考えていたい 康太は握り拳を握り締めた タクシーは飛鳥井建設の前で停まった 飛鳥井建設の前で車を停めると、瑛太が支払いをして車を降りた 瑛太は一生のタクシーが停まると、運転手に料金を支払った 「康太、飛鳥井建設です」 瑛太は会社を見上げてそう言った 康太は会社を見上げた 一ヶ月……日本を離れていた 懐かしい…… 懐かしくて涙が出そうだった 榊原に肩を抱かれて会社の中に入ると受付嬢が出迎えてくれた 「社長、副社長、真贋お帰りなさい!」 深々と頭を下げられて出迎えられた 康太は片手を上げてエレベーターの前へと向かった エレベーターを待ってると1階に到着してドアが開いた エレベーターの中から栗田一夫が出て来ようとして固まった 「………康太……」 栗田が呟くと康太は笑った 「一夫、久しぶりだな」 栗田は康太に抱き着いて号泣した 「……貴方が来ないから……」 「泣くな一夫……」 「最上階に着くまで泣かせて下さい」 「仕方ねぇな…」 康太は栗田の背中を撫でてやった 「……逢って下さい!」 「解ってんよ 明日の昼はお前にやる」 「なら明日の昼、お迎えに来ます」 最上階に着くと、栗田は康太から離れた 康太達はエレベーターから下り、栗田は乗ったまま階下に下がって行った 「一夫に逢うとはな……」 康太は苦笑した 「仕方ないですよ 彼は貴方の駒ですからね 誰よりも君を愛して、誰よりも君に忠誠を誓った」 「それより……オレは子供に逢いてぇ… 父ちゃんや母ちゃん……清四郎さん達に逢いてぇ……」 「父さん達には後で電話を入れます」 「そうしてくれ」 会長室に行こうとして榮倉真奈美と出逢った 榮倉のお腹はスッキリしていた 「生まれてのかよ?」 「何時の事だと想ってるんですか! 康太……逢えなくて寂しくて……」 榮倉は康太に飛び付いて泣いた 「泣くな……榮倉……」 「だって……どれだけ私達の前に姿を現してないか解りますか?」 榮倉が抱き着いて泣いてると佐伯も帰宅の途に着こうとして康太を見つけた 「康太!」 佐伯も康太に飛び付いて泣いた 「逢いたかった…… 逢いたくて……死にそうだった」 佐伯は号泣した 男前に泣く姿に康太は苦笑した 榊原は佐伯に 「佐伯、父さん達に康太が帰って来たのを伝えてください」 「嫌だ……離れたくない」 佐伯が言うと康太は佐伯の頭を撫でた 「我が儘言うな明日菜 オレは我が子に逢いてぇんだ 清四郎さん達にも逢いてぇ」 「解った……電話を入れる」 佐伯が離れると榊原は康太を引き寄せた 「さぁ我が子に逢いに行きますよ」 やっと…… やっと逢える 康太は怖かった 一ヶ月も顔を合わせてない 忘れられてないか 不安だった ちらい! ……って言われたらどうしょう かぁちゃ 呼んでくれなかったらどうしょう 不安で涙が出そうになった 榊原は康太を強く抱き締めた 「大丈夫です 僕達の子供です」 「………愛して止まねぇ子供だ…」 「君と僕の宝物です」 康太は榊原の手を握り締めた 一生は康太の肩を抱いた 「おめぇの子供だ かぁちゃが恋しいに決まってる とぅちゃが恋しいに決まってる」 一生は励ました 聡一郎も康太を抱き締めた 「君の子供達はとぅちゃとかぁちゃが大好きです 早く逢いに行ってあげましょう」 隼人も「行くのだ」と励ましだ 瑛太は「なら私がドアを開けます」と言い弟の不安を払拭してやろうとした 康太は歩き出した 我が子に逢う為に…… 思いっ切り抱き締めてあげたい 血は繋がらぬが我が子だった 大切な我が子だった 逢いたくない訳などないのだ 会長室のドアをノックすると清隆がドアを開けてくれた 「お帰り……瑛太……康太、伊織…… 一生達もお疲れ様でしたね」 康太は清隆に抱き着いた 「………父ちゃん……ただいま……」 「君達の子が待ってます 抱き締めてあげて下さい」 康太は清隆から離れると部屋の中を見た 今にも泣きそうな顔をした我が子が…… 康太の方を見ていた あまりに突然の事で…… 信じられず……身動き出来ずにいた 「流生……翔、音弥、太陽、大空…」 康太は声を掛けた 流生は両手を握り拳を握り締め……踏ん張って立っていた 康太は我が子の傍に行って……5人とも抱き締めた 「………ただいま……」 子供達のリアクションはなかった 忘れられちゃった……? 康太は動きを止めた 怖くて自分からリアクションを取れなくなった 子供達は泣き出した 大声で泣き出し康太に飛び付いた 「流生……ただいま」 「がぁ″ぢゃ″……」 流生は大きな口を開けて泣き叫んだ 翔も音弥も太陽も大空も泣き出して… 榊原も子供達を抱き締めた 音弥が「ちゃみちきゃった…」と呟いた 榊原は音弥の頭を撫でて「僕も淋しかったです」と強く抱き締めた 流生は「がぁ″ぢゃ″……」と甘えた 翔は堪えていた 一生は翔を抱き締めた 「翔、ただいま」 「……かじゅ……おちゃいり……」 「逢えなくて淋しかったぞ…」 一生がそう言うと翔は泣き出した 康太は翔に近寄った 「翔……我慢しなくて良い…」 翔は泣いて康太に抱き着いた 「かぁちゃ……おちゃいり…」 「淋しかったか?」 「ちゃみちきゃった……」 でも長男だから我慢したのだろう… 耐えて…… 堪えて…… 食い縛っていた 「おうちに帰ろうな…」 翔は康太を見上げた 「いっちょ?」 「あぁ…一緒に帰ろうな」 堪えきれず翔は泣き出した 何時も毅然と構えてる翔が泣くから… 兄弟は余計悲しくなった 翔が泣く それは……あまりない事だから…… 流生は「かけゆ……」と抱き着いた 音弥も「かけゆ…」と声を掛けた 太陽と大空は翔を抱き締めていた 楽しい事も 悲しい事も 分け合って生きてゆく…… そんな5人が康太は誇らしげに見た 太陽と大空は康太と榊原に抱き着いた 玲香は康太と榊原、そして一生達を見ていた そして隼人を抱き締めて「お帰り隼人」と声を掛けた 「義母さん……」 「何か食べたいのはないか?隼人」 隼人は玲香に抱き着いた 「義母さん……還りたいのだ……」 「還ろうな隼人… 聡一郎もお帰り」 聡一郎も玲香に抱き着いた 「義母さん……ただいま」 「お疲れ様でしたね 慎一、一生、お帰り」 慎一は深々と頭を下げた 一生も「ただいま義母さん」と挨拶した 清隆が慎一と一生を抱き締めた そして「瑛太お帰り」と声を掛けた 「父さん……ただいま」 「お疲れ様でしたね」 瑛太は慎一と一生の上に重なり清隆に抱き着いた 子供達は康太と榊原に抱き着いて泣いていた 康太は立ち上がると清隆に 「父ちゃん……還ろうか…… 飛鳥井の家に還ろう…… じぃちゃんの仏壇にただいまって言いたいからな…」 康太が言うと清隆は微笑んだ 「帰りましょう……」 「長い間……留守にしてすまねぇ……」 「………飛鳥井建設に資材は滞りなく入って来ました…… 君達が動いてくれたから…… 会社はダメージを避けられました あのまま資材が入らなければ…… 信用の失墜は避けられませんでした」 「………当分……楽させて貰う」 「……ええ……久遠先生が君の心配をしてました…… 検査に行って下さいね!」 「…………怒られそうだな……」 康太は笑った そして玲香に近付き抱き締めた 「母ちゃん ただいま」 「……康太……体調は……」 「悪くないけど沢庵が食えない生活はキツかったな…… 母ちゃんの味噌汁が飲みてぇ……」 「飽きる程……作る……」 玲香は泣いていた 我が子の逝く先は険しい それでも黙って見送らねばならない 康太だって好きで行きたい訳ではない 我が子を残して行きたい筈などない 総ては飛鳥井の為、家の為 康太の人生はそれしかなかった 我が子を甘やかしたかった もう……逝かなくて良い…… そう言いたかった 自分の命で…… 康太を解放出来るのなら…… 解放してやりたい たが……生まれた時から康太の逝く道は決まっていた 明日の飛鳥井の為だけに…… 生きて逝かねばならぬのだ 玲香は涙を嚙み殺した 泣いては駄目だ…… 康太の果てしない道は続く 泣くのは…… 康太が真贋としての役目を終えた時…… そう決めていた 玲香は微笑み…… 「帰るとしようぞ! 今宵は宴会じゃ」 と声を掛けた 皆で会長室を出て地下駐車場へと向かった 榊原の車は自宅だった 「僕の車はありません……」 榊原が言うと瑛太が 「私は会社に車を置いて出ました 父さんの車に一生達が乗って 子供は母さんの車に乗せて 康太と伊織は私の車で帰れば良い」 提案した 「だな、適当に車に乗って帰るとするか!」 康太は翔を抱き上げた 榊原は流生を抱き上げ 一生は音弥を抱き上げた 聡一郎が太陽、隼人が大空を抱き上げエレベーターに乗り込んだ 地下駐車場へ着くと車へと向かった そして適当に車に乗り込むと、飛鳥井の家へと帰って行った 康太は「やっと帰れるな……」と呟いた 榊原は何も言わず康太を抱き締めた 飛鳥井の家へ帰ると清四郎達が待ち構えていた 隼人が連絡を入れると神野と小鳥遊も飛んできた 「康太……逢いたかった……」 と神野は号泣した 清四郎も康太に抱き着いて泣いた 泣いて、酒を飲み夜更けまで語り明かした 康太は家族を黙って見ていた 康太が眠ってしまうと、榊原は康太を抱き上げて寝室まで連れて行った ベッドに寝かせると康太は目を開けた 「伊織……」 康太は榊原の首に腕を回して抱き着いた 榊原は康太の唇に口吻を落とした 「愛してます康太……」 「伊織……戸浪亜沙美に逢おうと想うんだ…… 一生には勘付かせないで……逢う気でいる」 「……何故ですか?聞いても良いですか?」 「閻魔は……愛せなかった女に慈悲を掛けた…… 力も記憶も総て剥奪して人の世に堕とした……と言った だが女神の力は……なくなってはいないんじゃないかと想う……」 「何故……そう思うのですか?」 「流生を閻魔に封印させたのは……知っているよな?」 「ええ……女神の力が強く出てるのでしたね……」 「女神の力が遺っているのなら……今後子供を成せば……力は継承されてしまう 人が女神の子を産む……事になる それはこの世を歪ませるには充分な力となる……」 「………力は剥奪されたのではないのですか?」 「………だから確かめに行くつもりだ 亜沙美の生を終えたら転生して次は昇華すると決めていた それが……女神の潜在意識の中の訴えだと想っていた だが違うみたいだ……確かめねぇとな 兄者にも……確かめたい事ならある 少し前に……天帝に逢ったよな? あれは間違いなく天帝だ……だとしたら… 何故……天帝が今世にいるのか聞きたい… 五帝が魔界にいない異常さを兄者は解っていない……」 「………炎帝……」 「皇帝とオレのいない今……雷帝 天帝 関帝 は絶対に離れてはいけない存在なのに……」 「………まさか……天帝に人の世で逢うとは想ってもいませんでしたね……」 「よりによって天帝だかんな 未来神と謂われし天帝が、何故人の世にいるのか……兄者に聞かねぇとな……」 「……やっとわが子に逢えたのに……放っておいてくれませんね……」 「取り敢えず……流生を連れてトナミ海運に行くしかねぇな……」 「その前に康太…… 愛し合う時間は要りませんか?」 「要るに決まってるだろ?」 自然と唇が合わさり執拗な接吻で貪り合った 互いを手にすれば止まるはずなどなかった 榊原の唇が顎を舐めて下がって行く 榊原はキラキラ光る乳首を摘まんだ 尖って自己主張をする乳首は赤く艶めいていた プクッと尖ってプルプル震える乳首に、榊原は舌を這わせた 「あぁっ……伊織……イッちまうから嫌だ……」 焦らす様な愛撫は康太を追い詰めて行く 「………伊織の舐める……」 「なら僕は君の下のお口を舐めます お尻をこっちに向けて下さい…」 康太は榊原を跨いで乗ってお尻を榊原へと向けた そして聳え立つ榊原の性器に口を付けた そこはもう……カウパーで濡れていた ドックンドックンと脈打つ肉棒は蜷局を巻いたかの様に血管を浮き出させ……硬くなっていた ペロペロと舐めると亀頭の口から先走りが溢れた 榊原は康太のお尻の穴を解した 舌と指で丹念に舐めて解した 愛しい…… 健気な秘孔は榊原の舌と指に感じて戦慄いていた 咀嚼する様に煽動する秘孔は物足りなさを訴えて、榊原の指を食べていた 腸壁が榊原のカタチを求めて蠢く 足らないと催促し煽動する 挿れて貰わねば……狂う 「……伊織……欲しい……」 「おいで……上に乗って食べて下さい」 榊原は康太の体躯を起こすと上に乗せた 康太は双丘を左右に開き……榊原を受け入れた 「……あっ……大きい……」 「キツいですか?」 「………伊織……熱い……あぁっ……ぁん……」 榊原は康太の腰を押さえると、一気に貫い 康太が榊原に慣れるまで暫し動かずに待つ 腸壁が榊原の肉棒を包み込む様に煽動するのが解ると抽挿を始めた 深く… 深く…… 康太の奥深くまで貫き……引っ搔く 康太は榊原の背中に縋り付き……快感を共にする 愛する男の背を離したくない 共に… それしか願ってはいない 「伊織……気持ちいい……」 「僕も気持ちいいです……」 唇が合わさり、舌を差し込み執拗な接吻になり、貪り合う 息が止まる程… 抱いてくれ… 隙間もなく抱き合い求め合う 幾度も体躯を繋げ、求め合う 刹那の時間がそこに在った…… 康太は意識を手放した その背中に榊原は口吻を落とした 「………伊織……」 「何です?」 「神野に子供は渡ったのか?」 「明日、榮倉に聞くしかないです」 康太は榊原の胸に擦り寄った 「………耕作の子を貰い受けて……須賀に渡さねばならない 飛鳥井のゴタゴタでずれ込んでる……」 「………日本になかったのは痛いですね…」 「………そう……停滞してるんだよ……総てが…」 「在るべき道に逝けなくなりますからね…… 君は導かねばなりませんね 適材適所配置するが為に君はいるのですからね……」 「………この前の犬っころから狂ってばかりだな……」 「仕方在りません……予定は狂うためにあるのです……」 「伊織……オレには時間はそんなにねぇ……」 「子供達が独り立ち出来るまでは、君の力は要ります そんなに簡単には逝かせません」 「……そうだったな……」 康太は笑った 適材適所……最後の駒を配置して……軌道に乗るまで……… 源右衛門がこの世にいない今…… 後ろ盾もなく放り出す事など出来はしないのだ 「………伊織……還ったばかりだしな…… 我が子との時間を蔑ろにしてやる事じゃないな……」 「そうですよ」 「………でも流生を連れてトナミ海運へは行く……」 「………ええ。僕も行きます」 「………ん……」 どんな現実が待っていても…… ……受け入れるしかないのだ… 幸い……今世には天帝がいる この日のために兄者は天帝を寄越したのか? 勘繰りたくなる…… だとしたら……皮肉だ…… 康太は目を閉じた 榊原は康太を強く抱き締めた 翌朝、榊原に起こされて康太は目を醒ました 「康太……康太……起きなさい」 呼ばれて目を醒ますと……執拗な接吻で口を塞がれた 「…んっ……ん……んんっ……」 背中を叩くとやっとこさ唇を離してくれた 「………朝の挨拶にしては激しすぎるぜ伊織…」 「愛が溢れてるので仕方がないのです」 榊原はしれっと言い笑った 康太を抱き上げて浴室へと向かう 浴室で、外も中も綺麗に洗って貰い、湯船に浸かった 「伊織、スーツを着せてくれ…」 「解りました」 「魔界に還ったら一泊して、また体躯を洗ってやんよ!」 「本当ですか? それは嬉しいです」 「溜まった仕事を片付けねぇとな……」 「ええ。サクサク行きましょう!」 榊原は浴室から出ると髪を乾かし、スーツを着せた そして自分の支度をすると康太をリビングのソファーに置いた 「伊織、子供の所にいるかんな!」 「ええ。僕は留守の間に溜まった掃除と洗濯を片付けます」 榊原は忙しそうに動いていた 康太はリビングを出て子供達の部屋に行こうとした ドアを開けると一生にぶつかった 「………痛い……」 ドスっと一生の胸にぶつかり康太は呟いた 「何処へ行くんだよ?」 一生が尋ねると康太は鼻をさすった 「痛ぇな……子供に朝の挨拶に行くんだよ」 「喜ぶぜ!」 一生は嬉しそうに康太の後ろを着いて歩いた 子供部屋のドアを開けると、子供達が 「かぁちゃ!」と叫んだ 「お!起きてるな!」 子供達におはようのキスを落として抱き締めた 流生は「かぁちゃ ちゅき」と喜んだ 翔は康太に抱き着いた 太陽と大空は「らっこ!」と抱っこを要求した 康太は大空を、一生は太陽を抱っこして 起こしに来た慎一に渡した 「……え?……何ですか?」 「下に連れて行くんだよ」 「あぁ、今は抱っこで下へは行きませんよ?」 慎一はそう言い太陽を下ろした 「もう自分で下りて逝くのかよ?」 康太は子供の成長の早さに胸が熱くなった 康太は慎一に 「慎一、今日は流生以外を幼稚園に連れて行ってくれ」と頼んだ 「………流生は?」 「流生はオレと共にトナミ海運へ行く」 康太が言うと一生が 「……何故……トナミ海運へ?」と問い掛けた 「若旦那との約束だ 一生、お前は着いて来るなよ」 「………え?……留守番?」 「少し込み入った話をする……」 「………解った……俺は行かない……」 「慎一、お前が着いて来い……」 康太が言うと慎一は意外な顔をした 「………俺?……」 「流生を見て貰わないとダメな時は頼む…」 「解りました……」 「夜は歌舞伎町へ行くから、その時は一生、一緒に来い」 「……了解!」 「一生、オレをキッチンまで連れて行け」 康太はそう言い一生の背中によじ登った 「………おめぇはよぉ!」 「あんだよ?」 「母ちゃんになっても甘えん坊だ!」 「お前はジジィになっても甘やかしてくれんだろ?」 康太はそう言い笑った 「ジジィになっても甘やかしてやるよ! 仕方ねぇな!お前は甘えん坊だからな!」 康太は笑った ジジィの自分など想像も出来なかった…… ジジィの榊原など想像も出来なかった…… 短命な自分と共に生きた…… 康太は嬉しそうに笑った 「………ジジィの一生が見たいな……」 「頑固親父になんぜ!俺は!」 「似合うな一生!」 「だろ?おめぇも頑固親父になれ!」 「良いな、それ! 二人で頑固親父になろうぜ! 頑固一徹……源右衛門よりも頑固目指そうぜ!」 そんな康太が見たかった……   絶対に見る! 一生は決めていた 絶対に死なさない! 一生はキッチンまで康太を背負って行った 慎一が一生から剥がして、椅子に座らせた かぁちゃの横に子供達が座った 瑛太は康太を見付けると頬ににキスを落とした 「康太、今日は何処かへ行くんですか?」 「オレはトナミ海運へ行く」 「………そうですか……ゆっくり出来ませんね」 「若旦那には世話になったからな 食事するって約束したからな……」 「そうでしたね 私は会社にいるので顔を見せに来て下さいね!」 「おう!会社に行ったら顔を出すよ」 「待ってますね」 榊原がキッチンに顔を出すと瑛太は 「伊織も今日はトナミですか?」と問い掛けた 「ええ。康太を一人にする気は皆無です」 「……苦労を掛けますね伊織……」 「義兄さん苦労だなんて想っていません」 瑛太は榊原を抱き締めて、会社へと向かった 康太は榊原が食事を終えるまで、キッチンで子供達と遊んでいた

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