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第72話 女神の力昇華の儀 ②

炎帝と共に……炎帝の為に散れるのなら本望で御座います」 と申し入れた 榊原は「乱世の世を共に逝っても良いと言うのか?」と問い掛けた 「炎帝と共に! そう思っております 我が主は閻魔大魔王でした ………が、我が主 炎帝様とさせて戴き命尽きるまでお側にいとう御座います」 「………では共に逝って下さい」 「はい!」 「だが今は人の世を悔いなく……生きて下さい」 「………心に刻んで日々を生きます」 「愛する者を離さないで……」 「はい!」 「………そしたら炎帝が来世も……共にいさせてくれるかも知れません 我が妻は恋人同士には寛容なのです」 榊原はそう言い笑った 魔界では見た事のない優しい笑みだった 「………う……んっ……」 康太は苦しそうに唸った 「……康太……どうしました? 苦しいのですか?」 「……伊織……腹減った……」 「……では何か慎一が用意してくれます」 「………沢庵……」 「それは無理です」 「……ちぇっ……ならプリン……」 「それなら直ぐに用意してくれます」 慎一はプリンを手早く用意すると榊原に渡した 「僕が食べさせますか?」 「自分で食う……」 榊原は康太を膝の上に座らせてプリンを渡した 「健、おめぇは人になったし、西園寺と仲良くな! もう家に帰っても良いぞ!」 「………お咎めは?」 「ねぇよ!んなお咎めなんてのはケルベロスにでも食わせとけ!」 なんてもんに食わせますの…… 健は唖然となった 「今度、飛鳥井の家に遊びに来いよ!」 「………え?……良いの?」 「おう!土日なら誰かいんだろ? 家には犬もいるし、オレの子供もいるかんな!」 「………あ、編集部に連れて来た子?」 「流生はそうだけど、オレの子は全部で5人! 5人兄弟だ!見に来い!子守させてやんよ」 康太はそう言い笑った 「……絶対に遊びに行かさせて貰います」 「オー!何時でも来い」 康太はそう言い笑った 髪はまだ赤いままだった 「………これじゃ……帰れねぇな……」 「大丈夫です!具合の悪いフリをすれば抱き上げて連れて帰れます」 「………それってかなり嫌かも……」 康太はボヤいた 健は聡一郎を見ていた 僕の髪を直した様に直せば?と瞳が物語っていた 「……天帝……閻魔の呪文なら使えますが…… 皇帝炎帝の髪を治せる力などありません」 「……ダメなのか……」 「………魔界の者で……治せる者などいません… 皇帝炎帝は冥府の者……手出しは出来ません」 健は悲しそうな顔をした 西園寺は健を抱き寄せた 康太は健に「気にせず帰って構わねぇ」と告げた 健は立ち上がると深々と頭を下げた 「今日は本当にありがとうございました!」 西園寺も深々と頭を下げた そして2人で帰って行った 2人を見送って康太は息を吐き出した 「………伊織……腹が痛ぇ……」 「力の使いすぎです! 病院に行きます」 「………この髪の毛じゃ……」 「気にしなくても大丈夫です」 榊原は慎一にカードを手渡した 「部屋の精算、頼めますか?」 「解りました」 「一生、僕と来なさい! 聡一郎、黒龍と銘、お願いします 飛鳥井の家に連れ帰って下さい」 榊原が言うと聡一郎は「解りました」と言い、早く康太を……と榊原に頼んだ 「一生、車まで走って行きます ドアを開けて下さい」 「解ってる!行くぜ伊織」 榊原は康太を抱き上げて、一生と共に部屋を後にした 黒龍はそれを見送って聡一郎に 「………相変わらず炎帝は我が身を省みないか……」と呟いた 「炎帝ですからね……人の体に炎帝の力… 体躯は限界を超えてしまう  なのに……炎帝は力を抜きません きっと彼は魔界に還っても変わらないんでしょうね…… 魔界の体躯に冥府の力…それでも無理して炎帝は生きて逝くのです……」 「………アイツは変わらねぇ……」 「さぁ、黒龍、銘、行きますよ!」 聡一郎は隼人を引き摺って、黒龍と銘と慎一を急がせてフロントに向かった 康太…… 君は何時も無理ばかりする…… 想いは康太へ 体躯は飛鳥井の家を目指して向かった 榊原は康太を車に乗せると、飛鳥井の主治医の病院に急いだ ついついスピードを出す榊原に一生は 「………旦那……スピード落とせ……」と声を掛けた 「………一生……解ってるんですがね……」 「旦那……大丈夫だから!」 一生に言われて榊原はスピードを落とした 「………髪……元に戻りませんか?」 「………戻す体力ねぇんじゃねぇか?」 「………仕方ありませね 前に一度……この髪で久遠先生には診せましたからね……」 「………今度も……診せるしかねぇな」 「……銘といたのに……想わず呼んでしまいました……」 「気にすんな! 俺は何時でも康太の傍を選ぶ!」 榊原は心強い言葉を受け、病院へと急いだ 一生は途中で久遠に電話を入れた 「飛鳥井康太の容態がおかしいので診て下さい」……と。 すると久遠は「直ぐに連れて来い!」と怒鳴った 定期検診にも来なかった 病院に来いと電話を入れたら、瑛太が出て 「康太は日本にはいません 僕も旅立つ所です」と告げられた 言葉もなかった 日本にいない奴の治療なんて出来ないから…… 「日本に還って来たから診察に来い!」と連絡を入れると清隆が出た 必ず伝えますと言われたが……心配していた所だった 久遠は駐車場にストレッチャーを持って行き待機していた 榊原のベンツが駐車場に停まると久遠が駆け寄った 「容態は?」 「お腹が痛いと言って意識を手放しました」 久遠は康太の真っ赤な髪を見た 「………また力を全開にしたのか?」 「………はい……」 「………一ヶ月、診てなかったからな…… 検査に入るけど良いか?」 「……はい!お願いします」 久遠は康太を乗せてスタッフと共に走って行った 榊原はそれを見送り……崩れそうになった それを支えたのは一生だった 「大丈夫か?」 「………一生……飛鳥井の家に行って流生をお願いします」 「嫌だ!」 「………一生、流生の封印、見届けて下さい」 「………おめぇ……それを俺に言うのか!」 「君にしか言えません! 流生の血を分けし君にしか言えません!」 「………康太の傍を……離れろと言うのか? ひでぇ奴だな……おめぇは……」 榊原は一生を抱き締めた 「………赤龍……お願いします」 「………行って来る その変わり慎一と変わるかんな!」 「……助かります…」 一生が出て行って暫くすると慎一がやって来た 慎一は榊原の横に座ると、カードと明細を手渡した 「手間掛けましたね」 「………康太は?」 「かなり痛みがあったみたいです 病院に着く頃には気絶してました」 「………体調が悪かったのですか?」 「…………良くはなかったです……」 榊原の言葉に慎一は唖然となった…… 体調が良くなかったのに魔界に逝って…… 力も全開させたと言うのか? 「………何故……」 慎一は呟いた 筋違いなのは解っていた 榊原を責めてはいけないと解っていた でも想わず……言葉になった 「……彼の歩みは止めてはなりません……」 その言葉に……慎一は瞳を閉じた 「………解ってます……」 解ってるが……… あまりにも辛い…… 「……慎一、僕もね……康太を何度も止めたいと想います 逝かせたくない……と何時も想います 逝かせれば……生きて逢えなくなるかも知れない…… その恐怖に……夜中に目が醒めて……泣きたくなる時もあります でも止められはしない 幾度生まれ変わっても……僕は彼を止められないんです 彼は逝くな! と、言えば止まります でも、それは……彼の本望ではない 不本意に彼の動きを止めても…… それは彼の本望ではない 手折った花は……何時か枯れてしまう 彼は進むから美しい…… 果てへと進むから……美しい 僕は彼の思いのまま……果ててくれれば良いと想うのです 逝く時は一緒……僕は共に逝きます だから……悔いのない日々を送らせたいと想うのです でも今は……志半ば……逝くのは早い……」 榊原の本音を聞かされれば…… 何も言えはしない 苦しい胸の内には葛藤もある その葛藤を超えた想いが……確かに在った 「…………伊織……病院には通わせて下さい」 「解ってます 君も主の管理をお願いします」 慎一は頷いて……祈った 神よ…… 貴方がいるのなら……聞いて下さい 主を…… 俺から奪わないで下さい まだ主に仕えて……助けられるばかりで 何の恩返しもしてない この人に仕えて……まだ何もしていない 主の生の終わりまで仕えると決めた 主の生が終わっても仕える決めた なのに………早すぎます! 神よ…… 貴方は……主に苦しい未来ばかりしか用意しない! 主の命を……… 奪うなら……容赦しない! 気が遠くなる程、待合室で待たされた 榊原は康太と一緒に検査室に入れば良かったと後悔した これ以上……待たされるなら… 検査室に入ろうと、腰を上げた時 久遠が姿を現した 「検査は一通りり終わりった」 「康太は?」 「検査の途中で目を醒ましやがってな 今日は帰るって言うからな、明日入院に来いと言った」 「………康太は了承したのですか?」 「しねぇな! んとに困った患者だ! 10日で退院すると言ってみたり…… 無茶ぶりしか言わねぇ患者だ!」 「………入院……させないといけない状態ですか?」 「…………結論から言おう 内臓が機能停止寸前だ! 負荷の掛かりすぎだ! 何をどうやったら、こんなに負荷が掛かるか! 俺は知りてぇぞ!」 「………久遠先生……康太は?」 「飯は食わせるな 病院から栄養のドリンクを渡す それを飲ませて薬を飲ませてくれ 明日入院になる それは譲れん!良いか伴侶殿!」 「………はい!本当に申し訳御座いません…」 「源右衛門を越す頑固者だな……アレは! 仕方ない、折れてやる だが予断は許さない! それは忘れるな! 謂わば内臓の機能が停止したら心臓も停止するのは時間の問題だ!」 久遠の言葉を榊原は苦しそうな顔して受け止めていた 「………康太は……明日の道を逝けないなら…… 死を選びます……」 「………今日の命が尽きても、アイツならやりそうだな! だから、明日は入院して貰う! 何が何でもだ!それは譲らねぇ! アイツが明日の道を逝けないなら死を選ぶと言うなら! 俺はアイツを明日の道に繋なぎ止めて逝かせねぇ! 簡単に逝けると想うな!」 久遠は怒った口調で宣言した 「………ありがとうございます……」 榊原は久遠に頭を下げた 床に……雫が零れるのを久遠は見逃さなかった 「点滴が終わったら還っても良い 慎一、俺と来い! お前に康太の薬とドリンクを教える」 久遠はそう言い慎一を連れて行った 久遠が消えても榊原は動けなかった 暫くして看護士が榊原の元に来た 「榊原伊織様ですか?」 名前を尋ねられ、榊原は「はい!」と答えた 「飛鳥井康太様は処置室に移されました 点滴が終わりましたら帰宅されて構いません 明日、入院の用意をして来て下さい」 「……はい。解りました」 榊原は立ち上がると看護士と共に処置室に向かった 処置室の中へ通されると、康太がベッドに寝ていた 腕には点滴が刺さっていた 髪は赤いままだった 榊原は康太のベッドの横に座ると髪を撫でた 「………康太……本当に君は無茶しますね」 「……すまねぇ伊織…」 「………起きてたんですか?」 「痛みで意識がなくなっただけだ…… 処置して貰ってる最中に目が醒めた」 「………入院しないって?」 「明日からでも良いだろ?」 「……なら無茶しないと約束しなさい!」 「約束する……」 「………髪……戻りませんね……」 榊原は赤い髪を手にすると、その髪に口吻た 「……戻すだけの体力がねぇ……」 「……無理しなくても大丈夫です 体力さえ戻れば戻せるんですから…」 康太は天を仰いだ 「………弥勒……戻せねぇか?」 『……無茶ぶりふるのが好きだなお主は… お主は……冥府の者……我の術など弾き飛ばしてしまう……』 「………だよな……オレを呼び出したおめぇでも無理か……」 『………確かに……お主を魔界に転生させたのは我だが…… アレは我だけの力に非ず……』 「………子供達がこんな髪見たら怖がる…」 悲しそうな康太の声に……弥勒はいたたまれなくなる 『……我はこれより崑崙山に逝く 天界より戻ったばかりで……人使いが荒すぎであろうて!』 「で、どうだった?ビンゴ?」 『………あぁ……ガブリエルが近いうちにお主の処へ姿を現すそうじゃ……』 「そっか……ならくたばってらんねぇな」 『当たり前じゃ! お主を逝かすかよ! 龍騎が……病に伏せっておるからな…… 心配かけるでないぞ』 「………龍騎、その後どうなった?」 『………あやつの場合は自殺行為だ! 病に倒れて当たり前じゃ! お主もな!少しは伴侶殿の心痛を解れ! では、崑崙山に逝き、八仙を通して皇帝閻魔より力を注いで貰う それで髪は元に戻ると想うぞ』 「悪かった……天界から還ったばかりで……すまねぇ……」 『構わぬ!お主が生きているなら、それでよい!』 弥勒はそう言い気配を消した 「………親父殿を出させてしまったな……」 康太は呟いた 「………髪など……体力が戻ってからでも……」 榊原は康太を抱き締めた 「入院なら、また子供達と離れ離れだ 病院には子供は入れねぇ……」 「………康太……体躯の事だけ考えて下さい…」 「解ってんよ……」 点滴が終わると康太は榊原に抱き上げられた 「………伊織……」 「黙らないとキスしますよ?」 こんな病院の廊下で……それは嫌だった 「………歩けないんでしょ? なら黙って抱き上げられてなさい! 君を無理させたくないんです! 君を愛する故です許しなさい!」 康太は榊原の首に腕を巻き付けた 愛しい男の胸に顔を埋めた 長い赤い髪が揺れていた 端から見たら男だと解らない 解ったとしても別に構わない 人にどう見られようと構わない 愛する者の手を離さないで良いのなら…… それで良かった 「………伊織……ごめん……」 「天界に弥勒が何故逝ったか教えてくれたら許してあげます」 「どの道話すつもりだった 忙しかったかんな……気に病ませたくなかったのと…… お前と2人の時には……そんな話よりお前のぬくもりを求めていたんだ……」 「………僕も……君のぬくもり以外に欲しいモノなどありません」 榊原は待合室に向かった すると慎一が支払いを済ませて待っていた 「支払いは康太のカードで済ませました 薬と栄養ドリンクの処方を聞いてきました」 「すみませんね 今すぐ静かな所へ逝かねばなりません」 「……ならこの近くのホテルに部屋を取りますか?」 「そうして下さい」 慎一はホテルに部屋を取りに向かった 榊原は康太を連れて車に向かった 「………康太、少し待てますか?」 「………弥勒も様子を見てる…」 「………康太……辛い時は言って下さい」 「………体調は悪くはなかった だが……魔界に逝った後だったから体力的に無理だった……」 「……それでなくても海外に逝って……無理したんです」 「………海外はオレの水に合わねぇな… アレはストレスにもなった……」 「………まだ……子供達が小さすぎます…… 何の後ろ盾もなく……放り出せません」 「……解ってんよ…… オレが真贋を継いだのは17だった…… 翔達が17になって真贋を継がせるまで……生きていねぇとな…… 17って言ったら修学旅行があんぜ! 伊織と仲間と逝った修学旅行を思い出すな」 「……翔や流生達が修学旅行に逝く時…… 送り迎えしないといけませんね」 「……あぁ……あの日瑛兄が迎えに来てくれた様に……オレも子供達の修学旅行の送り迎えしてぇな……」 「必ず!送り迎えするんです! ですから、その日までは逝かせません!」 榊原は宣言した 康太は嬉しそうに笑った 慎一が車に戻ると、ホテルの予約を取った事を告げた 榊原は近くのホテルへと車を走らせた ホテルの駐車場に車を停めると、康太は車から下りた まだフラつくが、抱き上げられてホテルに入るのはご免だった 榊原は康太の意図が解るから……そっと支えた 慎一はフロントへ走りカードキーを貰いに行った そしてエレベーターに走りボタンを押した エレベーターのドアが開くと康太と榊原が乗るのを確かめて閉まるボタンと階数押した 慎一が取った部屋は3階だった 3階に到着すると、康太と榊原か下りるまで扉を持っていた エレベーターから下りると、慎一は走って部屋の鍵を開けた 榊原はドアの前に来ると康太を抱き上げた 二人が部屋に入ると慎一はドアを閉めた 『……康太、よいか?』 部屋に入ると弥勒の声が聞こえた 「……良いぞ!」 『………崑崙山に………」 「ん、何かあったのか?」 『………皇帝閻魔が来た……』 「………え?親父殿が?……」 康太は言葉をなくした 『…我の覇道を伝って……お前の前に逝くと言う……』 「………弥勒……」 『皇帝閻魔のたっての願いだ…… 聞かぬ訳にはいくまいて!』 「……親父殿……」 康太は呟いた すると………皇帝閻魔が康太の目の前に現れた 『……我が息子炎帝よ』 皇帝閻魔はそう言い……優しく我が子を抱き締めた 『……お前は……決めたら引かぬ それは変わらぬな……… だがな炎帝……伴侶殿を哀しませるな……』 「………伴侶が止めれば……オレは止まるぜ!」 『それが……如何にお前に不本意か…… 解っているから……伴侶殿は止めぬ…… どれだけの想いで送り出してるか…… 解っておるな……我が息子よ?』 「……解ってんよ…… だけど……引き返す道はねぇ……」 『……真っ直ぐ過ぎる我が子よ…… 人の世の生活が……一日でも長く送れるように…父は祈ろう……』 皇帝閻魔は康太の赤い髪を撫でた そして抱き寄せると……つむじに口吻を落とした すると康太の髪は…… 黒い何時もの髪に戻った 『……我の…血を……少し分けてやろう… それで少しだけ体力が戻るであろう』 皇帝閻魔は唇を噛み切ると血を流した そして我が息子に口吻た 康太は皇帝閻魔から流れる血を、ゴクンッと咀嚼した 康太は皇帝閻魔の唇を舐めた すると唇の傷は消えて行った 『悔いのない日々を送れ……我が息子皇帝炎帝よ!』 「………親父殿……」 『父は何時でもお前の幸せを願っておる』 皇帝閻魔は康太を強く抱き締め頬に口吻を落とすと……… スーッと消えて行った 康太は泣いていた…… 父の愛を感じて……泣いていた 冥府から崑崙山へ来るだけでも……体躯に負荷は掛かる その上……息子に血を分け与えるなど…… 寿命を削っているのも同然だった 康太は天を仰いだ 「………弥勒……親父殿にオレが冥府に戻るまで……逝くなと伝えておいてくれ……」 『言われなくても八仙が怒りまくってた 八仙が何やら皇帝閻魔が嫌がる飲み物を無理矢理持たせて送り届けたそうだ』 「………皇帝閻魔が消えたら……その方がオレは怖い……」 『そんな事があったら……お前は還るであろう? そんの事は絶対にさせはしない!』 「………弥勒……見舞いに来い その時に話してくれ」 『解った……大人しく入院しておるのだぞ』 「明日からな、今夜は黒龍もいる……」 『………黒龍など送り返せば良いではないか!』 「黒龍は仕事で来てる」 『………そうであったな……』 「……明日な弥勒……」 『では明日病院に行くとする』 そう言い弥勒は気配を消した 康太は榊原を見た 「飛鳥井の家に還るか?」 榊原は静かに康太を抱き締めた 「………ええ……還りましょう……」 「慎一、家に還るかんな!」 「はい!還りましょう」 慎一は静かにドアを開けた 康太と榊原は飛鳥井の家に還る為に歩き出した 愛したお前と還ろう…… 我が子の待つ家に還ろう 仲間の待つ家に…… 愛する家族のいる家に…… 還ろう……

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