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第76話 天界にて②

康太は「なら治してやらねぇとな……」と瑛太に謂った 「………ええ……亡くせば……佐野も生きてはおりません……」 「………瑛兄……頼むな……」 瑛太は康太を抱き寄せた 「………君は……苦しまなくてもいい……」 「………悪酔いする筈だよな ここ最近……飲もうと誘われてたろ?」 「………ええ……何かあったのかと想ってました 正気をなくして飲む奴ではないので……」 「………瑛兄……彦ちゃんは弱いんだよ……」 「………私も……強くはないです 亡くしたくはないのです…… 亡くしたら……生きてはいたくないのです……」 「………瑛兄……」 「……愚かだと言って下さい…… それでも………私は………」 瑛太は康太の肩に顔を埋めた 弥勒は康太の方を見ていた 「………この者の妻は……まだ逝かぬ……」 「………弥勒……」 「逝きそうなら……少し……ずっこすれば良い」 「……東矢の時みてぇにか?」 「………それで人の世が狂うわけでもない」 「………弥勒……ありがとう……」 「お前が苦しまなくても良いなら……我は……それで良い…… そこの朱雀辺りも……ずっこしてくれそうだしな」 弥勒はそう言い笑った 兵藤は嫌な顔をして 「………康太が悲しまないなら……な! 少しのずっこ位……してやるさ」と約束した 「……貴史……」 「だから……泣くな…… 癌なら美緒に出て来て貰って良い医者を派遣させる」 「………オレの子供が桜林を卒業するまで…… 彦ちゃんは見届けてくれると言った 妻を亡くせば………彦ちゃんは……逝っちまうからな…」 「んな事にならねぇ様にすんだよ!」 兵藤は怒鳴った 一生と聡一郎……隼斗と慎一は涙する佐野の姿にショックを隠せなかった 何を考えてるか解らない飄々とした印象しかなかった 私生活は一切表に出さず家族構成は「妻のみ」と語った 「俺ら夫婦には子供がいないから…」 世の中 妊娠しない夫婦だっている……そう思っていた 妻を愛し、愛し抜いている人だと思った 瑛太も知る…佐野の妻…… 聡一郎は……妻を亡くせば佐野も生きてはいないと思った ならば……神よ……佐野の妻を…… 願った 隼人も一生も慎一も…… 佐野の妻が……佐野を遺して逝きません様に願った 静に夜が更け…… 皆 知らないうちに眠りについた… ギョェェェェ!!! 朝から悲鳴に……皆が目を醒ました ウッ! ハッ……! 呻き声は続く…… 榊原は起き上がり見渡すと…… 腹を押さえた兵藤と目が合った 「………貴史……まさか……」 「久しぶり過ぎて……康太の寝相がすげぇのを忘れてた……」 兵藤はそう言い笑った 「………康太は?……」 兵藤は、あっち と指差した 康太は瑛太の上に乗って 「……瑛兄の匂いだ……」とスリスリしていた 「………康太……ここまでゴロゴロして来たのですか?」 榊原の横に康太が寝ていた 康太の横に兵藤が寝て、一生、慎一、聡一郎、隼人、弥勒、瑛太、佐野、神野……と寝ていた 康太は鼻をクンクンすると 「お!弥勒……」 と弥勒の上でスリスリしていた 「………康太……お主……寝相がヤバすぎ……」 弥勒は康太を引き剝がすと、榊原の処へ届けた 一生も聡一郎も隼人も……あっちこっち押さえていた 兵藤は「………今回も被害大だな……」と呟いた 榊原は苦笑して康太を抱き締めた 「……仕方有りません……康太ですからね……」 皆 納得した 「腹減ったかんな食いに行こうぜ!」 康太はそう言い立ち上がった 「オレの子を見て来るか…」 康太が言うと一生が 「喜ぶぜ!」と声を掛けた 「此所は片付けとくから逢って来いよ」 一生がそう言うと康太は、榊原に手を差し出した 「行こうぜ!伊織」 榊原はその手を取り立ち上がった 二人して仲良く客間を出ると兵藤は佐野に 「彦ちゃん、早ぇ方が良いからな、今日動くぜ!」 と伝えた 佐野は「………?……え?」と訳が解らない風だった 兵藤は「瑛太さん、俺は美緒に頼んでおきます」と瑛太にそう言った 慎一は「では俺は久遠先生に伝えておきます!」と伝えた 神野は「なら俺は車を出す!入院の支度して連れて来るのに……お前は無理だろ?」と佐野を抱き締めた 康太は戻って来て誰かと電話をしていた 「そう!だからお前も一枚噛んで欲しい」 榊原以外は誰と話してるかは皆無だった 『佐野に変わって貰えますか……』 康太は佐野に携帯電話を渡した 佐野は「……え?俺に?」と驚いたが電話に出た 『お前さ、飛鳥井で飲んでるなら誘えよ!』 電話の相手は…… 「……田代……」だった 『康太から事情は聞きました! 私も一枚噛まさせて戴きます!』 「………田代……仕事……忙しいだろ?」 『お前は友に水臭い事を謂うのか? 我等四銃士は何があっても鉄壁の絆を持っていた筈だ! しかも康太が学園時代から大切にしていた教師となれば戸浪も黙ってはおりません 戸浪の口から……伝われば恐いものなどない位に大事になると想いますよ?』 「………そんな大事には……」 『もう遅い…隣に社長がいます』 「……え?戸浪社長……」 戸浪は強引に電話を変わると 『トナミ海運社長の戸浪海里です』と自己紹介した まさか……社長自ら自己紹介されとは想わなかった佐野は……言葉をなくした 『貴方は心配しなくて良い 康太の大切な人なれば我等力を集結して何としてでも助ける!』 「…………ありがとうございます……」 『すみません……康太に変わって貰えますか?』 言われ佐野は康太に電話を返した 「若旦那……?」 確かに田代の電話に電話を掛けたのに…… 『康太、田代に電話するなら私に掛けて来て下さい!』 「忙しくねぇのかよ?」 『………忙しいですが、君と話せない程に忙しくはないです…』 「力になってくるのかよ?」 『私は医療関係との仕事上の取引もあります いざとなれば医者に口利きする位は出来ます』 「………気を使わせて……悪かった 田代は佐野とは学友だから電話を掛けたんだ」 『桜林の絆ですね! 私は桜林の絆はありませんが、君との絆ならあります! いざという時には力になってみせます!』 「……ありがとう……」 戸浪は次の約束を取り付けて電話を切った 朝食を取ると皆 忙しく手分けして出て行った 慎一が弥勒を送って行く事になった 弥勒は康太を抱き締めて名残惜しそうに帰って行った 康太と榊原は寝室へも向かった 「……伊織…どうする?」 「君を抱くに決まってるじゃないですか…」 「なら……思う存分……好きにしてくれ…」 「言われなくてもします」 榊原は康太を寝室へと引っ張って行った 寝室の鍵を掛けるなり榊原は康太を抱き締めた 「………康太……」 「伊織……待たせたな…」 入院したり天界に行ったりして二人は体躯を繋げていなかった もう一ヶ月以上…… 榊原は康太に触れていなかった 「体躯……辛くないですか?」 「大丈夫だ伊織… オレも伊織が不足してるかんな」 榊原は康太を抱き上げた 康太は榊原の首に腕を回した ベッドに連れて行かれて、そっとベッドの上に下ろされた 康太は服を脱ぎに掛かった 榊原も服を脱ぎ捨てた 素肌で互いを抱くと…… 肌に馴染んだぬくもりに浸食された 「康太……愛してます……」 榊原はそう言い執拗な接吻を康太に送った 康太は榊原の舌に自分の舌を搦ませて応えた 口腔を榊原の舌が搦まり縺れた 指は康太の体躯を這った 尖った乳首を爪で掻くと…… 康太は「………んっ……んっ……ぁん……」と喘ぎを漏らした 「………伊織……欲しくて……奥が疼く……」 「僕も……君が欲しくて……先っぽから液が溢れて止まりません……」 榊原はそう言い康太の脚に性器を擦り付けた 「伊織……ローション……」 「一ヶ月も……犯ってないんですよ?」 硬くなって…… ローションを使っても辛いだろう……と榊原は言った 「早くっ……伊織……我慢できない……」 榊原はナイトテーブルの引き出しからローションを取り出すと、蓋を開けて康太の秘孔に垂らした ローションで滑りの良くなった秘孔に、榊原が出入りする 広げる様に…… 皺を伸ばす様に…… その綺麗な指先が康太を翻弄した 「……もっ……伊織……早くっ……」 康太の性器の先っぽからはカウパーが止めどなく溢れていた ポタッ……ポタッ……とシーツに染みを作っていた 榊原は康太を仰向けに寝かせると脚を肩に担いだ 露わになったお尻の穴に性器を突き立てた 「……あぁっ……ゃ……イッちまう……」 康太は身を震わせて……イッた 榊原の腹に康太の精液が飛び散り……流れた 「………君……挿れた瞬間にイキましたか?」 「我慢出来なかった……」 「そんなにイキまくると後が辛いですよ?」 「辛くてもいい…… お前に抱かれてるだけでオレは気持ち良いんだから……」 「そんな殺し文句言って……」 榊原は抽挿を早めた それと同時に乳首を吸った 榊原のモノだと所有権の主張をしているピアスを摘まんで舐めた 「……あぁっ……またクるぅ……」 榊原は康太を抱き締めると、体躯を起こした 座った榊原の上に乗り串刺しにされている体躯は…… 自分の体重で更に榊原の肉棒を奥へ……奥へと…… 飲み込んでいた 「………深いって……伊織……」 「深いの好きでしょ?」 「好き……あぁっ……伊織……愛してる……」 もう何言ってるか解らなかった 榊原は康太の中を楽しむ様に…… 康太の中を掻き回した 康太の腸壁が榊原に応えて蠢いていた 包み込み……搦みつき……搦めとり……榊原のカタチに纏わり付く 康太は自ら腰を動かして…… 榊原の背を抱いた 愛せる男の胸に顔を埋め…… 肺一杯に愛する男の匂いを嗅ぐ 至福の時 榊原は康太の腰を抱くと抽挿を早めた 康太の奥深くに…… 榊原は精を放った 熱い飛沫がドクドクと暴れる 康太は恍惚とした顔で笑った 「伊織……気持ちいい?」 「ええ……君の中が一番気持ちいいです」 「………オレも……気持ちいい……」 康太は榊原に口吻けた 榊原は執拗な口吻けを康太に返した いつの間にか…… 復活した硬い肉棒に…… 串刺しにされていた 二人は互いを求め 互いを補充した 心ゆくまで 欲望のままに…… 互いを求め…… そして抱き合って眠りについた 目が醒めると辺りは夕焼けに包まれていた 横を見ると榊原は起きていて、ニコッと笑って康太にキスを落とした 「………会社……休んじゃったな……」 「たまには良いです 君を補充しなければ僕は狂ってしまいます」 「伊織……ありがとう」 「………康太……」 「オレを愛してくれて……ありがとう オレと共に生きてくれて……本当にありがとう」 まるで……別れの言葉のようで榊原は慌てた 「何を言ってるんです?」 「オレはお前と共に生きられて本当に幸せだ だから言葉にした」 「………お別れみたいな言葉は…… 止めて下さい!」 榊原は康太を抱き締めた 「お別れなんてしねぇよ! お前には何時も苦労を掛けるし…… 我慢ばかりさせるからな…… 言葉にしてお礼を言ってみただけだ……」 「僕の傍から離れないで下さい!」 「あたりめぇじゃねぇかよ! オレはこの命をなくしたとしても…… お前を離す気は皆無だ」 「当たり前です……」 「伊織、起きて飯を食うとするか? 遅すぎる昼‥‥嫌、早すぎる夕飯か?」 康太は笑って謂った 「どちらでも腹が満たされれば同じでしょ? では起きましょうか」 榊原はベッドから下りると両手を広げた 「康太、おいで」 榊原に言われて康太は立ち上がり榊原に抱き着いた 浴室に向かい、康太の体躯を洗った 中も外も綺麗に洗って、浴槽に浸かった 「僕は食事を終えたら掃除をします 君はどうします?」 「オレはリビングでゴロゴロしてるよ」 「そうですか ではキッチンに行きますか?」 「おう!腹減りだ」 康太は笑った 風呂から出ると髪を乾かして、服を着せた 榊原も支度をして、一緒にキッチンへと向かった キッチンに行くと兵藤がご飯を食べていた 「貴史、どうしたよ?」 康太も何時もの席に座った 「彦ちゃんの妻、久遠と専門の医者を派遣して診る事になった 彦ちゃんの妻は入院したよ」 「………ありがとう貴史……」 「彦ちゃんはおめぇの子供を見届ける使命があるんだ! まだ逝かせる訳がねぇ!」 「疲れてるのに……悪かったな」 「構わねぇよ!お前がOB会に出てくれるからよぉ!」 「……出るよ……日程が解ったら教えてくれ……」 「お!助かるわ! その前に同窓会だ!」 「同窓会ってクラスごとにやるんじゃねぇのかよ?」 「………飛鳥井康太がいねぇと出ねぇって奴が多すぎてな……学年でやる事にしたんだよ」 「大変だな貴史…… 落第しねぇようにな…」 落第は兵藤の弱点だった…… 「………俺は既に2年に進級を決めてる……」 と兵藤はボヤいた 「お!奇遇だな! オレも2年に進級を決めてるんだ!」 「………お前の場合……半分はずっこだろ?」 大学で見掛ける事は滅多となかった なのに出席がカウントされてるなんて…… 絶対にずっこだと兵藤は想っていた 「失礼な!オレはずっこなんてしてねぇ!」 「大学で逢わないじゃねぇか!」 「お前に会うのを避けてるかんな!」 「………ええええ!それはどうしてよ? 俺はお前に嫌われてるのかよ?」 兵藤は泣きそうだった…… 「お前に逢うと余計な仕事を押し付けられると想ってな……避けてた」 「………ひでぇ……俺は傷付いた……」 「少し前までオレは狙われてたからな…… お前に迷惑掛けねぇ様に……ってのもあった」 「……これからは……避けるなよ……」 「おう!避けたりしてねぇよ」 「なら許してやる」 「そっか……もう許しちまうのか…」 「おめぇだからね!」 「それより貴史、24日の予定は?」 「お前んちでクリスマスパーティーだ!」 「お!解ってんな!」 「流生達からXmasの招待状が来たからな」 「届いたんだな」 康太は嬉しそうに笑った たわいもない話をして兵藤は帰って行った 榊原は食事を終えると康太を抱き上げて自室に帰って行った 康太をリビングのソファーに座らせて 掃除と洗濯に取り掛かった 一生がリビングを覗くと康太は寝ていた 一生は康太の横に座った 一生が座ると、康太は一生の膝の上に頭を置いた 一生の指が康太の髪を撫でた 「一生、明日は井筒屋のチキンだ」 「知ってる!お前は来なくて良いぞ」 「嫌だ!行く」 「………なら走るなよ……」 「それは無理! 井筒屋のチキンだぜ? 売り切れたらどうするんだよ?」 「んとに……おめぇは昔から井筒屋のチキンは譲らねぇな……」 「あたりめぇじゃねぇかよ 年に一度の井筒屋のチキンだ!」 「……今年も……あと少しで終わるか……」 「来年は……どんな年になるかな……」 「おめぇが笑ってれば…… 俺はそれで良い……」 「オレは何時も笑ってんぜ!」 「………昔も……今も……俺はお前の幸せしか……願ってねぇ……」 「………オレは……一生の幸せ……願ってるぞ…… 我が子や聡一郎、隼人、慎一、そして家族や仲間の幸せ……願ってる」 「俺はお前の傍にいられれば……幸せだ」 康太は何も言わず一生に抱き着いた 「最近、力哉見ねぇな?」 「………体調が優れないって寝込んでるからな……」 「何かあった?」 「………何もねぇよ……」 「………悠太も最近……見ねぇし……」 康太はそう言い考え込んだ 「取り敢えずはXmasだ そして年末年始 年が明けたら……戸浪と共に夏海の所へ行く」 「………そうか……一歳になるのか……」 「あぁ……年が明けたら一歳になる」 一生は何も言わず康太を抱き締めた 榊原はそんな二人を静かに見守っていた

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