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第86話 目論見②

テレビ局近くのホテルにチェックインした康太は何処かへ電話を掛け始めた 「オレだ! 飛鳥井建設の社員が事故った どんな状況か探りを入れて教えてくれ」 『解りました』 電話は切れた 康太はソファーに座ると爪を噛んだ もどかしい…… 相手は自分が消えるのを見越して仕掛けてきたのだ 誘き出すまで飛鳥井建設の社員は狙われ続けるだろう…… 携帯を取り出すと、黙ってられずに電話をかけた 「遼一、姿を消してくれ……」 『…え?……どう言う事ですか?』 「栗田と陣内がやられた 次に狙うとしたら……お前だ……」 『………俺が狙われてると言うのですね』 「そうだ……カタを着けるまで消えろ……」 『康太……遅かったかも知れ……ぅ!……このクソがぁ!……』 そう言い電話が切れた 康太は立ち上がった 「………伊織……飛んで良い?」 「駄目です!ニック、九頭竜海斗さんに連絡を!」 榊原は康太を掴んでいた 震える康太を膝の上に引き寄せて抱き締めた 「伊織、海斗さんです」 慎一は連絡を取り榊原に電話を変わった 「飛鳥井康太の伴侶の榊原伊織です ご挨拶したいのは山々ですが、遼一に何かありました……… 我々が動けば……巻き添えを食う人が出ます…… 遼一の様子を見に行って戴けませんか?」 『康太の伴侶殿ですか? 弟の身に危険が迫ってますか? 解りました! これより弟の身を確保して参ります 貴方達は少しお待ちください!』 九頭竜海斗はそう言い電話を切った 「………伊織……貴史を呼び寄せてくれ……」 「聡一郎は……良いのですか?」 「………そんな事を言ってられなくなった 一生も戻してくれ…… 慎一、晟雅に言って隼人の保護を頼む……」 慎一は「解りました!」と言いすぐに動いた 榊原も兵藤へと電話を入れた 「貴史……戻って来てくれませんか?」 『何があった?』 「飛鳥井の社員が襲われてます…… 栗田と陣内が事故り、九頭竜遼一が……襲われました 遼一は海斗さんに依頼しました このままでは……手が打てません」 『解った! 何処へ逝けば良い?』 榊原は兵藤にホテルの名前と部屋番を告げた 「その時一生も回収して来て下さい」 『聡一郎は?』 「一緒で構いません……」 『了解!』 そう言って兵藤は電話を切った 神野に連絡を取ってた慎一は 「隼人は今日は一日撮影です 隼人の身の回りにSPを増やして警戒すると約束してくれました」 「ありがとう慎一」 その言葉を受けて慎一は苦しそうな顔をした 漠然とした不安が消えなかった 暫くすると兵藤が一生と聡一郎を引き連れてホテルの部屋にやってきた 「康太……連れて帰った」 「呼び寄せて悪かったな貴史……」 「緊急事態だからな仕方ねぇだろ?」 「………まさか……飛鳥井の社員が標的にされるとは想いもしなかった……」 「腐れ外道の京極が一枚噛んでるんだろ? なれば……弱点を集中攻撃するのは必然かもな……」 「………京極が……噛んでるのを誰から聞いた? オレ……お前に言ったっけ?」 「聡一郎に聞いた 聡一郎のPCには今回の犯人のデータが入ってた」 「………だろうな 全部自分で調べ上げたのか?聡一郎」 「………中村竜吾を調べてました そしたら不自然な点が出て来たので調べました そしたら中村竜吾以外の男が浮き彫りになった そいつは金をもらい豪遊していたと聞く 高校生に豪遊出来る金があるとは想えない 金の出所を探っていたら……飛ばされまくった そして辿り着いた 京極瑠璃子の弟の影と…… 飛鳥井を恨む一派の姿を捕らえた…… 殺しは総て一派の奴に指示を出してやらせていた そして今……飛鳥井を恨む一派が消されている…… 早くしないと……跡形もなくなる……」 「流石だな聡一郎…… だが……もう動くな…… 動けば……お前は死ぬ……」 「……え……」 聡一郎は唖然とした顔を康太に向けた 「お前の命は風前の灯火だと……兄者が予言した それを弥勒に伝えてオレの前に弥勒が出て来た このまま突き進めば……お前は死ぬ…… 一足先に魔界に還るのか?司命?」 「………我はまだ還ったりはしない!」 聡一郎は司命の口調で……そう答えた 「でも……お前は分岐点に来てる どっちにも逝ってしまうしかないんだ……」 「……我は炎帝の傍を離れはしない! 今世は我が護ると決めたのだ!」 「なら手を引け! このまま動けば……お前の命は保障出来ねぇぜ? オレを………護るんじゃねぇのかよ?」 「………生かしておけば…必ずアイツは貴方の命を狙う! 生かしておくものか! 貴方の命は誰にも狙わせない! 我が盾になったとしても! 絶対に………逝かせはしない!」 聡一郎は泣いていた 康太は立ち上がって聡一郎を抱き締めた 「聡一郎……オレはお前の犠牲の上に生きて逝きたくはねぇ……」 「解ってる……解ってるけど……… なくしたくはないのです…… 僕の生きてる証…… 僕が今世……この世にいる理由…… 未来永劫……貴方に仕えると決めた時から…… 我ら司命と司禄は貴方を護ると決めている」 「司禄……オレの所へ来い!」 康太は司禄の名を呼んだ すると康太の前に司禄が姿を現した 司禄は康太の前に姿を現すと、康太の前に跪いた そして康太の手を取り、忠誠の口吻けを手の甲に落とした そして立ちあがり司命を抱き締めた 「………お主の魂の灯火が……消えかかってると閻魔が心配されていた お主に何かあれば……我が主は……何としてでも仇を取られるであろう…… お主が死ねば……主は魔界へは還れぬ所へ堕ちるしかないのだぞ?」 「……司禄……ごめん……」 「我が主を……貶めてはならない 主は魔界にはなくてはならない存在 だが主は逝くであろう お主に何かあれば……… 主は躊躇する事なく……破滅へ向かわれてしまう…… それはさせないでくれ司命…… 我から主を取り上げないでくれ……」 司禄の声が……司命の心に響く…… 主を誰よりも愛して仕えた対の存在 司命 司禄は一対の存在だった そんな片割れから主を取り上げてしまおうとしていたのか…… 自分の愚かさに…… 聡一郎は崩れ……床にへたり込んだ 「我ら司命 司禄の主は未来永劫、炎帝と決めたのではないのか?」 「………司禄……すまなかった……」 「閻魔に謝れ…… 閻魔は弟の無事を心配している…… 炎帝、司命は我が預かろう!」 司禄は聡一郎の手を取り引き起こすと康太の前に並んだ 「我ら司命 司禄は未来永劫 炎帝 貴方に仕えると決めたのです 我が主 炎帝……どうか悩むのは辞めて下さい……」 「司禄……頼めるか?」 「はい。閻魔にこってり絞られた方が司命の為! 仕事もたまっております故、手伝わせて、そちらがカタが着いた頃に還します」 「頼むな…」 「はい!我が主 炎帝 今世を悔いなく過ごされます様に…… 司禄は祈っております」 「司禄、還ったら酒を飲もうぜ!」 康太はそう言い子供の様な笑顔を向けた 「炎帝……貴方と飲むと丸裸になるので……」 「お前がジャンケン弱いから剥がされるんだろ?」 「………野球拳やらないなら……飲みます」 康太は爆笑した 「なら野球拳は勘弁してやるよ!」 「でも貴方は悪戯っ子ですので油断は出来かねます」 「そう言うな! お前らが好きだから構いたいんだろ?」 「なれば……我慢します しかし……貴方は本当に狡い…… その様な事を言われれば……何でも言う事を聞いてしまうではないですか」 「司禄……司命を頼むな……」 「はい!我が命に変えても!」 司禄はそう言い康太に深々と頭を下げた そして司命を連れて………消えた 康太は……二人を見送って……ホッと息を吐き出した 「……聡一郎はこれで大丈夫だな……」 「閻魔にこってり絞られて大人しくして欲しいです……」 榊原は絶対に……来ないで……と言う想いで呟いた 「さてと、邀撃に出ねぇとな! この事件……京極だけじゃねぇな…… 天界掃除したから……腹いせに来てるのかも知れねぇ……」 康太が言うと兵藤も 「こんなにも用意周到な事が出来るのは…… 人間じゃねぇ 人外を超える力が働いてねぇかって想ってた所だ」 「お前がそれを感じるなら……ビンゴだな ベルゼブブ……かアザゼル……グザファン辺りが仕掛けて来るかと想ってる」 「良い線だな で、どうするよ?」 「オレはテレビに出る 今日は一日中宣伝が流れてる筈だ」 「………と、言う事はお前はテレビ局に絶対にいるという訳か…… 狙うなら、そこへ出向くだろうな……」 「どうあっても飛鳥井康太の命……狙いてぇんだな」 「………飛鳥井康太の命………か 莫迦だな……炎帝を魔界へ還したら……皆殺しになるのを知らねぇ愚か者のやる事だな 厄介な奴を一日も早く魔界に還してどうするんだよ?」 兵藤はそう言い嗤った その時、康太の胸ポケットが震えた 『坊主!明日テレビに出るらしいな 迎えに来い! 俺がテレビ局に着いて逝ってやる そしたら何かあった時の処置も早かろうて!』 ガハハッと笑われて康太は面食らった 「久遠……お前それ何処で知ったよ?」 『朝から今夜の報道クライシスのゲストは飛鳥井康太だと番宣が入ってる お前がテレビ局に出向く時、無傷ではすまねぇだろ? なら俺は最初っからお前に着いてテレビ局へと行く!』 「巻き添え喰らうかも知れねぇぞ?」 『俺は日本にいたくなくて海外に出た時、難民キャンプの医者を務めていた 目の前で人が倒れて死んでった お前の逝く所は常に吹き荒れる嵐の中だからな……手は多い方が直ぐに動けるだろ? 俺はちょっとやそっとじゃ驚かねぇし倒れねぇ! それだけの修羅場を潜り抜けて来たからな!俺を連れて逝け!』 「……貴史に迎えに行かせる…」 『兵藤の倅か!よし迎えに来い!』 久遠はそう言い電話を切った 「貴史…」 名を呼ばれて兵藤は立ち上がった 「迎えに行けば良いんだろ?」 兵藤が立ち上がると慎一も立ち上がった 「貴史、飛鳥井の家に行き車を取って来ましょう 俺も逝くんでタクシーの支払いは康太のカードでします」 兵藤は康太を見て「良いのかよ?」と問い掛けた 康太は笑って頷いた 慎一と兵藤はホテルの部屋を後にした 「康太、少し寝ますか?」 「良い……オレはこれより崑崙山に逝って来る」 「では僕も行きます」 「なら一生は留守番な」 康太が言うと一生は拗ねた顔をした 榊原は康太を引き寄せて強く抱くと、時空を切り裂いた グニャッと時空が歪む中、康太と榊原は時空を超えた 時空の空間に出ると榊原は龍に姿を変えた 「捕まってて下さい」 そう言い龍の体躯が気流に乗った 気流に乗って青龍は崑崙山を目指す 康太は青龍の綺麗な蒼い鱗を見ていた 「青龍…愛してる…」 康太は呟いた 「本当に君は青龍が好きですね」 「魔界に還ったら法皇の衣装に身を包んだお前が見れるんだよな…」 「法王を飛び越えて法皇…ですか?」 「綺麗なんだろうな…… あんまし格好良くなったら…人気すげぇんだろうか……オレのなのに…」 康太が寂しそうに呟くと… 「君しか愛せませんよ炎帝」と龍が愛を囁いた 「……青龍……オレの蒼い龍……」 「全部君のですよ」 甘い囁きをしてると崑崙山が見えた 八仙の所へ近づくと虹色に輝く虹龍 そして黒龍の子供の四龍 黒龍 青龍 地龍、三頭が並んで青龍の方へ飛んで来た 虹龍が「青龍、炎帝、貴方達が来ると言われたので参りました」と喋った 青龍は前を見据えて 「あまり時間がありません! 緊急事態です」 と言い飛び続けた 崑崙山に到着して炎帝を頭から下ろすと、青龍は人のカタチに戻った 八人の仙人が炎帝と青龍を出迎えた 八仙の一人が炎帝へと近寄った 「お主の予測通り堕天使貴族が一枚噛んでおるが、本来の目的は……お主の目を攪乱する目的じゃ」 「本来の目的はオリンポスの十二神か?」 「我等もそうであろうと想っておった が………此処まで来て…… 皇帝閻魔が言うには……目的はそれに非ずと言って来た」 「………親父殿が?………親父殿は奴等の目的が解ったと言うのか?」 「………そうじゃ……言われてみれば……辻褄は合う……」 「なら、聞かせて貰おう! 奴等の目的は何なんだよ?」 「ソロモン72柱を解き放つのじゃ……」 炎帝はあまりの恐ろしさに……仰け反った 「………ソロモン72柱……それが目的かよ?」 「心当たりは……ないのか?」 「………ベルゼブブが噛んでる時点で…… そこまで考えるべきだったか…… 序列1番目のバエル……こいつは66の悪霊軍団を率いる魔界の東の王だったけ? 『七つの大罪』の悪魔では 「暴食のベルゼブブ」と同一とされているんだったよな? 要はベルゼブブの本体が……封印されてるって事だろ?」 それに答えのは…… 突然姿を現した皇帝閻魔だった 「………今回……お主は天界の封印をやってのけた…… ことごとく邪魔をした炎帝の邪魔をする為に…… あわよくば……炎帝を再生も出来ぬ位葬りたい………と言う訳だ 魔界は悪魔貴族のモノだと言う輩も確かにいる……」 「………親父殿……」 「炎帝を葬り去るには並大抵の力じゃ葬れまい…… ソロモン72柱の解放……すれば悪魔貴族の思惑通りになる……」 「皇帝炎帝をも葬り去りてぇ訳か……」 「我は……この命を賭したとしても…… お前を護る!絶対に死なせはしない!」 「親父殿……オレは天界を掃除した時に色んな弊害も想定していた…… どんな手を使って来るか…… 考えなかった訳じゃねぇ……」 「ソロモン72柱は死しても解放などさせぬ! 解放などしたらこの世は終わる 人の世も天界も魔界も終末となる……」 「んな事させるか!」 炎帝は叫んだ 「天界、冥府、魔界から実力者を招いて崑崙山で話をせねばならぬな…… その時が来たと言うのだな……」皇帝閻魔は確認した 「親父殿、全ての扉を開ける時が来たのかも知れぬ……」 「………我が息子……皇帝炎帝よ……… それだけはしてはならぬ……」 冥府の総ての扉を解き放つ時…… より強い魔力を取り込む事となる…… 「親父殿……時期は来たんだよ…… もう目を逸らして行ける場合じゃねぇんだよ!」 「………冥府が持たねば……皆死ぬ事になる」 「それでも……総ての扉を解き放ち…… 冥府に封印せねば……闇は侵食し広める 気付いた時には……総て闇に飲まれていたら? どうするんだよ? 打つ手がなくなる前に……総てを飲み込む」 「………炎帝……」 「ソロモン72柱は絶対に阻まねばならねぇ! 魔界だ冥府だ天界だ言ってられねぇ時が来た 阻止する為に同盟を組む! 良いな!親父殿!」 「解っておる……」 「八仙……銀龍は天龍を産み出したのか?」 「………まだでござろう……」 「なら……腹から引きずり出せ! 四龍、虹龍、火龍、翼龍、蜃龍……天龍八部衆を何としてでも作ってくれ!」 「御意!至急動きます」 「炎帝 雷帝 天帝 神帝……の四帝の復活……」 「………天帝は人の世 神帝……など……実在しませんよ?」 「天帝は呼べば来るだろ? それに神帝は実在する! 朱雀が作った子……双子だったろ?」 「……何故……」 双子は禍々しいモノとして魔界では忌み嫌われて来た その双子の事を……知っていると言うのか…… 八仙は驚愕の瞳を炎帝に向けた 「何故双子か考えた事があるか?」 「…………ありません……」 「しかも双子の片割れ……わざわざ皇帝閻魔が処分してやろうと……冥府から来た時点で疑わなかったのかよ?」 「………皇帝閻魔!………まさか……」 「生まれたての子供が冥府で生きられねぇと想ってるだろ?」 「………はい……」 「神帝になるべき器なれば……冥府でも生きられる力を付けてるんだよ これで四帝は揃う! 冥府も四皇帝が揃う 龍属八部衆が復活して……… ルシファーの完全なる力…… 魔界は誰にも負けねぇ力を手に入れたんだよ! 総ての力が冥府に集結して……総ての扉を解き放つ…… それ位の覚悟がねぇと……立ち向かえねぇと言う事だ……」 皇帝閻魔は覚悟を決めた瞳を息子に向けた 「………時が……来たと言うのだな……」 「あぁ……飛鳥井康太を葬ったと解ったら…… アイツ等はソロモン72柱を復活させる…… 復活した瞬間……冥府の扉を総て開いて魔を飲み込む!」 「………賭……ではあるが……仕方あるまい……」 「親父殿、冥府に還り準備に入ってくれ!」 「解った……我が息子炎帝よ… お主の逝く道が輝かしい成功に満ちています様に……」 皇帝閻魔は炎帝の手を取ると、手の甲に口吻けを落とした そして手を離すと……姿を消した 「虹龍、お前、天界を目指せ! 今回の白書をガブリエルへ届けろ! そして崑崙山で冥府と魔界と同盟を結ばせろ!」 「………炎帝……僕に……天界に逝く力があるとお想いか?」 「お前は神がオレにくれた存在 お前なら天界に逝ける筈だ 今回の用件を八仙に文章に起こさせて持たせて貰え」 「………解りました…」 「虹龍、お前はオレが魔界に還るよりも早く魔界に逝かねばならないかも知れない…」 「魔界の一大事……なのですね」 「そうだ……魔界が終末を迎えるかどうかの瀬戸際だ……」 「解りました! 貴方の還る魔界を僕は護ります!」 「………虹龍……お前なら出来る 頑張れるな?」 「はい!頑張ります!」 「天国の門にはオーディンがいる 炎帝からの特使だと証明書を書いて貰え」 「解りました」 「では、オレは還るな!」 「はい!また炎帝……」 「あぁ、また逢おうな虹龍」 炎帝はそう言い青龍の手を握った 「逝きますか炎帝?」 「あぁ、逝こう青龍!」 青龍は龍に姿を変えた 炎帝は青龍の頭に乗った 八仙が「時空を切り裂いてしんぜよう!」と言い術を放った すると目の前の景色が歪んだ 青龍は時空の歪みに身を滑らせ、飛んだ 時空を飛んで見慣れた景色になると、青龍は口を開いた 「………炎帝、僕は人のカタチになる為に……屋上へ行きます」 「ならオレも一緒に逝く」 青龍はホテルの屋上を旋回して、屋上の上に降り立った 炎帝を先に下ろして人のカタチになり、榊原は息を吐いた 「屋上ですね……ドアが開いてなければ……困りますね」 「大丈夫!」 康太は榊原と手を繋いでドアの方まで進んだ ドアノブを捻ると……ドアは閉まっていた 康太はポケットから見た事もない器具を取り出すと、チョチョイと鍵穴に差し込んだ そしてガチャガチャやるとドアが開いた 非常階段で下へと下りて、通路に出た そこからはエレベーターに乗り自分達の泊まってるホテルへと下りて、エレベーターを下りた 「………何時もやってるのですか?」 榊原は康太に問い掛けた やけに慣れている手付きだった 「オレが一生に教えた張本人だかんな!」 康太はそう言い笑った そう言えば須賀の救出の時、一生が見事にピッキングしたのを思い出した 部屋の前まで逝くと榊原はノックした すると一生がドアを開けた 「お帰り、久遠が来てる」 「そっか……」 康太は榊原と共に部屋に入った 兵藤は康太の顔を見ると 「何処に行ってたんだよ?」と問い掛けた 「崑崙山」 「八仙に逢いに逝ってたのかよ?」 「親父殿と逢ってた……」 「……皇帝閻魔……とか?」 「そうだ……それより……なんか多くない?」 「あぁ、久遠が万全の態勢で来たんだよ」 部屋の中には……医者が7人程ソファーに座っていた 「………今夜……泊まるんだよな?」 「明日テレビに出るんだよな? お前が逝く時に全員移動する」 「………部屋……足らなくねぇか?」 「………三木と正義、来るんだよな?」 「相賀も来るぜ……足らねぇぞ部屋……」 兵藤は思案して……立ち上がった 「部屋……変えて貰おう! 全員寝泊まりできる宴会部屋で良いや」 「お!それ良いな! なら変えて貰ってくれ!」 「此処にフロントの奴呼べよ慎一!」 兵藤は慎一に声をかけた 慎一は内線の電話を取るとフロントへと電話をかけた 「部屋を変わって戴きたいのです すみませんが、部屋まで来て下さい」 慎一が言うとフロントの者は 「直ぐに伺います」と言い電話を切った 暫くするとフロント係の一人が部屋にやって来た 兵藤はフロントの奴に 「内密で部屋を変えて欲しい なんせ人数が増えたので宴会部屋に布団を敷いて貰いたい そしたら一部屋ですみそうだからな!」と訴えた フロントの者は急な申し出だったが宴会が入ってなかったのと一晩だと言う事で、部屋を移るのを了承した 康太達は部屋を移った 堂嶋や三木にはその旨をメールで伝えて送った その夜、広間には布団がびっしりと敷かれた その隅っこで三木や堂嶋は久遠が連れて来た医者達と意気投合して宴会を始めた 兵藤は「……布団……要らねぇじゃねぇかよ!」とボヤいていた 酔い潰れるまで飲んで…… 昼近くに起きて、ご飯を食べて 康太達はテレビ局へと向かった ホテルは騒然としていた 昨夜、泊まった宿泊客が向かいのビルから狙撃されたと言うのだ かろうじて風呂に入って助かった者が、窓に打ち込まれた銃弾を発見してフロントに電話して来て発覚した その部屋は………飛鳥井康太が泊まる筈の部屋だった 三部屋続きで泊まった部屋には銃弾が打ち込まれていた 被害に遭ったのは…… 急な出張で宿泊した会社員だった 頭を打ち抜かれて……即死状態だった 狙撃犯は警戒していた警察官にその場で逮捕され拘束された このニュースは全国的に放送された

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